学級崩壊とモラル崩壊
最近見たとても考えさせられたTV放送を2つご紹介します。
●日本テレビ「子供たちの心が見えない…教師、17年目の苦悩」
毎週日曜の深夜に放映されている「NNNドキュメント’06」(日本・読売TV系)はなかなかの良質の番組であり毎回欠かさず見ております。
今週(7月30日(日))放送された拡大55分枠の「子供たちの心が見えない…教師、17年目の苦悩」は、とても考えさせられる内容でした。
日本テレビ公式サイトより・・・
2006年7月30日(日)/55分枠
子供たちの心が見えない…教師、17年目の苦悩
制作=日本テレビ千葉県の公立小学校で教務主任を勤める戸村桂二教諭(43)。6年生のクラスをまとめられず悩んでいた。自信を失い辞めたいとまで思った。今、同じ悩みを持つベテラン教師が増えている。これまでの指導方法が通用しない。専門家は『発達加速化現象』=子供たちの思春期の訪れが低年齢化したことを原因にあげる。社会的なルールを理解する前に自立心が強くなり、自我が一人歩きしてしまうという。教育の最前線で思い悩む教師たちの赤裸々な姿を追った。
ナレーター:増田 晋
http://www.ntv.co.jp/document/
ある公立小学校の6年生のクラスがいわゆる「学級崩壊」状態となり、担任の先生の受け持ってから卒業式で児童達を送り出すまでの、1年間に渡る先生の努力と苦悩を丁寧に取材し淡々と描いているドキュメンタリー作品なのであります。
ネットで少し調べましたら「所謂雑感」さんがとても丁寧に内容と所感をまとめられていましたので、失礼してテキストの一部を引用させていただきつつご紹介いたしましょう。
(前略)
先生に対して、「ウザイ」「キモイ」「死ね」この言葉が日常会話の様に飛び交っている。
注意すると、「なにそれ?説教?」と逆切れ。
時間も守る事が出来ず、休み時間が過ぎているのにも関わらず、数人の児童は戻ってこない。
先生の話を全く聞こうとせず、「先生」を無視しているだけ。子どもたちの発言の中で驚いたこと。
「先生って目上なの?先に生まれてきただけじゃん?」
社会との関わりへの無関心さが垣間見られる。「学校は面白くないけど、義務教育だから来てるだけ。」
『義務教育だから来てるだけ』…これは完全な無知というか、親がそう考えているのかもしれないとゾッとした。これは番組内で紹介されていましたが「『発達加速化現象』=子供たちの思春期の訪れが低年齢化したことを原因にあげる。社会的なルールを理解する前に自立心が強くなり、自我が一人歩きしてしまう」ということらしいです。
番組はこのあとクラスのあまりの状況に体調を壊し、限界に近づいていた担任教師は、緊急保護者会を開き、そこで惨状を報告したシーンへ。
担任教師は、授業時間になってもトイレから戻ってこない生徒や体育の時の整列すらまともにできない状況、クラスメイトに対する「死ね」という軽はずみすぎる発言、数人のうるさい生徒のために授業が中断してしまうこと…。こういう指導をしたという事実だけを語った。
それなのに、親は子供のしつけまで教師に求めるような発言がでてきた。
生徒をしかる際の男女の違いの批判、子供から耳にした担任を変えてほしいという要望。
授業を進められない段階で、すでに教師の仕事の範疇は大きく超えているということがわかっていない親が多すぎる。緊急保護者会まで開いて、夜遅くに学校に出向かなければならないことを持って事の重大さに気づいてもよさそうなものです。(後略)
所謂雑感
「NNNドキュメント「子供たちの心が見えない・・・教師17年目の苦悩」(NTV系)を観ました。」 より
http://yy32zi.at.webry.info/200607/article_20.html
私が番組を見て特に印象に残ったシーンは2つ。
ひとつ目はある日のコンピュータ実習室での授業終了後の風景。
先生が次に使用する人達のために椅子を元に戻し整頓して教室に戻るように大声で指示を出しています。しかし問題の女子グループは先生の声を完全に無視しふざけあっており、一人に至っては椅子を2脚並べてその上に仰向けに寝そべり大声で嗤い出す始末です。
何度も先生が椅子を片づけるようにかなりきつく指示を出しているのにもかかわらず、彼女たちは完全に先生の声を無視し(声だけではなく存在すら無視しているようでした)、やがて椅子をそのまま放置したまま実習室の外へ談笑しながら出ていきました。
児童のいなくなった実習室で、なすすべもなく先生は一人椅子を片づけていきます。
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このシーンを見たとき、胸が締め付けられるような悲しい想いがしました、と同時に激しい怒りの感情が沸いてきました。
たかだか、まだ11、2歳の子供であろう児童達の、学校をそして先生をバカにしたこの態度に、彼女たちの社会や大人達に対する抜きがたい不信感を垣間見たと同時に、親はどういう躾をしてるんだ、これはもはや教育の問題じゃない、躾の問題だと彼女たちの振る舞いを通じてその親たちに苛立ちました。
そしてこの先生はなぜはり倒してでも彼女たちの悪行を正さないのか、なぜ後片付けを放棄し教室に帰ろうとする彼女たちを引き戻さないのか、なぜ教室に一人最後に残り後片付けをもくもくとしてしまうのか、これでは彼女たちの勘違いが大きくなるばかりではないか、先生の煮え切らない態度にも腹が立ちました。(もちろん現在の学校で教師が児童に暴力行為などしたら大問題でありそのような乱暴な選択は彼にはできないのでありますが)
・・・
印象に残ったシーンの2つ目は「所謂雑感」さんも書かれていましたが、臨時保護者会のシーンです。
悪化する一方の学級崩壊状態に校長先生の発案である日の夜、臨時保護者会を開きます。
担任の先生からの具体的な報告を受け、保護者から出てくる言葉は、自分の子供はこう言っているといった反論が中心でありました。
いわく「先生は男女でひいきしている」、いわく「担任を変わって欲しいと言ってる児童もいる」、どのお母さんも自分の子供達を悪くは決して言いません。
事態の深刻さを理解した発言は放送を観ている限り皆無でありました。
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このあたりの親の無責任な態度について、やはり同じ番組を見てエントリーしていた「心が苦しい人のメンタルヘルスブログ」さんは次のようにまとめています。
(前略)
それなのに、親はその責任まで教師に求めるような発言を繰り返しました。
ここまで教師が責められるいわれなどあるのでしょうか?授業を進められない段階で、すでに教師の仕事の範疇は大きく超えているということがわかっていない親が多すぎるのですね。
自分たちのときもそうだったと開き直っているのです。
自分たちと同じ年齢の子供を持っている教師が、生徒のあまりにひどいありさまに苦悩しているというのに。
緊急保護者会まで開いて、夜遅くに学校に出向かなければならないことを持って事の重大さに気づけてもよさそうなものなのに。
それでも「このクラスの生徒は最低である」といわない、こういう事実があった、こういう指導をしたという事実だけを語った、教師の誠意のある態度をみること目も持たない。
そんな人たちが、40,50代にいるんです。
そんな人たちが人の親なんです。子供があそこまでになるのも仕方が無いのではないでしょうか?
学校で教えを受けている子供の親としてすら、教師に対してあのような態度なのですから、普段、他人に対してはもっと思いやりの無い対応をしているのでしょう。
親としてひどいとかいう次元ではないような気がします。
ひどい親というよりも、ひどい人が親であるということでしょう。
(後略)
心が苦しい人のメンタルヘルスブログ
「学級崩壊を教師のせいにする親」 より
http://kokoromental.seesaa.net/article/21712814.html
「心が苦しい人のメンタルヘルスブログ」さんはSAD(社会不安障害)、鬱(うつ)、神経症、パニック障害など、さまざまな心の病、表にはわかりにくい障害について、その背景や要因、解決法について真摯に考えていらっしゃる真面目なブログです。
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番組を見終えてとても暗澹たる鬱(ふさ)いだ気持ちになりました。
おそらくはこの番組で取り上げられたクラスが決して例外なのではなく全国にこの瞬間にも学級崩壊が進行中である数多くのクラスの一つに過ぎないだろうと考えたとき、日本の教育現場で起こっている事態の深刻さを憂うざるを得ませんでした。
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●NHKクローズアップ現代「崩壊?日本人のモラル」
平日の毎日7時半より放送されている「NHKクローズアップ現代」ですが、昨日(1日)のテーマは「崩壊?日本人のモラル」というモノでした。
NHK公式サイトより・・・
8月1日(火)放送
崩壊?日本人のモラル高速道路の料金所を料金を払わずに突破する車。コンビニや道の駅のゴミ箱に捨てられる大量の家庭ゴミ。図書館では本の無断持ち出しや切り抜きが相次ぐ。思わず首をかしげたくなるようなことが私たちの身の回りで日常的に起きている。各地の自治体は、監視カメラの設置やパトロール強化など対策に追われるが、効果はあまり上がらないうえ、コストは税金で賄われるため結局ツケは住民全体に回っている。「私」より「公」を優先させることが美徳とされてきた日本人のモラルに何が起きているのか。現場からのリポートとともに、スタジオにふたりの識者を招き、その背景を読み解いていく。
(NO.2278)スタジオゲスト : 佐野 眞一さん
(ノンフィクション作家)
: 江川 紹子さん
(ジャーナリスト)
http://www.nhk.or.jp/gendai/
日曜深夜の学級崩壊のドキュメントを見て暗澹たる気持ちになっていた後だっただけに、昨日(火曜)のこの番組はズシンっとこたえました(苦笑
「大石英司の代替空港」さんが所感を述べられています。
※ モラル崩壊 NHKクローズアップ現代
図書館で借りた本に、棒線入れる程度ならまだしも、楽譜部分を切り取る。表紙のアイドル写真を切り取る。巻末に延々と著者への批判を赤字で書き入れる等の輩がいるんだそうで。
番組見てて思ったけれど、あれ、社会の匿名化がこのモラル破壊を加速しているように思えましたね。バレなきゃ多少のことは構わないだろう、という人々が増えている。会社に行って、ひとたび名刺を持って外へ出れば、社名を背負ってしまう重圧下の個人が、ひとたび近郊駅を降りた瞬間に、匿名の個人に戻ってやりたい放題し始める。放置自転車がそうですよね。
丸の内や東京駅、はたまた新宿駅では、誰も放置自転車なんかしないのに、会社から遠く離れると、それが出来てしまう。
「社会の匿名化がこのモラル破壊を加速している」とは興味深い分析です。
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私も番組を見て図書館の本の惨状には驚きました。
切り抜きや落書きなどの蔵書に対する破損行為はここ数年で急増しているのだそうです。
次に借りる人に対する配慮が全くないふるまいの数々・・・
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社会性が希薄になり公共心が薄くなっているとしか考えられません。
自分と一部の密な関係の人間以外は全て他人であり、その他人に対しては一切の思いやりも配慮も示すことはない大人達が増えてきているのではないでしょうか。
他人に対しあたかも無機物のように無視し社会モラルを平気で破る輩が増えてきているのかも知れません。
電車の中の風景を考えても、平気で化粧を直したり飲食をする若い女性、ところ構わず携帯電話相手に怒鳴り散らす中年男、彼等にはあたかも他の乗客は存在していないような傍若無人な振る舞いです。
彼等は彼等の子供に公共道徳をどのようにしつけるのでしょうか。
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●学級崩壊とモラル崩壊〜日本の憂鬱
子は親の鑑とはよく言ったモノだと思います。
私にはこの2つの番組が取り上げた学級崩壊とモラル崩壊が、それぞれ別個の現象としては考えられませんでした。
確かにそれぞれ全く違う社会問題ですが、何か日本人の心の病んでいる部分が具現化し始めているという点で、子供の世界の学級崩壊と大人の世界のモラル崩壊が通底しているように思えるのです。
おそらくはさきほどの深刻なモラル無き「学級崩壊」現象は、日本の大人社会の写し鏡として考えるべきなのではないでしょうか。
大人社会の「モラル崩壊」が、「親の躾のゆがみ」というへその緒を通じて、子供社会の「学級崩壊」へと繋がっていく負の連鎖・・・
そしてその子供達が大人になったときさらに大人社会の「モラル崩壊」が深化していくおぞましいスパイラル・・・
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北朝鮮のミサイル問題も脅威でありましょうが、もしかしたら今の日本人が抱えるこの精神上の崩壊のほうが、日本という国にとってより憂鬱な深刻な問題なのかも知れません。
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私は2児の父親でございます。
この問題、世代によっても、立場によってもいろいろなご意見があると思います。
読者のみなさまのそれぞれのお考えをぜひうかがいたいと思いました。
(木走まさみず)