木走日記

場末の時事評論

森友文書書き換え問題〜スクープを発した朝日新聞にこそ検証責任がある

 「学校法人・森友学園大阪市)との国有地取引の際に財務省が作成した決裁文書について、契約当時の文書の内容と、昨年2月の問題発覚後に国会議員らに開示した文書の内容に違いがあることがわかった」と朝日新聞がスクープ報道したのは3月2日のことでした。

(3月2日朝日新聞記事)

森友文書、財務省が書き換えか 「特例」など文言消える
2018年3月2日05時20分
https://www.asahi.com/articles/ASL317533L31UTIL060.html?iref=pc_ss_date

 記事中で朝日新聞は2つの文書を「確認」、その違いの詳細を記事にしております。

 朝日新聞は文書を確認。契約当時の文書と、国会議員らに開示した文書は起案日、決裁完了日、番号が同じで、ともに決裁印が押されている。契約当時の文書には学園とどのようなやり取りをしてきたのかを時系列で書いた部分や、学園の要請にどう対応したかを記述した部分があるが、開示文書ではそれらが項目ごとなくなったり、一部消えたりしている。

 翌3日になると朝日新聞は社説で、「財務省は速やかに事実関係を調べ、公表する責任がある」と、今回の検証責任は財務省にあると主張します。

(社説)森友と財務省 事実を調査し、公表を
2018年3月3日05時00分
https://www.asahi.com/articles/DA3S13384911.html?ref=editorial_backnumber

 森友学園への国有地売却問題で、財務省が作成した文書をめぐる新たな疑惑が浮上した。

 取引の経緯を記した決裁文書の内容が、契約当時と、その後に国会議員らに提示したものとで違っていることが本紙の取材でわかった。複数の関係者によると、問題発覚後に書き換えられた疑いがあるという。

 だとすれば、行政の信頼を根幹から揺るがす重大問題だ。財務省は速やかに事実関係を調べ、公表する責任がある。

 決済後の文書を書き換えたとしたら、もし事実であれば、財務省の担当者は刑法上の公文書偽造等罪に問われることになります、国会議員すなわち国民の代表に偽造文書を配ったことになります。

 さて、ここで問題視したいのは、本スクープを仕掛けた朝日新聞の報道機関としての問題あるその報道姿勢です。

 6日付け朝日朝刊紙面の1面には大きく『森友要望の記述なくなる 答弁に沿う内容に 書き換え疑惑』との記事が掲載されています。

■2018年3月6日朝日新聞一面

朝日新聞東京14版より当ブログがスキャン

 同記事はネットでも確認できます。

森友要望の記述なくなる 答弁に沿う内容に 書き換え疑惑
2018年3月6日05時00分
https://digital.asahi.com/articles/DA3S13389019.html?rm=150

 本記事ではタイトルにこそ「書き換え疑惑」との表現が使用されていますが、記事本文では驚くべきことに全編を通じて書き換えを「断定」して記述しています。

 記事より抜粋。

 学園からの要望内容やそれに同省がどう対応したかについての記述が複数の箇所でなくなっている。

 ・・・

 契約当時の決裁文書には、貸付料の支払い方法などをめぐって学園側がどのような要望や主張をしてきたかが記載されている。これらに財務局がどう対応したかについての経緯も詳しく書かれていた。

 また、学園側が早く土地を買うために価格を示すよう財務局に求めたとも記載。それに対して財務局が「学園側の提案に応じ」「価格提示を行うこととした」とも記されていた。

 国会議員らに開示された文書では、こうした記載が元々あった場所から消えている。さらに学園の「要請」と書かれた複数の箇所が「申し出」になっていた。

 ご覧のとおり記事は書き換えが行われたことを疑惑ではなく事実として言い切っています。

 さらに記事は、これらの書き換えは佐川宣寿・前理財局長の国会答弁に合わせたのではないのか、「答弁に沿う内容に」という記事タイトル通りの指摘で結ばれています。

 昨年2月の問題発覚後、野党は国会で、「前例のないことをしている」などと追及。学園への特別扱いや便宜がなかったか繰り返し尋ねていた。財務省側は「全て法令に基づいて適正にやっている」(昨年2月24日、佐川宣寿・前理財局長)、「価格を提示したこともないし、先方からいくらで買いたいと希望があったこともない」(昨年3月15日、佐川氏)などと学園側の要望に応じたことを否定する答弁を繰り返していた。

 ・・・

 なんという角度を付けた読者への説明責任を放棄した報道姿勢なのでしょう。

 タイトルの「書き換え疑惑」とは名ばかりにこの朝日新聞記事は「書き換え」を事実と断定して決めつけて報道しています。
 現時点で書き換えが事実であるとする検証はスクープした朝日新聞からも財務省からも我々国民にはなされていないのにも関わらずです。
 我々国民が本「書き換え疑惑」で唯一へその緒のように与えられた情報は「朝日新聞は文書を確認」(3月2日記事)したという断片だけです。
 ここまで事実と断定した報道をするのならば、その事実と断定した根拠を読者に示すのが、報道機関としての誠意ある報道姿勢でありましょう。
 「検証責任は財務省にある」と自らの情報源は秘匿し他者の責任に転嫁しつつ、しかし記事は書き換えを疑惑ではなく「事実」として断定した角度のついた暴走報道をする。

 なぜ事実と断定したのかその検証を放棄しつつ報道を暴走する。

 これはかつて従軍慰安婦捏造報道で、原発事故吉田調書捏造報道で、朝日新聞が陥った過ちを繰り返していないか?

 誤解なきよう補足しておきますが、今回の朝日新聞スクープ記事が事実でないと決めつけているわけでは、もちろんありません。
 現段階では実際に財務省が公文書書き換えを行なった可能性ももちろんあります。
 しかし朝日新聞のようにこの段階で書き換えを事実と断定した記事を国民に角度をつけて報道を繰り返すのならば、「朝日新聞は文書を確認」(3月2日記事)したなどのあいまいな説明ではなく当該文書の写真を公表するなりより具体的に証拠を開示すべきだと、それが報道機関としての当然の姿勢だと思うのです。

 根拠も未開示で曖昧にして、角度をつけた決めつけた報道を無責任に繰り返す

 朝日新聞のこの報道姿勢が問題だと思うのです。
 自らの記事が真実に基づいておるのか、その記事の検証をいつも後回しに軽んじるその報道姿勢。

 財務省に公表責任があるのは自明ですが、その前にスクープを発した朝日新聞こそ検証責任があります。
 読者の皆さん。

 そうは思いませんか。



(木走まさみず)