木走日記

場末の時事評論

これでユネスコ記憶遺産は公平性や中立性を担保しているといえるのか?〜メディアがどこも指摘していない重要な事実を検証

 河野洋平氏が、「『ユネスコへの拠出を辞める』という意見は恥ずかしい」と会見にて宣っているようです。

「『ユネスコへの拠出を辞める』という意見は恥ずかしい」河野洋平氏が会見
http://blogos.com/article/139359/

 失礼して発言の当該部分を抜粋。

もう一言付け加えれば、こうした問題についてユネスコに対する拠出金を辞めようというような意見が国内にあるということが伝えられていますが、まったく恥ずかしい話だと私は思います。ユネスコが今世界に果たしている役割、その重要性、有効性というものは、相当大きなものだということは、世界の人たちが認めていることです。

そのユネスコの活動に大きな影響を及ぼすような日本からの拠出を辞めるような意見が、出てくることを恥ずかしいことだと思います。これはかつて、政党の中で、自分たちに都合の悪い記事を書く新聞に対して、「広告主に言って、広告を止めたらいいじゃないか」と議論してみんなから笑われましたが、同じ性質のものだと思います。

 そうですか、「こうした問題についてユネスコに対する拠出金を辞めようというような意見が国内にあるということが伝えられていますが、まったく恥ずかしい話だと私は思います」ですか。

 ユネスコに対する拠出金これすなわち国民の税金であります。

 ことは貴重な日本国民の税金の使われ方の問題です。

 今回の件で、ユネスコに対する拠出金を辞めることも検討することが本当に「まったく恥ずかしい話」なのかどうか、徹底的に事実を検証いたしましょう。

 要は貴重な国民の税金が原資である日本のユネスコに対する拠出金が、公平・公正に運用されているのかどうか、その一点です。

 今回は当ブログとして本件の事実関係を徹底的に検証してまいりたいと考えます。

 ・・・

 自民党佐藤正久議員は、BLOGOSにて、「ユネスコの下部組織であるアジア太平洋地域ユネスコ記憶遺産委員会(MOWCAP)の議長は中国人。さらに、10人の委員で構成されるMOWCAPのメンバーのうち4名は中国人、1名は韓国人。一方、日本人はゼロです。」と問題点を指摘しています。

佐藤正久
2015年10月14日 18:56
日本の名誉を守れ! ユネスコ記憶遺産と「南京事件

 失礼して当該部分を抜粋。

ユネスコ記憶遺産は公平性や中立性を担保できないような「個人」でも申請することができ、審議も「秘密会」形式で行われます。

しかも、ユネスコの下部組織であるアジア太平洋地域ユネスコ記憶遺産委員会(MOWCAP)の議長は中国人。

さらに、10人の委員で構成されるMOWCAPのメンバーのうち4名は中国人、1名は韓国人。一方、日本人はゼロです。

これでは審議の帰結は火を見るように明らか。

 ユネスコの公式サイトでMOWCAPのメンバーを確認しておきましょう。

Chairperson: Mr LI Minghua (China)

Vice-Chairpersons:

Mr. Kim Kwibae (Korea)
Ms Dianne Macaskill (New Zealand)
Ms. Fatima Fahimnia (Iran)
Ms. Vu Thi Minh Huong (Vietnam)

Secretary General: Ms Helen SWINNERTON (Hong Kong SAR, China)

UNESCO Regional Advisor: Ms Rosa Maria GONZALEZ

Special Advisors:

Dr Ray EDMONDSON (Australia)
Mr Simon CHU (Hong Kong SAR, China)
Mr Richard ENGELHARDT (Thailand)
Ms Sarah CHOY (Hong Kong SAR, China)

http://www.unesco.mowcap.org/organization_structure.htm

 うむ、議長は中国人の"LI Minghua"なる人物で、確かに構成員10名(ユネスコ構成員1名除く)のうち中国系4名、韓国人1名、日本人0名なのであります。

 さて、読者のみなさん。

 この"LI Minghua"なる中国人議長ですが、現役の中国共産党員である李明華(リー・ミンホア)氏のことであります。

 李明華氏は、中国中央公文書館(中国での呼称は中央档案館)の副館長であります。

 で、"LI Minghua"で検索すれば、昨年7月の英国のテレグラフ紙の国際ニュースがヒットしています。

China starts posting Japan’s war criminal 'confessions' online

Beijing is stepping up the propaganda wars against Japan by publishing dozens of Japanese war criminal 'confessions' online, just days after Tokyo lifted a ban on its military from fighting abroad

http://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/europe/germany/10945399/China-starts-posting-Japans-war-criminal-confessions-online.html

 同じ内容を報じているレコードチャイナの記事をライブドアニュースが報じています。

旧日本軍の「戦犯」45人の供述書をサイト公開した中国、日本とのプロパガンダ戦で有利に―海外メディア

2014年7月6日 12時51分 Record China

2014年7月5日、中国中央公文書館が公式サイト上で、旧日本軍の「戦犯」の供述書などを公開したことについて、海外メディアは「中国はプロパガンダ戦で日本より優位に立った」と指摘した。中国メディア・参考消息(電子版)が伝えた。

4日付の日本紙によると、中国中央公文書館が公開を始めたのは、1956年に中国国内で起訴された45人の供述書などの資料。1日に1人のペースで公開していくという。初日の3日は、「鈴木啓久陸軍中将」の供述書が公開された。同館の李明華(リー・ミンホア)館長は記者会見で、「鈴木中将は慰安所の設立や市民数千人の殺害を命じたことを認めた」と話している。

BBCは、今回の中国政府による「戦犯」供述書公開について、「7月7日の盧溝橋事件77周年と日本の集団的自衛権行使容認の決定というタイミングに合わせた」と報じた。英ロイターは「日本政府の集団的自衛権容認が招いた中国の反日プロパガンダ攻勢であり、これにより国際世論は中国側に有利に動いた」と指摘している。

シンガポール紙・聯合早報によると、公開された「戦犯」45人の供述書は原文の日本語と訳文の中国語だけでなく、英語に翻訳されたものも含まれるという。毎日1人のペースで公開することから45日間で終了する。供述書には、「戦犯」らが中国国内で行った数々の非人道的犯罪行為が記されているという。(翻訳・編集/本郷)

http://news.livedoor.com/article/detail/9014104/

 レコードチャイナの記事では「同館の李明華(リー・ミンホア)館長」とありますがこれは「副館長」の誤りですが、それはともかく
、現在、アジア太平洋地域ユネスコ記憶遺産委員会(MOWCAP)の議長である李明華(リー・ミンホア)氏は、一年前、中国中央公文書館(中国での呼称は中央档案館)の副館長として、「「戦犯」らが中国国内で行った数々の非人道的犯罪行為が記されている」資料を公開する側の人物だったのであります。

 本件は当時の産経新聞も報じていますのでご紹介。

中国公文書館、「戦犯」の供述書をサイト上で公開 中韓首脳会談に合わせ日本批判

 【北京=川越一】中国中央公文書館は3日、公式サイト上で旧日本軍の「戦犯」の供述書などの公開を始めた。中国政府が国連教育科学文化機関(ユネスコ)に記憶遺産として申請した、いわゆる慰安婦問題に関する詳述も含まれており、中韓首脳会談に合わせ、歴史問題で日本を揺さぶる狙いがうかがえる。

 公開が始まったのは、1956年に中国国内で起訴された45人の供述書など。1日に1人のペースで供述書を公開していくという。初日の同日は、「鈴木啓久陸軍中将」の供述書が公開された。

 同日、北京で記者会見した同館の李明華副館長は、鈴木中将が慰安所の設立を命じたことや、41〜45年に複数回にわたり計約140人の中国人女性らを慰安婦として誘拐したことを認めていると強調した。また、南京事件に関するユネスコへの申請資料として、米国人牧師が撮った記録映画や裁判記録などを挙げた。

 李副館長は「安倍内閣は公然と白黒をゆがめ、対外侵略と植民地支配を美化している」と主張。「日本の右翼勢力が種々の悪行などを否定していることに反撃し、侵略中の反人道的な暴行を暴き出す」と公開理由を説明した。 

http://www.sankei.com/world/news/140703/wor1407030006-n1.html

 「安倍内閣は公然と白黒をゆがめ、対外侵略と植民地支配を美化している」、「日本の右翼勢力が種々の悪行などを否定していることに反撃し、侵略中の反人道的な暴行を暴き出す」、一年前、このような発言をしていた人物が、現在のアジア太平洋地域ユネスコ記憶遺産委員会(MOWCAP)の議長だったわけです。

 さらに、実は今回の登録をユネスコに申請したのは公文書を保存している「中央档案館」自体なのです。

(参考記事)

南京大虐殺」「慰安婦」の世界記憶遺産入りを目指す中国=「登録成否にかかわらず、歴史の真相を守る立場を表明」―中国メディア
Record China 10月5日(月)21時7分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151005-00000045-rcdc-cn

 ・・・

 読者のみなさん。

 混乱しないで事実だけを見つめてください

 今回の「南京大虐殺資料」の登録をユネスコに申請したのは中国中央公文書館(中国での呼称は中央档案館)です。

 そしてその審査をしたユネスコの、その下部組織であるアジア太平洋地域ユネスコ記憶遺産委員会(MOWCAP)の議長は、申請した中国中央公文書館の副館長です。

 こんな不公正なでたらめな審査があっていいのでしょうか。

 これでユネスコ記憶遺産は公平性や中立性を担保しているといえるのでしょうか?

 この事実を持っても「『ユネスコへの拠出を辞める』という意見は恥ずかしい」(河野洋平氏)と言えるのでしょうか。

 当ブログとして、メディアがどこも指摘していないようなので、本日は本件で重要だと思われる事実を検証いたしました。




(木走まさみず)