木走日記

場末の時事評論

憲法学者の「受け入れられない」真実に、沈黙を守る朝日新聞

 朝日新聞はじめ、マスメディアがどこも報じていないのが不思議なので、あえて当ブログが取り上げたいと思います。

 九日付け産経新聞記事から。

明大教授「かわいがっていた教え子、合格させたかった」

 司法試験の考査委員を務めていた明治大学法科大学院の青柳幸一教授(67)が教え子の女性に司法試験の問題を漏洩(ろうえい)した国家公務違法(守秘義務)違反事件で、青柳教授が法務省の調査に「かわいがっていた教え子なので何とか合格させてやりたかった」などと動機を説明していたことが9日、関係者への取材で分かった。

 関係者によると、女性は20代後半で、明大法科大学院を修了。司法試験は法科大学院修了後の5年間で最大5回まで受験できるが、女性は1回目の受験で不合格になっており、今年は2回目の挑戦だった。

 法務省によると、青柳教授は自身が作成した憲法分野の論文式試験の問題を女性に漏洩した上、一対一で添削していた。さらに女性は青柳教授が作成に関与した短答式試験マークシート方式)でも高得点を取っていたが、同省は「漏洩は認定していない」としている。司法試験は論文式試験短答式試験の合計点で合否が決まるが、短答式試験で一定の点数を取らなければ、論文式試験は採点されない。 

(後略)

http://www.sankei.com/affairs/news/150909/afr1509090031-n1.html

 「かわいがっていた教え子なので何とか合格させてやりたかった」

 開いた口がふさがらないとはこのことです。

 最高学府において長年『法の下の平等』を最も重んずる憲法を研究してきた司法試験の考査委員を務めていた大学教授が、自らの教え子に司法試験の問題を漏洩していたとは、言語道断であります。

 さて、この憲法学者明治大学法科大学院の青柳幸一教授(67)ですが、司法試験の考査委員を務めていた重鎮であります。

 8日付け毎日新聞記事から。

司法試験漏えい:明大院教授「女子学生食事に誘う」評判も
毎日新聞 2015年09月08日 11時38分(最終更新 09月08日 20時29分)

 司法試験の問題を教え子に漏らしていた疑いが発覚した明治大法科大学院の青柳幸一教授(67)は、2006年に現在の新司法試験が導入された時から、試験問題の作成に当たる「考査委員」を務めてきた大ベテランだった。発言力が強く、司法試験の世界では有名人だったという。新試験制度の導入から10年目。法曹養成制度を揺るがしかねない事態に、教授を知る専門家や関係者は衝撃を口にした。

(後略)

http://mainichi.jp/select/news/20150908k0000e040142000c.html

 毎日記事によれば、青柳幸一教授は「「考査委員」を務めてきた大ベテランだった。発言力が強く、司法試験の世界では有名人だった」、憲法学会の中で非常に大きな影響力を持った学者であったことがわかります。

 読者の皆さん。

 本件のマスメディアの報道で、特に朝日新聞ならびに系列のTV朝日・報道ステーションは一切の沈黙を守っていますが、極めて重要な事実が伏せられています。

 2ヶ月ほど前、朝日新聞ならびに系列のTV朝日・報道ステーションは、主だった憲法学者ら209人にアンケートをして、その回答者の98%が安保法案を違憲もしくは違憲の疑いがあると答えたことを、グループを上げて報道キャンペーンを展開していました。

 7月11日朝日新聞記事から。

安保法案「違憲」104人、「合憲」2人 憲法学者
2015年7月11日01時56分

 安全保障関連法案の合憲性をめぐり、朝日新聞憲法学者ら209人にアンケートをした。回答した122人のうち「憲法違反」と答えた人は104人、「憲法違反の可能性がある」は15人。「憲法違反にはあたらない」は2人だった。

 調査は先月下旬、判例集憲法判例百選」(有斐閣、2013年発行)を執筆した210人のうち故人1人を除いてメールなどで実施。一部無回答を含め122人(実名85人、匿名希望37人)が回答した。法案と憲法との整合性を問う質問は四つの回答から選ぶ選択式で、「憲法違反にはあたらない可能性がある」は0人、回答なしが1人だった。

(後略)

http://www.asahi.com/articles/ASH797JMJH79ULZU01W.html

 このとき、この選ばれし憲法学者たち209人は、朝日新聞の説明によれば、権威ある『憲法判例百選』の執筆者たちであると説明しています。

 憲法判例百選は重要判例の概要を紹介し、意義を解説する専門書。13年発行の第6版は一巻、二巻合わせて210人が執筆した。衆院特別委員会で法案の合憲派として菅義偉官房長官が名前を挙げた3人は執筆していない。

 ご丁寧にも「法案の合憲派として菅義偉官房長官が名前を挙げた3人は執筆していない」との説明まで付記しています、合憲派には権威がないと言わんが如くです。

 さてここに憲法判例百選執筆者一覧(13年発行の第6版一巻、二巻210人)を調べているサイトがあります。

 あいうえお順に表にまとめてありますが、失礼してその執筆者の「あ」から始まる13名をご紹介。


憲法判例百選執筆者一覧 & 安保法制の合憲性 より
http://blog.livedoor.jp/ashibenobuyoshi/archives/1932411.html

 権威ある憲法判例百選(重要判例の概要を紹介し意義を解説する専門書)、その執筆者210名の中に、明治大学法科大学院の青柳幸一教授の名前があるのであります。

 ・・・

 一人の不埒な振る舞いをもって集団全体の善悪を判断することは愚の骨頂、愚かなことであります。

 しかし、逆に一人の犯罪行為をもって「これは唯一の例外である」と決め付けるのも愚かな楽観主義と言えましょう。

 ゴキブリが一匹部屋に出現した時に「これが最後のゴキブリだ」と誰が断定できましょう。

 読者の皆さん。

 朝日新聞グループの憲法学者を利用した「安保法案は違憲」キャンペーンは、世論に大きな影響を与えています。

 しかるにそのアンケートに答えた朝日新聞が「権威ある」と評した憲法学者の母集団に、かかる不正行為を行った憲法学者がいたわけです。

 その事実をどう評価するのかは国民ひとりひとりに委ねられましょう。

 しかし、マスメディアは少なくとも事実は事実として国民に報道するべきです。

 特にグループをあげてキャンペーンをはった朝日新聞は、この事実を報道する責任があると考えます。

 朝日が権威付けして利用してきた憲法学者の「受け入れられない」真実に、沈黙を守る朝日新聞グループなのであります。

 笑止。



(木走まさみず)