木走日記

場末の時事評論

なぜ今この国に安全保障関連法案が必要なのか

 自民党の安全保障関連法案がらみの国会答弁を見ていて非常にイライラするのは、失礼ながらなんて説明がこんなに下手糞なのか、ということであります。

 生肉使った、火事の例えなどしないで、もっと図とか数値を駆使して具体的に今回の法案の意義を説明すべきで有ります。

 想定される個別の事態ですが、「重要影響事態」「存立危機事態」「国際平和共同対処事態」「武力攻撃事態」「武力攻撃予測事態」ですか、こんなものに拘泥した説明など繰り返しても意味有りません。

 どうせ私を含めて国民は全てを理解できませんし、聞いてられません、何が「切れ目がない」のかよくわからないし、後で述べますが理論的には「切れ目がない」はずないんです、こんなもん私から言わせればその限りでは「欠陥」法案です。

 そうではなくて、なぜこのタイミングでこの法案が我が国に必要なのか。そここそを国民に理解してもらわなければなりません。

 本来は憲法改正をめざすべきではあるが時間がないのでとりあえず憲法改正しないでできうる範囲で集団的自衛権の一部を容認できるように法改正を計ります、と堂々ととりあえず法案であることを認めるべきです。

 そして差し迫る中国の軍事的脅威をもっと国会で国民に知らしめるべきです。

 外交的配慮でしょうがそこをとばして法案の細かい説明に終始しているから、説得力がぜんぜんないのです。

 当ブログならば、パネルを駆使して次のような説明を試みます。

 以下、当ブログの過去エントリーを利用して国民への訴えを試みます。

 読者の皆さんには、読み物としてお楽しみいただけたら幸いです

 ・・・

 国民のみなさん。

 国連憲章51条は、武力攻撃が発生した場合、安全保障理事会が国際的平和および安全の維持に必要な措置をとるまでの間、各国に個別的または集団的自衛権の行使を認めています。

【パネル1】

第51条

この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。この自衛権の行使に当って加盟国がとった措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。また、この措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持または回復のために必要と認める行動をいつでもとるこの憲章に基く権能及び責任に対しては、いかなる影響も及ぼすものではない。

http://www.unic.or.jp/info/un/charter/text_japanese/

 つまり、加盟各国はいわば「自然権」として自衛権(個別的+集団的)が認められているわけです。

【パネル2】

 しかしながら我が国は憲法において国際紛争を解決する手段として「戦争と、武力による威嚇又は武力の行使」は永久にこれを放棄しています。

【パネル3】

第2章 戦争の放棄
第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

http://www.houko.com/00/01/S21/000.HTM

 従って、日本国は「自然権」として自衛権は有してはいるけれども、「必要最小限度」という縛りがあり、集団的自衛権は行使できず個別的自衛権のみ行使可能という解釈がこれまでの憲法解釈でありました。

【パネル4】

 しかるに、ここ20年で日本を取り巻く東アジアの安全保障環境は大きく変貌しました。

 中国の著しい軍事的台頭です。

 具体的数値で押さえておきます。

【パネル5】

 平成元(1989)年(グラフの一番左)には 中国18336百万ドル、日本46592百万ドルであった両国の軍事費は平成15(2003)年(グラフ中央あたり)で逆転し、平成26(2014)年(グラフの一番右)では、中国190974百万ドル、日本59033百万ドルと3倍以上の差がついています。

 1989、2003、2014各年の日本の軍事費を1としての中国の軍事費の割合を視覚化してみましょう。

【パネル6】

 過去26年で日中の軍事費は日本:中国で1:0.39と日本のそれが中国の軍事費の2.5倍であった26年前から完全に逆転し、最近では日本:中国で1:3.24と中国の軍事費は日本の3倍以上に膨れ上がっています。

 国民のみなさん。

 この25年で10.46倍と驚異的なペースで軍事費を拡大している中国ですが、上記グラフで確認できますが、同時期日本の軍事費がほぼ横一線であることと対比すれば、今東アジアの軍事力のパワーバランスが大きく中国寄りに変動していることは明白です。

 このグラフは、日本が今までのように個別的自衛権のみで平和を守ることは不可能、つまり中国の急速な軍事的膨張を日本一国で対抗する手段は現実としては策がないことを如実に示しています。
 このグラフは、日本がアメリカやその同盟国との集団的自衛権について、建設的かつ積極的に議論すべき時代が到来したことを、冷徹な国際状況のすべてを物語っているわけです。

 話を戻します。

 繰り返しますが従来、集団的自衛権は行使できず個別的自衛権のみ行使可能という解釈がこれまでの憲法解釈でありました。

【パネル7】

 しかし時代がそれを許さない、一刻も早く日本も集団的自衛権を行使可能にすべきです。

 ならば、集団的自衛権への「王道」はもちろん憲法改正です。

 改憲すなわち憲法九条を改正すれば、日本も国連で加盟国に認められた自衛権を行使できます。

【パネル8】

 でも、これは極めて道が厳しい、国会での三分の2以上の同意を得て、そのうえで国民投票に計らねばなりません。

 改憲するまでにあと5年か10年か何年かかるかわからない、いや時間だけ費やして改憲できないかもしれません。

 緊迫する国際情勢すなわち中国の急激な軍事膨張とその領土的野心を隠さない挙動を考えるとそのような時間的猶予はありません。

 ならばです。

 現行憲法の下で、「切れ目のない体制の整備」をし、すなわち10の既存法の法律改正と1つの新法を成立させて、日本においても一部集団的自衛権の行使を認めようとしたのが、今回の安全保障関連法案なわけです。

【パネル9】

 で、当然ながら憲法学者らが今回の安全保障関連法案は「違憲」であると騒ぎ出したわけです。

BLOGOS編集部
2015年06月15日 15:30
【詳報】「安全保障法制は違憲、安倍政権は撤回を」〜長谷部恭男氏・小林節氏が会見
http://blogos.com/article/116803/

 国民の皆さん。

 この国の憲法学者は実はアホの巣窟なのです。

 そもそも従来の憲法解釈である「必要最小限度」=「個別的自衛権」の等式の根拠はなんなんだと。

「必要最小限度」=「個別的自衛権」+「集団的自衛権(一部)」の等式のどこがいけないのか?

 憲法9条という大きな縛りの中では、自衛隊に何が可能なのか「ポシティブリスト」的法案を作成するしか、方法論としてはないのです。

 今回の法案見てください、この場合だけはこれができる、その場合だけはそれができる、「この条件ならこれができる」というややこしい「ポシティブリスト」「できるリスト」のてんこ盛りです。

 条件である「事態」だけでも、「重要影響事態」「存立危機事態」「国際平和共同対処事態」「武力攻撃事態」「武力攻撃予測事態」など、国民に理解しろってほうがおこがましいぐらい、知恵をしぼっているのです。

 ・・・

 国民のみなさん。

 学者たちにはこの「必要最小限度」=「個別的自衛権」の等式は絶対である、といった「神学」論争を10年でも20年でも法廷で無意味にやっていてもらいましょう。
 私たち自民党はバカな学者は無視してとっととこの安全保障関連法案を成立させたいのです。
 自衛権に関して本来あるべき法案ではないけれど、応急処置です。
 そのうえでですが、並行して堂々と改憲議論を継続し、しかるべき将来国民投票に持ち込めばよろしいです。 
 憲法を改正して、堂々と自衛権を素直に行使できるシンプルな「ネガティブリスト」の法案を通せるように目指します。

 なぜなら今の法案「これができるリスト」すなわち「ポシティブリスト」法案では、必ず漏れが出てきます、「切れ目のない」「ポシティブリスト」法案など理論的にありえない、つまり残念ながら切れ目があるという点では「欠陥」法案なのです。
 あらゆる事態に臨機応変に対応しなければならない「軍隊」は、すべての「事態」を網羅した「ポシティブリスト」を作成することなど不可能だからです。

 本来、軍隊というものは「これはしてはいけない」すなわち「ネガティブリスト」法でその行為を統制すべきなのです。

 してはいけないこと以外は臨機応変に対応可能とすべきだからです。

 国民のみなさん。

 本件で「王道」を目指すことは保守の矜持であります。
 憲法を改正して、堂々と自衛権を素直に行使できるシンプルな「ネガティブリスト」の法案を通せるように目指します。

 本法案はその通過点であります。

 ご清聴ありがとうございました。

 おわり。

 ・・・

 このぐらいの答弁したらいかがでしょうか。
(↑アホとかバカとか欠陥とか、一部に極めて不適切な表現があるだろうが)(天の声)

 ・・・(汗

 失礼いたしました。

 ふう。



(木走まさみず)