木走日記

場末の時事評論

東電の真の問題は重大な人為的過失事故を隠蔽する不誠実極まりないその体質そのもの〜驚くべき内容の産経新聞スクープ記事

 19日産経新聞1面トップのスクープ記事は東京電力が原子炉データ送信装置の非常用電源が未接続の状態を4カ月放置したままで事故を迎えていたという、驚くべき内容です。

 ネット上当該記事も含めて関連記事がアップされています。

原子炉データ送信装置、非常用電源未接続4カ月放置 事故時に機能せず
2012.1.19 11:16
http://sankei.jp.msn.com/science/news/120119/scn12011911180003-n1.htm

東電の低い安全意識露呈 拡散予測に影響も 福島原発、非常用の電源未接続
2012.1.19 11:38
http://sankei.jp.msn.com/science/news/120119/scn12011911400004-n1.htm

東電「緊急性高いとの認識なし」 非常用電源未接続問題
2012.1.19 12:49
http://sankei.jp.msn.com/science/news/120119/scn12011912500006-n1.htm

 詳細は記事をお読みいただくとして要約するとこうです。

 非常用電源が外れたままとなっていたのは「メディアコンバーター(MC)」と呼ばれる機器で、原子炉の温度や周辺の放射線量などを監視する「ERSS」と呼ばれるシステムにデータを送信する装置の一部です。

 MCが非常用電源の「無停電電源装置」に接続されておらず、地震により外部電源を喪失した昨年3月11日午後2時47分ごろにデータの送信が停止いたしました。

 平成22年11月に行われた設備更新工事で、MCからの電源ケーブルを作業員が誤って別の機器に接続してしまい、東電は同月、ミスに気づき、ケーブルを非常用電源につなぎ直そうとしますが、ケーブルの長さが足りず断念いたします。

 そして未接続のまま放置したといいます。

 東京電力松本純原子力・立地本部長代理は19日午前、記者会見し、非常用電源が未接続のままでデータ送信ができなかったことを認めた上で、「いつまでに(接続)工事をしなければならないのか、国と約束ができていなかった。緊急性が高い工事という認識はなかった」と述べます。

 経済産業省原子力安全・保安院によれば、「非常用電源が接続されていればデータが受け取れた」と認めており、本震から余震で国の通信網がダウンする3月11日午後4時43分ごろまでの約2時間、本震直後のデータを生かすことができた可能性が高いのです。

 結果、ERSSのデータを基に放射性物質の拡散を予測するシステム「SPEEDI」にも活用できなかったわけです。

 東電は、放置していた理由を「電源ケーブルを手配しなければいけないという認識はあったが、3月11日までにつなげなかった。完全に忘れていたわけではない」と説明していますが、一方、保安院は「なぜ長いケーブルに取り換えなかったのか」と、東電の対応を疑問視しているといいます。

 ・・・

 ケーブルの長さが足りず断念しそのまま未接続のまま4ヶ月も放置していたこと自体、ありえない杜撰な対応なのですが、東電関係者の「緊急性が高い工事という認識はなかった」という言訳には唖然として開いた口がふさがりません。

 非常用電源の「無停電電源装置」の緊急性が高くなったとき、それは今回のような事故発生時です、それからの対策では手遅れなんです。

 またしても「想定外」とでも言いたいのでしょうか。
 そしてこの産経スクープ記事で露呈した最大の問題は、このような影響の大きい重大な明らかな人為的過失事故を東京電力は事故後10ヶ月も隠蔽(いんぺい)していたという不誠実極まりないその体質です。

 昨年の12月5日に、東京電力は福島原子力事故調査報告書(中間報告書)を公表しています。

福島原子力事故調査報告書(中間報告書)
http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu11_j/images/111202c.pdf

 130ページもの膨大なこのレポートには、MCについて非常用電源が未接続で放置されていたなどとはまったく報告されていません。

 MCについては「非常用電源やバッテリーが備え付けられていなかったため、装置が停止したと考えられる」と触れているだけです。

 これはとんでもない事実を隠蔽した偽りの報告であります。

 このようなことではこの報告書全体の科学的信憑性も疑わざるを得ません。

 今回の産経スクープで露呈したのは東京電力のあまりにも杜撰なリスク管理であります。
 そしてより本質的な問題は、重大な人為的過失事故を隠蔽する不誠実極まりないその体質そのものです。
 このような嘘吐き会社に原子力発電所を運営する資格はありません。



(木走まさみず)