木走日記

場末の時事評論

総選挙を強行するならば憲法違反行為だ

 2日付け産経新聞記事から。

陸前高田6000戸なお断水 関西から給水支援
2011.6.2 10:00

 東日本大震災の影響で断水が続く被災地では、日本水道協会関西地方支部が給水活動を展開している。水道週間が始まった1日、岩手県陸前高田市の被災者らは給水車から水をペットボトルに注いでいた。

 津波によって壊滅的な被害を受け、約6000戸の断水がいまなお続く陸前高田市。震災発生当初から被災地入りした近畿2府4県の水道事業体は現在、同市を中心に給水車約20台、約50人で被災者への支援を行っている。

 大阪市水道局総務部の大塚久征さん(38)は、「まだ多くの方が水を待っておられます。1日も早い復旧を行うとともに、それまでの間、応急給水を確実に行っていきたい」。自宅兼商店で飲み水・洗濯に使うため約20リットルの給水を受けた陸前高田市気仙町の熊谷厚子さん(72)は、「大阪や京都など他県から毎日給水に来ていただいています。地震で水のありがたみがよく分かりました」と話していた。

http://sankei.jp.msn.com/life/news/110602/trd11060210030007-n1.htm

 津波によって壊滅的な被害を受けた岩手県陸前高田市では、いまなお約6000戸の断水が続いており、関西からの給水支援でなんとか凌いでいる状況です。

 この「水」の問題、深刻なのは陸前高田だけではありません、

 2日付け朝日新聞記事から。

川で洗濯・トイレは仮設・入浴週2回… 水なき南三陸
2011年6月2日1時37分

 津波で壊滅的な被害を受けた宮城県南三陸町では、震災から3カ月近くたった今も水道が使えない。復旧率はわずか1%。頼みの隣接市も水不足に陥っており、水のない生活に住民は疲弊しきっている。

 町内の山あいを流れる新井田川の上流では昼間、女性たちが集まって洗濯物や食器を洗っている。ある主婦(46)は、洗濯物で膨れ上がったスーパーのポリ袋四つを胸に抱え、1日おきに川へと通う。

 「お父ちゃんも息子も建築関係だから、汚れた服を何日も避難所の狭いスペースに置いておけない。大変だけれど、水が出るまでここで洗うよ」

 宮城県によると、県内被災地の水道の復旧率は1日現在で94%。これに対し、南三陸町は1.24%で、被災地の自治体の中でも極端に低い。

 震災前、町では6カ所の浄水場で井戸水をくみ上げ、町内約5700戸に送水していたが、津波で1カ所が壊滅。2カ所は無事だったが、3カ所ではくみ上げる水の塩分濃度が高くなり、飲料水として使用できなくなった。

 町は最近になってようやく新しい水源を確保し、仮設の導水管を敷設し始めた。しかし、町内では水道管を渡すための主要な橋が津波で落下しており、復旧の見通しについては「各家庭へとつながる水道管もズタズタに壊されているため、相当の時間がかかる」(町担当者)という。佐藤仁町長も「現段階では、復旧時期を示すのは難しい」と話す。

 避難所となっている体育館や宿泊施設でも、水のない生活を強いられている。約600人が避難生活を送っている「南三陸ホテル観洋」は1日約300トンの水が必要だが、給水車で運び込めるのは約80トンだけ。入浴は週2回。トイレは屋外の仮設トイレを使用し、洗濯物は川の水を使うか、石巻市などのコインランドリーで洗う。

 おかみの阿部憲子さんは「これからどんどん暑くなるなかで、週2回の風呂や仮設トイレで、どこまで衛生状態が保てるか。被災した方々を受け入れているが、水がなければどうにもならない」と嘆く。

 町内の水は、隣接する同県登米市から、1日延べ80〜100台の給水車を使って、250〜300トンを運び入れている。

 このため、登米市内での4月の取水量は前年同月比で約10万トン、約12%増加した。南三陸町内から登米市内に移り住む被災者が増えていることや、今後、市内に同町の仮設住宅が200戸建設されることなどから、「これ以上水が必要になれば、市民に節水を求めざるを得ない状況」(市担当者)となっている。

 登米市の布施孝尚市長は「こちらもできるだけ協力したいが、水は有限であり、国などからのサポートがない状況では限界がある」と話している。

http://www.asahi.com/national/update/0602/TKY201106010818.html

 宮城県南三陸町では水道の復旧率は1.24%で、避難所となっている体育館や宿泊施設でも、水のない生活を強いられており、水のない生活に住民は疲弊しきっている模様です。

 電気・ガス・電話や幹線道路・港湾などの復旧作業も急がれていますが、仮設住宅設営と並んでこの上水道の復旧は地域差を伴い大きく取り残されている地域が多いのです。

 町内では水道管を渡すための主要な橋が津波で落下しており、復旧の見通しについては「各家庭へとつながる水道管もズタズタに壊されているため、相当の時間がかかる」(町担当者)のが現状なわけです。

 これから夏に向かうにあたり、この状態を放置せず国は早急に対策支援を施さなければなりません。

 ・・・

 自民、公明、たちあがれ日本3党で提出した内閣不信任決議案が2日午後の衆院本会議で採決される見込みです。

 可決されれば、内閣は総辞職するか解散総選挙の選択が迫られます。

 万が一、今解散総選挙となれば、上記被災地自治体の多くに大混乱をもたらし、復興への大きな妨げになることは間違いありません。

 自治体によっては役場もろとも住民台帳や戸籍も流されています、また行方不明者も8000人を越えており、自宅を避難している方も、原発避難を含めて数十万人規模に及んでいます。

 さらに自治体職員の多くは休日返上で復旧作業や住民サポートに追われているのです。

 被災地で選挙などできるはずありません。

 もし総選挙を選択したならば、選択した菅首相民主党も、可決したら総選挙の可能性があることをわかっていたにもかかわらずこの時期に不信任案を提出した自民・公明も、与党にも関わらずそれに賛成した小沢グループも、全員同罪です。

 水のない生活に疲弊している南三陸町佐藤仁町長は自民・公明両党を厳しく批判します。

南三陸町長が内閣不信任案に不快感「そういう時期か」 

 東日本大震災で被災した宮城県南三陸町の佐藤仁町長は1日の記者会見で、自民、公明両党による内閣不信任決議案提出について「被災地の首長として甚だ不本意だ。そういうことをやっている時期なのか」と不快感を表明した。

 佐藤町長は「政権が代わると復興への歩みがどうなるか不透明だ」と指摘。一方で菅政権には「スピード感がない」と注文を付けた。不信任案が可決され、衆院解散・総選挙となった場合について「投票所の予定地はほとんど避難所になっている。選挙に携わる職員を確保できない」と話した。

http://www.sponichi.co.jp/society/news/2011/06/01/kiji/K20110601000937430.html

 衆院解散・総選挙となった場合について「投票所の予定地はほとんど避難所になっている。選挙に携わる職員を確保できない」(南三陸町長)のは当然です。

 南三陸町だけではない、住民台帳が流された自治体は投票用紙を用意することすら現状では困難です、数十万の自宅を避難している人たちへの対応はどうするのか、そしてこの大切な復旧時期に復旧作業を止めて自治体職員に選挙準備をさせるというのか。

 国会は被災地の現実から完全に乖離してしまっています。

 なぜ今この時期なのか。

 誰がこの先首相になろうともかまいません。

 しかし解散総選挙は絶対選択してはいけません。

 憲法の認める権利、投票権を行使できない国民が多数発生する可能性が大きいのです。

 さらに被災地の自治体に大きな負担となり復興作業の妨げになります。

 水不足などで疲弊している被災地住民の生存権を侵害します。

 もし今このタイミングで総選挙を強行するならば、それは住民の守られるべき権利を侵害する憲法違反行為です。

 もし総選挙を選択したならば、選択した菅首相民主党も、可決したら総選挙の可能性があることをわかっていたにもかかわらずこの時期に不信任案を提出した自民・公明も、与党にも関わらずそれに賛成した小沢グループも、全員同罪です。



(木走まさみず)