木走日記

場末の時事評論

片山総務相は民主党政権のリトマス試験紙だ〜政治主導で虎(官僚)と狼(労組)に正しく信念を持って対峙できるかが試される

 19日付け読売新聞記事から。

国家公務員給与、人勧超す引き下げも…総務相

 片山総務相は19日、国家公務員の給与引き下げを求めた人事院勧告について、「(引き下げ幅を)全く動かせないかというと、ある程度余地があるのではないか」と述べ、勧告を上回る引き下げもあり得るとの考えを示した。


 秋の臨時国会への給与法改正案提出に向け、閣内で結論を急ぐ方針も示した。都内で記者団の質問に答えた。

 片山氏は、鳥取県知事時代に県人事委員会の勧告以上の給与削減を実施した経験がある。人事院勧告については「公務員の労働基本権を制約している代償の一つだ」とした上で、「国が破綻(はたん)寸前になっていて建前論だけでいけるかという国民感情の問題もある」と指摘した。

(2010年9月19日19時39分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20100919-OYT1T00519.htm

 うむ、国家公務員の給与引き下げを求めた人事院勧告について、勧告を上回る引き下げもあり得ると発言した片山善博総務相なのであります。

 今回の菅改造内閣の目玉人事である民主党政権で民間からの初入閣となる元鳥取県知事の片山氏の総務相抜擢でありますが、これは菅新内閣一番の人事と期待を込めて評価したいです。

 平均年収で9万4000円、合計で約790億円を削減する今年度の人事院勧告に対し、片山氏がさらなる削減額の上積みを示唆したことは、「鳥取県知事時代に県人事委員会の勧告以上の給与削減を実施した経験」(読売記事)という実績があり、なおかつ旧自治省出身で役所の表も裏も知っている氏だけに、発言には説得力があります。

 片山氏は2期8年に及ぶ知事時代、改革派の旗手で鳴らしました、徹底した情報公開をはじめ、議会での根回しや談合を追放するなどオープンな改革を成し遂げた手腕には定評があります。

 なによりも片山氏には哲学があります。

 知事時代、石原慎太郎東京都知事が打ち出したホテル税構想に、「都民以外の客から税を取る『他人のふんどし』のようなもの」とかみつき、「恥をかくのはてめえの方だ」と石原知事に毒づかれようが、一歩も引かなかったことは彼が気骨の人であることを天下に示したのでした。

 ・・・

 民主党が「2割カット」を掲げる公務員給与削減では、官僚や労働組合と激突する可能性が極めて大きいです。

 まして支持母体に自治労を抱える民主党出身大臣では真の意味での地方分権公務員制度改革ができうるはずはありません。

 これまで政府の地域主権戦略会議は、国土交通省の地方整備局や農林水産省地方農政局など、八府省の十三機関を対象に「自己仕分け」を、情けないことに役人自身に指示してきました。

 その結果地方移管可能とした事務・権限は一割にとどまったのです。

 ハローワークの移管には厚生労働省はゼロ回答、河川・道路の移管には国交省が「道州制など受け皿議論が必要」と指摘しやはりゼロ回答です。

 権限を死守したい官僚自らの仕分けだから、これは当然の結果であり、出先機関には国家公務員約三十二万人のうち約二十一万人が勤務しているのです。

 またもしこれを受け入れる地方にも相当の覚悟が必要です、政治主導で徹底した合理化を目指すには、前門に虎を拒ぎ後門に狼を進まねばばなりません、すなわち既得権限・権益を死守しようとする虎(官僚)と狼(労組)に正しく信念を持って対峙することが可能な政治家が必要なのです。

 民間からの片山氏総務相抜擢は民主党政権の弱点を補う点で大きな価値と意味があります。

 片山氏には思う存分、己の信念に従って、取り組んでいただきたいです。

 もし民主党政権が官僚に取り込まれたり自治労の言いなりになり、片山氏の仕事をじゃまするとなれば、菅政権はそこまでです。

 民主党政権が政治主導で地方分権公務員制度改革に本気で取り組むのかどうか、片山総務相リトマス試験紙となりましょう。



(木走まさみず)