木走日記

場末の時事評論

与謝野氏の最大の欠点は「天の時」「地の利」「人の和」を生かしきれないこと

 今の政局のキーパーソンである一人、与謝野馨氏ですが、政治家としての与謝野馨という人物について考えてみたいです。

 与謝野氏の政治家としての履歴とその選挙下手(失礼)を考察すれば、何よりも彼の行動原理を理解するのに役立ちます。

 簡単に彼の政治家としての歩みと選挙下手を振り返ってみましょう。

 68年日本原子力発電を退職し、中曽根氏の秘書となります。

 72年の総選挙に東京都第1区から自民党公認で立候補するがまず落選。

 76年の総選挙に同じく東京1区から立候補し初当選、当然ながら中曽根派に所属します。

 79年の総選挙で大平正芳が打ち出した一般消費税による逆風を受け落選。

 80年の総選挙で、返り咲きます。

 彼は、通商産業政務次官自民党商工部会長、衆議院商工委員長などを歴任し、商工族、政策通として頭角を現すわけですが、興味深いことは、中曽根派に所属しながらも、商工族の実力者であった梶山静六氏(田中派)の門下ともいうべき関係を形成していることです。

 94年に村山内閣で文部大臣として初入閣します。

 98年、小渕内閣通商産業大臣に就任。

 00年の総選挙で民主党海江田万里に敗れ比例代表東京ブロックでの復活も果たせずまたしても落選します。

 この時の浪人生活で派閥を抜けます。

 03年の総選挙で選挙区では僅差で海江田に敗れたが、比例復活でかろうじて当選。

 04年、自民党政調会長に就任し、小泉首相の進める郵政民営化に尽力します

 05年のいわゆる郵政選挙では、海江田に対して比例区での復活を許さないほどの圧倒的な勝利を収めます。

 06年、安倍政権で税調会長を就任するも喉頭癌による入院療養生活のため辞任します。

 07年、安倍改造内閣において内閣官房長官に就任。

 08年、福田内閣内閣改造により内閣府特命担当大臣(経済財政政策、規制改革担当)に就任。

 09年の総選挙では再び民主党海江田万里に敗れたものの比例代表で復活当選いたします。

 こうして振り返りますと、まず、政治家与謝野馨氏の2つの顕著な特徴が理解できます。

 ひとつは選挙に実に弱いことです。

 復活当選を除く小選挙区だけでカウントすると彼は72年の初選挙以来、実に5回も落選の憂き目にあっており、大臣経験者の割にはお世辞にも選挙地盤は盤石とは言えません。

 これは、彼は大衆受けする演説が苦手であり、ポピュリズムに走ることが苦手であることをも意味しています。

 事実として選挙においてはうまく「天の時」「地の利」「人の和」を生かしきれてはこれなかったようです。

 政界屈指の理屈屋である与謝野氏ではありますが地元選挙民を利するような甘い言葉は用意していません。

 もうひとつの特徴は、政治家として彼は自民党派閥全盛時代の頃から一匹狼的振る舞いが目だち、いわゆるグループ形成などに無頓着であったことです。

 中曽根氏の秘書出身ですから当然彼は中曽根派に属するわけですが、興味深いのは田中派の梶山氏に師事したり、彼はあたかも無派閥のように自由に党内を渡り歩きます、そして最終的には無派閥となります。

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 政治家としての彼の行動原理は何なのでしょうか。

 私は彼を根っからの趣味人、それも札付き(失礼)の理論派ギャンブラーだと見切っています。

 私は一人の男としては与謝野氏は好きなタイプです。

 彼はギャンブルやゲームが大好きでありなおかつ好奇心の固まりであり、一緒に遊ぶならとても魅力的な男だろうからです。

 最近はしないようですがマージャンもめっぽう強いようですし、小沢氏とたまに打つ囲碁の腕はアマ七段と素人としてはかなりのレベルと聞いております、写真を撮らせればプロ級の腕前であるとも聞いています。

 それに驚いたことに彼はIT情報通でもありPCのパワーユーザーでもあります。

 彼の事務所のパソコンは、彼自らパーツをアキバで購入し自作したものがゴロゴロあるそうです。

 失礼ながら70歳を越えた年齢から考えるとこれはものすごいパワーです、尊敬すらしてしまいます。

 趣味の分野でこれほど多彩な能力を発揮できる人というのは、好きなことに対してものすごい集中力を発揮するタイプが多いのですよね、おそらく与謝野さんもこのタイプの趣味人だと思われます。

 余談ですが不肖・木走もマージャンも打ちますしゲームも大好きです、囲碁は打ちませんが将棋はよくさします、PCも趣味で自作してます(私の場合ITは本職ですので自慢にもなりませんが(苦笑))、能力はさておきタイプとして与謝野氏に近いと自覚してます。

 ギャンブル好きの私は、若い頃よく後楽園の場外馬券売場でモニター見ながら馬券を買っていましたが、私が見るところギャンブラーには2タイプがあります、情念派と理論派です。

 情念派は気合いと根性で博打を打つタイプです、このタイプは自己破滅型でもあります、例えば3万円握りしめて馬券を買ったが最終レースを前に1万円増えて4万円になっていたとき、ときにこのタイプは驚くことに4万円全額を最終レースに掛けてしまいます、気合いと根性で。

 当然ながら大勝ちすることもありましょうが、帰りの電車賃も事欠くスッテンテン状態にもままなってしまうのです。

 一方理論派は理屈と計画で博打を打つタイプです、このタイプはマージャンも強い人が多いのですが、馬券の買い方などでも理論と計画性を重視します、先ほどの最終レースを前に1万円増えて4万円になっていたケースならば、多くの理論派はその日の「負けなかったこと」を確定するために、最終レースには1万円以内しか掛けないでしょう。

 大勝ちもしないけれど大負けも避ける戦略を取ります。

 与謝野氏は知る人ぞ知る財政再建論者でもありますが、これは私にはとてもよく納得できます、理論派ギャンブラーの鉄則のひとつが「収支の決定的悪化を避ける」つまり「大負けをしない」ことだからです。

 どっちがよいとかではないのですが、与謝野さんは間違いなくゲーム好き・ギャンブル好きであり、でギャンブラーとしては間違いなく理論派なのだと私は独断します。

 では理論派ギャンブラーの最大の欠点は何か。

 場の空気を読んだり場に順応することが苦手なことです。

 なぜか。

 運やカンに頼らず己の理屈を信じるがゆえに、「天の時」「地の利」「人の和」を軽視しがちな傾向にあるからです。

 つまり「空気が読めない」、いや読もうとしない傾向が強いのです。

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 5日付け朝日新聞記事から。

平沼、与謝野氏ら新党結成を延期 党名はひらがな?

2010年4月5日21時26分

 平沼赳夫経済産業相与謝野馨財務相は5日夜、東京都内で新党結成に向け最終協議した。当初予定していた8日の結党は見送り、10日に延期することになった。政策理念をめぐりさらに調整が必要と判断した。

 平沼氏は協議後、記者団に「党首は私になった。ただ、与謝野氏は高校の同級生。彼もこの党を切り盛りして努力していくことで合意している」と語った。新党の政策については、経済政策と財政再建を「車の両輪」とする▽将来的な増税も視野に入れる▽夏の参院選比例区で最低10人程度の擁立をめざすなどの点で一致。結党メンバーは国会議員5人になるという。

 党名については「(候補は)四つくらいある。国民の耳に入りやすい名前がよい、旧態依然の党名は避けよう、今の時代に合っているのはひらがなではないか、と(いう話が出た)」と述べた。

 協議には平沼、与謝野両氏と、5日に自民党に離党届を出した園田博之前幹事長代理のほか、藤井孝男参院議員が出席。また、新党結成を支援する石原慎太郎東京都知事も参加した。

http://www.asahi.com/politics/update/0405/TKY201004050376.html

 平沼氏は協議後、記者団に「党首は私になった。ただ、与謝野氏は高校の同級生。彼もこの党を切り盛りして努力していくことで合意している」と語ったそうですが、これは平沼氏と与謝野氏のリーダーの資質を考えると、まあ賢明な選択だったと思います。

 さて、いまひとつ、政策的になにを目指すのかが国民にわかりづらい平沼・与謝野新党なのですが、党名については「旧態依然の党名は避けよう、今の時代に合っているのはひらがなではないか」(平沼氏)と語っているようです。

 私にはこの老人新党ともいうべき党が、「天の時」を得ているとは到底思えません。

 メンバーも年を取りすぎています。

 それに、この新党の主要メンバーって、ただの旧マージャン仲間、つまりギャンブラー仲間ですもの。

 平沼・与謝野・園田の面々は、若手の頃、国会の暇をみてはマージャン卓を囲んでいた仲間でありました。

 彼らは理論派ギャンブラー与謝野氏を筆頭に「てつマン」(徹夜マージャンの俗称)も辞さない猛者達でありました。

 つまり元「てつマン」党なのです、この人達。

 ま、新党創立自体がギャンブルみたいなものですから、それでも彼らの目は爛々としていることでしょうが。

 与謝野氏の最大の欠点は「天の時」「地の利」「人の和」を生かしきれないことだと思います。



(木走まさみず)