木走日記

場末の時事評論

「たちあがれ日本」と「それいけ!アンパンマン」の知的比較検証〜残念な落とし穴

 7日付け産経新聞電子版速報記事から。

平沼新党、名称は「たちあがれ日本」 石原都知事命名

2010年4月7日13時50分

 平沼赳夫経済産業相与謝野馨財務相らが結成する新党の名称が「たちあがれ日本(にっぽん)」となることがわかった。代表となる予定の平沼氏が7日、記者団に明らかにした。石原慎太郎東京都知事命名という。

 平沼氏は新党への参加について、自民党参院議員の中山恭子・元拉致問題担当首相補佐官中川義雄・元内閣府副大臣に打診したと述べ、中川氏については「賛同してくれていると思う」と説明。中川氏は同日午後、自民党に離党届を提出し、記者団に「平沼先生と一緒にやっていきたい」と述べた。

 ただ、中山氏は7日、新党参加について記者団に「全く考えていません」と語った。参加が取りざたされていた鴻池祥肇元防災担当相も同日、「平沼さんと一緒に進もうと思ったが、理念や国家観が違う方と一緒にできない」と記者団に述べ、平沼氏に不参加の考えを伝えたことを明らかにした。与謝野氏が郵政民営化を進め、平沼氏の保守主義とも距離を置くことなどが理由とみられる。

http://www.asahi.com/politics/update/0407/TKY201004070145.html

 平沼・与謝野新党の名称が「たちあがれ日本(にっぽん)」となったそうです、石原都知事命名といいます。

 うむ、語呂は良くないですがなかなか保守らしい命名です。

 悩ましいのはこの党名の英語表記ですな"Stand Up ..Japan.."あたりかな、略称SUJですか。

 しかしな、かつて日本の政党で名称に「立ち上がれ」などと動詞をしかも命令文を組み込んだケースってあったでしょうか、ちゃんと調べてはいないけど、おそらく本邦初の斬新な命名でしょうね。

 そして命名者の石原都知事ですが、さすが文学者にして小説家ですね、なみのセンスではこうは付けれません。

 「たちあがれ日本」には、石原氏自ら原案参加した昨年公開の映画「宇宙戦艦ヤマト 復活編」の「よみがえれヤマト」的なキャッチがテクとして使用されているのは明らかです。

 アニメではキャッチやタイトルによくこの「命令文+ヒーロー名」という体言止めの手法が成功を見ています。

 「燃え上がれガンダム」とか「すすめパイレーツ」とかあげれば枚挙にいとまがないぐらいあります。

 この手法の代表的国民的人気アニメを私が選ぶとすればもうこの作品しかありません。

それいけ!アンパンマン

それいけ!アンパンマン
出典: フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』

それいけ!アンパンマン』は1988年10月3日(関東地区)から日本テレビ系列で放送されているやなせたかしの絵本『アンパンマン』を原作としたテレビアニメ。2008年10月3日の放送(同)で20周年を迎え、長寿番組となった。さらに、2009年8月28日の放送(同)でレギュラー放送1000回を迎えた。2010年4月2日の放送(同)よりハイビジョン制作。
2009年6月24日に、「最もキャラクターの多いアニメシリーズ」としてギネス世界記録に認定された。

(後略)

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%9D%E3%82%8C%E3%81%84%E3%81%91!%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%91%E3%83%B3%E3%83%9E%E3%83%B3

 ここで読者に注目していただきたいのは、やなせたかし氏の原作の絵本のタイトルは『アンパンマン』だけなのに、アニメ化にあたって「それいけ!」部分をタイトルに追加していることです。

 これはいかなる理由からなのか、考えて見ますとおそらく『アンパンマン』だけだと、原作を知らない多くの視聴者にそれは何者なんだと理解不能なのですが、「それいけ!」とか「戦え!」とか「飛び出せ!」とかつけることによって、視聴者にタイトルである程度どんなアニメかを連想させる効果が期待されます。

 「それいけ」から幼児向け冒険活劇物を、「戦え」なら勧善懲悪的ヒーロー物を、連想するといった按配ですね。

 ・・・

 まあいずれにしろ、語呂感の良さもありたくさんのアニメがこの手法・「命令文+ヒーロー名」で、キャッチやタイトルを採用して成功してきました。

 つまり小説家でもある石原都知事のつけた「たちあがれ日本」は見事に、日本アニメに多くの成功例を残したタイトルテクを斬新にも政党に使用したわけです。

 すばらしいです。

 ・・・

 ふう。

 しかしながら実に惜しいのはここにひとつだけ残念な落とし穴がありました。

それいけ!アンパンマン」にしろ「燃え上がれガンダム」にしろ「よみがえれヤマト」にしろ、命令されてがんばらなきゃいけないのはアニメのヒーローたちであり、視聴者はコタツでミカン食べながらTVの中で一生懸命がんばるヒーロー達を見ているだけでがんばる必要はありませんでしたが、「たちあがれ日本」はがんばらなければならないのは日本なので国民は命令を受けている側となります。

 これではコタツでミカン食べながらTVを眺めているのとはまったく違う緊張した空気を国民側に醸し出してしまいます。

 そうなると、「それいけ!ヒラヌマン」とか「燃え上がれヨサノン」とかのほうが、がんばるのは新党の政治家の先生のほうで、国民は安心して投票できる感が出てきますよね。

 政党名としては、親しみをもてそうで、でも少し窮屈な命令されちゃってる感が出てしまっているのが残念な落とし穴なんであります。

 ・・・

 今回は「たちあがれ日本」と「それいけ!アンパンマン」の違いについてマジメに考察してみました。

 政党名をアニメタイトル化した斬新テクの平沼・与謝野保守新党なのでありますが、私が考えるに残念な落とし穴があるようです。


 でも、最後に「たちあがれ日本」の健闘を祈り、エールを送ります。
 
 それいけ!「たちあがれ日本」!!(←すごくエールしづらいです、この党名orz)



(木走まさみず)