ハトミミ・ドットコム〜民主党政権のこの無邪気さが少し怖い
2日付けの朝日新聞記事から。
耳大きくして行政のムダ聴きます ハトミミ・ドットコム
2009年12月2日1時13分
鳩山内閣は1日、インターネットや郵送で、行政の無駄を国民や国家公務員から直接聞き取るための仕組みを新設することを閣議決定した。ハトミミ・ドットコムと名付け知名度アップのためイラストも作成した。国民には来年1月、国家公務員には2日から受け付けを始める。受け付けテーマは、「真に国民のために取り組むべき課題や政策の提案」や行政の無駄の指摘など。国家公務員には不正経理など不適切な事務処理も指摘するよう求める。「忌憚(きたん)のない指摘」を促すため、閣僚ら任命権者が降格処分や懲戒処分など不利益な扱いをしないことも決めた。
http://www.asahi.com/politics/update/1201/TKY200912010449.html
「インターネットや郵送で、行政の無駄を国民や国家公務員から直接聞き取るための仕組み」、ハトミミ・ドットコムを新設することが閣議で決定されました。
記事にもありますが、ハトミミ・ドットコムの受け付けテーマは、国民からの建設的政策提案と、主に国家公務員を対象とした不正経理など不適切な事務処理に対する「忌憚(きたん)のない指摘」であります。
おそらくは後者が狙いのシステムであると推測されます。
この朝日記事では告発を促すために「閣僚ら任命権者が降格処分や懲戒処分など不利益な扱いをしない」とありますが、3日付け産経記事では告発者も含む刑事告発あり得るとの方針が決定されたようです。
「ハトミミ」情報で刑事告発も 行政刷新会議
2009.12.3 01:30
政府の行政刷新会議は2日、行政の無駄や不正情報を官僚から集めるため設置した受け付け窓口「ハトミミ.com」で得た情報をもとに、対象者の悪質性が高い場合には刑事告発を行う方針を決めた。密告者の実名は、原則として関係省庁の政務三役に報告する。窓口を所管する仙谷由人行政刷新担当相は事業仕分けに続き、漫然と不正が見逃されている実態を“密告”窓口を通じて一掃したい考えだ。
刷新会議関係者によると、官僚から受け付けた情報はまず、新たに任命される「情報管理者」のみが管理し、信憑(しんぴょう)性や悪質性について精査する。
この際、刑法に抵触する事実が確認された場合、刑事訴訟法に基づき刷新会議が刑事告発を行う。情報提供者自身が刑法に触れている場合も告発されることになる。このため、「告発が面倒で尻込みしてしまうケースも出る。悪質な無駄遣いほどそうだろう」(政府関係者)との懸念もある。
仙谷氏は当初、官僚の不正行為が発覚しても「誰かをトカゲのしっぽ切りし、快哉(かいさい)を叫んでも改革につながらない」と告発に慎重姿勢を示していたが、是々非々で判断する方針に転換した。
また、「情報管理者」が情報の事実関係を確認する必要性があると判断した場合は、関係省庁の閣僚ら政務三役に報告。この際、通報者が実名のときは実名も政務三役に伝える。政務三役は情報をもとに、現地調査や関係者からのヒアリングを行う。
政府は1日の閣議で、窓口に告発した官僚に対し、降格や懲戒処分などの不利益な取り扱いを行わないことを決定した。ただ、政務三役に実名が知られれば、「省庁幹部にも実名が漏れ、通報者が省内に居づらくなる」(総務省幹部)という可能性は否定できない。http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/091203/stt0912030130000-n1.htm
「官僚から受け付けた情報はまず、新たに任命される「情報管理者」のみが管理し、信憑(しんぴょう)性や悪質性について精査する」(刷新会議関係者)とのことですが、「「情報管理者」が情報の事実関係を確認する必要性があると判断した場合は、関係省庁の閣僚ら政務三役に報告。この際、通報者が実名のときは実名も政務三役に伝える。政務三役は情報をもとに、現地調査や関係者からのヒアリングを行う」って、これでは通報者の実名がダダ漏れになる可能性が大であります。
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ふう。
ハトミミ・ドットコムですか。
まず制度を私物化しているような誤解を与えかねないそのネーミングセンスのひどさに少々うんざりです。
鳩山さんが辞任したらどうするんでしょうか、このドメイン名。
仙谷さんの事業仕分け「文化大革命」比喩に匹敵するひどさであります。
ネーミングのセンスの無さはともかく、より本質的にこれは民主党政権の危うさを象徴するようなトピックではあります。
民主党版ネット密告制度とも受け取れかねない、その運用を慎重に考慮しないとこれは考えてみるとかなり危険なシステムに成る可能性のあるものを、いとも簡単に閣議決定してしまうその軽さ。
私は、国民のため、自民党政治ではできなかった新機軸を、といった単純な動機で、いとも簡単に新制度を閣議決定してしまう民主党政権のこの無邪気さがちょっと恐ろしいです。
報道からは十分に新しいシステムの機能の検証を行った形跡は見あたりません。
通報者の実名がダダ漏れになるおそれがあるなど、情報セキュリティの観点からは欠陥だらけなシステムなように思えてしまいます。
仮に情報セキュリティの運用が確立したとしてもです、このような下手をすれば「密告システム」の印象をもたれる制度に「ハトミミ・ドットコム」などの安易な名前を付けて、国民世論がどう評価するか、事前マーケティングを試行したとも思えません。
「行政の無駄」を省くためにはこのぐらい許されるだろう、むしろ国民は評価してくれるのではないか、といった甘えがそこにはないでしょうか。
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ハトミミ・ドットコム、実際の運用の前に、民主党政府として、徹底的な情報管理体制の検証・そして運用手順の精査を求めます。
民主党政権のこの無邪気さが少し怖いです。
(木走まさみず)