「事業仕分け」改善案〜ひとつのシステムとして進化させよう
今回の民主党の行った事業仕分けについて、メディアやネット上で賛否両論その評価が割れていますが、当ブログとして現段階で総括しておきたいです。
私は今回の事業仕分けは手法として欠陥が少なくなかったしそのジャッジメント・判断は適切さにかけているものも少なからずあったと考えています、つまり事業仕分け作業の精度そのものがお粗末な面があったことは否定できないと思っています。
またそもそも事業仕分けの土俵に載った事業は誰が選択したのか、もちろん財務省主計局なわけですが、ここからして根本的な問題があるとも考えています。
さらに特に今後の展開は重要視しています、「政治的判断」とやらでいくつかの事業で予算復活がなされることがメディアの報道等で言われていますが、そこのところの議論を国民にオープンに示すことができなければ、事業仕訳だけガラス張りにしてもその価値は半減です。
事業仕分けだけ国民に公開しても、前段階での仕分け対象事業の抽出作業(まあこれはすでに財務省主計局主導で終わってしまっており今回に関しては後の祭りなわけですが)、後段階での政治判断を含めた実際の予算の確定作業が密室のままであっては意味がありません。
以上多くの問題点がありながらですが、国民の前で予算を公開して討論することの効用は強く感じた次第です。
やり方を徹底的に改良・改善していけば、この国の政治と行政において政治家・官僚・国民、登場するすべての意識を高めるシステムにすることができるのではないか、と考えています。
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今回の事業仕分けに関して特に批判派からですが、そもそもが何も知らない素人が専門分野の予算を仕分けることができるはずがない、という議論もよく見かけます。
TV報道等で民主党議員等で構成される仕分け人達の高圧的な態度も相俟って「何の権限・知識を持って素人が高度な科学技術予算に意見できるのか」といった批判もよくされてます。
それらに意見の中にはスパコンの議論などで技術的に大いに同意する論説もありました、がしかし私は、そのレベルの真摯な批判でこの貴重な「事業仕分け」という産声を上げたばかりのシステムを終わらせてはもったいないと思います。
例えばですが、私の本業のIT関連の話からこの問題に視点を変えた建設的提案をしてみたいです。
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ソフトウエアエンジニアがコンピュータシステムをテストするときの話であります。
一般にコンピュータシステムはたくさんのプログラム・モジュールから構成されています。
でコンピュータシステムをテストする場合、一般的には各プログラムをそれぞれ単体でテストするUT(UNIT TESTING)・単体テストから始めます。
このUTフェーズでは、各単体テストはそのプログラムをコーディングしたプログラマが担当するのが普通です。
UTにおいてはプログラム内部ロジックのすべてのコーディング行を総なめにするようにきめ細かなテストが要求されますから、これは担当プログラマがもっともテスターとして適任であるわけです。
全体のシステムからすればまさにひとつのプログラムは部品(UNIT)なわけですが、このように単体テストではプログラム内部のロジックを完全に押さえたテストをするので、ホワイトボックス(白い箱)テストと呼ばれています。
さて、各々の部品テストが完了したならば、コンピュータシステム全体を結合的にテストするIT(INTEGRATION TESTING)・結合テストを行います。
どのようなシステムであれ個々の部品に不具合がなくても組み合わせてみたら全体としてはおかしな動きを見せることはよくありますから、このIT・結合テストのフェーズは大変重要になります。
単体テスト・UTにおいては各プログラムはホワイトボックステストにより徹底的なきめ細かなテストが要求されましたが、結合テストにおいては、視点が逆転します、各々のプログラムの内部ロジックがどう構築されているかは主眼ではありません、つまり各プログラム内部はテスターにとって意味不明の黒い箱でかまわないブラックボックステストが実行されます。
技術者視点の単体テスト・UTに対して、結合テスト・ITにおいては、ユーザー視点で徹底的なブラックボックステストが実施されるのです。
こういう入力がされればこういう出力がされなければならない、そのような利用者視点でのきめ細かなシステムの試験が実施されます。
この段階の試験では従って各担当プログラマももちろん試験実施に参加しますが、上級SEや必要ならばユーザー部門の参加のもとで行われるのが一般的です、もちろん求められるのは専門のプログラミング知識などではなく、このシステムの目的と運用をよく知る業務知識であります。
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このようにコンピュータシステムを試験する手法は、UT・単体テストでは技術者視点でのホワイトボックステストを繰り返し、IT結合テストではユーザー視点でのブラックボックス試験を徹底してシステムの不具合をあぶり出していくのが一般的であります。
まあどんなにシステムをテストしても実は情けないことに「バグ(不具合)があったことは証明できる」のですが、「もうバグ(不具合)は完全になくなった」ことは永遠に数学的証明はできません、そこでエンジニア達は「信頼度成長曲線」なる統計的技術を駆使します、試験の時間経過とバグ発生件数・対応件数をグラフ化して、ほらもうこんなに試験してもバグが出ないからこのへんでいいよね、という形で納得するわけです。
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さて私の提案はこのITシステムの検証で用いられているこのホワイトボックステストとブラックボックステストの2段階でシステムを検証する概念を「事業仕分け」にも取り入れたらどうだろうか、というものです。
まずすべての予算事業を土俵にのせ、徹底した専門的なホワイトボックステストで内容を洗い出します。
このテストには専門知識や行政知識などが不可欠ですから、政治家だけでなく、大学・研究機関の協力を得て専門家を投入します。
また行政側も総力を結集します。組織全体の効率性のチェックには会計検査院、総務省行政評価局を当て、定員や組織構成の適性度には総務省行政管理局を、給与水準や待遇が適切かどうかチェックには人事院や内閣人事局を担当させます。
それぞれの部品(ユニット)に最も適する専門のプロ、行政のプロを配置して、ひとつひとつの予算を徹底的にホワイトボックステストをするのです。
この段階で予算等が浮き彫りになった問題事業は政治家主導の元に行政的指導を行います。
こうして各予算を例外なく単体でホワイトボックステストを行った上で、次のステップである仕分け人等による事業仕分けに移ります。
ここでは国民視点(ユーザー視点)でかまわない、その事業の妥当性をブラックボックステストで検証していきます。
それでももちろん仕分け人もその事業分野を学習しておくことは大前提ですが、ここは専門家ではなく国家・国民視線でのその事業の評価をするフェーズとします。
ここの段階で問題があると見なされた事業は、その後最終的にまさに政治家判断となるわけですが、ここまでのその判断過程をガラス張りにしておくことが肝要です。
ここまでのシステムがうまく機能していれば、最終段階ではその事業に対する、専門家・行政からの意見、仕分け人の意見、事業当事者の言い分、これらがすっきり整理されて政権にも国民にも提示されているはずです。
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私は参考までに建設的提案を示しましたが勿論この私案に何のこだわりもありません。
だがしかし、せっかく産声を上げた「事業仕分け」というシステムを鳩山政権の国民人気取りエポックに成り下げてはもったいないです。
英知を結集して「事業仕分け」をこの国の優れた政治制度・システムに科学的に進化させるべきではないでしょうか。
真摯な態度で関係者が改善を重ねれば、国民の政治意識を高める有効な手段になるのではないでしょうか。
(木走まさみず)