木走日記

場末の時事評論

邦夫クンと恒雄クンの暴走劇〜これじゃ「吉良上野助」だらけの忠臣蔵だっての(苦笑)

●政界の暴走機関車トーマスと化した鳩山邦夫

 23日付け産経新聞記事から。

止まらない暴走! 鳩山邦夫総務相「このままでは自民党は死ぬ
2009.6.23 22:07

 日本郵政西川善文社長の続投が決まり、半年間にわたる混乱にピリオドが打たれたかにみえるが、この問題で更迭された鳩山邦夫総務相の“暴走”が止まらない。公然と麻生太郎首相の批判を始めた鳩山氏に対し、政府・与党幹部は猛反発するが、同調の動きは後を絶たない。「自民党はこのままでは死ぬ」と断言する鳩山氏。「ついにポスト麻生を狙い出した」との見方も−。
 「首相は非常によい方だが、致命的な判断ミスをした。経営を一新しなければ、国民が受け入れないのは当たり前だ」
 23日朝、鳩山氏は自宅前で報道陣の取材に応じ、西川社長続投を決めた政府の対応を激しく批判。日本郵政役員の報酬カットの方針も「国民を愚弄(ぐろう)する目くらましだ」と切って捨てた。
 これに対し、温厚な河村建夫官房長官も堪忍袋の緒が切れたようだ。23日の記者会見で「鳩山前総務相には業務改善命令にきちんと対応する責任があった。その責任を果たさなかったことが辞任の要因となった」と述べ、鳩山氏を批判。「民営化会社の人事の判断は軽くない。決して感情論で片づけられる問題ではない」と断じた。
 安倍晋三元首相も「総務相が自分の首と西川社長の首を天秤(てんびん)にかけて首相に決断を迫るのはおかしい」。自民党菅義偉選対副委員長は「鳩山氏は正義が通るとか通らないとか言っているが、何か違った意図があるんじゃないか」と首をかしげた。

 鳩山氏が強気の背景には世論の支持がある。産経新聞とFNNの合同世論調査でも「西川社長は続投すべきでない」との回答が75・0%に上った。
 自民党内に鳩山氏に同調する動きもある。笹川堯総務会長は「鳩山氏は責任がないのに総務相を辞職した。西川氏は減給する前に辞めたほうがいい」。谷川秀善参院幹事長は「西川氏の続投は国民の目からわかりにくい」と述べた。
 では、鳩山氏の狙いは何なのか。「自民党離党や新党結成は念頭にないが、未来永劫(えいごう)ないわけではない」「政治の流れ次第でとるべき行動は決める」「自民党の出直し的な改革のため若手議員に決起してほしい」−。鳩山氏は意味深長な発言を繰り返し、若手議員らとの会合を繰り返す。
 23日夜も都内の居酒屋で行われた若手議員7人の会合に招かれ、「自民党はこのままでは死ぬ。お前たちが爆発しないと自民党は変わらないゾ!」とゲキを飛ばした。
 鳩山氏が離党しないのは、かつて離党した民主党と今さら連携できないという事情や、兄・鳩山由紀夫民主党代表との対抗意識がある。加えて鳩山氏は4年前の衆院選で福岡6区に国替えしたばかりで、選挙基盤が盤石ではないことも離党に踏み切れない要因となっているようだ。
 このため、自民党では「鳩山氏はポスト麻生の総裁選出馬を狙っているのでは」(閣僚経験者)との見方が強い。
 「暴れたくなる心を一生懸命抑えている。冷静に冷静に自らを戒めて…」。鳩山氏は23日、記者団の前でこう述べ、なぜか高笑いした。(酒井充)

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090623/plc0906232211021-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090623/plc0906232211021-n2.htm

 糸の切れた凧(たこ)といいましょうか、政権政党のガバナンスの劣化もここに極まれりとでも申しましょうか、日本郵政西川善文社長の続投が決まっても、この問題で更迭された鳩山邦夫総務相の“暴走”が止まりません。

 日本郵政役員の報酬カットの方針も「国民を愚弄(ぐろう)する目くらましだ」と切って捨て、若手相手に「自民党はこのままでは死ぬ。お前たちが爆発しないと自民党は変わらないゾ!」とゲキを飛ばす鳩山邦夫氏ですが、この産経記事にもありますが、氏の暴走・暴言の背景には世論の支持があるのでしょう、「産経新聞とFNNの合同世論調査でも「西川社長は続投すべきでない」との回答が75・0%に上った」わけであり、7割を越す国民は西川社長の続投を快くは思っていないわけです。

 やたら「正義」を振り回す鳩山氏でありますが、最近地方の講演で自らを「忠臣蔵」の浅野内匠頭(あさのたくみのかみ)に喩えて自らを名誉を守り切腹をした忠義の人となぞらえている節がありますが、自己陶酔もほどほどにしていただきたいのは、実際の浅野内匠頭は有名な辞世の句「風さそふ 花よりもなお われはまた 春の名残を いかにとかせむ」と無念を歌い、静かに死して沈黙を守ったのですが、現在の内匠頭こと鳩山邦夫は、かしましいことはなはだしく、政界の暴走機関車トーマスと化しているのであります。

 ・・・

 で、この忠臣蔵のたとえ話で興味深いのは鳩山氏が「浅野内匠頭」ならば、日本郵政西川善文社長がさしずめ憎き「吉良上野助(きらこうずけのすけ)」となるのでしょうが、忠義を守り主君の仇を討つ主役の「大石内蔵助(おおいしくらのすけ)」は、じゃあ誰なんだという当然の疑問があるわけですが、鳩山邦夫氏自身が講演等で語っているところによれば「さる大新聞の社長」これすなわち、ナベツネこと渡辺恒雄読売新聞主筆であるそうな。

 たしかに、政界の暴走機関車トーマスと化した鳩山氏を援護するナベツネ率いる読売新聞ですが、その社説もまさに”暴走”ぎみなのは事実であります。

 やれやれであります。

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●メディア界の暴走機関車トーマスと化したナベツネ読売

 政界の暴走機関車にせっせと燃料を補給する、世界一の発行部数を誇る大読売新聞の、やはりとどまることを知らない”暴走”ぎみの過熱報道をその一連の社説にて検証しておきましょう。

 まず鳩山更迭になった翌13日の社説では、「日本郵政は体制を一新せよ」と、麻生首相に西川社長の辞任を強く迫ります。

鳩山総務相更迭 日本郵政は体制を一新せよ(6月13日付・読売社説)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20090612-OYT1T01025.htm

 社説の結語から。

 こうした不祥事についても、西川社長以下の現経営陣の責任は極めて重い。

 今回、事態がここまでこじれたのは、首相が指導力を発揮せず、土壇場まで鳩山氏と西川社長の対立を放置したためだ。

 首相は、西川社長の責任問題について、自ら明確な判断を示す必要がある。

 続いて読売新聞の緊急世論調査で、麻生内閣の支持率が22・9%に下落した翌17日には、内閣支持率下落は日本郵政人事で誤断したツケだと麻生政権を突き放します。

内閣支持率下落 日本郵政人事で誤断したツケ(6月17日付・読売社説)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20090616-OYT1T01304.htm

 社説の結語から。

 なぜ、国民の共有財産といえる施設が二束三文で売られようとしたのか。現体制のままで、日本郵政は、国民の信頼を回復することができるのか。

 西川社長には、何よりも、これに明確に答える責任がある。

 麻生首相は、西川社長の処遇に関し、総務省の業務改善命令に対する日本郵政の回答に基づいて、最終判断すると言ってきた。きちんと吟味して、この問題に決着をつけねばならない。

 で、麻生首相と鳩山民主党代表による2度目の党首討論があったこの日の翌日18日は、連続して「首相は西川社長の経営責任に明確なけじめをつけるべき」とせまります。

党首討論 首相の「郵政」弁明は苦しい(6月18日付・読売社説)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20090617-OYT1T01108.htm

 社説から抜粋。

 鳩山代表は、「民主党が政権を取れば社長を交代させる」と断言し、首相に社長更迭を迫った。

 これに対する首相の弁明は、いかにも苦しいものだった。

 「民間に対する政府の人事介入は慎重であるべきだ」と従来の見解を繰り返し、前総務相だけを更迭したのも、首相の人事権が及ぶのは閣僚で、日本郵政には直接及ばないから、と説明した

 日本郵政は、政府が全株式を保有する「国有企業」である。法律にも人事の認可権を総務相が持つと明記されている。

 業務改善命令に対する対応が不十分なら、認可しなければよい。それは「介入」どころか、行政の「責務」であろう。首相は西川社長の経営責任に明確なけじめをつけるべきだ。

 いやはや党首討論においても「首相の弁明は、いかにも苦しいもの」とし「首相は西川社長の経営責任に明確なけじめをつけるべき」としつこく迫る読売社説なのであります。

 そして、昨日(23日)西川社長続投が正式に決定したの受けた今日(24日)の社説では、「こんな決着で、国民の多くは果たして納得するだろうか」という辛辣な書き出しで始まります。

 全文掲載。

西川社長続投 理解得られぬ甘い「けじめ」(6月24日付・読売社説)

こんな決着で、国民の多くは果たして納得するだろうか。

 日本郵政西川善文社長の続投が、事実上、決まった。

 佐藤総務相が22日、西川社長から本人を含む役員5人の報酬を自主返上する社内処分の報告を受けて続投を認め、麻生首相総務相の判断を了承したという。

 日本郵政をめぐる最大の疑問は「かんぽの宿」の売却問題だ。

 2400億円もかけて整備した70施設を日本郵政はなぜ109億円の安値で売ろうとしたのか。売却先を選ぶ過程の記録が欠落するなど、民間では考えられない杜撰(ずさん)な手続きがまかり通った経緯も詳しく知りたい。

 総務省は業務改善命令でこうした疑問への説明を求め、24日にも日本郵政が最終報告する予定だった。しかし、総務相は概要の説明を聞いただけで続投を認めた。

 数々の疑問は、まだ解消されていない。混乱の長期化は得策ではないとみて、幕引きを急いだ印象がぬぐえない。

 経営陣に対する社内処分にも問題が多い。

 西川社長は、自身が頭取を務めた三井住友銀行から連れてきた幹部たちを「速やかに辞めさせる」と総務相に約束した。一方で、社長自らは報酬の30%を3か月間、自主返上するだけで済ませるというのでは、甘過ぎるだろう。

 自民党からも、笹川総務会長が「(報酬返上で)自分の責任を認めたのなら辞めた方がよい」と述べるなど、疑問を呈する声が出ている。野党各党もこの問題の集中審議を要求するなど、批判は強まる一方だ。

 やはり西川社長は、自発的に辞任するのが筋だろう。

 日本郵政が示した改善策も、実効性に疑問がある。

 経営への監視を強めるため、西川社長の上に会長を置き、新設する経営諮問会議の議長を兼任させるという。だが、会長は現在の社外取締役から充てる案だ。顔ぶれが変わらぬ「内輪同士」で、チェック機能は強まるだろうか。

 西川社長の続投を決めた最終責任者は麻生首相である。

 一方で首相は、鳩山邦夫・前総務相を「事態を混乱させた」として更迭した。著しくバランスを欠く対応だ。首相は数か月前、社長交代を前提に後継候補のリストを鳩山氏に渡していた。事態を混乱させたのは、心変わりした首相自身ではないのか。

 首相に対する批判が高まるのは避けられないだろう。

(2009年6月24日01時36分 読売新聞)

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20090624-OYT1T00043.htm

 うーん、「やはり西川社長は、自発的に辞任するのが筋」であるとし、「一方で首相は、鳩山邦夫・前総務相を「事態を混乱させた」として更迭した」のは「著しくバランスを欠く対応」なのであり、「事態を混乱させたのは、心変わりした首相自身ではないのか」とし、結語は「首相に対する批判が高まるのは避けられないだろう」と断じています。

 いかがでしょうか、鳩山更迭から過去10日余りで、4本の社説を立て麻生批判・鳩山養護を繰り返した、大読売の報道加熱ぶりですが、まさに社説の暴走化といっても過言じゃないのであります。

 メディア界の暴走機関車トーマスと化したナベツネ読売であります。

 ・・・



●邦夫クンと恒雄クンの暴走劇〜これじゃ「吉良上野助」だらけの忠臣蔵だっての(苦笑)

 どうなんでしょう、まさに、忠義を守り「浅野内匠頭」の仇を討つ「大石内蔵助(おおいしくらのすけ)」ばりの、鳩山更迭を受けてのナベツネ読売の麻生政権批判社説の連発なのであります。

 しかしなあ、鳩山邦夫氏が「浅野内匠頭」で、日本郵政西川善文社長が「吉良上野助」で、ナベツネこと渡辺恒雄読売新聞主筆が「大石内蔵助(おおいしくらのすけ)」ですか、なんか失礼ながら悪代官面(づら)が並んでいて、この配役の「忠臣蔵」はちょっとみたい気がしないのであります。

 正直、これじゃ「吉良上野助」だらけの忠臣蔵じゃないかと苦笑せずおれない配役であります。

 私も世論同様、西川氏は辞任すべき派なのでありますが、この邦夫クンと恒雄クンの暴走劇ばかりは、うーん、応援しづらいなあ。

 やれやれ。

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(木走まさみず)



<関連テキスト>
■2009-06-16 無垢な世論と胡散臭い読売を味方にした鳩山邦夫氏は手強いぞ

http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20090616