木走日記

場末の時事評論

中川記者会見がはからずして世界に日本の最悪の経済状況を知らしめた

 朝日新聞電子版速報記事から。

中川財務相が辞意表明 予算案と関連法案が衆院通過後
2009年2月17日12時47分

 主要7カ国財務相中央銀行総裁会議G7)後にもうろうとした状態で記者会見した中川財務・金融相は17日、混乱を招いた責任を取り、09年度予算案と関連法案が衆院で可決した後、辞任する意向を表明した。

 中川氏は16日、麻生首相との会談で一度は留任を言い渡されたが、民主党参院への問責決議案提出を決め、麻生首相任命責任も問われるなか、辞任するのが適当と判断したとみられる。

http://www.asahi.com/politics/update/0217/TKY200902170149.html

 例のG7もうろう記者会見の責任を取り、早くも辞任する意向を表明した中川財務相さんなのであります。

 うーん、やむをえないでしょうな、野党は問責決議案を午後にでも提出する構えだったし、自民党内からも批判が少なからずあがっており、このままでは麻生首相任命責任も問われるのは必至であり、中川さんが大臣に居残ることは政局の混乱に拍車をかけてしまいかねない状況であったわけです。

 国会やメディアでは、風邪薬を多めに飲んだためという中川さんの釈明を問題視していますが、不肖・木走としてはあまり関心はありません。

 彼が世界が注目するG7の記者会見場でもうろうとした状態になったのが、ワインのせいなのか、それとも風邪薬のせいなのか、あるいはその両者を同時服用してしまったせいなのか、原因などどうでもよろしいのです。

 問題だとすれば、あのような世界中の誰が見ても「酩酊(めいてい)」状態と見受けられる様(ざま)を、世界大2位の経済大国である日本の財務大臣が、それこそ世界中のメディアにその醜態を晒してしまった事実であり、つけたせば、理由はどうあれ大臣本人の自己管理能力の欠如と、周辺スタッフのリスク管理能力の欠如を通じて、これでもかというぐらいの説得力でもって日本政府の管理能力のおそまつさを世界中に知らしめたことであります。

 今回の彼のしでかした騒動はすでに世界中のメディアにおもしろおかしく取り上げられており、口の悪い評論家などは「国辱(こくじょく)」などという言葉を使っているようですが、しかしながら、海外のメディアをよく観察して見ると、確かに呆れられた記事も多いながら、そんな否定的じゃない効用も少しばかり見受けられるのです。

 いわく、ナカガワショウイチには同情すべきだ、と。

 たとえば、17日付けの英タイムス紙のデビッド・ウィトン記者の記事。

From The TimesFebruary 17, 2009

There's a need for economy in all things
David Wighton: Business Editor's commentary
http://business.timesonline.co.uk/tol/business/columnists/article5748874.ece

 ネットで見る限り日本ではまだ紹介されていないようですが、この記事なんて中川氏に対する同情と愛に満ちています。

 記事全文をご紹介。

You have to feel some sympathy for Shoichi Nakagawa. If you were the Japanese Finance Minister and knew the dire state of your economy you too might need the odd snifter. (Mr Nakagawa blamed his shambolic performance at the G7 meeting in Rome on cold medicine, which makes you wonder what they put in Japanese Night Nurse.)

 あなたは中川昭一への同情を禁じてはならないのだ。もしあなたが日本の財務大臣であり、あなたの国の経済の恐ろしい状態を知っているなら、あなただってアルコールグラスを必要とするだろう。 (中川氏はローマでのG7ミーティングで彼の醜態を風邪薬のせいにしたが、いったい日本の看護士はそれに何を入れたのかあなたは関心を持つことだろうけど)

A few hours after Mr Nakagawa's tired and emotional press conference, it was revealed that the Japanese economy shrank by 3.3 per cent in three months to December. That is an annualised rate of 12.7 per cent, the sharpest drop since the oil crisis of the early 1970s.

 中川氏の疲労困憊(こんぱい)の記者会見の数時間後、日本経済が12月の四半期で3.3パーセント縮小したのが明らかにされた。1970年代前半の石油危機以来、それは年間レートにして12.7パーセントという最も急激な低下である。

The figures show that while Japan was not badly affected by the first leg of the credit crisis -- its banks were relatively uncontaminated by toxic US mortgage assets - the resulting global slowdown has hit it harder than most other countries. As a manufacturer of upmarket consumer durables and capital goods, Japan benefited from the credit-fuelled boom in western spending in the past few years.

 日本は金融恐慌の最初の頃はそれほどひどく影響を受けていなかったことを数字は示している--日本の銀行は米国抵当資産の毒に比較的汚染されてはいなかった--が、結果として起こったグローバルな低迷は他のどこの国より強く日本に打撃を与えた。 高級な耐久消費財と資本財のメーカーとして、日本は過去数年間、クレジットであおられたブームの利益を得てきた。

But now that credit has evaporated and both consumers and companies are pulling in their horns, Japanese exports have crashed.

 しかし今、クレジットは消滅し、消費者と会社の両者は角を突きつけあい、日本の輸出はクラッシュした。

In the three months to December, exports were down 13.9 per cent on the previous quarter.

 12月の四半期で、輸出は前の四半期に比べ13.9パーセント下がってしまった。

Domestic consumption has also weakened, dropping 0.4 per cent in the quarter, as job losses have mounted.

 また、失業率が上がったのに従って、この四半期に国内の消費はさらに0.4パーセント低下して弱まった。

In spite of the plummeting economy the yen has risen sharply, which puts further pressure on Japan's struggling exporters.

 経済が急降下しているにもかかわらず、円は急上昇し、さらに日本の戦っている輸出業者に追い討ちをかけた。

Luckily, a soaraway currency is one problem Britain does not have. The sagging pound may help to keep Alistair Darling off the bottle.

 さいわいにも、通貨の急上昇はイギリスにはない問題のひとつだ。 弱いポンドが、アリステア・ダーリング(訳者注:英国の財務相)をボトルから遠ざけるのを助けてるのかもしれない。



(訳:木走まさみず)

 ナカガワショウイチには同情すべきなんだ、と。

 日本のこの悲惨な経済状況を見よ、と。

 これじゃナカガワじゃなくたって誰だって酒飲まなきゃ日本の財務大臣なんざつとまらんさ、と。

 ようはこんな感じの記事なわけです。

 ・・・

 うーん。

 結果として、中川氏のもうろう記者会見が図らずして世界の民に日本の世界最悪の経済状況を知らしめたのであります。

 ・・・

 (これって日本にとっていいことかな??? ・・・いいわけないよな(汗))



(木走まさみず)