木走日記

場末の時事評論

「経費」から「収益」が発生する見事な小沢一郎氏の詭弁会計術

小沢一郎代表:資金管理団体に家賃収入…規正法違反の疑い〜毎日新聞記事

 今日(9日)の毎日新聞、紙面一面トップのスクープ記事から。

小沢一郎代表:資金管理団体に家賃収入…規正法違反の疑い

 民主党小沢一郎代表の資金管理団体「陸山(りくざん)会」が、政治資金で購入したマンションをコンサルタント会社や財団法人に貸し、家賃収入を得ていたことが分かった。陸山会は、10件を超える不動産を政治資金で取得していることが問題化したが、「不動産による資産運用」が表面化するのは初めて。政治資金規正法は預金や国債以外の資金運用を禁止しており、総務省は一般論としながら、「家賃収入は法違反の疑いがある」と指摘している。【杉本修作】

 陸山会政治資金収支報告書などによると、陸山会は東京都港区のマンション「プライム赤坂」の一室を所有。ここにコンサルタント会社「エスエー・コンサルティング」が入居。同様に千代田区麹町のマンション「グラン・アクス麹町」に所有する一室に外務省、経済産業省などが所管する財団法人「国際草の根交流センター」が入居する。各部屋の登記簿上の所有名義は小沢氏になっている。

 エスエー社は02年1月から、交流センターは04年10月から入居し、それぞれ毎月7万円と20万円の家賃を陸山会に支払っていた。その総額は06年末までに計約1000万円に上る。エスエー社は9月末ごろ転居し、現在は入居していない。

 政治資金規正法では、政治団体による資金の運用について、預貯金、国債政府保証債券、元本保証のある金融機関への信託以外は認められていない。総務省は「政治資金は国民の浄財。資金で購入した不動産を家賃を取って貸すのは同法が禁止する資産運用にあたる疑いがある」と指摘する。

 ◇「無償こそ問題」…小沢氏の事務所反論

 小沢氏の事務所は「うちとしては、政治資金の運用という認識はない。コンサルタント会社は、小沢氏の政策立案を請け負っている。財団法人は小沢氏が設立にかかわり理事を務めている」と、いずれも小沢氏の政治活動に密接にかかわっていると主張し、「無償で貸す方が問題」と反論している。

 陸山会は総額約10億円で、都内や盛岡市仙台市などにマンション、土地などを購入し、登記簿上は、すべて小沢氏名義になっている。今年1月、これらの不動産を事務所費で購入していることが問題になったが、小沢氏は領収書などを公開した上で、「秘書の住まいとして活用しており、個人資産ではない」と説明。政界引退または死亡後は「後進の支援」や「日米・日中の草の根交流基金」に陸山会の資産を充てると表明している。

 小沢氏の不動産取得問題を受け、今年6月に政治資金規正法が改正され、資金管理団体は取得済みの不動産を除き、新たに土地、建物を所有することが禁止された。

 ◇収益あれば「運用」

 岩井奉信日本大教授(政治学)の話 小沢氏は賃貸を「運用」に当たらないと解釈しているのではないか。しかし、実際に収益が上がっている以上、今回のケースは不動産運用に当たると思う。不動産が個人に帰属するものであれば、収益には税がかかるが、この点でも疑問がある。法律のすき間を縫っているとも受け止められ、今後はあらゆる事態を想定し、先手を打って法改正をする必要がある。

毎日新聞 2007年10月9日 3時00分
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20071009k0000m040105000c.html

 10件を超える不動産を全て所有名義は小沢氏にして政治資金で取得していることが問題化していた小沢氏の政治団体「陸山(りくざん)会」が、なんとマンションをコンサルタント会社や財団法人に貸し、家賃収入を得ていたという毎日のスクープ記事なのであります。

 「政治資金規正法では、政治団体による資金の運用について、預貯金、国債政府保証債券、元本保証のある金融機関への信託以外は認められていない」ことから、総務省は「政治資金は国民の浄財。資金で購入した不動産を家賃を取って貸すのは同法が禁止する資産運用にあたる疑いがある」と指摘しているそうです。

 借り主は、「小沢氏の政策立案を請け負っている」コンサルタント会社「エスエー・コンサルティング」と、「小沢氏が設立にかかわり理事を務めている」外務省、経済産業省などが所管する財団法人「国際草の根交流センター」。

 小沢氏側の言い分では、いずれも小沢氏の政治活動に密接にかかわっていると主張し、「無償で貸す方が問題」と反論しています。

 ・・・

 「無償で貸す方が問題」ですか。

 すごい剛気な論法です。

 詭弁を弄するとはこのことです。

 第三者にマンションを貸したとき「無償」か「有償」かが問われるならば「有償」であるべきであることは当然ですが、いま問われているのはそんな当たり前のことではありません、その「有償」の家賃収入が政治団体が法律で禁止されている「収益」に当たるのではないのかという核心の点です。

 国民の税金も含まれている浄財であるべき政治資金だからこそ原則無税なわけでして、で、そんな政治資金で不動産を購入しかつそれを第三者に貸し家賃収入を得ることは法にふれないのか、倫理的にどうなのか、ということなのです。

 「無償で貸す方が問題」なのではなく、関係の深い民間会社や財団法人に政治団体所有の不動産を貸す行為そのものが問題なのです。

 いくら関係の深いからといって、なぜ民間会社や財団法人が小沢事務所所有の物件を間借りしなければならないのか、国民が納得する合理的理由を明確にしていただきたい。

 特に財団法人のほうはその設立目的・公共性から、いち政治家個人所有のマンションに入っていることは、厳しく問われることになりましょう。

 ・・・

 いずれにしても、実際に家賃収入が発生していて収益が上がっている以上、これは不動産運用に当たることは間違いありませんでしょう。

 会計処理上、家賃収入は間違いなく収益であります。



●「資産」である不動産取得を「経費」である事務所費として処理してきた小沢事務所

 だいたい、そもそも「今年6月に政治資金規正法が改正され、資金管理団体は取得済みの不動産を除き、新たに土地、建物を所有することが禁止された」のも、小沢氏の政治資金のインチキ詭弁資金運用が発端だったのであります。

 小沢氏に関しては、3億6千万円の秘書宿舎建設費を政治資金からやはり小沢氏名義で土地建物を取得していて今年の1月に大問題になっていたのでした。

 その際、小沢氏の言い分は、秘書給与が安いので買い取りにしたのであり人件費のようなモノであり事務所費であると、「資産」取得ではなく「経費」払いだと、民間では考えづらい言い分を主張していました。

 会計のイロハも無視してしまうその暴論を批判した当時の当ブログより。

(前略)

 だいいち、宿舎の建設が「事務所の維持に通常必要とされる」にあてはまると考えにくいと思うが、という記者の質問に対し、「人にかかる経費と考えれば人件費だし、そこは実態判断になる」とか適当なこと言ってましたが、一民間企業経営者として税務署に厳しく毎年会計を洗い出させられている立場から言わせてもらいますが、

 3億6千万円の不動産取得が何で人件費なんだ?(怒

 人件費は「経費」であり不動産は「資産」ですよ、当たり前の会計のイロハも無視してしまうのですか。

 ・・・

 政治にお金が必要なのはよく理解しているつもりです。

 しかし政治資金は税金も投入されている国民の浄財であります。

 最低限の情報開示と当然ですが一般常識を踏まえた国民が理解できるモラルを守った会計処理が求められているのです。

 小沢氏は「秘書の給与が低いから、宿舎を提供してやろうと、(私の自宅の)近所に購入した。(事務所費に)計上するしかない」とたわけたことをぬかしていますが、冗談じゃない、秘書の給与が低いなら、人件費として秘書たちの給与をアップしてあげればいいだけで、なんで小沢氏名義の3億6千万円の不動産取得をしなきゃいけないんですか?

 馬鹿も休み休み言いなさい。

 国民の浄財を、人件費として経費計上するよりも、「秘書の寮」という名目で単に流用可能な不動産を取得して資金プールするという小細工しただけじゃないのですか?

(後略)

■[社会]小沢氏、総務省よ、ふざけるな! 3億6千万円の不動産取得が何で人件費なんだ?(怒 より抜粋
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20070116

 1月に問題が発覚したときは、「資産」である不動産取得を「経費」である事務所費として処理してきた小沢事務所なのです。

 ところが今回は、「経費」である事務所費で取得した不動産で、政治資金規制法で禁止されている家賃「収入」を発生させていたのであります。

 「経費」から「収益」が発生するのです。

 いや、お見事です。

 小沢事務所の「損益計算書」と「貸借対照表」を一度じっくりみてみたいです。

 ・・・

 「経費」から「収益」が発生するとはなんと見事な小沢一郎氏の詭弁会計術なのでしょう。


(木走まさみず)



<関連テキスト>
■[社会]小沢氏、総務省よ、ふざけるな! 3億6千万円の不動産取得が何で人件費なんだ?(怒
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20070116