ちょっと洒落にならないお三方〜朝日新聞の印象操作とブッシュの謝罪受け入れと安倍の外交音痴
２８日付けの朝日新聞朝刊一面トップ記事のタイトルには驚かされました。
私が確認したのは東京本社１４版でありましたが、タイトルはこうです。
記事のリード（導入部分）はこうです。
訪米中の安倍首相は２７日午前（日本時間２７日夜）、ワシントン近郊のキャンプデービッドでブッシュ大統領と会談した。拉致を含む北朝鮮問題について、両国が強い姿勢で臨むことで一致。両首脳は北朝鮮が６者協議における核廃棄に関する合意の履行を遅らせた場合、追加の制裁措置を行う可能性を示唆し、北朝鮮を牽制（けんせい）した。従軍慰安婦問題について安倍首相は「心から申し訳ない」と述べ、大統領は謝罪を受け入れた。
（太字は木走が強調）
おいおい、ちょっと待ってください、これじゃまるで慰安婦問題で安倍首相が「ブッシュ大統領に対して直接謝罪」し、ブッシュ大統領がそれを「受け入れ」てありがたくも暖かく許した、と読み取れてしまいかねません。
で、記事本文における該当箇所はこうです。
当初、議題にはしない予定だった従軍慰安婦問題について、首相は「人間として首相として心から同情し申し訳ない思いだ。２１世紀を人権侵害のない世紀にするため努力する」と説明。大統領は「河野官房長官談話と米国内における首相の発言は、ともに極めて率直で心からのものだ」と評価した。
首相「人間として首相として心から同情し申し訳ない思いだ。２１世紀を人権侵害のない世紀にするため努力する」
大統領「河野官房長官談話と米国内における首相の発言は、ともに極めて率直で心からのものだ」
これって微妙ですが、安倍首相が「人間として首相として心から同情し申し訳ない思い」を向けているのは旧「従軍慰安婦」の方々に対してであり、その思いをブッシュ大統領に吐露したのであり、その思いを聞いたブッシュ大統領が「首相の発言は極めて率直で心からのものだ」と評価をしただけですよね。
朝日の記事タイトル「慰安婦で首相謝罪 大統領受け入れ」じゃ、まるで従軍慰安婦問題に関して首相がブッシュ大統領に謝罪して、それをブッシュ大統領が受け止めた、みたいに誤解してしまう人がたくさんいそうな気がするんですが・・・
特にリード部分のこの記述は意図的な誘導を感じてしまいます。
従軍慰安婦問題について安倍首相は「心から申し訳ない」と述べ、大統領は謝罪を受け入れた。
『安倍首相は「心から申し訳ない」と述べ、大統領は謝罪を受け入れた。』
これじゃ完全に安倍さんはブッシュ大統領に謝ってるとしか読み取れないじゃないですか、それでブッシュさんが優しくも「謝罪を受け入れた。」ってことに、見事に印象操作されています。
ネットでも同じ記事がasahi.comで配信されていますが。
日米首脳、対北朝鮮牽制で協調 慰安婦で首相謝罪
2007年04月28日01時23分
http://www.asahi.com/politics/update/0428/TKY200704270405.html
あれ、ネットの記事タイトルからは「大統領受け入れ」部分が削除されています。
・・・
なんだかなあ。
で、日米首脳会談：共同記者会見の要旨を伝える毎日記事から、＜従軍慰安婦問題＞関連部分を抜粋してご紹介。
日米首脳会談：共同記者会見＝要旨
（前略）
＜従軍慰安婦問題＞
首相 慰安婦の方々が非常に困難な状況で辛酸をなめられたことに対し人間として首相として心から同情し、申し訳ない思いだ。２０世紀は人権侵害の時代だった。２１世紀を人権侵害のない素晴らしい世紀にするため、日本が貢献したいと大統領に話した。
大統領 世界の歴史において残念な一章だ。首相の謝罪を受け入れる。思いやりのある声明で、心からの言葉だった。考えを正直に話してくれた。率直さを評価する。我々の仕事は過去から教訓を得ることであり、国を前に導くことだ。首相はそれを非常に有能なやり方でやっている。
毎日新聞 2007年4月28日 1時36分 （最終更新時間 4月28日 13時33分）
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/feature/news/20070428k0000m010164000c.html
これ、ＮＨＫで深夜ライブ生中継されていたので私はＴＶで確認していましたが、この慰安婦問題を質問したのは日本人記者でしたよね、どこの社なのかな？
それはともかく、ＴＶでもおおよそ上記の発言内容を首相も大統領もしたと記憶しております。
この会見でも安倍首相が「人間として首相として心から同情し、申し訳ない思い」と謝罪しているのは、「慰安婦の方々が非常に困難な状況で辛酸をなめられたことに対し」と明言しているわけで、別にブッシュさんに謝罪したわけじゃないわけですが。
これね、ブッシュさんの発言も問題有りですね、「世界の歴史において残念な一章だ。首相の謝罪を受け入れる。」って、なんで従軍慰安婦問題と何も関係ないアメリカ大統領が安倍首相の謝罪をえらそうに「受け入れる」(I accept the prime minister's apology.)なんて言うのでしょうか。
「率直さを評価する」というレベルで第三者として「首相の謝罪を評価する」ならまだ誤解も少ないでしょうが、この問題の当事者みたいに「受け入れ」ちゃだめでしょ、それじゃアメリカ大統領も当事者になってしまいますよ。
あなたがこういう言い回しをするから朝日が姑息な印象操作記事を一面トップに掲げちゃうんですよ。
・・・
ふう。
もうなんだかなあ。
指摘しても無駄だとわかっておりますか、ちょっと洒落にならないお三方なのであります。
まず、朝日新聞よ、記事のタイトルやリードで、安倍さんが慰安婦問題でブッシュさんにドケザして侘びを入れたみたいな、あざとい印象操作をするんじゃありません、読者が誤解するでしょ。
真実を忠実に伝えてください。（こんな忠告、朝日には無駄だと思うけど）
次に、ブッシュさんよ、なんで従軍慰安婦問題と何も関係ないアメリカ大統領が安倍首相の謝罪を当事者みたいに「受け入れ」(I accept the prime minister's apology.)ちゃうんですか。
あんた、関係ないでしょ？（この忠告も、まったく無駄だと思うけど）
で、最後にそれにしても安倍さん。
関係ない人に謝罪言及しすぎです。
ちょっと外交音痴すぎませんか、不用意に謝罪言及しまくりすぎじゃないですか？
ほんとにこんな外交で大丈夫なんでしょうか？（この忠告もぜったいまったく無駄だと思うけど）
旧来のあなたの保守系支持者はおさまるのでしょうか？
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日本国首相が関係ない人たちに従軍慰安婦の人々に対する謝罪の言葉を繰り返してたら、なぜか関係ないアメリカ大統領が謝罪を受け入れちゃったので、朝日新聞がそれを一面トップで印象操作してみたというお粗末でした。
・・・
なんだか、頭がクラクラしてきました。
●追記 ２００７／０４／２９ ８：００
本日（２９日）の朝日新聞社説。
日米首脳会談―謝る相手が違わないか
http://www.asahi.com/paper/editorial.html
・・・
首相が謝罪すべきは元慰安婦に対してではないのか。首相はかつて河野談話に反発し、被害者に配慮ある発言をしてきたとは言い難い。国内で批判されても意に介さないのに、米国で紛糾すると直ちに謝罪する。何としたことか。
社説の結語。
首相と大統領は「揺るぎない日米同盟」をうたい、それを象徴するバッジをおそろいでつけた。演出は結構だが、今後はその内実が問われることになる。
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なんてことでしょう、朝日は社説まで使ってマッチポンプしてますが。
朝日新聞よ、「演出は結構」なのは、貴紙の記事のタイトルやリードのほうじゃないのか？
・・・
なんか、鼻血が出そうになりました。
（木走まさみず）
