木走日記

場末の時事評論

心優しき居酒屋の店主の話〜これでキバちゃんもウンが付くってもんだ

 今日は与太話です。笑って読み流して下さいませ。

注意:エントリー中に不快な描写が含まれていますので、お昼休みとか食事中とかこれから食事の人は読まないで下さいまし(苦笑)



●立ち食いそば店:ネズミ入りカレーで18食 新小岩駅

 毎日新聞電子版速報記事から。

立ち食いそば店:ネズミ入りカレーで18食 新小岩駅

 日本レストランエンタプライズ(本社・東京都港区、荻野洋社長)は13日、同社がJR新小岩駅葛飾区)内で営業する立ち食いそば店「あじさい茶屋新小岩店」で、ネズミが入った鍋で煮たカレールーを使ったそばやうどんなど18食を客に提供していたと発表した。今のところ、体調不良などを訴える客はいないという。

 同社によると、問題のカレールーが使われていたのは13日午前6時15分から同8時半までに販売した、カレーそば・うどん4食▽カレーライス7食▽カレーセット2食など。同8時半ごろに店長が鍋にルーを足してかき混ぜる際、お玉に約8センチのネズミの死がいが引っかかり、「ネズミ混入」が分かったという。

 ルーは1パック3キロで仕入れていた。ルーを鍋に入れた後、混入した可能性が高いという。

 同店は同日から営業を休止。日本レストランエンタプライズは「ご申告頂いたお客様には深くおわびし、ご返金をさせて頂きます」と謝罪している。客からの苦情などは13日午後11時現在ないという。問い合わせはお客様相談室(0120・65・8078)。【岩佐淳士

毎日新聞 2007年3月13日 23時07分 (最終更新時間 3月14日 0時10分)
http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20070314k0000m040122000c.html

 ほほう「JR新小岩駅葛飾区)内で営業する立ち食いそば店「あじさい茶屋新小岩店」で、ネズミが入った鍋で煮たカレールーを使ったそばやうどんなど18食を客に提供していた」のですか。

 「同8時半ごろに店長が鍋にルーを足してかき混ぜる際、お玉に約8センチのネズミの死がいが引っかかり、「ネズミ混入」が分かった」ですか。

 ほほう。

 「お玉に約8センチのネズミの死がいが引っかかり」ましたか。

 ・・・

 さぞや、いい「だし」がとれたことでしょうね(爆

 ・・・(汗

 失礼しました。

 こんなカレーを食わされたお客さんはいい迷惑でしょうが、不肖・木走としては、このお店のことを余り責める気持ちにはなれないのです。

 理由はたぶん私が商店街の出身で家業も客商売していたことに由来するのかも知れません。

 ・・・

 でもね、私が経験したおぞましい経験を思い出すとね、

 ネズミ入りカレーはまだましじゃないですか

 って、思っちゃうのであります。

 ・・・

 10数年前私が経験したおぞましいお話を物語風与太話にまとめてみました。



●心優しき居酒屋の店主の話

 10数年前のことでございます。

 当時会社を立ち上げたばかりの私は、資金繰りにあえぎなから小さな事務所で徹夜徹夜の仕事三昧の日々を過ごしておりました。

 わずか数名の従業員の毎月の給料にも事欠く有様で経営者である私の給料など出ない月もしょっちゅうなのでありました。

 今思えば精神的にも経済的にもとても苦しい時期だったはずですが。お金もなく従業員を食わせるだけで精一杯な日々でしたが、共働きの奥さんが経済的に尽くしてくれていたこともあり、将来の夢だけを励みになんとかがんばれたのでありましょう。

 当時の私には財布の中身も当然寂しくて、何一つぜいたくはできませんでした、仕事以外の楽しみもなく、まあ気晴らしと言えば週に一度ぐらい事務所のそばの小汚い「赤ちょうちん」で一人一杯ひっかけることぐらいなのでした。

 ・・・

 木枯らしの吹く寒い冬の夜、11時近くだったでしょうか、私は事務所近くのいきつけの「赤ちょうちん」ののれんを一人くぐりました。

 「キバちゃん、まいど、おかえり」

 カウンターだけの6人も入れば満員になってしまうその小汚い居酒屋の店主は、疲れ切った私をいつも暖かく迎えてくれるのでした。

 「大将、あいかわらず元気がいいねえ」

 あたたかいおしぼりで顔をふきながら、私がそういうと、私以外客のいない狭い店内を見回しながら店主は明るく笑いながら私を励ましてくれるのでした。

 「ハハハハ、客なんか全然やってこないやね。でもね、キバちゃんみたいな疲れ切った顔のお客さんを見たら励まさないわけにはいかないやね。」

 「キバちゃんよう、仕事が大変なのはわかるけどさ、元気ださんとあかんよ」

 人なつっこい笑みで私にビールをついでくれる店主は、年は60前後でしたでしょうか、はげた頭に鉢巻きをまいていました。

 店主にすれば息子のような年の私が、なにやらいつもやつれているのに同情してくれているようでした。

 「客は来ないけど、ネズミは天井走り回って困ってるんだよ」

 おいおい、食い物商売してるのにお客にそんな話していいのかよ、苦笑いしながら肴をつつきながら聞いている私に店主の話は続くのでありました。

 聞けば毎月赤字続きなので来月店をたたもうと思っている、そうさなあ、天涯孤独、女房もいない気楽な身分だからくににかえって百姓の手伝いでもするかな、ひとごとのように脳天気に話す店主なのでした。

 「そうか、大将もたいへんだね。でも、俺としてはこの店なくなっちゃうと寄る店がなくなっちゃうからちょっと困るなあ」

 「キバちゃん、早くこんな小汚い店じゃなくて若いオネイチャンのいるような高級な店で酒が飲める身分に出世しなきゃな、ハハハハハ」

 「いやいや、仕事の方はいっこうに儲からなくてね、なかなかうまくいかないのよ、経営センスがないのかなあ、貧乏暇無しとは俺のことだなあ」

 ぼやく私に店主は黙ってうなずいていたのですが、何か思いついたように、棚の奥から一升瓶を取り出してきたのでした。

 「もうさ、どうせ店しめちまうし、景気づけだ、今日はとっておきの酒をサービスしちゃうよ。青森の銘酒「でんしゅ」だよ、キバちゃんなんかこんな高級な酒飲んだことないだろ」

 そういいながら棚の上から普段は使ってないだろう二合徳利を出してきて、口でふうふう埃をはらっているのです。

 「よおしこれは有田焼の徳利なんだが、いい酒はいい徳利で飲もうやね」

 冷やのまま二合徳利に「でんしゅ」を入れると、私のコップに並々注いでくれるのでした。

 いくらいい酒でいい徳利でもコップ酒じゃなあ、と苦笑いする私でしたが、それでも店主の優しい気遣いがとても嬉しくて、私も店主のコップになみなみとつぎました。

 「貧乏にカンパーイだ!!」

 なんだかなあ、わけのわからない乾杯でしたが、それでもさすがに「でんしゅ」はとても深い味わいのある美酒なのでありました。

 ・・・

(どうですか、なんともほのぼのとするお話でありましょう。ところが、みなさん、ここから事態は急転直下、悪夢のクライマックスへと物語は進んでいくのでございます(苦笑))

 ・・・

 「うん、ほんとうにうまい酒だね」

 店主と酌み交わす「でんしゅ」は、本当においしくて二合徳利もあっというまに空きかけていました。

 「さあさあ、キバちゃん、徳利の最後の一滴まで飲んでくれよ。そしたらまた一升瓶から注ぐからさあ、今夜はゆっくり飲もうや」

 飲兵衛の習性なでしょう、徳利の最後の一滴まで私のコップに注ごうと店主は徳利を逆さに揺すっていました。

 そのときです。

 ポトリ。

 なにやら異物が徳利から私のコップに落ちたのでした。

 その黒い小さな物体は、私のコップの中の銘酒「でんしゅ」の中をゆらゆら泳ぐように沈んでいきました。

 しかも沈んでいく途中に、2つ3つとかけらが分離していくのを私は見逃しませんでした。

 こ、これは・・・・(大汗

 「・・・・」

 黙り込む二人。

 こ、これは、間違いない、ネズミの糞だあああ!!!!

 「た、たいしょう、ここここれ・・・」

 青ざめる私に向かって店主は悪びれることもなくこう宣うのです。

 「ネズミのうんこだな、うん」

 ギョーーーーーー(吐き気

 さっきまでの楽しい想いはすっ飛んでしまいました。

 私たち二人は、よりによってこの「ネズミのうんこ入りでんしゅ」をちびちび味わって、「うまい、うますぎる」とかほざいていたのでございます。

 「ね、ネズミのうんこって・・・」

 唖然とする私に店主はこうのたまったのでございます。

 「うんこでよかったなあ、ねずみ本体じゃなくてよ。それによう、アルコール消毒されてっから、大丈夫だあ、なあキバちゃん」

 ・・・(大汗

 何が「うんこでよかったなあ」だ、

 何が「アルコール消毒されてっから、大丈夫だあ、なあキバちゃん」だ

 ・・・

 トホホホ、こんなサービス受けるんじゃなかった・・・

 間違いなく私が飲んだ「でんしゅ」には「ネズミのうんこ」の粒子が解けていたに違いないわけで、理科系の木走はその粒子が解けていく様を想像しただけで猛烈な吐き気におそわれたのでございます。

 ああ、「ネズミのうんこ」の粒子が今私のお腹の中で消化されようとしている。

 ・・・

 ふさぎ込む私に店主は明るく笑いながら別のコップと徳利を用意しながらこう言います。

 「さ、こっちはうんこ付いてないから大丈夫だあ、さ、飲み直そうや」

 ゲ、この期に及んでこのオヤジは飲み直そうと言うのか!!(驚

 おのが店で客にネズミのうんこ入り日本酒を出しておきながら・・・

 ・・・

 「さ、さ、きにすんなや、これでキバちゃんもウンが付くってもんだよ、明日からの仕事もうまくいくって」

 バタン(←カウンターに頭をつく音)

 ・・・

 ・・・

 ・・・

 話はこれで終わりです。

 10数年前のことでございます。
 
 え? その後どうしたかって?

 フフフ、もちろんその店で大将と夜中まで飲み交わしましたとも。

 この際徹底的にアルコール消毒しようと覚悟決めたのです(苦笑

 ・・・

 今考えれば、新聞ダネになるおぞましい話なのですが、当時の私はこの心優しき店主を怒る気にはなれなかったのでございます。

 ・・・

 本日は与太話でございました。



(木走まさみず)