木走日記

場末の時事評論

腐臭放つ日本新聞協会の対公取勝利宣言〜日本マスメディアが自ら醜い欺瞞を永遠に刻印した日

●世界に類例を見ない戸別配達網の維持、発展と正常販売に一層努力していく所存

 ついに公正取引委員会は、マスメディアからの異常な圧力に屈し、昨日(2日)新聞特殊指定の見直しの方針を撤回しました。

新聞・教科書の特殊指定見直し作業終了、公取委が発表

 公正取引委員会は2日、独占禁止法に基づいて定めた新聞と教科書の特殊指定の見直しについて、新聞は結論を出すことを見合わせ、教科書は廃止することを正式に発表した。

 教科書の特殊指定廃止は6日に官報で告示し、9月1日から施行する。昨年11月から公取委が始めた特殊指定の見直し作業は、すべて終了することになった。

 教科書の特殊指定は、教科書の不公正な販売を禁止しているが、教科書採択に関する手続きが整備されてきたことを理由に廃止する方針を掲げ、意見募集を実施した。4618件のうち、約97%が廃止に反対する意見だったが、公取委の判断で廃止に踏み切った。

 公取委の特殊指定見直し作業では、これまで、瓶・缶詰、海運業、オープン懸賞の三つを廃止している。

(2006年6月2日22時43分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20060602i215.htm

 これにより「昨年11月から公取委が始めた特殊指定の見直し作業は、すべて終了することになった」わけですから特殊指定廃止に関して「新聞は結論を出すことを見合わせ」たということは、これは事実上の敗北宣言であります。

 この公正取引委員会の「敗北宣言」を受け、昨日(2日)の日本新聞協会プレスリリースから。

2006年6月2日

 新聞特殊指定存続決定について「新聞協会会長談話」を発表

 公正取引委員会は6月2日、今回の新聞特殊指定の見直しについて、結論を出すことを見合わせる方針を発表いたしました。
 公取委の決定を受け、新聞協会は「新聞協会会長談話」を発表いたしました。

新聞特殊指定に関する公取委決定について
北村正任日本新聞協会会長の談話

平成18年6月2日

 公正取引委員会が新聞特殊指定見直しの結論を見合わせたことは、特殊指定堅持を強く求めてきたわれわれ新聞界の主張や超党派の国会議員、多くの有識者や国民の方々の意見を適切に判断したものと受け止める。

 新聞は国民の「知る権利」に応え、民主主義の根幹を支える使命を担った商品である。新聞特殊指定は半世紀にわたり再販制度と一体となって、国民の購読の機会均等を可能にしている戸別配達制度を支えてきた。

 特殊指定の見直しは、公取委の行政判断のみに委ねられるという構造になっているが、このことは法改正にも匹敵する重大な問題である。公取委には今後とも新聞の憲法的位置づけ、文化性、公共性に十分配慮して対応していただくことを切に期待したい。

 新聞特殊指定が堅持されたいま、新聞各社は改めて自らの使命を十分認識し、よりよい新聞づくりに励むとともに、世界に類例を見ない戸別配達網の維持、発展と正常販売に一層努力していく所存である。

以  上

http://www.pressnet.or.jp/

 日本新聞協会会長による事実上の『対公正取引委員会勝利宣言』ですネ。

 「世界に類例を見ない戸別配達網の維持、発展と正常販売に一層努力していく所存」ですか。

 やれやれ、まったく厚顔無恥の開き直りの得体の知れない営利企業集団のエゴ主張にはあきれるばかりです。

 「公正取引委員会が新聞特殊指定見直しの結論を見合わせたことは、特殊指定堅持を強く求めてきたわれわれ新聞界の主張や超党派の国会議員、多くの有識者や国民の方々の意見を適切に判断したもの」だそうですが、冗談ではありません。

 この半年間、本件に関わる公正な報道が、いったい日本のどのTV、新聞、マスメディアに取り上げられたというのでしょう。

 大新聞は社説にまで再三取り上げていましたが、全ては特殊指定堅持を強く求めてきた新聞界の主張だけであり、見直そうとしている公正取引委員会や識者の主張を公正に両論併記で載せていた記事は皆無であります。

 大新聞を親会社としている系列TVの本件に関する報道姿勢も異様としかいえない状態でした。

 今日に至るまで、「報道ステーション」、「ニュース23」、あるいはフジ・サンケイ系列や日テレ・読売系列にしても、事実上べた報道以外は黙殺状態です。

 戦前・戦中もびっくりの言論統制さながらの雰囲気で、新聞の特殊指定を見直そうとしている側の意見、公正取引委員会や識者の主張は完全に封印されてきてるのです。

 このような正常な議論がまったくなされていない、そして報道されていない異常な状態を黙認して、いや自ら作り上げていながら、今回の決定を「多くの有識者や国民の方々の意見を適切に判断」した結果と評価するその神経が、私にはまったく理解できません。

 腐臭放つこの日本新聞協会の対公取勝利宣言は、日本マスメディアが自ら醜い欺瞞を永遠に刻印した日としてわれわれ国民に記憶されることになるでしょう。



●「『当面見直さず』の結論は当然だ」〜世界一の詐欺師の読売新聞社説が何を言う!

 本日(3日)の読売新聞社説から・・・

[新聞の特殊指定]「『当面見直さず』の結論は当然だ」

 新聞が毎日、家の戸口まで届く――。そうした戸別配達制度の大切さを理解し、今後も維持されることを願う大多数の国民の声に、公正取引委員会が折れた、ということだろう。

 昨年秋以降、廃止を含む見直しを検討していた新聞の「特殊指定」について、公取委が、結論を出すことを見合わせる、と正式に表明した。

 その決断をまずは歓迎したい。さらには再び不毛な見直し論が提起されることのないよう、強く公取委に求めたい。

 独占禁止法に基づく公取委の告示で、新聞社や販売店は地域や読者によって新聞に異なる定価をつけたり、値引きをしたりすることが禁じられている。

 これが特殊指定だ。新聞社が販売店に小売価格を指定できる「再販売価格維持制度」と一体となって、同一新聞なら全国どこでも同じ値段で購入できる戸別配達制度を可能にしている。

 もし特殊指定が廃止されれば、値引き合戦など過当競争が起き、撤退を強いられる販売店も出てこよう。地域によっては戸別配達がなくなり、購読紙の選択肢が狭められる恐れもある。

 1955年の指定から半世紀、何ら弊害は生じていないのに、なぜ公取委は突然、見直しを言い出したのか。

 竹島一彦委員長は、法律論にこだわった。「新聞の特殊指定に独禁法上の根拠があるのか。ゼロベースで見直すように言った」。独禁法に、公正な価格競争を否定するかのような特殊指定が含まれているのは法律的に矛盾している、という考え方だ。

 民主主義社会に不可欠な情報インフラとしての新聞の意義、日本の文化とも言える戸別配達制度が国民にもたらす幅広い利益といった視点が欠けていたのではないか。新聞業界からみれば、公取委は規制を改悪しようとしている、としか受け止められなかった。

 多方面から反対論がわき起こった。国会では「国民の知る権利や活字文化振興に影響が出る」などと、全政党が反対を表明、独禁法改正を目指す議員立法の動きも出た。地方議会でも戸別配達の存続を求める意見書採択などが相次いだ。

 全国紙各紙の世論調査でも、8〜9割が戸別配達の継続を望み、7〜8割が特殊指定維持を支持していた。

 競争原理の観点のみで特殊指定を廃止しようという公取委の姿勢に対する国民の反応は、耐震偽装ライブドア事件をめぐる競争至上主義、市場原理主義への疑問の声とも無関係ではないだろう。

 国会のコンセンサスと世論の重みを、公取委は忘れずにいてほしい。

(2006年6月3日1時39分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20060602ig91.htm

 さすが世界一の発行部数を誇る読売新聞の主張です。

 自分たちの既得権益擁護のためならと、よくここまで嘘八百を並べられるものです。

 公正な幅広い議論を封殺しておいて「大多数の国民の声」とか「国民の知る権利や活字文化振興に影響が出る」とか「正論」を振り回さないでいただきたいのです。

 たしかに国会は本件においてはメディア側に完全に凋落されておりまったく情けない不甲斐ない状態であり、「全政党が反対を表明、独禁法改正を目指す議員立法の動き」まであったのは事実です。

 そんなものはあなた方マスメディアがあらゆる手段であなた方が普段批判する「政治的密室談義」から、お得意の「各種誘導世論調査」まで駆使して、各政党に反論の余地を与えない雰囲気つくりをしてきた姑息な策略が功を奏しただけでしょう。

 政治家にとって最大の圧力団体があなた方マスメディアであることを単に証明したにすぎません。



日本新聞協会と読売新聞の嘘八百の主張の核心部分に鉄槌を下す〜特殊指定見直しと「国民の知る権利」は何も関係は無い!

 新聞は国民の「知る権利」に応え、民主主義の根幹を支える使命を担った商品である。新聞特殊指定は半世紀にわたり再販制度と一体となって、国民の購読の機会均等を可能にしている戸別配達制度を支えてきた。
北村正任日本新聞協会会長の談話)

 もし特殊指定が廃止されれば、値引き合戦など過当競争が起き、撤退を強いられる販売店も出てこよう。地域によっては戸別配達がなくなり、購読紙の選択肢が狭められる恐れもある。
読売新聞社説)

 新聞協会が繰り返し主張する核心部分は「新聞特殊指定は半世紀にわたり再販制度と一体となって、国民の購読の機会均等を可能にしている戸別配達制度を支えてきた」という事実認識であり、「もし特殊指定が廃止されれば、値引き合戦など過当競争が起き、撤退を強いられる販売店も出てこよう。地域によっては戸別配達がなくなり、購読紙の選択肢が狭められる恐れもある」という想定であります。

 この事実認識と想定がいかに実態と遊離した机上の空論であることか、よもやあなた方新聞側がご存じないわけではないでしょう。

 現実にすでに「値引き合戦など過当競争が起き」ていて「地域によっては戸別配達がなくなり」、新聞特殊指定と再販制度により保証されるべき「国民の購読の機会均等」を破壊しているのは、あなた方自身なのです。

そうか、新聞特殊指定は押し紙禁止のことなんだ(上)

(前略)

PJ佐藤:「そういえばこの前、うちに新聞の勧誘が来たよ。もう新聞取っているんだけど。3カ月契約すれば、1カ月ただにしてくれるって」

PJ小田:「その無料の新聞が、押し紙かもしれないよ。無料で配るのは、無代紙っていうんだ。関西地方ではよくあるらしいよ。新聞社に押し付けられた新聞を、販売店が無料で配るんだ。実質的な値引きだよね」

 「でも販売店の責任じゃないよ、これは。新聞社だ。公正取引委員会が厳しく取り締まるべきだよね、押し紙を。押し紙無くせば、無代紙はなくなるよ。長年購読を続ける新聞読者が損をしてしまうからね。正直者がバカを見ているのが現状だ」

PJ佐藤:「新聞は『インテリが作って、ヤクザが売る』とかいうけど、『ヤクザが作って、ジャクシャ(弱者)が売っている』のが実態だね」

 (後略)

ライブドアニュース
http://news.livedoor.com/webapp/journal/cid__2035284/detail

 この販売店が無料で配る「無代紙」や洗剤等景品による「値引き合戦など過当競争」は全国で知らない国民はいませんよ。

 また、「地域によっては戸別配達がなくな」るのもすでに起こっていることです。

新聞が宅配されない!?中越地震の旧山古志村

【PJニュース 05月31日】− 中越地震の被災地、新潟県の旧山古志村(現・長岡市)種芋原地区で、震災のあった04年10月から現在まで、新聞の宅配が途絶えていることが31日、PJニュースの調査で明らかになった。長岡市によると5月22日現在、種芋原地区には18世帯46人の住民が暮らしている。現在でも市の通行許可が必要だが、同地区へは幹線道である国道352号線が復旧している。しかし、地元紙の新潟日報や、全国紙の朝日新聞や読売新聞、毎日新聞の各販売店による宅配はなされていない。

(後略)

ライブドアニュース
http://news.livedoor.com/webapp/journal/cid__2026218/detail

 この記事の住民の談話が興味深いです。

 種芋原地区の住民は「新聞が来たとしても、朝早く届くわけではありません。テレビがあるので情報に不自由することはありません。山古志村でも今では携帯電話やインターネットが通じるので、それで新聞記事はチェックできます。知る権利が危機に?そんなことはありません」と語った。

経理諸表ひとつ公開できない営利企業がなぜ「社会の公器」を気取って優遇される必要があるのか

 読売新聞にしろ朝日新聞にしろ、日本の新聞は二言目には自分たちを「社会の公器」と自称し国民の知る権利のために「特殊指定維持」を訴えていますが、この新聞業界は、実は日本の実業界の中でもきわめて胡散臭い営利企業集団であることは有名な話であります。

 読売、朝日、毎日、産経、日経、どの一社として財務諸表を公開してはいません。

 売り上げ諸表、事業別取得利益など、すべてはなぞのベールにつつまれたままです。

 なぜでしょうか。

 彼らは絶対に売り上げ詳細を公開できない理由があるからです。

 それは彼らの公表販売部数と実販売部数にとんでもない格差があり、広告収入に頼る彼らにとって販売実態が明らかになると商法的にもきわめて問題があるからです。

 たとえば販売数100万部と称してクライアント(広告主)企業から広告費を取っている新聞の販売実数が半分の50万部だとしたら、これは立派な詐欺行為なのです。

 ここに元読売新聞購買局幹部の赤裸々な発言があります。

 笹崎穏司(元読売新聞社販売局専任局次長、元福島民友社取締役販売担当)氏の新聞労連主催のある集会における興味深い発言です。

 以前のエントリーの引用部分を再度掲載しましょう。

(前略)

■折込みスポンサーに対する詐欺行為

 次に販売店に過剰な残紙がダブついているとどういうことになるのか。一つは先ほど言いました無代紙の乱用ということになります。お店にしてみればタダ同然のものですから、安い拡 材で効果抜群というわけです。もう一つ、これが大問題なのです。

 販売店に山のように残紙があれば、その処分に困ります。さすがに後ろめたいことをやっているという自覚だけはありますから、夜中とか、まだ誰も起きていない早朝とか、夜陰にまぎれて古紙回収業者が運び出すことになります。新品でピカピカの残紙だけでなく、最初から捨てられる運命にある余分なチラシが大量に運び出されているのです。

 その上に発行本社には原価を払うわけですから困るといえば困るわけですが、それが不思議とそれほど困るわけではない。先ほどの捨ててしまった折込みチラシの収入が原価相当分以上にあるからです。ですから、本社も販売店も「アン、ウン」の呼吸で押し紙とも積み紙とも区分けのつかないような過剰な残紙を抱えることになるのです。

 もう少し詳しく話します。例えば3,000部を扱う販売店があるとします。仮に2,000軒の読者しかないとすれば3分の1の1,000部は過剰な残紙です。(正確には適正予備紙を2%として40部、過剰残紙は960部となります)

 この販売店には2,000部しか配達していないのに3,000枚の折込みチラシが届けられます。毎日のように20種類前後のチラシが入ります。折込み収入は地域によって異なりますが、例えば1ヵ月に一部あたり1,500円とすれば、この店は1ヵ月に450万円の収入があるわけです。そのうちの3分の1、1,000枚の折込みは捨ててしまうわけですから、1ヵ月に150万円は不当極まりない収入です。これはスポンサーに対する重大な裏切り行為であって、明らかに詐欺行為なのです。

 スポンサーにしてみれば、この不景気の中で、泣きたくなるような経費をつぎ込んでチラシをつくり、折込み料を払って販売店に届けているチラシです。1枚だって捨てられていると知ったら頭にくるはずです。チラシの制作費は直接経費だけでも折込料の2倍くらいはかかりますから、この販売店は1店で300万円もドブに捨てていることになるのです。

■本社は百も承知の確信犯

 大多数の発行本社は、そんなことは百も承知で頬かぶりしている確信犯といえます。そう思わざるを得ません。

 販売店はこの折込み収入がなければ本社に新聞の原価を払えないのですから、「発行本社は販売店を迂回して折込み詐欺を働いている」と言われても弁解の余地はありません。折込みだけでなく本紙広告のスポンサーをも欺いていることはいうまでもないことです。

 社員はそうした詐欺行為で得た利益の中から給料をもらっていることになります。悲しいじゃありませんか。そうでも言わなければ皆さんは胸にズキンとこないだろうから申し上げるわけで、皆さんを責めているわけではありません。これは経営の問題ですから、販売の当事者だけの責任でもありません。これを機会に各社が部数の透明化に努力していただきたい。そのためにざっくばらんに申しあげていることであります。

 それにしても、「三菱自動車は何をやっとるんだ」と連日紙面ではこきおろして、悪しきをくじく格好いい月光仮面、裏でやってることは詐欺行為。大事な大事なスポンサーに感謝するどころか、いいえ、口では感謝しながら足蹴にしているということなのです。

 折込みスポンサーもおかしいと思っていますから、ABC部数の80%しか印刷しない。そういうスポンサーがどんどん増えてきています。そうするとまともにやっている販売店ではチラシが足りなくなります。そんな馬鹿なことがまかり通ってはたまりません。

(後略)

 ・・・

 この詐欺行為が今この時点でも全国で日々行われている可能性があるのです。

 なぜそのような欺瞞に満ちた胡散臭い営利企業たちを、私たち国民は法律で守ってあげなければならないのでしょう。

 昨日の公正取引委員会の決定は誠に残念であります。

 しかし、腐臭放つ日本新聞協会の対公取勝利宣言は、日本マスメディアが自ら醜い欺瞞を永遠に刻印した日として、私たち国民に記憶され続けることでしょう。



(木走まさみず)



<参考サイト>

マスコミ不信日記
新聞特殊指定存続−読者不在の決着
http://blog.livedoor.jp/saihan/archives/50584847.html

<関連テキスト>
●読売社説の欺瞞〜タブー中のタブーを抱えながら詐欺師が何をほざいているのだ!
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20060221
●これはメディア談合だ!!〜正論振りかざすなら財務諸表公開してみろ!
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20060316
●新聞休刊日の七不思議〜北朝鮮も真っ青なスバラシイ言論統率!
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20060410