木走日記

場末の時事評論

経済同友会進言とインターネットの虚しい類似性〜誰に向かって発信してんだかなあ、もう(苦笑)

 一介の零細企業主の私が経済界の重鎮にご忠告申し上げるのもなんなんですがね・・・



●インターネットが普及した立て役者のひとり、IPプロトコルは無責任野郎だった(爆笑

 今日のマクラ話は少しインターネットの技術論でもかましてみようかと思います。

 不肖・木走は本業のIT業のかたわら工学系の学校で外来講師などもしているのですが、この4月からの受け持ち教科は「ネットワーク工学概論」であります。
(↑のような科目です、為念。 本当の科目名は内緒ネ(汗))

 で、通信工学や電気通信工学のイロハから教えはじめ、通信トラヒック工学などのつまらない(苦笑)伝送工学や交換工学の基礎を踏まえた上で、インターネットのプロトコル(通信規約)やその実現方法などを教えていたりしています。

 えーと、ネットワークの技術論など興味のない読者も多いでしょうから、ここで深入りするつもりはありません(だいたい過去に難しい数式を出す度に読者数が13%減るという苦い経験則が当ブログにはありますです、ハイ(爆笑))が、インターネットのプロトコル、IPについて少し触れておきたいのです。

 一般に通信工学では通信するネットワークの参加者をノードと呼ぶわけですが、その昔のインターネットが普及する前のネットワーク及びその規則(プロトコルちゅう言い方します)っていうのは、まあ融通の利かないガンコオヤジみたいなところがありまして、基幹回線がしっかりあって、あるノード(パソコンと考えていただいていいです)から別なノードにデータを送信する場合、事前にしっかり回線が繋がっていることを確認することがマナーだったんですな。

 「今からデータを送るけどいいかい」って送り手ノードが宛先ノードにまず問い合わせて、それをキャッチした相手先が「いいでっせ、いつでもデータ送ってくれなはれ」と応答を返すわけです。

 その応答があれば、回線が無事に繋がっているからこりゃ安心と、本当のデータを送信したわけです。

 ちなみに事前にこのように回線が接続されていることを確認する通信方式をコネクション方式と言います。

 で、このようなやり方が当時主流だったわけですが、この手順はめんどくさいけど確実な方法なんで、1980年ぐらいまでは主流でありました。

 ところがこのようなやり方では困ってしまうのが軍事通信分野なんですね。

 基幹回線の途中の局が一発攻撃を受けてしまったらネットワーク全体がダウンしてしまう訳なんですな。

 そこでペンタゴンが研究に研究を重ねて考え出した新しいやりかたがIPつまり、インターネットプロトコルなんでありました。1981年のことです。

 で、ペンタゴンが考えたのがまず、ネットワークの形状ですが、主局と主局を結ぶ基幹回線という太い幹のあるネットワークから、もう支局だらけで回線を張り巡らしちゃう蜘蛛の巣状態の主局のないネットワークに発想を変えたんですね。

 これまでの軍事回線では主局が破壊されたら回線全体がダウンしちゃったのを、この蜘蛛の巣状のネットワークなら、ひとつや二つ支局が攻撃を受けても迂回路さえ確保できれば通信可能なわけなのですね。

 つまりちょっとやそっと回線が攻撃されて不通になってもネットワーク全体はなかなかダウンしないしぶとい軍事ネットワークを考えたわけです。

 で、そんなタフな発想のネットワークですから、今まで見たいなコネクション方式で通信する前に回線の接続状態を確認するなんてめんどくさいことやってられないわけです。
 で新しい規則、IPプロトコルはなんと、コネクションレス方式、つまり相手が受信可能状態か、回線が相手まで接続されているか、なんていう事前チェックは無視して、乱暴にもいきなり通信してしまう方式を採用したのでございます。

 つまりIP(インターネットプロトコル)ってのは、無責任野郎だったわけです(苦笑

 でも、みなさん、この無責任野郎が大化けして、今日の世界中で活用されるインターネットになるんですからおもしろいですよね。

 ちなみにインターネットのサービスをWWW、ワールドワイドウェブなんて言いますが、まあ略して単にWebとだけ言ったりしますが、このWeb、直訳すれば蜘蛛の巣の意味なのは有名な話ではあります。

 つまりです、インターネットが爆発的に普及したのは、その基幹となる約束事、プロトコルであるIP(インターネットプロトコル)が、相手構わずデータを送ってしまうというコネクションレス方式を乱暴にも採用したことによるのです。

 もちろんこんな乱暴者だけでは何かと問題があるので、今日のインターネットでは、IPだけではなく、TCPプロトコルとかのお行儀のよろしいコネクション方式も併用しているのですが・・・

 ・・・

 IPプロトコルならばコネクションレス方式で情報発信するのもありでしょうが、これはどうなんでしょうねえ(汗。



●「靖国参拝、首相は再考を」経済同友会提言するも「政治とは別」首相が強い不快感

 昨日(9日)の産経新聞から・・・

靖国参拝、首相は再考を」経済同友会が提言

≪11人が反対、異例の多数決に≫
 経済同友会は9日、首相の靖国神社参拝について、日中関係改善のために「再考が求められる」として参拝の自粛を求める提言を採択した。ただ、一部幹事から「この時期に発表すべきではない」などと異論が相次ぎ同友会では異例の多数決での採択となった。

 提言は日中関係を改善するため、相互理解や相互交流の促進など4つの提言を盛り込んだ。

 この中で首相の靖国参拝について「首脳レベルの交流を実現するうえでの大きな障害」と位置づけ、この問題を「主体的、積極的に解決すべきだ」と指摘。小泉純一郎首相の参拝目的である不戦の誓いは「日本国民に広く支持される」とする一方、「適切か否か、国民の間にもコンセンサスは得られていないと思われる」として、「総理の靖国参拝の再考が求められる」と明記した。

 同時に「総理の思いを分かちあうべく、不戦の誓いを行う追悼碑を国として建立することを要請したい」と加えた。

 この提言をめぐっては提言を採択した幹事会で「この時期に公表すべきではない」「靖国参拝の再考など促すべきではない」などと異論が続出。全会一致をあきらめ、多数決を実施した。賛成多数で可決したが、出席した約70人の幹事のうち11人が反対した。

 北城恪太郎代表幹事は、小泉首相が昨年10月17日に平服で靖国神社に参拝した際には「適切な対応」と評価したが、今回は「平服で参拝した努力が、中国側の十分な理解を得られていない」として提言に賛同した。記者会見では「中長期にわたっても参拝は好ましくない」と語り、小泉首相の後任首相も状況が変わらない限り参拝すべきでないとの立場を示した。

(05/09 18:01)
http://www.sankei.co.jp/news/060509/kei079.htm

 異例の採決で日中関係改善のために「再考が求められる」として参拝の自粛を求める提言を採択した経済同友会なのでありますが、北城恪太郎代表幹事は「中長期にわたっても参拝は好ましくない」と述べたそうです。

 経済同友会代表幹事の北城恪太郎(きたしろかくたろう)氏でありますが、日本アイ・ビー・エム株式会社代表取締役会長でありまして、子会社も含めて中国とのビジネスに活路を見出している日本経済界の代表としては、いろいろな意味で相応しいお方なのであります。

 ・・・

 で、小泉首相は早速この発言に強い不快感を表明します。

 同日(9日)の産経新聞から・・・

「政治とは別」首相が経済同友会提言に不快感

 小泉純一郎首相は9日夜、経済同友会が「今後の日中関係への提言」として、首相の靖国神社参拝の自粛や不戦の誓いを行う追悼碑の建立を求めたことについて「ひとつの意見でしょう。靖国外交カードにはならない。財界の人から商売のことを考えて『参拝してくれるな』という声もたくさんあったが、『それと政治は別だ』とはっきりお断りしている」と述べ、強い不快感を示した。官邸で記者団の質問に答えた。
(05/09 19:46)

http://www.sankei.co.jp/news/060509/kei094.htm

 「財界の人から商売のことを考えて『参拝してくれるな』という声もたくさんあったが、『それと政治は別だ』とはっきりお断りしている」と力強く反発する小泉首相なのであります。

 ・・・

 ふう。

 なんだろうこの経済同友会の意味のない提言は・・・



経済同友会進言とインターネット・IPプロトコルの虚しい類似性〜誰に向かって発信してんだかなあ、もう(苦笑)

 本当に経済同友会小泉首相に「靖国参拝自粛せよ」と進言すれば、小泉首相が「ハイ、わかりました、参拝はやめます」と反応してくれると思っていたのでしょうか(苦笑

 だれが考えてもそんな進言をまともに聞く小泉首相ではないでしょ!

 だとすればこの進言は誰に対して発信したのでしょうか。

 ・・・

 うーん、わからん。

 ・・・

 経済同友会よ、お前は相手の状況などお構いなしに発信してしまうコネクションレス通信か?

 お前はIPプロトコルか?(爆笑

 本当に小泉首相に進言する気があったのだとしたら、明らかにこの進言は愚かな策というものでしょう。

 もしかしたら、国民やポスト小泉に対するメッセージを兼ねているのかも知れませんが、だとすればこれは逆効果ですね。

 ・・・

 ふう。

 まったく話になりません。

 ・・・

 日本経済界が中国と切っても切れない密な関係になっていることは、別に北城恪太郎(きたしろかくたろう)日本アイ・ビー・エム株式会社代表取締役会長に指摘されなくても充分に理解していますが、「商人」(あきんど)が「政(まつり)ごと」に口を挟むときは、十分にいろいろな配慮がされなければいけないと思います。

 こんな一方的なコネクションレス(苦笑)な進言では、これでは、自分たちが中国で儲けているから小泉は中国の機嫌を損ねるような靖国参拝などするな、と偉そうに放言していると国民には映ってしまうでしょう。

 自分たちの利益を守るためだけの身勝手な一方的な発言であると印象付けられるのは火を見るより明らかでしょう。

 穿って見てしまうと、実は小泉首相にではなく、中国政府にも聞こえるように「僕たちはこんなにはっきり小泉に進言してますよ」とポーズをとっているようにも思えてしまいます。
 ・・・

 ふう。

 しっかりと相手が聞く態勢にあるかどうか、そんなこと関係無しに情報発信するのは、インターネット(IPプロトコル)と同じようですねえ、経済同友会の場合、悲しいというか虚しいのは、受信相手がどうも小泉さんじゃなくても、他国政府でもいいみたいなんですよね。

 こんなコミュニケーションじゃ、逆効果にしかならないのが理解できないのかなあ。

 ある意味無責任だよなあ(ヤレヤレ



(木走まさみず)