木走日記

場末の時事評論

米ニューズウィーク誌で激賞された小泉純一郎と構造改革

kibashiri2006-04-04




●小泉さんよ、おまえは“同伴”入場を強いられて散財するキャバクラ常連男か

 マクラ話として、今日(4日)のサンスポ記事から・・・

首相&荒川ツーショットで「トゥーランドット」観劇

小泉首相は3日夜、東京・赤坂のサントリーホールで、イタリア歌劇「トゥーランドット」を鑑賞した。トリノ五輪フィギュアスケートでこの歌劇の曲に乗り、金メダルを獲得した荒川静香選手(24)も同席=写真(AP)=し、ツーショット観劇を楽しんだ。

首相は「幸せというか幸運だね。まだ私には運がついているよ」と、金メダリスト“同伴”に超ゴキゲン。荒川選手も「昔から大好きな曲だったので、オペラで生で見られて最高です」と感激していた。

2006年04月04日 更新
http://www.sanspo.com/shakai/top/sha200604/sha2006040404.html

 あーあ、何だか余裕綽々(しゃくしゃく)の小泉首相なのであります。

 ちきしょー、うらやましいぞ(苦笑

 「幸せというか幸運だね。まだ私には運がついているよ」って、そりゃそうでしょ、イナバウアを独り占めしての観劇ですものね(プンプン

 見てみなさい「金メダリスト“同伴”に超ゴキゲン」って、サンスポ記者もジェラシーのあまり脱線気味であります。

 小泉さんよ、おまえは“同伴”入場を強いられて散財するキャバクラ常連男か

 って、言いたいに決まってます、サンスポさんは(爆笑)
(↑決め付けるなって(苦笑)、またクレーム受けるぞ)

 ・・・(汗

 失礼しました。

 そんなわけ(どんなわけだ?)で、今日は我らが小泉首相の話題であります。

 もう小泉さんを褒めちぎっている海外報道のご紹介です。



●"Europe Needs Its Own Koizumi"〜米ニューズウィーク誌の小泉激賞記事

 サンスポには「金メダリスト“同伴”に超ゴキゲン」って皮肉られてるけど、何やら海外、特にヨーロッパからは、意外なのですが、小泉首相のとった政策はとても高く評価されているようであります。

 なんか日本ではあまり報道されていないのが不思議なのですが、ようするに同じような構造問題(経済停滞と財政赤字)を抱えるヨーロッパから見ると、小泉構造改革は素晴らしい成果を上げている、トレビア〜ン(苦笑)ということらしいのです。

 昨日(3日)付けのニューズウィーク国際版に、欧州政策研究センター研究員・Angel Ubide氏による小泉改革激賞記事が掲載されています。

Europe Needs Its Own Koizumi
By Angel Ubide
Newsweek International
http://www.msnbc.msn.com/id/12015267/site/newsweek/

 "Europe Needs Its Own Koizumi"、「ヨーロッパも小泉が必要だ」なんて、すごいトレビア〜ンなタイトルなのですが、とても興味深い内容ので、少し長いですが邦訳して記事全文をご紹介しましょう。

Europe Needs Its Own Koizumi

Timing is critical. Japan first pushed financial reform, which forced labor reform. In Europe, labor reform came first, inciting mass protest.

By Angel Ubide
Newsweek International

ヨーロッパは彼等自身の小泉を必要としている。

 タイミングは重要である。 日本は最初にまず金融改革を、どの強制的な労働改革よりも、押し進めた。 ヨーロッパでは、労働改革から手をつけてしまい、そして大規模な抵抗にあっているのだ。

エンジェル・ユーバイド
ニューズウィーク国際版

April 3, 2006 issue - Only a few years ago leaders of the European Union bubbled with confidence about their economic future, and Japan looked like a lost cause. Now, as Japan's recovery gains momentum, some forecasters expect its economy to grow faster than 3 percent, or faster than Europe and the United States, in 2006. It's time for Europe to ask what it can learn from Japan. The answer: a lot.

2006年4月3日号--ほんの数年前は、EUの指導者達は彼らの経済の将来に関する自信にみなぎっていて、日本は敗者のように見えていたのである。 今、日本の経済回復ははずみがついてきており、2006年の日本経済の成長率が3%以上、あるいは欧米の成長を上回ると予測する人もいる。ヨーロッパが日本から何を学ぶことができるか、それがとわれるべきときなのだ。問いの答えは「いっぱい」である。

The first lesson is that timing is everything. Japan got reform right by cleaning up its debt-burdened and politically connected banks first. A more independent and vibrant financial sector forced corporations to streamline, and to press reforms on workers, including an end to promises of lifetime employment. Yet there was no popular revolt, because the emerging recovery was bringing Japan back, making reform respectable. In Europe, where leaders first pushed labor and welfare reform, the result has been no improvement in growth, and massive street protests against declining benefits and job security.

 最初のレッスンはタイミングがすべてということだ。 日本は、まず最初に、負債を背負い込みかつ政治的にコネのある銀行を掃除することを実行して改革を正しく行った。より自主的で活気ある金融部門は率先して会社の合理化を強行、そして終身雇用制度の終焉を含み労働者の上に改革を強制した。しかし、いかなる大衆の反乱も起こらなかったのである、なぜなら改革が立派に遂行されて、現実に経済の回復が日本にもたらされたからである。ヨーロッパでは、指導者は労働と福祉の改革から着手してしまい、その結果、経済成長はなんら改善されず、もたらされたのは収入の減少と雇用確保に対する大規模な抗議デモだったのである。

The second lesson: it's the politics, stupid. Prime Minister Junichiro Koizumi has transformed his ruling Liberal Democratic Party from a coalition of powerful factions defending conservative rural interests into a modern party bent on reform. Europe, meanwhile, remains caught in a political trap, as powerful interest groups defend an inefficient system: farmers fight for massive agricultural subsidies; older workers for generous pensions.

 二番目のレッスンは愚かなるは政治ということだ。小泉純一郎首相は、彼の支配する自由民主党を保守的な田舎の利権を守るだけの強力な派閥の連合体から改革を断行する近代的政党へと変えてきたのである。一方のヨーロッパは、強力な利権団体が効率の悪いシステムを守ったり、農業従事者は大規模な農業助成金を守るために争ったり、高齢労働者は豊富な年金を守るために争うというふうに、政治的策略に引っかかったままの状態で留まっている。

The seeds of Japan's recovery lie in Koizumi's decisive moves to cut the government-backed ties between banks and their corporate clients. This made it clear to companies that they had to reform or die. Thousands of zombie companies closed down. Excess capacity was eliminated. The result is an increasingly broad-based recovery, with wages rising alongside employment, and the strongest labor income growth since the late 1990s. The improving labor market is anchored by rising corporate profits, with margins at historic highs. Stronger income growth is mirrored in a U-turn for asset prices. Stock prices have doubled from the lows of early 2003. Land prices are rising in large cities. The consumer price index is starting to edge higher, signaling the imminent demise of deflation.

日本経済の回復の要因は、銀行と取引業者との間の政府によって保証されていた関係を断ち切るという、小泉の決定的な行動にある。これは、企業に対して、変化(改革)するか、死(倒産)するか、どちらかしかないことを明白にしたのだ。 何千ものゾンビ会社が閉業した。過剰生産は根絶された。その結果が、雇用と並んで上昇する賃金、1990年代後半以来の最も強い労働収入増を伴っての、ますますの広域的な経済回復である。労働市場の改善は、史上最高値に上昇している企業利益によって下支えされている。より強い収入増は資産価格にUターンして反映される。株価は2003年前半の安値から倍増した。地価は大都市圏で上昇している。デフレがもうすぐ終焉するシグナルとして、消費者物価指数はジリ高となり始めている。

Koizumi capped this revolution by fighting the September 2005 general election on his promise to privatize Japan's post office—which is also the world's largest bank, with $3 trillion in Japanese savings. By winning big on this issue, Koizumi proved that economic reform could be popular. Meanwhile, European leaders, by talking grandiosely but failing to deliver, have generated "reform inflation," devaluing the whole concept of reform. In Japan, reform is good; in Europe, it's stigmatized.

小泉は2005年9月の総選挙を戦うとき選挙公約として、世界最大の銀行でもある日本の郵便局を3兆ドルに及ぶ貯蓄ととも民営化するという、革命を掲げた。この選挙で派手に勝つことによって、小泉は、経済改革が支持を集めること証明したのだ。その間、ヨーロッパ人の指導者達は、大げさに言えば解放に失敗して、改革の全体の概念の価値を減らしてしまい、「改革インフレーション」を発生させてしまったのだ。日本では、改革は良いことである。 ヨーロッパでは、汚名をきせられている。

Ironically, the European approach to reform was designed to work as Japan's has. The European bureaucracy was supposed to defend reform against national politicians' catering to special interests. The process of creating a single market was designed to slowly but surely eliminate inefficiencies, and opposition. The European Central Bank and the adoption of the Growth and Stability Pact—a cap on national budget deficits at 3 percent of GDP—were supposed to ensure that nations got the macropolicy right. They have not. Today, the squabbling over the E.U. budget, which focuses on which interests will win and which will lose, shows how deeply Europe remains stuck in old-fashioned politics.

皮肉にも、ヨーロッパの改革アプローチは、日本がうまくいったのと同様に、うまく機能するように計画はされていた。ヨーロッパの官僚は、各国政治家の特定利権に対する配慮から、改革を守るはずだった。単一市場を創設する過程は、ゆっくりだがしかし確実に、非能率と拒絶を根絶やしにするように計画されていた。欧州中央銀行と経済の成長と安定のための条約(国家予算赤字はGDPの3パーセント以内とする)の採択は、国がマクロ政策を正しく行うことを保証するだろうと思われていた。が、そうはなっていないのだ。今日のEU予算上での、どの利権が勝利するかあるいはどの利権が敗れるかに集中している言い合いは、ヨーロッパがどれくらい深く旧式な政治にとどまっているままかを示している。

Perhaps the key for Europe now is to change the timing of reform. European nations have tried numerous labor-market and social-security reforms, some liberalization of trade in goods and services, and little financial-market integration. The sequence should have been precisely the opposite. Stronger financial markets could drive national reforms, force liberalization in goods and services markets, and make labor-market reforms unavoidable.

恐らく、現在のヨーロッパの鍵は、改革のタイミングを変えることだろう。ヨーロッパの国々は、たくさんの、労働市場改革、社会保障改革、商品とサービスにおける貿易自由化などを試みてきた、しかし金融市場統合はまったく試みてこなかった。その改革の順序はまさに正反対であるべきだったのである。より強い金融市場があれば、国家の改革をして、商品とサービス市場の自由化を強行してそして労働市場改革を不可避にすることが可能であったであろう。

Specifically, European leaders need to move faster on the EU action plan to open up financial markets, and they need to eliminate lingering inefficiencies at the national level. They should allow cross-border mergers of banks in France, Germany and Spain, which would integrate the Continental market, lower prices and increase market pressure on the corporate sector to become more efficient. They should create a Europe-wide market in which fixed-rate mortgages can be refinanced easily and cheaply, allowing consumers to tap their home equity for consumption. An integrated financial market would make monetary policy more effective, by speeding up the impact of interest-rate changes, and lift Europe's growth rate. As Japan has shown, recovery can make tough reform popular. What Europe lacks most is a Koizumi to make it happen.

明確に、ヨーロッパ人の指導者達は、金融市場を開かれたものにするためにEU行動計画にのっとりより速やかに行動する必要がある、そして、国家レベルで足をひっぱっている非効率性を根絶やしにする必要がある。彼らは、欧州大陸市場を統合することになるフランス、ドイツ、スペインの銀行の国境をまたぐ合併を許すべきであり、下値を許容して、より効率的になるように法人部門への市場への圧力を増加させるべきである。彼らは定率の抵当証券を簡単にかつ安く借り換えることができるヨーロッパ全体の市場を、消費者が住宅抵当権の償却を求めるのを認めて、創設するべきである。統合された金融市場は財政政策をより効果的にするであろうし、金利変動の影響が早まることによってヨーロッパの成長率を押し上げるだろう。日本が示したように、経済回復は厳しい改革が支持を得ることを可能にする。ヨーロッパに最も欠けているのは、それ(厳しい改革)を起こす小泉なのだ。



(訳:木走まさみず)

http://www.msnbc.msn.com/id/12015267/site/newsweek/

 なが(汗



●はたして小泉首相は歴史に残る名宰相だったのでしょうか

 うーん、最近の日本経済の回復ぶりを小泉首相構造改革によるものであると、もう手放しで評価しているのですが、特に記事の以下の下りなどもう読んでいてこちょばゆいのです。

The seeds of Japan's recovery lie in Koizumi's decisive moves to cut the government-backed ties between banks and their corporate clients. This made it clear to companies that they had to reform or die. Thousands of zombie companies closed down. Excess capacity was eliminated.

日本経済の回復の要因は、銀行と取引業者との間の政府によって保証されていた関係を断ち切るという、小泉の決定的な行動にある。これは、企業に対して、変化(改革)するか、死(倒産)するか、どちらかしかないことを明白にしたのだ。

 "Koizumi's decisive moves"、「小泉の決定的な行動」ですって(苦笑

 ヨーロッパの人々にとって、小泉首相は「厳しい改革」を成し遂げた実行力のある優れた指導者と映っているのですね。

 でもな、イナバウア荒川さんと観劇しているでれでれの小泉首相の写真を見ると、このニューズウィーク記事の改革者小泉とは、なんかギャップがありすぎますですねえ(苦笑

 所得格差拡大の問題とかマイナスの面が全然取り上げられてないので、小泉さんには批判的だった不肖・木走としては、ちょっとこの記事には不満もあるのですが、ここまで持ち上げられると悪い気はしないのが、私の情けないところですが(爆)

 でも、真面目な話、読者の皆様にこの記事はぜひご紹介する必要はあると思いましたです。

 批判的に捉えるにしろ評価するにしろ、すくなくともこういう見方をしている海外メディアが事実として存在しているわけですネ。

 しかしなあ、日本のマスメディアも、海外報道では靖国問題とかばっかり取り上げないで、もっと多角的にこういう記事も紹介したらどうでしょうねえ。


 ・・・

 はたして小泉首相は歴史に残る名宰相だったのでしょうか、日本国内における再評価が待たれるところではあります。


 さて、読者のみなさんは、この小泉激賞のニューズウィーク記事、どう評価いたしますでしょうか、是非ご意見をお聞かせ下さい。



(木走まさみず)