木走日記

場末の時事評論

とんちんかんな日経社説と気持ち悪い朝日社説〜「恋をしたことがあるだろうか」とか「至らないところばかりの私たちです」とか余計なお世話だっての(爆)

 今日、入社式の会社も多かったのではないでしょうか。

 入学式に入社式、この春に新たな人生の門出を迎える人達もたくさんいることでしょうネ。



●ようこそ、新人諸君・・・恋をしたことがあるだろうか〜とんちんかんな日経社説

 昨日(2日)の日経社説から・・・

社説2 ようこそ、新人諸君(4/2)

 春4月。多くの職場で若い仲間を迎える季節が今年も来た。新人諸君には心から「ようこそ」と言いたい。板に付かぬスーツ姿、使い慣れぬ敬語がベテラン社員に初心を思い出させ、若手社員には先輩としての責任感を生む。仕事ぶりは半人前でも臆することはない。愚行も不作法も、次の新人が配属されるまでは許される。じっくり成長すればいい。

 間近に迫る団塊世代の大量退職に景気回復が重なり、産業界は新卒採用に力を入れている。社員はコストではなく、技術やノウハウを継ぐべき「人財」であり、競争力の源であるという正常な発想が再び広がってきた。日本企業の強みは、マニュアル化が困難な「暗黙知」を日常の中で共有していくところにある。新人ももちろんその重要な担い手だ。

 一方、今の若者の特徴の一つは「無駄嫌い」だといわれる。見返りの有無で頑張り方に差が出る。正解の見あたらない課題は避けて通る。初めて接する他者は「考え方が近いか」「話が分かるか」を見極めてから心を開く。仕事そのものへの意欲や好奇心は旺盛なのに、年長者の目には「元気がない」ように映ってしまう。これでは幅広い暗黙知の伝承は難しい。企業にも損失だが、若者自身にとってももったいない話だ。

 恋をしたことがあるだろうか。恋愛は結果を問わず人を成長させる。しかし「成長するために、恋するのは、恋愛ではなく恋愛の実験である」「成長の目的が意識にあるかぎり、その恋愛の経験は根底に徹することができない」。戦前の若者が競って手にした哲学書「三太郎の日記」の一節だ。実感として理解できると思う。恋愛に限らず、「私たちは成長の目的を意識せずとも、すべて与えられたる経験に深入りすることによって成長(事実上)する」と著者、阿部次郎は説く。

 仕事もまたしかり。人はなぜ働くのか。壁にぶつかり、疑問に悩む日が遠からず来るかもしれない。豊かさの中で生まれ育った世代には、親たちと異なり「郊外・庭付き一戸建ての購入」のような自明な答えはない。目の前の仕事に思い切って浸り、まず人間として成長してほしい。広がった視界の先に、自分なりの働く意味が、きっと姿を現すはずだ。
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20060401MS3M0100D01042006.html

 なんだかなあ、新人諸君も、よりによって日経社説に「恋をしたことがあるだろうか」なんて問いつめられたくもないでしょうねえ、余計なお世話というものです。

 この社説は何がいいたいんだろうなあ。

 「恋愛は結果を問わず人を成長させる」のと同じように、仕事というものも、へんな目的意識など持たずにまずは「目の前の仕事に思い切って浸り、まず人間として成長してほしい」らしいですよ、日経社説子さんは・・・

 どうなんだろう。

 「恋愛」と「仕事」ってまったく異なると思うんですよね、特にその「義務感」が。

 不肖・木走から言わせてもらえば、「恋愛」ってのは、両想いにせよ片思いにせよ、そこにはかなり積極的な能動的な動機付けがあるわけで、一方の仕事というのは多くの人にとって義務感が先にきてしまう苦行に近い「労働」でもあるわけで、もちろん中にはやりたい職業にラッキーにつくことができて仕事が楽しくてたまらない人も少数ながらいるでしょうが、そのように仕事大好き人間だとしても毎日の労働というのは決して楽しいことばかりじゃないわけですよね、きっと。

 ・・・

 「仕事」を「恋愛」なんかに喩えても新人諸君には誤解を与えるだけだと思ってしまいますですよ。

 私に言わせりゃ、「仕事」は「恋愛」というよりも、「結婚」に近いと思います(苦笑
 「仕事」なんてそんなものは、薔薇色でもないし、ときに「自分を殺さなければならない」場面も多いし、努めても努めても尊敬されるどころか粗大ごみ扱いされちゃうこともしばしばあるし、いろんな意味で「結婚」に近いでしょ(キッパリ

(↑いいのか、こんなきめつけで? しかもかなり個人的経験が混ざっているが(苦笑))

 ・・・(汗

 新人諸君、仕事とはそんなに甘くはないのです。

 この日経社説は少しとんちんかんだと思います。

 「目の前の仕事に思い切って浸り、まず人間として成長してほしい。広がった視界の先に、自分なりの働く意味が、きっと姿を現すはずだ。」などと、この社説は日経社説らしく美しくまとめていますが、不肖・木走が現実的なアドバイスをさせていただきましょう。

 「目の前の仕事に思い切って浸る」ばかりでは息が抜けずに持ちません。まずは上司に睨まれずに「いかにして気を抜く」かそのテクニックを習得しましょう。

 マジメ一本じゃ身が持ちませんよ(苦笑

 あと、「まず人間として成長してほしい。広がった視界の先に、自分なりの働く意味が、きっと姿を現すはずだ。」もウソです。

 君たちもよく承知していると思いますが、一生懸命仕事しても「人間として成長」するかどうかはとっても個人差があります。

 さらに、嫌なこというようですが、何年も働いた後で、「広がった視界の先に、自分なりの働く意味が、姿を現」したときには、実はもう転職に手遅れなケースだってありますよ。

 ウソだと思うなら、ちょっと職安(ハローワーク)いってごらんなさい。世の中つぶしがきかない老若男女がいっぱいいるのです。

 新人諸君、この日経社説はとっても大新聞の社説ナルモノの本質がよくあらわれていると思うのですよ。

 書かれていることはとってもステキなんだけど、現実を踏まえた議論にはなっていないところが、この大新聞の社説ナルモノの本質なのであります。



●上司も夢や志を語れ・・・至らないところばかりの私たちです〜恥ずかしくなる朝日社説

 かたや、同じく昨日(2日)の朝日社説から・・・

新入社員から 上司も夢や志を語れ

 景気が上向いて就職氷河期の氷が解け、晴れて私たちは社会人になります。

 よく、私たちは夢を語れと言われます。生意気なようですが、上司の皆さんも、夢を、志を語っていただきたい、と思います。借り物でないご自身のことばで。それが本物ならば、きっと私たちは共に歩んでいける、と確信します。

 入社に当たって、まず社会経済生産性本部の新入社員意識調査をもとに、私たちの胸の内を述べたいと思います。

 この会社を選んだ理由で一番多かったのは「自分の個性や能力を生かせる」です。70年代初頭にトップだった「会社の将来性」は1割以下です。「定年まで勤めたい」人も2割を切っています。

 終身雇用が後退し、企業の再編や合併、倒産でいつまで会社が存続するか、先行き不透明な時代です。

 新大関白鵬(はくほう)は全身全霊を相撲にささげると抱負を語りましたが、会社にそこまでやるのはリスキーでしょう。仕事や会社と自分の関係は、皆さんの新入社員時代よりシビアだと思います。

 私たちは仕事を通じて人間関係を広げていきたいと希望しています、上司の皆さん、「やっぱりノミ(飲み)ュニケーションか」と張り切らないでください。職場に限らず、幅広いネットワーク、会社を離れても役に立つ人脈のことです。

 そんな態度で仕事仲間になれるのか、と怒られるかもしれません。就社でなく、就職という意識が定着したと考えてください。

 会社もまた「あなたは何ができるのか」だけに関心をもち、新卒かどうかなど関係なくなる時代の到来を社会学者の岩間夏樹さんは予測しています。

 「周囲と協調して働けない」「指示がないと動けない」といった若い社員への不満があります。確かに、旧世代とうまくコミュニケーションがとれない傾向はあるようです。

 しかし、私たちは携帯電話やインターネットという新しいツールによるコミュニケーションには、たけています。今の若者には多様な人間関係を結べる繊細な感性がある、と指摘する研究者もいます。こんな特性をどうぞ、うまく使いこなしてください。

 運良く就職先を得た私たちですが、約3割が将来はフリーターになるかもと感じています。人件費削減のあおりで、正社員にも過酷な労働条件が待っていることを予想しているのかもしれません。

 その証拠に、就職難にもかかわらず離職率は変わっていません。大学出の場合、就職3年以内に3割を超える人が辞めています。

 至らないところばかりの私たちです。自画自賛ではありますが、本田宗一郎さんの言葉を紹介し、結びとさせていただきます。

 「時代が進歩すれば、若者も進歩するにきまっている。永遠に若い人の知恵は進歩する」
http://www.asahi.com/paper/editorial20060402.html

 ・・・

 うーん、しかし赤面しちゃうなあ、この朝日社説には・・・

 朝日社説子よ、いつからあんたは新入社員になったんですか?(爆

 あのですね、気持ち悪いのですよね、文章全体が。

 たとえば、この下り。

 よく、私たちは夢を語れと言われます。生意気なようですが、上司の皆さんも、夢を、志を語っていただきたい、と思います。借り物でないご自身のことばで。それが本物ならば、きっと私たちは共に歩んでいける、と確信します。

 本当に新人諸君が発言しているのならば、もちろん真摯に耳を傾けたいですが、朝日の論説委員のおじさん達がごま塩頭をポリポリ掻きながら推敲した文章なんでしょ。

 朝日論説委員のおじさん達の顔を思い浮かべるとこの文章は、素直に新入社員から上司への提言などとはとても読めないわけでして、ようは朝日の社説子がえらそうに民間会社の新人を受け入れる上司達に、物申しているわけですよね。

 ゾワゾワゾワゾワなんです、悪いですが。

 ・・・

 ふう。

 なんだかなあ、「上司も夢や志を語れ」とはそれ自体正論でありましょうが、一体この社説は何がいいたいのだろうか・・・

 たとえばこの下り・・・

 運良く就職先を得た私たちですが、約3割が将来はフリーターになるかもと感じています。人件費削減のあおりで、正社員にも過酷な労働条件が待っていることを予想しているのかもしれません。

 一人称で新人に成り代わって意見を言うのも有りかも知れませんが、そのわりには「予想しているのかもしれません。」なんて他人事になっちゃってたりして(苦笑

 で、続いて変なこと言ってますが・・・

 その証拠に、就職難にもかかわらず離職率は変わっていません。大学出の場合、就職3年以内に3割を超える人が辞めています。

 あのですね、「大学出の場合、就職3年以内に3割を超える人が辞めてい」る事実が、なんで「人件費削減のあおりで、正社員にも過酷な労働条件が待っていることを予想している」証拠になるんですか。

 根拠、示して下さい、根拠を。

 私の経験で言えば、「過酷な労働条件」が理由で3年以内に会社を辞める人が中にはいることは認めますが、逆はまったく成り立ちませんよ。

 つまり、3年以内に会社を辞める人の理由は、「仕事がつまらない」とか「給料・待遇が不満である」とか「人間関係がうまくいかない」とか「ほかにもっとやりたいことがある」とか「単にはたらきたくない」とか、人それぞれ、千差万別の理由があるわけです。

 なんだかな、雇用者と被雇用者との関係で論じ過ぎなんですよ、朝日は。

 いいですか、新人諸君。

 仕事はたしかにつらく厳しい面もあります。

 しかしこんな朝日社説に踊らされてはダメですよ。

 社説の結語、

 至らないところばかりの私たちです。自画自賛ではありますが、本田宗一郎さんの言葉を紹介し、結びとさせていただきます。

 「時代が進歩すれば、若者も進歩するにきまっている。永遠に若い人の知恵は進歩する」

 しかしなあ、「至らないところばかりの私たちです。」って、これも本当に余計なお世話ですよね(苦笑

 ・・・



●とんちんかんな日経社説と気持ち悪い朝日社説〜「恋をしたことがあるだろうか」とか「至らないところばかりの私たちです」とか余計なお世話だ!

 とんちんかんな日経社説といい、気持ち悪い朝日社説といい、余計なことばかり書いてありますよね。

 「恋をしたことがあるだろうか」とか「至らないところばかりの私たちです」とか、大新聞社説のほうがよっぽど新人諸君を小馬鹿にしているのかも知れませんよ。(苦笑)

 ・・・

 ただ、本田宗一郎さんがなんて言ったか知りませんが、あなた方は、社会人としてはオミソで半人前であることは事実なんです。

 そんなこと当たり前のことなんです。

 ポット出の新人がすぐに頭角をあらわすような職業は、この日本にいかほどあるというのでしょう。

 現実は厳しいのです。

 ・・・

 ふう。

 新人諸君、いいですか、マスメディアの戯れ言など信じちゃダメですよ。

 謙虚にそしてずるがしこく、社会人としてたくましく生き抜いて下さいね。

 一零細企業の中年オヤジとして、諸君の健闘を心から祈るしだいであります。



(木走まさみず)