この際、真相究明のため国政調査権の発動をしたらどうか〜産経社説「メール疑惑 中途半端で終わらせるな」を支持する
●四面楚歌の民主党〜主要各紙本日(23日)社説で一斉に民主党批判
昨日の党首討論を受けて、主要各紙の社説は、本日(23日)一斉に民主党批判で揃い踏みであります。
【朝日社説】民主党 うやむやは許されない
http://www.asahi.com/paper/editorial.html
【読売社説】[疑惑メール]「『真偽』の問題から焦点をそらすな」
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20060222ig90.htm
【毎日社説】送金メール もはや民主党の信用問題だ
http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/shasetsu/news/20060223k0000m070151000c.html
【産経社説】メール疑惑 中途半端で終わらせるな
http://www.sankei.co.jp/news/editoria.htm
【日経社説】あいまい決着は許されない(2/23)
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20060222MS3M2200522022006.html
例によって、各紙社説の結語をまとめておきましょう。
【朝日社説】民主党 うやむやは許されない
重要な発信をする際に独断で突っ走り、あとでつじつま合わせに追われるようでは、政党としてあまりに未熟と言わなければならない。メールが本物であるという説得力のある証拠を示せないなら、ここは素直にそのことを認めて出直すべきではないか。衆院で懲罰動議を出されている永田氏だけでなく、前原氏ら党執行部の責任問題も避けて通れまい。
ライブドア事件のほかにも、小泉政権の責任を問わねばならない課題は山積している。しかし、疑惑メールの件をうやむやにしたままでは、ほかのテーマで政府を追及したとしても説得力が出てくるはずもない。
【読売社説】[疑惑メール]「『真偽』の問題から焦点をそらすな」
だが、口座名や口座番号を明らかにし、自民、民主両党が合同で調査すれば、真実は直ちに明らかになる。なぜ、国政調査権にこだわるのか。民間に対する国政調査権は衆院で過去2回発動されたが、銀行などに司法的な強制権を行使できず、必ずしも実効は上がっていない。何よりも明確にすべきはメールの真偽だ。本物であると言うなら、その立証責任は民主党にある。小泉首相は、「真偽が分からない情報で、実名を挙げて一方的に非難・中傷するのは国会議員としての品性の問題だ」と語った。誰しも、それほど異論はないのではないか。
国政調査権と絡めることで問題を引き延ばしては、メールの真偽も含めた真実の解明が遠のく。まさか、民主党は、それを狙っているのではあるまい。
【毎日社説】送金メール もはや民主党の信用問題だ
今回の一件は、仮に真実だとすれば、武部氏の進退に直結する問題だ。小泉政権を直撃する重大事だというのに、党をあげて情報を収集し、精査するなど、果たして戦略的に対応してきたものだったのかどうか。疑問視する声が早くも出てきている。党内には前原氏ら執行部批判ももたげてきた。いつものお家騒動に、小泉首相から「ご苦労も多いと思う」と前原氏が同情される始末だ。加えて、耐震データ偽造事件や米牛肉輸入問題、官製談合事件など、まだ解明されていない数々の問題が、メール騒動で結果的に消し飛んでしまった罪も大きい。
メールのみならず、民主党そのものへの信用が失われる事態だ。うやむやにして、ごまかそうなどとは夢にも思わぬ方がいい。
【産経社説】メール疑惑 中途半端で終わらせるな
自民党内からも「国政調査権は伝家の宝刀なので慎重に扱うべきだ」などの意見が相次いでいる。国政調査権は憲法六二条が定める衆参両院の権利で、各院は行政機関や民間企業などに証人の出頭、証言、記録の提出を求めることができる。調査権の乱用は戒めなければならないが、今回は事実の解明を優先すべき事態だ。自民党も新たな問題が出てしまうとためらっているわけではあるまい。
与野党が対立するテーマで、互いに主張を繰り広げ、いつの間にかうやむやになった例は枚挙にいとまがない。不明朗な手法は小泉、前原両氏とも望んではいまい。早期に決着させ、実りある論戦に舞台を移すべきだ。
【日経社説】あいまい決着は許されない(2/23)
党首討論で前原氏は資金提供疑惑について「我々は確証を得ている」と述べたが、それを裏付ける新たな資料は一切示さなかった。民主党が資金疑惑の根拠としたメールの正当性が揺らいでいる以上、民主党はまず新資料を提示する必要がある。小泉首相は「ご苦労も多いと思うが、しっかり頑張ってほしい」と、前原氏にエールを送る余裕すらみせた。この状態が長引けば民主党の信用が低下するだけである。前原氏は資金振込に関係する口座名や口座番号の情報を得ていると言明した。メールの真贋の決着がつけられないとすれば、この口座を調べない限り事実関係は究明できないだろう。国政調査権の発動を含め、与野党はその手立てを早急に検討する必要がある。国民の関心は高く、あいまいなまま幕を引くことは許されない。
うーん、民主党、四面楚歌であります。
まあ、自業自得でしょうね。
しかし、新たな裏付け資料も何も示せないでただただ「国政調査権の発動」を主張するばかりの前原党首の発言は、予想はしていたモノのがっかりなのでありました。
トホホな展開だよなあ・・・
・・・
●社説を読み解くプチリテラシー〜冒頭文だけで見えてくる文章の感情移入度
ところで、日本のメディアの社説のおもしろい特徴のひとつとして、今回のように論説対象(民主党)に対して激しく怒っているときには、かなり感情移入された檄文調の文体を採用する場合があります。
檄文調にしたところで、かえってジャーナリズムテクストとしては冷静さを欠いた印象を与えるだけだと、私などは思ってしまいますが、なぜか日本の新聞は「感情移入された」文章がお好きなようです。(苦笑)
で、社説を検証するときのちょっとしたプチテクなのですが、けっこう冒頭文1行だけで、その社説全体の感情移入度が見えてくる場合が多いです。
今回の社説の冒頭部分を比較してみましょう
【朝日社説】民主党 うやむやは許されない
民主党にまたもはぐらかされた。
【読売社説】[疑惑メール]「『真偽』の問題から焦点をそらすな」
疑惑メールの真偽という問題から、焦点をそらそうとしているのではないか
【毎日社説】送金メール もはや民主党の信用問題だ
メール問題をうやむやにしたいのは民主党の方ではないか−−
【産経社説】メール疑惑 中途半端で終わらせるな
民主党が提起したライブドアから武部勤自民党幹事長の二男への資金提供疑惑は一体いつ解明されるのか。
【日経社説】あいまい決着は許されない(2/23) 小泉純一郎首相と前原誠司民主党代表による今国会初の党首討論が行われた。
おもしろいものですね。
朝日の「民主党にまたもはぐらかされた。」は、明らかに「またもはぐらかされた。」という箇所に民主党に対する裏切られた感・軽蔑感のようなものが込められています。
読売・産経・毎日の疑問文で始まるやり方も、檄文調のときの常套手段でありまして、たとえば読売の「疑惑メールの真偽という問題から、焦点をそらそうとしているのではないか」などでも、その後に(そう思われても仕方ない)とか(そうに違いない)とか(そうに決まってる)とかが省略されているように読者には読みとれるので、実は弱い形での断定の文になっていることが多いわけです。
で、抑揚を抑えた冷静な書き出しが一目瞭然なのは、日経の「小泉純一郎首相と前原誠司民主党代表による今国会初の党首討論が行われた。」でありますね。
・・・
なんだかなあ、日本の新聞社説はわかりやすいというか・・・(苦笑
だいたい、いつも各紙の感情移入度・興奮度はこの順番なのであります。(苦笑
●興味深い各紙の国政調査権の発動に関する姿勢
で、今回の各紙社説の揃い踏みですが今検証したとおり民主党に対して厳しく批判をしている点では共通していますが、興味深いのは各紙の国政調査権の発動に関する姿勢が意見が割れていることです。
安直な国政調査権の発動は許されないと主張しているのが、朝日・読売・毎日。
【朝日社説】民主党 うやむやは許されない
疑惑に相応の根拠があるのなら、真相の解明のために国政調査権を発動することもあっていい。私たちもそう思う。だが、今回の経緯をみる限り、「立証責任は民主党にある」という自民党の主張に分がありそうだ。真贋に疑問があるメールを、それも一部を塗りつぶしたままで示すだけで、個人の銀行口座を強制的に調べようと求めるには無理がある。
【読売社説】[疑惑メール]「『真偽』の問題から焦点をそらすな」
無論、状況によっては、国政調査権の発動が必要な場合もあるだろう。だが、口座名や口座番号を明らかにし、自民、民主両党が合同で調査すれば、真実は直ちに明らかになる。なぜ、国政調査権にこだわるのか。民間に対する国政調査権は衆院で過去2回発動されたが、銀行などに司法的な強制権を行使できず、必ずしも実効は上がっていない。
【毎日社説】送金メール もはや民主党の信用問題だ
しかし、前原氏が「この約束がないと我々にはカードがなくなる」と思わず漏らしたように、実際に口座が存在し、金銭の授受があったかどうか、これまでの説明では何ともおぼつかない。だから、できれば自民党に国政調査権の発動を拒否してもらいたい。それを理由に、あいまいなまま幕引きする……。それが民主党の本音ではないかとさえ見えるのだ。もし、そうでないというなら、民主党が、まず口座名などを明かせばいいだけの話だ。もはや、民主党が動かないと次の段階には進まない。そして、早急に白か黒かの決着をつけるべきである
意外にも積極的に国政調査権の発動を主張しているのが産経。
【産経社説】メール疑惑 中途半端で終わらせるな
自民党内からも「国政調査権は伝家の宝刀なので慎重に扱うべきだ」などの意見が相次いでいる。国政調査権は憲法六二条が定める衆参両院の権利で、各院は行政機関や民間企業などに証人の出頭、証言、記録の提出を求めることができる。調査権の乱用は戒めなければならないが、今回は事実の解明を優先すべき事態だ。自民党も新たな問題が出てしまうとためらっているわけではあるまい。
ここでも冷静に国政調査権の発動の可能性を含めて事実関係の究明を求めているのが日経。
【日経社説】あいまい決着は許されない(2/23)
前原氏は資金振込に関係する口座名や口座番号の情報を得ていると言明した。メールの真贋の決着がつけられないとすれば、この口座を調べない限り事実関係は究明できないだろう。国政調査権の発動を含め、与野党はその手立てを早急に検討する必要がある。国民の関心は高く、あいまいなまま幕を引くことは許されない。
産経だけ目立って国政調査権の発動に積極的なのは、興味深いです。
●たまには産経社説を支持してみる〜この際、真相究明のため国政調査権の発動をしたらどうか
今日(23日)の産経記事から抜粋・・・
堀江メール 前原代表、新証拠示せず 未熟さ露呈、再選に黄信号
(前略)
■首相、国政調査権に慎重
小泉純一郎首相と民主党の前原誠司代表は二十二日の党首討論で、ライブドア前社長の堀江貴文容疑者が、武部勤自民党幹事長の二男への送金を指示したとされる「堀江メール」問題をめぐり約十分間、応酬した。前原氏は、国政調査権の発動が確約されれば新事実を公表するとの考えを明らかにしたが、新たな「証拠」は提示せず、首相は国政調査権の発動に慎重姿勢を示した。
前原氏は、堀江容疑者から武部幹事長の二男への資金提供について、「さまざまな情報から確証を得ている」と明言した。その上で、「(与党側が)国政調査権の発動に応じるのであれば、銀行口座名、口座番号を含めてしっかり提示する」と強調、小泉首相に国政調査権の発動に応じるよう強く求めた。
これに対し、小泉首相は、衆院予算委員会でメール問題を最初に取り上げた民主党の永田寿康氏について「本物かニセ物かわからない段階で、公の場で個人を批判するのは国会議員としての品性の問題だ」と批判した。さらに、「国家権力の行使は極めて注意深く、慎重に行使していかなければならない」と述べ、国政調査権の発動について慎重な考えを示した。
(後略)
平成18(2006)年2月23日[木] 産経新聞
http://www.sankei.co.jp/news/morning/23pol001.htm
小泉首相の「本物かニセ物かわからない段階で、公の場で個人を批判するのは国会議員としての品性の問題だ」には同意なのでありますが「国家権力の行使は極めて注意深く、慎重に行使していかなければならない」はいかがなものでしょう。
今回の場合、産経社説が指摘するとおり「調査権の乱用は戒めなければならないが、今回は事実の解明を優先すべき事態」であると考えます。
ガセネタを根拠無く採用して個人の名誉毀損をしたのか、民主党の真の責任を明確にするためにも、曖昧に終わらすのではなく、ここは国政調査権の発動も含めて取れる手段を全て駆使して真相究明にあたるべきでしょう。
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たまには産経社説を支持してみます。
この際、真相究明のため国政調査権の発動をしたらいかがでしょう。
(木走まさみず)