木走日記

場末の時事評論

成人の日でもやっぱし他紙から浮きまくる産経社説〜一紙ぐらい頑固親父がいてもいいかもね

kibashiri2006-01-09




●成人の日おめでとうございます。ついでに小泉首相おめでとうございます(笑)

 全国の弱冠20歳のみなさま、成人の日おめでとうございます。
 あ、それから一日過ぎてしまいましたが、小泉首相64歳の誕生日にバラを一本貰えておめでとうございます。(笑

バラ贈られご機嫌 首相、64歳誕生日前に

 小泉純一郎首相は6日、64歳の誕生日を8日に控え、官邸で首相番記者から激励の寄せ書きと一輪のバラをプレゼントに贈られた。首相が贈り物をもらわないのは有名だが、この日はにこやかにバラを受け取り「女性の色気もいいけど、この花の色気もいいね」とご機嫌だった。

 記者団から64歳になる感想を聞かれると、「若いころは60歳を過ぎるとおじいさんだという気がしたけど、今はそんな気がしない。年を気にしないで精いっぱい努力しなければいけない」と若さをアピール。

共同通信社
http://www.toonippo.co.jp/news_kyo/news/20060106010024901.asp

 「女性の色気もいいけど、この花の色気もいいね」とは乙なこと言いますねえ。

 「若いころは60歳を過ぎるとおじいさんだという気がしたけど、今はそんな気がしない。年を気にしないで精いっぱい努力しなければいけない」とは、いや一国の首相ですから激務なのでしょうがそんなこたあ微塵にも感じさせない頼もしい発言であります。

 ・・・

 えーっと、64歳と言えば昭和17年生まれでありますか。

 弱冠20歳から比べたら3倍以上も生きてこられたわけですが、まあ日本のマスメディアに比べたら若い、若い。

 まだまだこれからでありますよ。


●改めて確認する日本マスメディアの長い伝統ある歴史〜てゆうか業界体質が古いわけですね(苦笑

 ちなみに全国紙5紙の創刊時期でありますが、それぞれの社史等によれば、前身の会社を含めてでありますが、古い順に以下のとおりであります。

毎日新聞創刊 明治 5(1872)年 創業133年
読売新聞創刊 明治 7(1874)年 創業131年
日経新聞創刊 明治 9(1876)年 創業129年
朝日新聞創刊 明治12(1879)年 創業126年
産経新聞創刊 昭和 8(1933)年 創業072年

<参考公式サイト>
朝日新聞社の歩み(126年)
http://www.asahi.com/shimbun/honsya/j/history.html
読売新聞小史(131年)
http://info.yomiuri.co.jp/company/history/
毎日新聞沿革
http://www.mainichi.co.jp/annuncio/enkaku.html
産経新聞会社概要
http://www.sankei.co.jp/saiyo/01.html
日経の歩み
http://www.nikkei.co.jp/nikkeiinfo/company/history.html

 いやあ、産経を除いてみなさん、130年前後もメディアしてたのですねえ(爆

 比較的若い産経にしても72歳かあ(しみじみ

 うむ、日頃マスメディア評論ばかりしている当ブログですが、このめでたい成人の日にあらためて確認してみると、日本のマスメディア業界って長い伝統ある歴史を刻んできたのですね。

 てゆうか業界体質の古さがよく理解できますですね(苦笑



●しかしなんで新聞は毎年成人の日に社説で新成人に祝辞を載せるのでしょうねえ?

 かねがね不思議に思っていたのですが、なんで日本の新聞は毎年成人の日に社説で一斉に新成人に祝辞を載せるのでしょうねえ。

 今日日の20才の大半は新聞社説など関心無くて読んでないってば(苦笑

 まあ、最年長毎日新聞の133才(?)を筆頭とする、年寄り、いや失礼、長寿というか長い歴史で培われた古い業界体質が、何事も業界横並び閉塞体質をうんでいると勝手に解釈しておきましょう。

 で、今日の全国紙社説。

【朝日社説】成人の日に ちょっと跳んでみようよ
http://www.asahi.com/paper/editorial.html
【読売社説】[成人の日]「夢かなえる努力を惜しまずに」
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20060108ig91.htm
【毎日社説】ポスト米一極時代 共感生む柔らかな同盟を
http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/
【産経社説】成人の日 世を渡る人生設計を描け
http://www.sankei.co.jp/news/editoria.htm
【日経社説】転換期に挑戦する新成人に期待
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/index20060108MS3M0800108012006.html

 ん?

 おや、毎日だけは、元旦から毎日社説で展開しているが余り注目されていない(苦笑)「ポスト〜」シリーズをぶつけてきて、新成人への祝辞を社説には載せていません。

 残念ですがしかたない、では毎日以外の残る4紙の社説を見てみましょう。

 で、この成人の日の各紙社説なのですがプチメディアリテラシーしておきますと、いくつかの作法というかおきまり事があるようです。

 まず第一の特徴としては、読者のみなさんもよくご存知でしょうが、ほぼまちがいなく社説全体が『青年への主張』風に若者に語りかける調の気色の悪い論調であることです(苦笑

 で、二番目ですが、驚くほど文章構成が似ています。不肖・木走が検証したところ、論説の進め方にちょっとした定番の型というますかテンプレートがあるようなのであります。

【成人の日用新聞社説のテンプレート】

1.今の世の中への愚痴をいう。
(せっかくの成人なのに大人達がこんな世の中にしてごめんね風)
2.でも若いということは素晴らしい可能性があると励ます。
(こんなにがんばってる若者もいるとか、最近の若者の長所をほめるとか風)
3.最後に歯の浮いたような若者へのはげましでくくる。
(日本の将来は君たちにかかっているんだ風)

 


●朝日・読売・日経の各社説に見るおもしろいほどの定番ぶり!!

 で、今年の各紙社説を検証してみましょう。
 定番テンプレートに該当する個所を抜粋してみます。

■朝日社説の場合

1.今の世の中への愚痴をいう。
 少し景気が上向いたとはいえ、「勝ち組・負け組」というような言葉がはやる異常な世の中である。そんな社会に背を向けたい気持ちも分かる。

2.でも若いということは素晴らしい可能性があると励ます。
 大学3年の時、「あなたの1年をかけてみよう」というポスターにひかれ、応募したのがきっかけだ。「楽しいことばかりではなかったが、自分の中で何かが変わった」。村で結婚し、今は福祉施設で働く。沖縄から出たことがなかった女性が、何千キロも離れた山村でかけがえのない人材になっている。

3.最後に歯の浮いたような若者へのはげましでくくる。
 ちょっと勇気を出し、知らない世界をのぞいてみよう。からだを思い切り動かして働いてみたらどうか。他人と付き合ってみるだけでもいい。失敗したら、やり直せばいい。時間はたっぷりある。

 ね、見事でございましょう(爆笑

■読売社説の場合

1.今の世の中への愚痴をいう。
 そんなお祝いの言葉をかけることにも、いささか躊躇(ちゅうちょ)してしまいます。皆さんのことを、胸を張って迎え入れられる大人社会なのか、確固たる自信が持てないからです。

 会社倒産、リストラの嵐は少し収まりつつあるようです。が、生活の安心・安全を揺るがす事件や事故は後を絶ちません。昨年もJR電車の脱線事故、子どもの誘拐殺人事件、マンションの耐震強度偽装事件などがありました。

 使用禁止命令が出たマンションの住民には、小さな子どもがいる30代の夫婦も多いのです。皆さんと同じころ社会に出て十数年、懸命に働き、ローンを組んで、初めて買った「わが家」でした。

 夢を砕いたのは元1級建築士や関係業者だけではないでしょう。業界体質や行政に問題はなかったか。そもそも、規制緩和で国が建築確認検査を民間委託したこと自体、妥当だったのか。社会全体で検証しなければならないと考えます。

 皆さんの将来には、課題も多くあります。例えば年金です。今は高齢者1人を現役3人強で支えていますが、人口減社会の日本で皆さんが40歳になるころは、2人で支えなくてはなりません。どんな制度にすれば良いのか、皆さんも自分の問題として考えてみてください。

 「格差社会」が拡大している、といわれます。かつての「一億総中流」が一部の金持ちと、そうでない人たちとに2極分化し、所得、雇用、教育などに不平等が生じているのだそうです。

2.でも若いということは素晴らしい可能性があると励ます。
 皆さんの世代の中には、早々と才能を開花させ、社会に感動や勇気を与えてくれる人たちも出始めています。

 スポーツの分野では、20歳の宮里藍選手が米女子プロゴルフの予選会をトップで合格し、今季のツアー出場権を獲得しました。トリノ五輪を目指して氷上を舞うフィギュアスケーターたちの姿にも、魅了されました。

3.最後に歯の浮いたような若者へのはげましでくくる。
 形は違っても、若い皆さんには総じて将来の「可能性」を期待せずにはいられません。自分の夢の実現に向けて、努力を続けて行ってほしいものです。

 読売、愚痴おおすぎ(苦笑

 でも見事にテンプレートどおりですね。

■日経社説の場合

1.今の世の中への愚痴をいう。
 日本の転換期に大人になった――。今日、成人の日を迎えた若者たちにはこう感じた人もいるだろう。日本の総人口は昨年、戦後初めて減少した。年金などの社会保障制度や会社経営は見直しを迫られている。

 昨年中に20歳になった男女は143万人で、前の年より7万人減った。総人口に占める割合も1.12%と過去最低だ。新成人数は1995年から減っており、総人口の減少を先取りしていたといえる。

2.でも若いということは素晴らしい可能性があると励ます。
人口増加時代の記憶が強く残る世代だけでは限界も出てくるだろう。固定観念にとらわれない若者の出番が必ずあるはずだ。

 ひ弱といわれることもあるが、若い世代にはIT(情報技術)を使いこなせるといった強みがある。海外の人たちと肩ひじ張らずに交流できる人も多い。

3.最後に歯の浮いたような若者へのはげましでくくる。
得意分野を生かして、新しい時代を切り開く意気込みを見せてほしい。

 うむ、元旦社説から人口問題を取り上げてきた日経らしく、成人の日にも少子化問題をぶつけてきましたね。

 ・・・

 しかし、そろいもそろって似た構成なのであります。

 ・・・

 ん?

 あれ、産経の社説ですが、なにやら少々論調が違うような・・・



●若者をしかる産経社説の異色ぶり〜戦後捨ててしまった価値観の中に、拾い上げて祖国再生に役立て得るものもあるはずだ!!

■産経社説の場合

1.今の世の中への愚痴をいう。
 戦後社会はある意味で過去の価値観を否定する向きで時の流れをつくってきた。豊かさに慣れてしまった世代では特に、例えば、身を立て名を上げようとする志を軽んじて、勤勉さよりも安逸さを求める傾向がみられ、自由気ままにそこそこの人生を送れればいいという層が増えた。

 一方、努力する者が報われるのは当たり前という新しい成果主義の考え方が広がり始めた。法に触れなければ何をしても構わないというようなやり方で大金をつかみ、彼らが社会の勝者としてもてはやされる現象もじわじわと広がっている。

2.でも若いということは素晴らしい可能性があると励ます。
 (無し)

3.最後に歯の浮いたような若者へのはげましでくくる。

 世間という座標軸が壊れだし、自己の座標が次第に見えにくくなる中、やみくもに生存競争にさらされる。こんな閉塞(へいそく)感の強い時代こそ、先人の知恵に学ぶことが重要だ。戦後捨ててしまった価値観の中に、拾い上げて祖国再生に役立て得るものもあるはずだ。

 人口自然減という未経験の世界に足を踏み入れたことを奇貨として、どういう生き方がよりましなのか、新成人にはきょうから世を渡る人生設計を描いてほしい。時の流れ行くこと速やかなのはいつの時代も変わらない。空騒ぎなどしてはいられない。

 ん? 

 あれ、産経には若者への励ましが無いです。

 それになんか少し怒っていませんか(苦笑

 最後の締めの言葉も「空騒ぎなどしてはいられない」とは、厳しい父親のようであります。

 産経よ、あなたはアニメ巨人の星星一徹(ほしいってつ)ですか(爆

 ・・・

 それだけではありません。

 特に産経らしいいい味が出ているのは「戦後捨ててしまった価値観の中に、拾い上げて祖国再生に役立て得るものもあるはずだ。」ここですね(爆

 戦後捨ててしまった価値観の中に、拾い上げて祖国再生に役立て得るものもあるはずだ。

 うむ、産経社説は、成人の日に若者達に厳しくも決起(?)を促しているのでありますね(苦笑

 いや、産経らしくていいじゃないですか。

 ・・・


 他紙の型どおりの気色悪い社説からみると、浮きまくりの産経社説でありますが、「頑固親父」みたいで微笑ましいのでした。

 まあ、昨今の家庭内では「頑固親父」はあまりはやりませんのですけどね(苦笑



(木走まさみず)

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