『武部VS山拓』〜どちらが勝っても国民には関係ない悲惨な戦い
このところ自民党武部幹事長と出身派閥山崎派の関係が微妙なのであります。
10月30日付け時事通信から・・・
「首相の信頼得たイエスマン」=留任求め、武部氏がアピール
自民党の武部勤幹事長は30日夕、北海道網走市内で講演し、内閣改造・党役員人事での自らの処遇について、「テレビで財務相になると言っている人がいた。なぜわたしが候補に挙がるかというと、小泉純一郎首相にとって『偉大なるイエスマン』だからだ」とアピールし、幹事長留任か入閣を強く求めた。
さらに「単なるイエスマンではない。つまり首相はわたしを信頼している」と強調。「(首相から)怒られた大臣もいる。役人の言いなりになってちゃんとやらない(からだ)。武部は違うと思われている」と話した。
(時事通信) - 10月30日22時1分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051030-00000067-jij-pol
このあまりに有名な武部氏の『偉大なるイエスマン』発言でありますが、こうまで露骨に猟官発言を堂々とのたまってしまい、また恥もなく自らを『偉大』と形容するとは、武部幹事長もさすがであると一部のメディアからひややかな喝采(?)を受けていたのでした。(苦笑)
この発言のおかげかどうか、見事留任を射止めた武部幹事長なのですが、もう絶好調でありまして有頂天なのであります。
●山崎派の忸怩(じくじ)〜『偉大なるイエスマン』幹事長以外は入閣者ゼロ
喜びはしゃぐ武部氏とは対局にあるのが氏の出身派閥である山崎派なのであります。
冷遇派閥は“恨み節”副大臣ポスト争奪に全力
小泉新内閣
第3次小泉改造内閣発足翌日の1日、冷遇された形の山崎、高村、旧堀内各派では、総会などでなお不満がくすぶった。「入閣ゼロ」となった山崎派総会では、会長の山崎拓・前副総裁が「責任を痛感しており、おわびしたい」と陳謝した。高村派会長の高村正彦・元外相も総会で、「わがグループの優秀なメンバーが誰も登用されなかったことは、国民のために極めてもったいないことだ」と悔しさをにじませた。
入閣ゼロへの反発が出ていた旧堀内派の幹部会合では、「うちには大臣がいないのだから、副大臣ぐらいはよこせ」(幹部)との意見が相次ぎ、副大臣ポストの多数獲得に全力を挙げる作戦に切り替えた。
自民党の武部幹事長は同日の記者会見で、人事への不満が出ていることについて、「我々は派閥政治と決別している。閣僚人事は首相の専権事項だ。そんなことをいつまでもあれこれ論じ合う暇はない」と切り捨てた。
(2005年11月2日0時5分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20051101ia21.htm
武部幹事長の山崎派は入閣者ゼロ人という冷遇ぶりでありまして、山崎拓会長が「責任を痛感しており、おわびしたい」と陳謝したそうですが、小泉政権をべったり支えてきた上に、要の幹事長ポストも自派で押さえてきた山崎拓前副総裁としても、このむごい小泉執行部の仕打ちには忸怩(じくじ)たる思いがあったでしょう。
武部よ、小泉さんの顔色ばかりうかがわないで、少しは自派のことを考えてくれ!!
山崎拓さんにしてみれば、こう叫びたかったのかもしれません(苦笑
山崎派においても山崎拓会長は、副大臣ポストの多数獲得に全力を挙げる旨を述べたそうですが、けなげで涙が出てきそうであります。
●出身派閥を足蹴にする『偉大なるイエスマン』幹事長の冷たい発言
ただ一人留任した武部さんも少しは出身派閥に配慮する発言をするだろうと思いきや、我らが『偉大なるイエスマン』幹事長は、出身派閥の嘆きなど一刀両断であります。
Q: 昨日の閣僚人事で一部の派閥から不満の声が出ているようですが、今度どのような党内融和を図っていくお考えでしょうか?
A: それはそれで認めてもらわなくてはいけません。我々は派閥政治と当然決別していると思っています。政策研究グループというのは存在しても、従来型の派閥という政治は、これは国民が望んでいませんし、今の自民党内にあっても、皆、党中心に結束していこうということであります。
また、閣僚の選任は総理大臣の専権事項であります。もっとも総理は小泉改革の総仕上げに相応しい内閣を作られたと自負しているのでありますし、改革続行内閣といっているのですから、それはそれで是としなければならないのではないでしょうか。また、それだけではありません、全員野球ですから。
私はどこかの新聞社に「政治はオーケストラだ」と言って、笑われた方もいます。しかし、オーケストラなのです。総理大臣が一番偉いのではない。党執行部として幹事長が一番偉いのではないのです。そういう責任と職務にあるということです。また、国会は国会の大事な務めがあります。それは委員長や委員会人事、理事など大事な職務、責任を負った人事がこれから行われるわけです。党内にあっても政策中心の政党政治にしていくということであれば、政調会は非常に大事です。党主導で、政府をリードしていこうということなのですから、「大臣の方が上で、政調会の部会長や調査会長が下だ」という考えは通用しません。そんなことをいつまでもあれこれ論じあう暇はない。しかし、党内でこれから色々な人事が行われるわけでありますので、それぞれに有意な人材がたくさんおります。将来嘱望されている人達もたくさんおります。また、重厚豊富な経験をもった年長多選議員もたくさんおります。そういったもののオーケストラ、交響楽を演ずるような、そういう気持ちでこれからしっかり人事も含めてやっていこうと思っています。部幹事長定例記者会見(役員連絡会後)
平成17年11月1日(火)
於:国会内平河クラブ会見室
http://www.jimin.jp/jimin/kanjicyo/1711/171101.html
「我々は派閥政治と当然決別していると思っています。政策研究グループというのは存在しても、従来型の派閥という政治は、これは国民が望んでいませんし、今の自民党内にあっても、皆、党中心に結束していこうということであります。」って、言い切ってしまっています。
うん、かっこいいけど、なんだかなあ、ちょっと調子に乗りすぎのような気もしないわけでもありませんが・・・
山崎会長他山崎派のみなさんの忸怩(じくじ)たる思いを知ってか知らずか、元気いっぱいの武部さんなのであります。
まあ、この時点ではまだ副大臣ポストがあると一縷の望みを掛けていた山崎拓会長なのでしたが・・・
●嗚呼!山崎派の悲劇:副大臣もゼロ〜山崎拓氏はお怒りなのです
首相官邸
副大臣及び大臣政務官の決定
http://www.kantei.go.jp/jp/koizumiphoto/2005/11/02fukudaijin.html
で副大臣人事の詳細はこちら。
首相官邸
小泉内閣副大臣名簿
http://www.kantei.go.jp/jp/koizumifukudaijin/051102/index.html
嗚呼、なんということでしょう。
同時に発表になった大臣政務官にはかろうじて3人入れましたが、副大臣に一人も山崎派がいないとは、副大臣ポストの多数獲得に全力を挙げてきた山崎拓氏の面目は丸つぶれなのであります。
・・・
これはあんまりの仕打ちであります。
大臣も副大臣もゼロの派閥は山崎派だけなのです。
このようなむごい仕打ちをされては、山崎拓氏でなくても怒ろうというモノです。
今まで政局がらみの発言を控えてきた山崎拓氏でしたが、さっそく昨日メディアにて意味深な発言をいたしました。
安倍氏出馬なら対立候補は一本化=自民・山崎氏が見通し−総裁選
自民党の山崎拓前副総裁は4日、TBSの番組収録で「ポスト小泉」を決める来年9月の党総裁選について「全体の構成は、安倍晋三官房長官が出れば1対1になる。そうしないと(他候補が)勝てない。安倍氏が出なければ、かなりたくさん出る可能性がある」と指摘。ポスト小泉の最有力と目される安倍氏が立候補すれば、対立候補は一本化されるとの見方を示した。
(時事通信) - 11月4日19時1分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051104-00000100-jij-pol
この発言、意図をどう読み取るべきか『武部VS山拓』の文脈で考えてみるとおもしろいです。
山崎拓氏にしてみれば、今回の信じられない冷遇人事をした今の自民執行部には三行半(みくだりはん)を突きつけたいのではないでしょうか。
小泉執行部がもしポスト小泉の候補を阿倍さん一人に絞るとするならば反執行部の候補統一の動きもあるんだぞと、山崎拓氏は言いたかったのではないでしょうか。
それにしても、こんな人事をした執行部に自派の武部氏が元気いっぱいで存在していることは、山崎氏には耐えられないことでしょう。
●『偉大なるイエスマン』は誰にも止められない
今日の日本経済新聞から・・・
自民幹事長、郵政処分組の復党否定
自民党の武部勤幹事長は5日午前のTBS番組で、郵政民営化への反対などを理由に除名や離党勧告などの処分を下した議員らについて「今の状況では戻れないのではないか」と語り、復党は認めない考えを示した。衆院選の公認候補として処分組と戦った議員に関して小泉純一郎首相から「まだ地元でいじめられているようだからしっかり守ってやれ」と指示を受けたことを説明。「地方支部に至るまで新しい自民党にしなければならない」と強調した。
来年9月の党総裁選への出馬の可能性を聞かれ、「考えていない」と否定した。 (11:12)
11月5日 日本経済新聞
http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20051105AT1E0500105112005.html
山崎拓氏の恨み辛みはこの人にはとどいていないようです。
あいかわらず見事な小泉首相の『偉大なるイエスマン』ぶりでして、小泉純一郎首相から「まだ地元でいじめられているようだからしっかり守ってやれ」と指示を受けたことを堂々と示しながら、意気軒昂なのであります(苦笑
『偉大なるイエスマン』武部幹事長の小泉べったり発言は誰にも止められないようです。
・・・
うーん。
この『武部VS山拓』の構図はどうやら決定的なのであります。
武部さん、小泉チルドレンの半分を小泉さんから譲り受け武部派でも作るつもりなのでしょうか?
・・・
しかしなあ、義理人情を重んじすぎて愛人までに人情振りまいてしまった山拓さんと、自己保身のため、過去の恩義を捨てきり『偉大なるイエスマン』と化した武部さん。
昔、怪獣映画の『ゴジラVSキングギドラ』かなんかでゴジラとキングギドラの死闘を目にしてどちらが勝つのか尋ねられた主人公が「どちらが勝っても関係ない。生き残った方が人類の敵となるだけだ」と語るシーンがありました。
さて、この『武部VS山拓』も、なんだか私には「どちらが勝っても国民にはあまり関係ない」気がしてます(苦笑)
生き残った方が人類の敵となるわけでもないでしょうし(苦笑
・・・
それにしてもどこかコミカルな悲惨な戦いでありますね。
(木走まさみず)