木走日記

場末の時事評論

対米追従小泉ポチ外交を嗤う〜これじゃ狂牛病解禁でしょ

kibashiri2005-10-06




●米産牛肉 年内にも輸入再開 牛丼店歓迎、株は大幅高

 今日の産経朝刊から・・・

米産牛肉 年内にも輸入再開 牛丼店歓迎、株は大幅高
安全性なお疑問視 スーパー慎重

 食品安全委員会プリオン専門調査会の議論が進み、米国産牛肉の輸入再開が年内にも実施される可能性が高まってきたことで、経営を直撃された牛丼チェーン各社に業績回復への期待感が強まっている。市場も歓迎し、牛丼チェーンなどの関連銘柄は五日、大幅高となったほどだ。しかし、安全性を疑問視する見方も消えず、信頼回復を図れるかどうかは不透明だ。(深沢真貴、森田晶宏)

 「期待した方向に進んできた」(吉野家ディー・アンド・シー)、「閉塞(へいそく)感が漂う状況が打破され、歓迎したい」(松屋フーズ

 BSE(牛海綿状脳症)が確認され、米国産牛肉が輸入禁止となって約二年。再開への「一歩前進」を先取りし、吉野家は販売再開に向けた準備に入った。二十カ月齢以下の牛に条件が限定され、解禁後も流通量は禁輸前の16%程度とみられるため、当面は期間限定や数量限定販売などで対応することを検討中という。「米国産牛肉」にこだわった結果、業績低迷を余儀なくされ、今期は二期連続で最終赤字の見通しだからだ。

 昨年秋、中国産牛肉で牛丼の販売を再開した松屋や、豪州産と国産に切り替えた焼肉チェーン「牛角」のレインズインターナショナルも、輸入再開後は米国産の一部使用を検討する。牛肉の供給量増加で、「高騰する豪州産や国産牛肉が適正価格に戻る」(レインズ)との見方も少なくない。

 牛丼チェーンの期待を反映するように五日の東京証券取引所では、吉野家が前日終値比三万円高の二十万一千円とストップ高で取引を終了。「すき家」のゼンショー松屋も大幅高で、歓迎ムードが広がっている。

 しかし、大手スーパーは、消費者と直接触れ合う機会が多いだけに安全性を重視してやまない。イトーヨーカ堂は「反応を見極めながら米国産牛肉を店頭で扱うかどうか判断していきたい」、西友も「消費者の要望が強ければ(米国産牛肉を)扱う可能性はある」とあくまで慎重姿勢だ。

 「米国産牛肉は汚染にまみれた『悪者』の容疑をかけられている。いったん刷り込まれたイメージを実態に基づいて解いていくのは大変」。吉野家の安部修仁社長はこう話す。

 輸入再開を消費者がどう受け止めるか。輸入再開の先に、「顧客」というもう一つの関門が、待ち構えている。

平成17(2005)年10月6日[木] 産経新聞
http://www.sankei.co.jp/news/morning/06kei001.htm

 そうですか、米国産牛肉の輸入再開でありますか。

 まあ、吉野屋などの牛丼チェーン各社が大喜びなのはわかります。

 しかし、ちょっとまって下さい。どうもこの食品安全委員会プリオン専門調査会の議論自体、とても胡散臭いのですが、はじめに解禁ありきの出来レースの報告じゃないんですかね。



●なんだか本末転倒で順番がおかしくないですか

 少し調べてみましょうということでプリオン専門調査会の公式サイトはこちら。

内閣府食品安全委員会
第32回食品安全委員会プリオン専門調査会
http://www.fsc.go.jp/senmon/prion/p-dai32/index.html

 で、問題のたたき台修正二次案はこちらのPDFファイル

資料3:米国・カナダの輸出プログラムにより管理された牛肉を摂取する場合と、わが国の牛に由来する牛肉・内臓を摂取する場合のリスクの同等性に係る評価(たたき台修正二次案)
http://www.fsc.go.jp/senmon/prion/p-dai32/prion32-siryou3.pdf

 うーん、それにしても読みづらいレポートですな(苦笑
 私が教官だったら、落第点で再レポート間違いなしです。

 ・・・

 で内容なのですが、これはなんというか素人が読んでもひどい結論付けでありましてお話になりません。

 そもそもこのレポートは、BSE(牛海綿状脳症)発生で日本への輸入を禁止している米国・カナダ産牛肉の安全評価をめぐって、農水・厚労両省が内閣府食品安全委員会に出した諮問への答申(たたき台)なんですが

 はっきり言って、無理やり輸入再開をめざす答申原案だと断定できます。

 米国と日本の牛肉の汚染リスクは「同等」とみなしていますが、これって限りなくへなちょこな前提・仮定の産物であるのは明白であります。

 このレポートでは、生後二十カ月以下の牛の日本向けの牛肉について、米国内ですべて、せき髄除去と洗浄が行われることを前提にしています。

 まずこの前提に何の保証も担保もないのです。

 そのうえで、せき髄からBSE汚染されることは「日本と同様に無視できる」という内容で、さらに、二十カ月以下という月齢判定が困難な内臓肉も「危険部位の除去が適切に行われていれば、(日米の)リスクは同等である」と評価しています。

 なんだかなあ、「もし〜いれば」が多すぎませんか?

 多くの識者が日本と比べて危険な米国の検査実態をさまざまな角度から指摘していますよね。

 「しんぶん赤旗」から抜粋してみましょうか。

 ・米国内の生体牛のBSE汚染について「悲観的には日本より十倍くらい高い可能性がある。
 ・日米の検査結果の比較から、米国のBSE感染牛は日本の五、六倍多い。

 ・米国では食肉解体処理時に健康な牛のBSE全頭検査が実施されていないために「検査によるリスク回避が不可能である。

 ・米国では、大規模な食肉解体施設で、一人で一日五千頭を目視検査する必要があり、「異常牛が見逃される危険性が高いことは否定できない」

 ・米国のずさんな検査体制で、BSEが見逃されていた可能性があり、「米国の報告どおりには受け入れられず、摘発の可能性は報告より高い」

 ・二十カ月以下の牛について、肉骨粉の製造ライン分離がきちんとされていない米国ではBSEの病原に「一定の割合で交差汚染がおこった可能性が否定できない」

2005年9月28日(水)「しんぶん赤旗」より抜粋
座長も言葉濁した
米産牛肉プリオン専門調査会安全評価
“輸入再開ありき”に批判
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2005-09-28/2005092803_01_2.html

 専門家が批判し、疑問を提起する中で、なぜ、仮定を重ねて無理やりに「リスクは同等」とする必要があるのでしょう。

 そもそも政府諮問自体が本末転倒であると、同じ記事で福岡伸一青山学院大学教授は鋭く批判しています。

■本末転倒の政府諮問

 プリオン病研究者の福岡伸一青山学院大学教授(分子生物学者)の話 米国でBSEのリスク対策が完全に行われてくることを前提にして、政府が評価を求めること自体が本末転倒です。

 政府の諮問は「日米が同等」「リスクの増加は無視できる」という答申を導くためのものです。委員から「結論ありきにみえてしまう」と疑問がでるのも当然です。

 リスクの軽重を、死者の数をベースとした数値の大小で問うべきではありません。米国から圧力をかけられ、経済制裁をちらつかせながら、日本が全頭検査から二十カ月以下の検査を除外してまで輸入再開をするというのは、とうてい冷静な議論とはいえません。

 「リスクが同等」ということになれば、つぎは日本のBSE検査体制そのものが「不要」だということにもなりかねません。

 感染源が不明な現在、日本のBSE検査は、BSE感染牛を食から排除するということだけでなく、原因究明のための科学的意義もあります。むしろ米国が食肉解体時にBSE検査をおこない、BSE対策の不備を改善して、日本と同等にするよう求めるのが筋道です。

 「むしろ米国が食肉解体時にBSE検査をおこない、BSE対策の不備を改善して、日本と同等にするよう求めるのが筋道です。」というのは、全くの正論であります。



対米追従小泉ポチ外交が始まった

 日本政府が何でこんなに焦っているのかと言えば、今年3月に公式に政府はアメリカに 「輸入再開の早期解決に向けて取組む」ことを約束しちゃってるわけであります。

(4)BSE問題

(イ) 町村大臣より、以下のとおり述べた。
 食の安全は日本国民にとって大変重要な問題である。食品安全委員会のプロセスが、政治的配慮や海外からの圧力によって曲げられたり、あるいは科学的知見が犠牲にされるような印象を持たれれば、本件の早期解決にも悪影響を与える。
 現在、食品安全委員会プリオン専門調査会は、国内の全頭検査の見直しについて審議中である。国内措置見直し手続の終了後、米国産牛肉の輸入について食品安全委員会に対する諮問が行われる。
 輸入再開期限の設定や、再開の具体的時期の明示は出来ないが、早期解決に向けて取組む。今後とも貴長官には、国内プロセスの進捗状況を適切にお伝えする。
 日本は米国産牛肉の輸入を止めて国内産業を保護しようとしているのではない。いずれにせよ、本件が日米関係を悪化させることがないように注意していきたい。

(ロ) これに対し、ライス国務長官より、以下のとおり述べた。
 本件は、米国にとって特別な重要性を有している。米国は、食品の安全に大きな関心を払い、本件に関する国際基準を満たしており、米国産牛肉は安全であると信じている。
 1980年代の米国では、日本を標的として、日本市場には不公正な慣行があるとの議論があったが、その後、こうした議論は影を潜めたかの感があった。しかしながら、今日になって、本件をめぐり、日本に対する制裁論が出て来ている。
 輸入再開の時期は明示できないにしても、国内プロセスが早急に進展することが不可欠である。本件は、時間がかかればかかる程大きな問題となるものであり、日米関係に対して悪影響をもたらしつつある。
 牛肉問題のために日米関係が傷つくことがないようにしていただきたい。ブッシュ大統領も日本との関係、小泉総理との関係を極めて高く位置づけている。本件については、結果が出ることが必要である。

外務省公式サイトより抜粋
ライス米国務長官訪日時の日米外相会談及び小泉総理表敬の概要
平成17年3月23日
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/kaidan_050323.html

 で、なんでこんな約束しちゃったかといえば、中日新聞のスクープ記事なのですが、この日米外相会談の半月前に我らが小泉首相が電話会談でブッシュ大統領に約束しちゃっていたわけなんですね。

首相「牛肉輸入の早期再開に努力」 米大統領と電話会談

 小泉純一郎首相は九日夜、ブッシュ米大統領と電話で会談し、大統領は牛海綿状脳症(BSE)発生に伴い日本が禁止している米国産牛肉の輸入の早期再開に向け「首相の尽力を願いたい」と要請した。首相は「早く再開したい気持ちだ。この問題が日米関係を害することがないよう努力したい」と、早期再開に努力することを約束した。ただ「再開の期限を区切ることはできない」として、再開時期の明言を避けた。

 首相は会談後、棚橋泰文食品安全担当相に対し、科学的な立場から安全性を検討している食品安全委員会の審議を加速させるよう指示した。

 会談は米側が呼び掛け約十五分間行われた。北朝鮮の核問題をめぐる六カ国協議については、北朝鮮の無条件の復帰が必要との認識で一致し、中国の役割の重要性を確認した。

 中東和平では、首相がシャロンイスラエル首相とアッバスパレスチナ自治政府議長を日本に招く考えを伝達。大統領は「首相の指導力に感謝する」と応じ、日米の緊密な連携を確認した。

 米国はBSE対策で日本が実施している全頭検査について、科学的根拠が乏しい上に費用負担が重いとして拒否していたが、日米は昨年十月に生後二十カ月以下の牛を全頭検査から除外することで一致。だが食品安全委員会が検討を続けており、輸入再開の結論は出ていない。

 このため米側から日本の対応の遅れに批判が噴出。議会では対日報復法案提出の動きが表面化、米政府は三月十八日のライス国務長官の来日までに解禁時期を明示するよう求めている。

3月10日 中日新聞
http://www.chunichi.co.jp/00/sei/20050310/mng_____sei_____002.shtml

 ・・・

 ふう。

 やれやれであります。

 牛肉の輸入解禁が政府間の約束事として既定路線でとうに決まっているならば、こんな茶番な政府諮問と委員会報告などという「審査ごっこ」など意味はないでしょう。

 これじゃだだの「儀式」であり、それこそ時間とお金の無駄であります。

 「小泉さんがブッシュさんに約束させられちゃったからとにかく解禁するんです」とはっきり言っちゃえばよろしいでしょう。

 これじゃ対米追従小泉ポチ外交の始まりだと昨日の夕刊フジでは厳しく批判していましたが、

 正に対米追従小泉ポチ外交でありますよね。

 これでは解禁されるのは牛肉だけでないでしょう。間違いなく、BSEなどとかっこつけないではっきりいってしまいますが狂牛病も解禁ですよ。



(木走まさみず)