木走日記

場末の時事評論

朝日はいくつ委員会をつくるつもりか〜社会の公器として落伍メディアだ

●NHK巡る本社資料「流出」と結論 3氏におわび 〜朝日新聞記事より

 8月26日、朝日新聞は紙面第一面におわびの記事を掲載しました。

NHK巡る本社資料「流出」と結論 3氏におわび

 朝日新聞が取材をした資料を入手したとする記事が月刊「現代」9月号(講談社)に掲載された問題で、本社は25日、インタビュー内容を整理した社内資料が何らかの形で社外に流出したと考えざるを得ないと結論づけ、取材した関係者3氏に流出について報告、おわびをする文書を郵送した。

 記事は、NHKの番組改変問題をめぐってジャーナリストの魚住昭氏が執筆した。元NHK放送総局長の松尾武氏、前衆院議員の中川昭一安倍晋三両氏が本社記者の取材に語った「証言記録」として、やりとりが記載されていた。

 本社は、社内資料が流出した疑いがあるとして、同誌の発売時から調査していた。流出経路はまだわかっていないが、調査を続け、近く社内処分を行う。3氏には調査結果を報告、おわびするため、面談を申し入れたが、中川、安倍両氏側から「選挙間近で時間的余裕がない」などの回答があったため、文書を郵送した。両氏は文書の受け取りを拒否した。

 NHKの番組改変をめぐる朝日新聞の報道内容そのものについては、外部の識者による委員会に意見を求めており、審議が進められている。

 〈荒木高伸・朝日新聞社広報担当の話〉 取材資料は社内で厳重に管理されなければならず、今回の流出には痛切に責任を感じています。関係者の方々には深くおわびします。引き続き流出経路などを調査します。改めて社内資料の厳格な保管態勢の確立をめざします。

2005年08月26日03時05分 朝日新聞
http://www.asahi.com/special/nhk/TKY200508250384.html

 朝日新聞として、内部調査した結果、月刊「現代」9月号(講談社)に掲載された内容が社内資料が流出したと結論づけ、全面謝罪に至ったわけです。

 しかし朝日が報道機関としてなんとも情けないのは、「NHKの番組改変をめぐる朝日新聞の報道内容そのものについては、外部の識者による委員会に意見を求めており、審議が進められている」などと、ことここにおよんでもまだお茶を濁している点であります。
 NHK番組改変問題ではすでに、朝日新聞の7月25日付けの『NHK番組改変問題、改めて報告します』という見開き2頁に渡る内部調査報告記事においても「真相を解明できない」の一言で総括して、メディアとしての自社の記事に対する検証能力の無さ・おそまつさを露呈しております。本来ならば関係者に謝罪すべきところ、いっさい謝罪もなくまた、NHKに対し徹底反論をするわけでもなく、『NHK報道』委員会なるものを設置してうちうちで審議を進めているとごまかしているわけです。

 〈荒木高伸・朝日新聞社広報担当の話〉 取材資料は社内で厳重に管理されなければならず、今回の流出には痛切に責任を感じています。関係者の方々には深くおわびします。引き続き流出経路などを調査します。改めて社内資料の厳格な保管態勢の確立をめざします。

 このような弁明で済む話ではないのであり、現代記事で最大のポイントである朝日幹部の関与疑惑には一切応えられていないのであります。

 この朝日取材内容リーク問題は、いまだ何一つ解決はしていないのです。



●「虚偽のメモ」で記者解雇 本紙、選挙で誤った記事  〜朝日新聞記事より

 今度は、朝日新聞記者が総選挙に絡んで取材をせずに誤った捏造記事が掲載されていた問題で、担当記者を解雇した記事が掲載されました。

「虚偽のメモ」で記者解雇 本紙、選挙で誤った記事

 朝日新聞記者が総選挙に絡んで取材をせずに虚偽のメモを作成して報告し、その内容を含んだ誤った記事が掲載されていた。朝日新聞社は29日、取材先や読者の信頼を著しく傷つけたとして、この記者を懲戒解雇にするとともに、東京本社編集局長を更迭するなど編集幹部も処分した。

 懲戒解雇処分にしたのは長野総局の西山卓記者(28)。取材報道の責任を問い、東京本社の木村伊量・編集局長と金本裕司・長野総局長を減給、更迭。持田周三・政治部長と脇阪嘉明・地域報道部長をそれぞれ譴責(けんせき)、曽我豪・政治部次長を戒告処分とした。さらに編集全体の責任を問い吉田慎一・常務取締役編集担当を役員報酬減額(10%、3カ月)処分とした。

 社内調査によると、問題の記事は、8月21日付朝刊2面に掲載された「郵政反対派 『第2新党』が浮上」と、22日付朝刊3面に掲載の「追跡 政界流動『郵便局守れだけでは』」。

 一連の記事では亀井静香・元自民党政調会長らによる新党設立の動きに絡み、田中康夫長野県知事が「新党日本」の党首に就任するまでの経緯などを紹介した。西山記者は20日、実際にはこの件について田中知事に直接取材していないにもかかわらず、取材したと総局長に虚偽報告。会談場所については推測で「長野県内」であるとメモを作り、亀井氏との会談での田中知事の発言はこれまでの知事の記者会見での発言などから引用して、勝手に作った発言をメモに記載して政治部の担当記者に渡した。

 田中知事からの指摘を受けて社内調査を進めていた。

(2005/08/30)  朝日新聞
http://www.asahi.com/information/release/20050830a.html

 これにからみ、本日付け(8月31日)付け朝日新聞では、「信頼される報道のために」委員会を設置し、取材方法の多角的見直しを諮る内容が記事として掲載されました。

「虚偽メモ」契機に社内委員会 取材方法など検証し報告

 朝日新聞社は30日、総選挙取材に絡んで虚偽のメモをもとに記事がつくられた問題で、編集局長会議を開き、信頼回復に向けた対応策を検討しました。「信頼される報道のために」委員会を設置し、取材現場の実態や問題点を再点検するとともに、記者教育、取材方法を多角的に見直します。

 朝日新聞社は今回の問題を、読者の信頼を裏切る憂慮すべき事態と受け止め、この日、緊急の編集局長会議を開きました。新しく設けた委員会は、吉田慎一・常務取締役(編集担当)を委員長、東京、大阪、西部、名古屋各本社の編集局長を副委員長とします。

 取材現場の再点検では、虚偽メモ作成がなぜ起きたのか、なぜ防げなかったのかなど今回の報道を検証し、その結果を随時、記事にしていきます。読者のみなさんの意見を聞きながら、記者と読者の対話を目指します。取材現場の実態や問題点も提示して、朝日新聞が信頼を回復する方策を探ります。

 吉田編集担当は同日、全編集局員に「解体的出直しが必要だ。読者に目を向けた自己改革を」などとするアピールを出しました。

 虚偽メモ作成問題で朝日新聞社への意見や苦情は30日午後9時現在、約550件でした。厳しい指摘が多く、「信頼が揺らいだ。いったん記事にしたことでも、継続的にチェックしてほしい」「若い記者の研修をきちんとやって、正確な記事を書くよう指導してほしい」などの意見が寄せられました。

2005年08月31日03時01分 朝日新聞
http://www.asahi.com/national/update/0831/TKY200508300444.html

 今回は情報のねつ造という報道機関の根幹にかかわる重大な問題です。

 にもかかわらず、またしても他のメディアから要求されても記者会見すら開かず、「信頼される報道のために」委員会を設置して内部再点検をして、それでもってお茶を濁そうとしているわけです。



●いくつ委員会を作ればいいのか〜朝日新聞は社会の公器として落伍メディアだ

 一連の朝日の対応を見ていると、もはや社会の公器としての信頼されるメディアとしては、失格なのではないかと考えざるを得ないのです。

 NHK番組改変問題関連報道においても今回の捏造記事問題においても、そのような問題を起こすこと自体、メディアとして猛省しなければならないのは当然でありますが、朝日の組織としての体質ではないかと、より深刻に受け止めざるを得ないのは、その非を認めたがらない官僚的とも言える事後処理にあります。

 朝日新聞は、7月25日の内部調査の結果、「真相を解明できない」の一言で総括して、記者会見も開かず、『NHK報道』委員会なるものを設置してお茶を濁そうとしています。
 また、8月26日には、月刊現代取材資料リーク問題で、資料流出を認めた時も、関係者に謝罪文書を送付したと発表するだけで、記者会見はしていません。

 そして今回の記事捏造問題においても、再三の他メディアからの要求にも関わらず、記者会見は開かず、紙面でのおわびと、「信頼される報道のために」委員会を内部に設置することで、言い逃れしようとしているわけです。



 『NHK報道』委員会に『信頼される報道のために』委員会



 朝日新聞には月をまたいで二つの委員会が設置されたわけですが、朝日経営陣は、こんな子供だましの対応で納得する読者がいると思っているのでしょうか。

 マスメディアは、大企業や行政法人などで不祥事が起きれば、徹底した説明責任を求め、原因や背景について担当者の記者会見を要求してきたのは他ならぬ朝日新聞であります。

 しかるに朝日自体の不祥事には、説明責任を放棄して記者会見もせず、内部に委員会を設置して再点検するなどというごまかしをするのはどういうことでしょう。

 『NHK報道』委員会に『信頼される報道のために』委員会、いったいいくつ内部委員会をつくれば朝日は気が済むのでしょう。

 委員会を作れば良しとして説明責任を一切放棄するこの朝日の行動は、社会の公器としては完全に落伍した朝日新聞の、メディアとしての断末魔であります。



(木走まさみず)



<関連サイト>
●不可視型探照灯
朝日新聞が社内情報の流出を認めたようだが、そもそも「答えて」いるじゃん。
http://erict.blog5.fc2.com/blog-entry-118.html
●荏原仲信のブログ
朝日新聞虚偽報道問題
http://ebara.air-nifty.com/ebara/2005/08/post_2616.html



<関連テキスト>
●マスメディアの無能と憂鬱〜朝日のNHK番組改変問題報告の「傲慢不遜」
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050726/1122348060
●月刊現代スクープ記事を逆スクープする〜これは朝日の出来レースだ!
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050802/1122961309
●マスメディアの無能と憂鬱〜朝日は証拠として録音テープを提示せよ!
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050728/1122522706
朝日新聞の真の大罪〜エールを込めて
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050803/1123057606