「未来を開く歴史」は未来を開けるのか?
昨日エントリーのコメント欄においても、有意義な真摯でアツイコメントをたくさんいただいており、本当にありがとうございます。今日は昨日のエントリーの追記となります。引き続き、教科書問題を取り上げてみたいと思います。
●JANJANに書評が掲載されました。
「未来を開く歴史」は未来を開けるのか? 2005/07/17
http://www.janjan.jp/book_review/0507/0507159618/1.php
なんだかだらだらと読みづらいなあ(苦笑)
以下は記事の元原稿です。
「未来を開く歴史」は未来を開けるのか? 2005/07/17
話題の『未来を開く歴史』を読み終えた。「新しい歴史教科書をつくる会」による歴史教科書のオルタナティブ(代替案)として、日中韓の教育者たちが3年をかけて編纂してきた歴史の副教材である。
読み物として大変興味深く223ページの本を時間も忘れて一晩で一気に読み終えた。一市民記者としてのこの興味深い歴史副教材に対する個人的書評を述べてみたい。
●とてもユニークな構成
この本の最大の特徴はその構成にあるだろう。ある時代に起こった出来事を、基本的には日本・中国・朝鮮それぞれの国の視点から平等に記述されており、読者は並列に書かれているその内容から一国だけの歴史ではない幅の広い東アジア地域というスコープで何が起きていたのかという視野で考察できるように配慮されている。
この特徴は本文でも節の構成でいかんなく発揮されていて、たとえば「第1章開港と近代化 3節 3国の改革運動」では、日本の自由民権運動、中国の清朝の改革と義和団運動、朝鮮の農民戦争と独立協会運動が、2ページづつ解説されているのだが、じつに斬新な叙術法である。
もうひとつの特徴は、各節ごとに設けられているコラム欄が充実していることであろう。たとえば、序章2節では当時の3国の首都であった北京・江戸・漢城(ソウル)の様子を併記して詳述されていたり、第1章4節では、「近現代史のなかの漢字」の見出しで、3国の漢字文化の変遷をわかりやすくまとめている。
本全体の構成は以下のとおりである。なお括弧内は執筆担当国である。
序章 開講以前の3国
1節 3国の相互の関係(韓)
コラム:昔の人たちは「世界」をどう見ていたのか(日・中・韓)
3国の間の漂流民(日)
2節 3国の国内状況
1.日本−−武士と民衆(日)
2.朝鮮−−両班と民衆(韓)
3.中国−−郷神と民衆(中)
コラム:3国の首都−−北京・江戸・漢城(ソウル)(中・日・韓)
儒教思想と3国(中)
第1章 開港と近代化
概説(日)
1節 欧米列強の圧力と3国の対応
1.中国−−アヘン戦争と洋務運動(中)
2.日本−−開国と明治維新(日)
3.朝鮮−−門戸解放をめぐる葛藤(韓)
コラム:3国の開港場−−上海・横浜・仁川(中・日・韓)
近代日本の天皇制(日)
2節 東アジアを巻き込んだ戦争
1.3国の争い(韓)
2.日清戦争(中)
3.日露戦争(日)
コラム:福沢諭吉・金玉均・李鴻章
3節 3国の改革運動
1.日本−−自由民権運動(日)
2.中国−−清朝の改革と義和団運動(中)
3.朝鮮−−農民戦争と独立協会運動(韓)
コラム:中江兆民・康有為・東学農民戦争のリーダーたち(日・中・韓)
4節 3国の民衆生活と文化
1.朝鮮社会の変化と民衆(韓)
2.中国社会の変化と民衆(中)
3.日本社会の変化と民衆(日)
コラム:近現代史のなかの漢字(日)
まとめ(日)
第2章 日本帝国主義の膨張と中韓両国の抵抗
概説(韓)
1節 第一次世界大戦前後の3国
1.日本の韓国併合と朝鮮人の抵抗(韓)
2.日本の台湾に対する植民地支配(中)
3.辛亥革命と中華民国の成立(中)
4.第一次世界大戦と日本帝国主義(日)
コラム:安重根と伊藤博文(韓)
日本は韓国を「強占」したのか「併合」したのか(日)
2節 日本の朝鮮支配の強化
1.憲兵警察統治(韓)
2.「文化政治」の実像(韓)
3.経済政策と収奪(韓)
4.教育文化政策(韓)
コラム:鉄道を掌握せよ(韓)
東洋拓殖会社(日)
3節 独立・抵抗の運動と社会運動
1.三・一運動(韓)
2.五・四運動(中)
3.3国の社会運動(日)
4.関東大震災と朝鮮人・中国人の虐殺(日)
コラム:申采浩・布施辰治・李大ショウ・陳鉄軍・チョン鍾鳴・金子文子(韓・中・日)
4節 変わりゆく社会と文化
1.朝鮮の社会と文化の変化(韓)
2.中国の社会と文化の変化(中)
3.日本の社会と文化の変化(日)
コラム:羅恵錫・平塚らいてう・何香凝(韓・日・中)
まとめ(韓)
第3章 侵略戦争と民衆の被害
概説(中)
1節 日本の中国東北地方への侵略
1.満州事変(中)
2.「満州国」の出現(中)
3.「満州国」の社会と経済(中)
4.中国・朝鮮、両国民衆の連合抗戦(中・韓)
コラム:張寒暉と抗日歌曲−−「松花江のほとり」(中)
上海「義挙」と尹奉吉(韓)
2節 日本の侵略戦争
1.日中全面戦争(日)
2.アジア太平洋戦争(日)
3.「大東亜共栄圏」のまぼろし(日)
4.総力戦体制(日)
コラム:昭和天皇の戦争指導(日)
伝単(ビラ)のなかの戦争(日)
3節 日本軍による中国民衆への残虐行為
1.戦場における民衆と難民(中)
2.南京大虐殺(中)
3.無差別爆撃・三光作戦と「無人区」の設定(中)
4.細菌戦・毒ガス戦と人体実験(中)
5.日本軍の性暴力(中)
コラム:鳳儀萍−−強制労働者の証言(中)
元日本兵の証言(日)
4節 朝鮮の戦争基地化と民衆の被害
1.皇民化政策(韓)
2.戦時体制下の軍需産業(韓)
3.戦争物資動員(韓)
4.人力動員(韓)
5.日本軍「慰安婦」として連行された朝鮮人女性たち(韓)
コラム:「親日派」と「漢奸」(韓・中)
姜徳景ハルモニ−−絵画で「慰安婦」の被害を告発(韓)
5節 日本民衆の加害と被害
1.戦時総動員と民衆の戦争協力(日)
2.民衆の生活と抵抗(日)
3.東京大空襲と都市空襲(日)
4.沖縄戦(日)
5.広島・長崎への原爆投下(日)
コラム:特攻隊と青年学徒(日)
日本の総力戦と女性(日)
6節 日本の侵略戦争の失敗
1.中国の抗日戦争(中)
2.朝鮮人の抵抗と建国準備(韓)
3.東南アジア占領地民衆の抵抗(日)
4.反ファシズム戦争の勝利と日本の降伏(日)
コラム:大韓民国臨時政府(韓)
日本兵反戦同盟(日)
まとめ(中)
第4章 第二次大戦後の東アジア
概説(日)
1節 3国の新しい出発
1.日本の敗戦と戦後改革(日)
2.朝鮮の解放と分断(韓)
3.中華人民共和国の成立(中)
コラム:マッカーサーの2つの顔(日)
遠かった故国(日)
2節 問われる日本の「過去の清算」
1.東京裁判(日)
2.サンフランシスコ講和条約と賠償・補償問題(日)
3.植民地支配と戦争が残した社会問題(日)
コラム:その他の戦犯裁判(日)
戦後補償の国際比較(日)
3節 東アジアの分断と国交正常化
1.東アジアの冷戦と朝鮮戦争(日)
2.日韓国交樹立(韓)
3.日中国交正常化(中)
4.中韓国交樹立(韓)
コラム:在日朝鮮人の権利獲得のたたかい(韓・日)
中国帰還者連絡会の人々(日)
まとめ(日)
終 章 21世紀の東アジアの平和のための課題
概説(韓)
1.残された個人補償問題(中)
2.日本軍「慰安婦」問題と女性人権運動(韓)
3.歴史教科書問題(韓・日)
4.靖国神社問題(中・日)
コラム:教科書裁判をたたかった家永三郎(日)
民衆法廷としての女性国際戦犯法廷(日)
博物館展示と戦争(日・韓・中)
5.東アジア3国青少年の交流(韓)
6.反戦平和運動と市民運動(日)
7.東アジアの和解と平和のために(韓)●残念ながら検証性を欠いた記述が散見される
上記のような構成で興味深い副読本であるが、個々の記述の詳細では、首を傾げたくなる信憑性に問題があると思われる箇所も散見される。中でも特に中国側が執筆を担当した箇所にかなり偏った描写や中国政府発表の一方的な数字の転用が目立つようだ。
たとえば、「第3章 侵略戦争と民衆の被害 3節 日本軍による中国民衆への残虐行為 2.南京大虐殺」において、被害者数の記述は以下のとおりである。
「1946年の中国政府の南京軍事法廷の調査によれば、日本軍によって集団虐殺され遺体焼却、証拠を隠滅されたものは19万人余り、個別に虐殺され、遺体を南京の慈善団体が埋葬したものは15万人余りでした。
東京裁判の判決書では、『日本軍が占領してから最初の6週間に、南京とその周辺で殺害されて一般人と捕虜の総数は、20万以上であったことが示される』としています」(126ページより引用)ここに現れている数字はその数字の信憑性に関して国際的に論争を巻き起こしているものである。このように国際的に定説が定まっていない数字を具体的に記載するのはいかがなものだろうか?
また、「第3章 侵略戦争と民衆の被害 6節 日本の侵略戦争の失敗 1.中国の抗日戦争」において抗日戦争における中国側の損害についての記述は以下のとおりである。
「中国政府の発表によれば、抗日戦争における中国の軍人と民間人の死傷者は総計約3500万人、財産の損害は約6000億ドルにのぼります。中国の人民は民族の独立と解放のために大きな犠牲を払ったのです。中国の抗日戦争は、日本の陸軍へ威力の60%以上および相当の海空軍力を牽制し、世界の反ファシズム戦争の勝利に大きく貢献しました。このことは、戦後、中国の国際的地位の向上をもたらしました。」
この中国の犠牲者数に関しては、ジャーナリストの櫻井よしこ氏は『文藝春秋』05年8月号の討論記事で以下のように発言している。
「中国は東京裁判の当初、日中戦争で犠牲になった中国人の数は320万人であるとしていました。それがいつの間にか570万人に増えました。さらに国民党政府から中華人民共和国政府になると数字がとたんに増えて、2160万人というとんでもない数字になりました。最初の数字に比べると、7倍近くです。この2000万人強という数字がずいぶん長く、中国の公式の数字とされていました。ところが1995年、江沢民総書記の時代になって突如3500万人という数字を言い出してきました。
(中略)
ところが、中国の教科書、これは国定教科書で1種類しかありませんが、そこに書かれている数字は、1960年まで1000万人、85年には2100万人、95年には3500万人と、何の説明もなく増えていく一方です。」
(文藝春秋8月号108ページより引用)本文では「死傷者」としているが、3500万という数字根拠が薄弱であることに変わりは無いと思われる。
●章の構成にかなり偏りがある〜ほとんど無視される各国の戦後60年の歩み
特に残念だと思われるのは、目次を見ていただければ一目瞭然なのであるが、各国の戦後60年の歩みがほとんど記述されていない点である。
日本軍の侵略戦争と朝鮮支配に関する詳述さに比し、第2次世界大戦後の各国の動勢に関しては、正直ほとんど描かれていないのである。
日本で言えば、戦後平和憲法の元で平和主義国家として曲がりなりにも、一度の国内国外の流血紛争に関わらず経済を発展させてきたことや、中国に対する日本のODA援助には簡単にふれているが、ODAなどを通じての日本の国際貢献に対する評価はほとんどされていない。
また、驚くべきことに、戦後中国の内政問題には1行も触れていないのである。チベット問題、天安門事件、中国ベトナム紛争にふれないのは、中国国内教科書と同様であるのでご愛敬なのかも知れないが、文化大革命、大躍進政策に関しても1行も記述がないのである
はたしてこれで東アジア近現代史と呼べるのであろうか?
象徴的なのは、「終章 21世紀の東アジアの平和のための課題」の内容であろう。
もう一度、目次を参照いただきたい。終 章 21世紀の東アジアの平和のための課題
概説(韓)
1.残された個人補償問題(中)
2.日本軍「慰安婦」問題と女性人権運動(韓)
3.歴史教科書問題(韓・日)
4.靖国神社問題(中・日)
コラム:教科書裁判をたたかった家永三郎(日)
民衆法廷としての女性国際戦犯法廷(日)
博物館展示と戦争(日・韓・中)
5.東アジア3国青少年の交流(韓)
6.反戦平和運動と市民運動(日)
7.東アジアの和解と平和のために(韓)この教材が取り上げている「21世紀の東アジアの平和のための課題」は、ほとんどすべて100%日本の責任なのである。
この教材だけでもし歴史を学んでしまうと、現在東アジアの平和を脅かしているのは日本一国であり、たとえば北朝鮮の独裁体制の問題も拉致事件も核疑惑も、いっさい語られることはないのである。
●この副教材は未来を開けるのか〜まずは歴史事実を一致させる努力を
以下は本のあとがきである。
「東アジアに平和の共同体をつくるためには、その前提として歴史認識の共有が不可欠です。それはもちろん若い人たちだけの問題ではありません。歴史認識を共有することへの展望は、東アジアに生きる市民が、侵略戦争と植民地支配の歴史を事実にもとづいて学び、過去を克服するための対話と討論を重ねることを通じて、確実に切り開かれます。
(中略)
国境を越えた共同の取り組みを通じて、私たちは多くのことを学びました。多くの新しい友人と出会い、友情と信頼を深めることができました。対話と討論、そして、未来に向けての連帯こそが、自らを豊かにし、新しい歴史の可能性を開いてくれる。それは、この歴史教材作りを通じて得た私達の確信です。」日本が犯した侵略戦争に関し、真摯に日本国民が反省すべきである点は同感である。しかし、問題は「事実にもとづいて」いるのかどうかである。目的のために数字を水増ししたり、記載事実を都合良く取捨選択してはならないであろう。
たとえば、南京占領時に、日本軍が中国人を何人虐殺したのか、問題は虐殺の事実であって、30万人であろうが100分の一の3000人であったとしても、ものすごい数字には違いないのである。だからといって、根拠のない数字を記載していい理由には全くならない。それどころか、教材としての信憑性が問われるのは確実である。せめて、議論のある数字は両論併記は最低限すべきではないか。
また「新しい歴史教科書をつくる会」による歴史教科書のオルタナティブ(代替案)として、誕生した本書の目的から有る程度、日本の侵略戦争の蛮行に的を絞り詳しく記述するのも理解はする。しかし、ここまで戦後60年の3カ国の国内動勢をほとんど記述していないのはやはり問題であろう。
歴史学者に言わせれば、歴史は3つのレベルに分けて考えることができるという。一番上のレベルが歴史観であり、次に当たるのが歴史認識、そしてそれらのベースにあるのが歴史事実である。
この副教材を読み終えて、正直、3国には歴史観や歴史認識で一致するには、現状では不可能であると言わざるを得ないと思う。それどころか、歴史の事実の一致ですらむずかしいのが現実である。
では、この本は価値がないのであろうか?否、この興味深い歴史副教材を肯定的に評価したいのは、3カ国の歴史学者等が3年の月日を費やして共同で歴史副読本を作成した今回の挑戦的試み自体が実にすばらしいことであるといえる。
ただ、本書の現段階での内容では、無理に歴史観の一致までを目指してしまっているところに限界があるのではないだろうか?
3カ国の今後の努力により歴史事実の共有することをまず目指してもらいたい。異なる国同士で完全に歴史認識、歴史観まで一致させることはおそらく不可能である。しかし、互いの歴史観の差分を認め合った中で、互いに尊敬しあえる関係を構築することは可能であると思う。
とにかく、肯定的に評価したい人にも批判的に対峙したい人にも、歴史教科書に関して深く考察させられるひとつの読み物としてお奨めの一冊であることは間違いない。
最期に余談ながら、この副教材は本当に韓国や中国で使用されるのであろうか、とても興味深いことである。率直な個人的感想で言わせてもらえば、日露戦争や日本の対中国ODA援助や日中共同声明の日本の謝罪文の記述すらない現在の中国の教科書に比べれば、この副教材がもし中国で使用されるのであればある意味で「大躍進」なのかも知れない。
(木走まさみず)
ちょっと長すぎますか(苦笑)
●正直ツッコミどころ満載で焦りました
ここの読者のみなさまだけにエピソード的読後感を正直に語りますと、「おいおいここまで偏ってよいの?」と思わずにはいられない構成でした。
特に終章「21世紀の東アジアの平和のための課題」は、上記記事でも指摘しましたが、個人補償問題、日本軍「慰安婦」問題、歴史教科書問題、靖国神社問題と、今盛んに論争されている問題が、一方的な視点から(両論併記ではなくです)検証もあまりされず、これでもかこれでもかという感じで列記されており、コラムでも「家永三郎教科書裁判」や、最近でもNHK・朝日問題で話題になった女性国際戦犯法廷の話など、もう、鼻血がでそうでありました。(苦笑
ただ、不肖・木走としては、教科書としてではなく、一読み物としてとても面白かったのは事実です。
書評にも書かせて貰いましたが、3国併記形式でひとつの事柄が見開き2ページにコンパクトにまとめられているので、とても読みやすく、節ごとにコラムとしてエピソードや雑談も載せてあり、歴史家でもない私にも、理解しやすい工夫が随所にありました。
やはりまだ未読の読者の方には是非一読をお奨めしたいですね。
●真面目さはよくわかるのだけれど、やり方が露骨で下手なんだよなあ
しかし、やはり本の構成は誉められたモノではありません。JANJAN記事の公式(?)書評にはとても書けなかった本音トークを語っちゃいますと、もし、私がリベラル派でこの本の編集委員に参加したならば、もっと中庸といいますか、両論併記型の記述を断固主張したでしょうねえ。
だって、この本がもし日本社会に本当の意味で話題を呼ぶとしたならば、一般の人々から「実際読んでみたけれど、わりと読みやすくて偏りが少なくて驚いた」というような中立的評価を貰えたほうが、短期的には戦術的勝利なわけでしょう。
中国や韓国の編集者がそんなこと認めないでしょうから無理だったのかも知れませんが、3国で共同編集するとなると現状ではこれが限界なのでしょうが、本のあとがきによれば、読者の意見を参考に今後も改正していくそうなので、日本側編集者にはぜひがんばってもらいたいものです。
書評にも書きましたが、 歴史学者に言わせれば、歴史は3つのレベルに分けて考えることができるといいます。一番上のレベルが歴史観であり、次に当たるのが歴史認識、そしてそれらのベースにあるのが歴史事実であります。
この副教材を読み終えて、正直、3国には歴史観や歴史認識で一致するには、現状では不可能であり、それどころか、歴史の事実の一致ですらむずかしいのが現実でありましょう。
ですから、いきなり歴史認識を共有しようと試みた本書の挑戦は、言葉は悪いですが、最初から失敗することは、自明だったのであるとおもいます。
しかし、このような試み自体は、私としては頭から否定するのではなく、暖かく応援したいですね。
方法論としては、やはり歴史的事実の共有の努力をじっくりとしていただきたいです。その上で、歴史観・歴史認識は両論併記でもいいじゃないですか。
差分は差分としてお互いに認め合う、そのような関係を目指すべきじゃないでしょうか?
読者のみなさまの教科書問題に対する考察の一助になれば幸いです。
(木走まさみず)
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http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050712/1121139213
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http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050716/1121485328