木走日記

場末の時事評論

七夕の日に朝日新聞について少し考える

 7月7日、今日は七夕ですね。

たなばたさま.

ささの葉さらさら
のきばにゆれる
お星さまきらきら
きんぎん砂子(すなご)

五しきのたんざく
わたしがかいた
お星さまきらきら
空からみてる

作詞者 権藤花代・林 柳波 作曲者 下総皖一文部省唱歌

 最近、季節感のない生活を送っている私としては、昨日、小学生の娘が何やら小さな可愛らしいささを学校からもらって我が家に持って帰ったことで、ようやく今日が七夕なのに気がついたしだいです。たんざくにつたない字で願いを書いている娘を見ながら上記の歌を懐かしく思い出していました。



●今日の朝日の天声人語〜私の友は七夕の短冊に『平和』とかいて笹にむすんだ

 今日の朝日の天声人語から・・・

天声人語】2005年07月07日(木曜日)付

 どんよりとした空から、細かい雨が降ってくる。時折、風がゆるやかに渡って笹(ささ)の葉をゆらす。願い事が書かれた青や黄色の短冊がひるがえる。

 通り道に、七夕の竹飾りが並んでいた。一本の竹に数十の願いが下げられている。「大金持ち!」「悪徳商法撲滅」「権力がほしいので下さい」。こんな願いもあるが、多くはやはり、家族や友の健康と安全を祈っている。

 50年前、作家の壷井栄が「主婦の友」に随想「七夕さま」を寄せた。「ささやかな笹にちらほらの短冊は、つつましい中にも、なにかしら人のこころの温さ、かわいらしさを感じさせられて好もしい」

 今とそう変わらない七夕の情感だが、この先が、戦後10年という時代を思わせる。「子供と一しよに短冊をかくようになつてから、七夕さまにつながる思いとして、いつも私の心をとらえるのは盧溝橋事件である。昭和十二年七月七日。そしてそれをきつかけにして、敗戦にまで追いやられた私たち……」

 37年の七夕の夜、北京近郊の盧溝橋付近で起きた日中軍の衝突は、日中戦争の発端となった。現地の日本兵の間では、「七夕の日は何かがおこる」という噂(うわさ)が飛んでいたという(秦郁彦『盧溝橋事件の研究』東京大学出版会)。

 壷井は続ける。「七夕さまは、たとえ年に一度の逢瀬(おうせ)にもしろ、逢(あ)えるということで私たちに希望を与える。しかし、私たちのまわりには、永久に逢えない人がたくさんいる。私の友は七夕の短冊に『平和』とかいて笹にむすんだ」。戦後60年の竹飾りにも、その二文字は幾つも揺れていた。

http://www.asahi.com/paper/column.html

 ・・・

 私の友は七夕の短冊に『平和』とかいて笹にむすんだ」。戦後60年の竹飾りにも、その二文字は幾つも揺れていた。

 ・・・

 ふう。
 七夕の短冊にも「反戦平和」ですか・・・
 いかにも朝日らしい結語ですね。(苦笑

 まあ、「24の瞳」で有名な壷井栄は、私も大好きな女流童話作家でありまして、戦中戦後の貧しい日本の子供達の生活を主テーマにして、女性らしい母性溢れるやさしいあたたかい筆致で数々の短編を残しておりますが、彼女が戦争を嫌い平和を強く願っていたのは想像に難くはないのであります。

壷井栄研究 母性の自覚とその質
http://www.jscl.internet.ne.jp/jscl/record/regular/regular_11.html

 まあしかし、「天声人語」に書かれるとまた余計な色眼鏡で見られてしまうかも、と少し心配にもなります。なにせ「天声人語」の部分引用は、「戦艦大和の最期」の部分引用以来、一部メディアからは疑惑の対象でありますからね。(苦笑)

 それはさておき、たしかに68年前の今日1937年7月7日、中国北京近郊の盧溝橋で日中両軍の軍事衝突、いわゆる『盧溝橋事件』が起きました。これを契機に日本軍はどろぬまの対中国全面戦争へと踏み込んでしまうわけです。

 が、それにしてもこの「天声人語」の語り口は良くも悪くも「朝日新聞しちゃっている」なあと、感心してしまいます。

 穿った物言いをしますと、七夕の日と反戦平和の願いというコラムのテーマを実現するために、わざわざ50年も前の雑誌の作家の随想を取り上げ、しかもお得意(?)の容赦のない部分引用で、「私の友は七夕の短冊に『平和』とかいて笹にむすんだ」と結ぶのであります。

 朝日らしいかなり味のある手法ではあります。

 このようなところが朝日批判者から見るとメディアとしてのプチ「偏向」姿勢として映るのでありましょうか?

 ・・・

 不肖・木走は、珊瑚礁捏造記事・武富士5000万疑惑黒塗り広告事件も含めて、朝日新聞の体質は大嫌いでありますが、上記の今日のコラムは、お気に入りのほうでありまあ好きでありますね。「朝日らしさ」がよく出ていますがそれほど嫌みではないし、なんというか「けなげな」感じがいい読後感をかもし出しています。



●朝日の論説を宿敵産経の本日の記事と比べてみる

 本日の産経新聞の盧溝橋事件関連記事から・・・

盧溝橋事件 きょう記念日 中国、愛国宣伝激化へ

 【北京=伊藤正】日中全面戦争の口火になった、1937年の盧溝橋事件記念日の7日、北京市郊外の盧溝橋近くにある抗日戦争記念館は、展示を大幅に拡張して再オープン、記念行事を行う。

 これを機に抗日戦勝60周年の愛国主義キャンペーンは一段と激化する見通しだが、国内の社会矛盾の拡大を背景に、騒乱事件が各地で続く中、当局は反日デモ再発への警戒を強めている。

 愛国主義キャンペーンは今春から始まり、反日デモが拡大した後、これを抑制する必要から、一時下火になったが、訪日した呉儀副首相が緊急帰国した後の5月下旬から再燃。国営新華社通信は6月下旬、7月1日から、新たなキャンペーンに入ると予告した。

 北京では既に、革命軍事博物館で1日、抗日戦記念展がオープン。この展示の特色は、共産党がゲリラ戦を指導した山西省など太行山脈一帯での戦闘を中心にし、共産党が戦勝の導き手だったことを強調、最後のコーナーで胡錦濤政権の「科学的発展」観などを宣伝していることだ。

 この点は新たな「日本軍の暴虐の証拠」を加え、展示を拡充したとされる抗日戦争記念館も同様で、キャンペーンが「共産党の歴史的役割を宣伝」(新華社電)し、党への求心力を高める政治的狙いをもっていることを示している。

 中国メディアの報道で注目されるのは、新華社以外では、軍機関紙「解放軍報」、共産主義青年団機関紙「中国青年報」の突出した報道ぶりだ。解放軍報は6月下旬以来、連日1ページの抗日戦特集を組み、青年報も5月下旬以来のA級戦犯連載など反日報道をリードしている。党機関紙「人民日報」は抑制した報道が目立つ。

 関係筋によると、これはメディアの役割分担のためで、指導部は愛国キャンペーン推進で完全に一致しているという。ただ同筋は、全国に法と秩序を守るよう通達されているとし、反日デモのような街頭行動は規制されると述べた。

 これは各地で農民暴動や都市部の騒乱事件が続き、反日デモが騒乱の引き金になる危険性があるためという。

 抗日キャンペーンは9月3日の日本降伏記念日でピークを迎えるが、党への求心力回復には、社会矛盾への適切な対応こそ必要との指摘が有識者には多い。

【2005/07/07 東京朝刊から】(07/07 08:03)
http://www.sankei.co.jp/news/050707/kok011.htm

 一方の産経も相変わらず「産経しちゃっている」なあ(苦笑

 こうして朝日の論説を宿敵産経の論説と読み比べてみると、違いはとても顕著ですよね。
 朝日の論説は、反戦の想いが先走ってしまい検証性が中途半端で冗長な印象に映ってしまうのに対し、産経は自社の関心事は徹底的に詳細報道をし、はっきりとした明確な主張をしている印象を読者に与えています。

 え、産経ひいきしてる?

 いえいえ、不肖・木走は朝日と同様、産経、読売にも、批判的に対峙しています。ただ、産経の個々の記事はけっこう好きなのが多いのです。(苦笑

 とはいえ、コラム「天声人語」と時事記事を比較するのは、たしかに少し不平等ですから、ここは産経コラムも見てみましょう。



●今日の産経の産経妙〜中華も悪くはないが、あくまでも和食党である

 いやああ。今日の産経抄はいい味だしていますねえ。

平成17(2005)年7月7日[木]
産経抄

 大事な寄り合いの前に、他人様の料理をけなせば傷が残る。仏独露首脳会談の席で、シラク仏大統領が英国料理を冗談のタネにしたらしい。それはまあ、フランス料理のエスカルゴの方が英国のフィッシュ&チップスよりマシとは思う。でも、「料理が下手な人間は信用できない」などとシラクさんも人が悪い。

 ▼そんなわけで、北京の次の夏季五輪開催地を決める国際オリンピック委員会総会は燃えた。ロンドン、パリに加え、ハンバーガーのニューヨーク、パエリアのマドリードボルシチのモスクワが競った。めでたく指名されたロンドンは、互いの首にかじりつき、逆立ちしての大騒ぎだ。

 ▼でも、ほかの国は冷めている。利口なシンガポールはなおのことだ。開催地決定の場所を提供するだけで、十二億円以上の経済効果を生んだ。最大五千人の紳士淑女が国際電話を惜しみなく使い、豪華ディナーを食した。

 ▼シンガポールには、シラク大統領もブレア英首相もやってきた。六日朝には二人とも、G8サミットの英国にとって返した。「英仏激突」第二ラウンドの開幕である。

 ▼長い間、英仏はけんかばかりしてきた。ドゴール将軍は、英国が欧州大陸のクラブに入ることに反対した。近ごろの欧州連合(EU)憲法批准の否決も、英国への警戒感だろう。EU内では英語が共通語になり、英国人が主要ポストを占めた。シラクさんのいら立ちがチップス批判に向かったか。

 ▼同じ地域に二つの大国が並び立つことは難しい。それでも英仏は、歴史だの靖国だのと他人の心の問題にまでは立ち入らない。「十三億人の民が怒っている」というなら、選挙で確認してもらいたい。ちなみに小欄は、中華も悪くはないが、あくまでも和食党である。

http://www.sankei.co.jp/news/column.htm

 シラク大統領の英国料理に対する「料理が下手な人間は信用できない」発言は実にフランス人らしい辛辣なエスプリなわけですが、まあ、オリンピックもロンドンに決定したことだし、イギリス人がそれほど目くじら立てることもないと思いますが、それにしても結語が産経らしくていいですねえ。

同じ地域に二つの大国が並び立つことは難しい。それでも英仏は、歴史だの靖国だのと他人の心の問題にまでは立ち入らない。「十三億人の民が怒っている」というなら、選挙で確認してもらいたい。ちなみに小欄は、中華も悪くはないが、あくまでも和食党である。

 ・・・

 「選挙で確認してもらいたい」って無理を承知での彼の国の体制批判を噛ませた上で、「中華も悪くはないが、あくまでも和食党」ですか(爆笑

 私はこういう産経の大人げないところも嫌いではないのです(苦笑

 しかし、今日は朝日も産経も実に味のあるそれぞれ「しちゃっている」コラムで、メディアウオッチャーとしては楽しいのです。

 まあ、朝日に話を戻しますと、今日の「天声人語」のスタンスに代表される、朝日の「反戦平和」論説は、私個人としてはかなり心の深い部分では支持できるのありますが。



●なんだって? 朝日新聞が世界8位だあ?

 少し朝日びいきにまとめたところで、朝日にしか出ていない変な記事から・・・

世界の新聞ランク、1位は英フィナンシャル・タイムズ
2005年07月06日20時15分

 メディア向けに業界情報を発信するなどしている民間団体「国際メディア支援」(IMH、本部スイス・チューリヒ)は5日、世界50カ国で実施したアンケートをもとにして「新聞ランキング」を発表した。前回2位の英フィナンシャル・タイムズ紙が1位になり、米ニューヨーク・タイムズ紙が6位に転落した。朝日新聞は日本の新聞として初めて10位以内に入り、8位になった。

 調査は4〜6月、欧米、アジアなど50カ国の会社経営者や大学教授、政治家ら各20人ずつを選び、「国際的に販売されている新聞のうち、最も優れた新聞」を尋ね、Eメールや電話で回答を得た。99年から2年ごとに実施し、今回で4回目。

 1位の英フィナンシャル・タイムズには19.4%の支持があった。ニューヨーク・タイムズは前回の21.3%から8.1%へ支持が落ち込んだ。

 2位は米ウォールストリート・ジャーナル(17%、前回6位)、3位は独フランクフルター・アルゲマイネ(16.2%、同5位)だった。

■国際メディア支援が選んだ世界の優良紙ベスト10

(1)フィナンシャル・タイムズ(英)

(2)ウォールストリート・ジャーナル(米)

(3)フランクフルター・アルゲマイネ(独)

(4)ルモンド(仏)

(5)ノイエ・チューリッヒャー(スイス)

(6)ニューヨーク・タイムズ(米)

(7)インターナショナル・ヘラルド・トリビューン(仏)

(8)朝日新聞

(9)エル・パイス(スペイン)

(10)コリエレ・デラ・セラ(伊)

http://www.asahi.com/culture/update/0706/012.html

 何だって?

国際的に販売されている新聞のうち、最も優れた新聞」を世界50カ国で実施したアンケートの結果、「朝日新聞は日本の新聞として初めて10位以内に入り、8位になった」??

 ・・・

 このアンケートはどういう基準でどこの国を対象に行われたのでしょうか?

 ・・・

 しかしなあ、こういうデリカシーのないエレガンスの微塵もない記事を堂々と載せてしまうところがかわいくないんですよね。

 朝日新聞って。(爆笑

 今日は七夕の日に朝日新聞について少し考えてみました。



(木走まさみず)