靖国参拝問題〜大局的見地に立って考える(3)
以下のエントリーの続きです。
靖国参拝問題〜大局的見地に立って考える
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050521
靖国参拝問題〜大局的見地に立って考える(2)
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050523
小泉首相が「大局的見地に立って」参拝すると発言したのをマネして、「大局的見地に立って」考えると付けたタイトルなのですが、シリーズ化すると自分で言うのもなんなんですが、のれん倒れしそうでこっ恥ずかしいのであります。(苦笑
しかし、このブログでは常態化しておりますが、エントリーが頼りない分コメント欄が充実しており、コメントおよびトラバいただいたみなさまには、ただただ感謝あるのみであります。
●呉副首相会談キャンセル、海外メディアも注視
今日の朝日新聞から・・・
呉副首相会談キャンセル、海外メディアも注視
中国の呉儀(ウー・イー)副首相が小泉首相との会談をキャンセルして帰国し、外交問題になっている事態について、各国のメディアは「中日、国際マナー舌戦」(韓国・東亜日報)、「中日関係は厚い氷結期に」(英フィナンシャル・タイムズ)などと報じ、強い関心を示している。しかし、英国では4月に起きた中国の反日デモ報道に比べ扱いは小さく、米国やアジア諸国では悪化する日中関係の流れに位置づけ、日中の主張をほぼ等距離で伝える報道が目立つなど、冷静な分析が主流なようだ。
米ワシントン・ポスト紙は、靖国問題を巡る両国の感情的な対立が東アジアにおける「戦略的なライバル関係の拡大意識」によって激化していると指摘。ニューヨーク・タイムズ紙は、中国側の対応は日本側には「明らかな侮辱」としたうえで、「中国側の行動は恐らく裏目に出て、反中強硬派の安倍晋三幹事長代理の小泉後継を手助けするだろう」とするロビン・リム南山大教授の分析を引用した。
韓国の東亜日報は、「日中間には、歴史だけでなく、台湾、釣魚島(日本名・尖閣諸島の魚釣島)問題、日本の安保理常任理事国入りなど地域の主導権を争う問題が多く、しばらく冷却状態が続くだろう」と、状況の改善に悲観的な論者の見解を紹介した。
朝鮮日報も日中の「冷たい政治関係が熱い経済関係まで悪化させることはないだろう」としながら、「軍事・経済の覇権をめぐる競争が激しくなり簡単には解消されない」という専門家の見方を伝えている。
戦後60年で歴史認識を巡る日本と周辺諸国の摩擦に注目が集まるドイツでは、多くのメディアがこの問題を取り上げた。フランクフルター・ルントシャウ紙は、中国は「キャンセルする以上、理由をはっきりと示さなければならない」と中国政府の外交手法を批判した。
ロシアの主要各紙も一斉にこの問題を報道。「日本の首相は中国の怒りを恐れていない」(新イズベスチヤ)などと、日中間の険悪な空気を伝えている。
日中双方の立場を等距離で伝える論調が目立つ中、中国に批判的な意見が目立つのがマレーシア。「マレーシアでは補償もすんだ話とみなされており、問題視されない」(地元大手紙幹部)。
台湾では、呉副首相の突然の帰国は中国の「外交失態」(自由時報)と位置づける見方が目立っているが、同じく台湾の中国時報は「副首相訪日に込められた『関係改善の手がかりに』という北京のメッセージが分からない小泉外交の愚かしさ」と書いている。
2005年05月25日12時10分 朝日新聞
http://www.asahi.com/politics/update/0525/003.html?t5
中国反日デモ以来、私も主要海外メディアをけっこうチェックしているのですが、確かに呉副首相の会談ドタキャン事件は関心が高いようですね。また、当ブログ上で興味深い記事のご紹介もできればと考えております。
冷静にこの問題を考察する上で、私は海外世論に対ししなやかに日本のイメージUPにつながるような対応をしてもらいたいと強く願っております。
●中国外交部の靖国参拝問題を国際的にクローズアップさせる戦術の一環
中国反日デモをみなさまと検証し続けてきて、かつ今回の海外メディアの反応を見てみますと、残念ながらやはり戦争に絡む問題(教科書問題、南京大虐殺問題、靖国参拝問題)では、まだまだ敗戦国日本には厳しい論調が多いようです。
全面的日本支持派のメディア(例えば米ワシントンポスト紙)全面的に日本を支持した記事(例えば米ワシントンポスト紙の4月18日記事「China's Selective Memory」)においても、戦争がらみの論点では日本批判を付け足すことは忘れないことが多いのは、当ブログでも何度か検証してきたことです。
今回、外交的非礼を国際批判されるリスクを犯してまでも中国のとった行動ですが、木走的には「あいたた、やられた」と思いました。
中国のこずるい外交戦略の一環だと私は決め付けていますが、戦後60年の日本の国際貢献や平和主義国家としての実績と戦後60年の血塗られた共産国家中国を対比されること、さらに現時点での両国の体制比較をされることは、中国としては徹底的に避ける外交努力をしているように思えるのです。
タイミングを見計らって、国際的には必ずしも評判のよくない60年も前の日本の戦争がらみの話題を持ち出すことで、自国に有利な状況を作り上げようとしているわけです。
日本のメディアではあまり指摘していないようで不思議なのですが、私・木走としては、今回の呉副首相の会談ドタキャン事件は、中国外交部の靖国参拝問題を国際的にクローズアップさせる戦術の一環であると考えています。
海外で大きく報じられるという意味では今回の中国の戦術は概ね目的をかなえつつあるともいえそうです。
●新聞社説を検証してみる〜ひさびさに五大紙がそろいぶみ
この一両日で、朝日・毎日・読売・産経・日経の各紙社説がそろってこの問題にふれています。なんか各紙の今までの論説と代わり映えのしない主張が多いのですが、少しお付き合いいただき新聞社説を検証してみたいと思います。
朝日新聞社説:
日中関係 ああ、なんと不毛な
日本を訪れていた呉儀・中国副首相が、小泉首相との会談を急にキャンセルして帰国した。
当初は「緊急の公務」と説明されたが、のちに中国外務省は「日本の指導者が、靖国神社の参拝について繰り返し中日関係改善に不利となる発言をしたことは大変不満だ」とする談話を発表した。
首相との会談を当日になってキャンセルするのは極めて異例だ。理由を明確にしなかったのもマナーに欠ける。ただ、最近の経過を振り返れば、中国ばかりを責めることはとてもできない。
4月下旬、小泉首相は胡錦涛国家主席とジャカルタで会談した。首相は反日デモで、主席は靖国参拝など歴史問題でそれぞれ適切な対応を求め、関係改善への努力を確認したはずだった。
実際、中国はその後、各地に広がった反日デモを抑え込んだ。日本公館が投石などの被害を受けたことに謝罪はしていないが、原状回復を約束した。
翻って、小泉首相の対応はどうか。先週の国会で「どのような追悼の仕方がいいかは他の国が干渉すべきでない」と述べ、これまで以上に強い口調で年内の靖国参拝に意欲を示した。
首相ばかりではない。自民党の武部勤幹事長は王家瑞・中国共産党対外連絡部長との北京での会談で、「首相の靖国参拝に対する中国側の批判は内政干渉だという人もいる」と述べた。反発する王氏と激しい応酬になったという。
この問題を「内政干渉」と切り捨ててしまうのには無理がある。侵略戦争の加害者である日本が戦死者をどう追悼するか。そのやり方をめぐって被害者が感情を傷つけられていると言うなら、そうした思いを解く努力をする道義的な責任は加害者側にある。
ましてA級戦犯の戦争責任は、日本がサンフランシスコ講和条約で東京裁判の判決を受け入れたことで、国際的に決着のついたことである。その責任をあいまいにする靖国参拝に、当事者でもある中国が不信を表明するのを「干渉」とはねつけるわけにはいかない。
日本が植民地支配した韓国も同じだ。
首相は01年の金大中大統領との会談で、靖国神社に代わる追悼施設の検討を約束した。その金氏は最近の講演で「その約束が実践されなければならない」と改めて求めた。
戦死者の追悼の仕方は内政問題と言うなら、なぜこんな約束をしたのか。靖国参拝に意欲を燃やした中曽根元首相が取りやめたのも、この問題が内政にとどまらないと気づいたからだ。
「内政干渉」という言葉には、これ以上の問答は無用といわんばかりの響きがある。今回の中国側の会談キャンセルにも似たものが感じられる。「会いたくないのを会う必要はない」と首相が言い、「大使館への破壊活動と一脈通じるものがある」と町村外相が不快感を言う。
こんな切り口上を続けていては、不毛な連鎖は深まるばかりだ。
毎日新聞社説:
社説:日中関係 これ以上冷やしてはならない
23日に予定されていた小泉純一郎首相と中国の呉儀副首相の会談が急きょ、中止された。中国側が「緊急の公務」を理由に申し入れてきた。首脳級会談が当日にキャンセルされたのは外交儀礼上、極めて異例だ。日中関係改善へのステップになるとみられていただけに残念である。
呉副首相は愛知万博の「中国ナショナルデー」の催しに出席するため訪日していた。突然の会談キャンセルについて中国側は在日大使館を通じ、靖国問題が理由ではない、と外務省に伝えてきたという。だが、一方では中国指導部内の対日強硬派の巻き返しとの観測があるほか、小泉首相の靖国神社参拝発言が原因ではないか、との見方も出ている。
日中間の首脳相互訪問は、小泉首相の靖国神社参拝が原因で3年半も途絶えている。小泉首相は昨年11月のラオスでの日中首脳会談で愛知万博期間中の温家宝首相の訪日を招請したが、中国側は今回、呉副首相を訪日させた。首脳相互訪問の復活にはまだ環境が整っていない、と中国側が判断したためだろう。
日中両国は、4月のジャカルタでの首脳会談で対話促進で合意し、関係悪化にとりあえずの歯止めをかけた。しかしその際、胡錦涛国家主席は72年の日中共同声明など「日中関係を定めた文書の尊重」などの5項目提案を行い、「反省を実際の行動に移してほしい」と、暗に首相の靖国神社参拝中止を求めた。
ところが、小泉首相からの回答は胡主席の期待とは遠いものだった。衆院予算委員会で「他国が干渉すべきではない。いつ行くかは適切に判断する」と、参拝継続に一歩踏み込んだ。
訪中した自民、公明両党の幹事長との会談で胡主席が改めて靖国問題に言及したのは、小泉首相の予算委答弁への不満の表れだろう。胡主席は「中日関係の発展という大きなビルの建設はレンガを一つ一つ積み上げないと出来ないが、壊すことは一瞬で可能だ」とも述べた。
レンガを積み上げるには、日中双方が汗を流さなければならないのはもちろんである。反日デモの暴徒化を許し謝罪を拒否していることや、原子力潜水艦が日本の領海を侵犯したのに謝罪をしていないことなど、中国側にもレンガの積み上げを壊しかねない行為があった。
だが、小泉首相が参拝継続と日中関係打開を両立させたいと思うなら、中国側が納得出来る十分な説明をしなければならない。今回の会談キャンセルは中国側が示した一つの「行動」と受け止めることが出来よう。首相が「日本人の国民感情として、亡くなるとすべて仏様になる」と言うだけでは、あまりにも論理が薄弱だ。
会談中止について、小泉首相は「よい機会だと思ったが、別に会いたくないのを会う必要はない」と述べた。これでは打開の道は開けない。靖国参拝は小泉首相の個人的信条から発した問題なのだから、首相が知恵を出すしかない。
2005年5月24日 0時09分
http://www.mainichi-msn.co.jp/column/shasetsu/news/20050524k0000m070141000c.html
読売新聞社説:
5月25日付・読売社説(1)
[中国副首相帰国]「最低限の国際マナーに反する」どんな理由があっても、非礼な行為は詫(わ)びる。それは、国際社会でも当然のルールだ。
中国の呉儀副首相が、直前になって小泉首相との会談をキャンセルし、帰国した。町村外相が言う通り、「最低限の国際マナー」に反する行為だ。
問題は、直前のキャンセルというだけではない。そもそも中国側の希望で設定された会談だ。会談では、中国側の要請にこたえて、首相が中国人団体観光客への査証(ビザ)発給地域拡大を表明するはずだった。
中国は「礼」を重んじる国のはずではなかったのか。もし他国の要人が中国首脳に対し今回のような行動を取ったら、中国はどう感じるだろうか。一言の「謝罪」もなしで済む問題ではあるまい。
中国側は当初、「重要な緊急の公務」が生じたことをキャンセルの理由にしていた。だが、その後、中国外務省報道局長は、靖国神社参拝問題に関する首相の発言などに対する強い不満が原因であることを明らかにした。
小泉首相が16日の衆院予算委員会で、靖国参拝について、「どのような追悼の仕方がいいのか、他の国が干渉すべきでない」「いつ行くかは適切に判断する」と述べたことを指しているのだろう。
戦没者の追悼はそれぞれの国の文化、伝統に従って行われるものだ。首相の靖国参拝には、日本国内でも賛否両論がある。その論議はあっていい。だが、他国の干渉によって決めることではない。
中国の胡錦濤国家主席は訪中した自民党の武部幹事長らに、「目にしたくない動き」として、靖国参拝、歴史教科書などを挙げた。日中関係の発展をビル建設に例え、「レンガを一つ一つ積み上げないとできないが、ビルを一瞬で壊すことが可能だ」とも語ったという。
しかし、「ビルを一瞬で壊すこと」につながりかねない、「目にしたくない」行動を重ね、日中関係の発展を阻害しているのは、むしろ中国の側だ。
中国原潜による日本領海侵犯、東シナ海の日中中間線付近での一方的なガス田開発、反日デモによる日本の大使館や総領事館に対する破壊行為、そして、今回の非礼な会談キャンセルである。
中国政府が大使館などに対する破壊行為を阻止しなかったのは、外国公館の保護を義務付けた「外交関係に関するウィーン条約」に反する。これについても、中国はいまだに謝罪しようとしない。
小泉首相と胡主席は4月のジャカルタでの会談で、日中間の対話促進を確認した。対話促進のために何が必要か。中国も冷静に考えるべきではないか。
(2005年5月25日1時39分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20050524ig90.htm
産経新聞社説:
■【主張】靖国参拝の意義 首相は世界に向け説明を
中国の呉儀副首相が小泉純一郎首相との会談を一方的に取りやめ、帰国した非礼な行為に対する閣僚などからの批判が広がっている。
これに関連、訪中した自民党の武部勤幹事長が中国共産党の王家瑞対外連絡部長と会談した際、首相の靖国参拝への中国の批判を「内政干渉だ」と指摘しながら、その発言を「誤解があるなら」として撤回したと報じられている。王氏が強く反発し、同席した公明党の冬柴鉄三幹事長らも「(武部氏の)発言は適切でない」と応じたからだとされる。
武部氏は二十四日の自民党役員会などで、「自分の考えでなく、国民の間に内政干渉と見る考え方があると伝えた」と釈明した。釈然としない説明だが、武部氏の真意がそうだったとしても、同氏の対応には疑問が残る。
十六日の衆院予算委員会で、小泉首相は靖国参拝について「他国が干渉すべきではない」と答えた。武部氏は自民党総裁である小泉首相の考えを、中国当局にどの程度はっきり伝えたのだろうか。この会談に関して武部氏らはさらに説明責任を果たすべきだ。
小泉首相は衆院予算委で、靖国参拝の理由について「戦没者を追悼し、二度と戦争を起こさないという、ごく自然な気持ちを実践してきた」と述べている。靖国神社にいわゆる「A級戦犯」が合祀(ごうし)されていることを中国や韓国が問題視していることについては、「『罪を憎んで人を憎まず』というのは(中国の)孔子の言葉だ」と述べ、中韓の批判はあたらないとした。
そもそも、「A級戦犯」は、東京裁判で戦勝国側が認定したものに過ぎない。東条英機元首相ら日本の戦争指導者が絞首刑などの判決を受けたが、その後、南方の法廷などで裁かれた「BC級戦犯」も含め、早期釈放などを求める国民運動が起きた。
この国民世論を背景に、「戦犯」の遺族にも年金が支給される改正援護法などが成立し、援護行政の一環として行われてきたのが、靖国神社での合祀である。どんな形で死んだにせよ、死者を必要以上にムチ打たないのが、日本の国民感情だったからだ。
小泉首相は日本の指導者として、こうした日本人の心のありようや伝統的な死者のまつり方などを中韓だけでなく、世界中に発信してほしい。
日本経済新聞社説:
社説2 日中の関係悪化に歯止めを(5/24)
中国の胡錦濤国家主席が22日、自民党の武部勤、公明党の冬柴鉄三の両幹事長と北京で会談、小泉純一郎首相の靖国神社参拝や歴史教科書、台湾問題を挙げて日本の対応を強く批判した。翌日には、訪日中の呉儀中国副首相が午後に予定された小泉首相らとの会談をキャンセル、日程を1日繰り上げて帰国した。
真相は不明だが、小泉首相が靖国参拝継続を示唆する発言をしたことへの反発、との見方もある。先月末の首脳会談で改善に合意したはずの日中関係の雲行きが早くも怪しくなってきた。現状では首脳の相互訪問再開はおろか、不測の事態が生じる懸念もなしとしない。双方の官民各界がこれ以上の関係悪化に歯止めをかけるために知恵を絞る時だ。
胡主席は小泉首相がA級戦犯を合祀(ごうし)した靖国神社に参拝していることなどを「目にしたくない動き」と批判。「中日関係の発展は大きなビルの建設で、れんがを一つ一つ積み上げないとできないがビルは一瞬にして壊すこともできる」と両国関係に強い危機感を示した。
胡主席は先月23日のジャカルタでの小泉首相との会談で「歴史をかがみに未来に向かい、侵略戦争を反省し、中国やアジア人民の感情を傷つけない」など五項目を提案。小泉首相も配慮する考えを示した。
しかし、小泉首相は16日の衆議院予算委員会発言で、靖国神社に「いつ行くかは適切に判断する。他国が干渉する問題ではない」と参拝継続を示唆。A級戦犯合祀について「『罪を憎んで人を憎まず』というのは孔子の言葉だ」と述べた。これは侵略戦争を行った側が言うべき言葉ではない。
中国では江沢民前政権時代に強まった愛国主義教育などの影響で、反日感情が極めて強い。共産党政権への国民のうっ積した不満と相まって、いつまた大規模な反日、反政府暴動が起きないとも限らない。
われわれは小泉首相にはA級戦犯合祀のもとでの靖国参拝を控え、中国には反日民族主義教育を是正するよう求めてきた。実現しないのは残念なことだ。当面は指導者間の相互信頼を欠く現状下で、いかにしてこれ以上の関係悪化を防ぐかを双方の官民各界が考える必要がある。
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20050523MS3M2300C23052005.html
●外交ゲームとしての側面から冷静に彼の国の戦術の考察がなされていない
ご覧いただいたとおり、例によって、朝日、毎日、日経は靖国参拝反対であり、読売・産経は靖国参拝賛成であります。
しかし、朝日の社説ですが、全文まったく中国批判が展開されていないのは驚きです。せいぜいが「マナーに欠ける」という表現があるぐらいでしょうか。
社説の読み方ですが時間が無い場合結論だけ読んでしまうと大意がつかめて便利なようです。各社説の結語だけ抜粋してみましょう。
朝日社説:
「内政干渉」という言葉には、これ以上の問答は無用といわんばかりの響きがある。今回の中国側の会談キャンセルにも似たものが感じられる。「会いたくないのを会う必要はない」と首相が言い、「大使館への破壊活動と一脈通じるものがある」と町村外相が不快感を言う。 こんな切り口上を続けていては、不毛な連鎖は深まるばかりだ。
毎日社説:
会談中止について、小泉首相は「よい機会だと思ったが、別に会いたくないのを会う必要はない」と述べた。これでは打開の道は開けない。靖国参拝は小泉首相の個人的信条から発した問題なのだから、首相が知恵を出すしかない。
読売社説:
小泉首相と胡主席は4月のジャカルタでの会談で、日中間の対話促進を確認した。対話促進のために何が必要か。中国も冷静に考えるべきではないか。
産経社説:
小泉首相は日本の指導者として、こうした日本人の心のありようや伝統的な死者のまつり方などを中韓だけでなく、世界中に発信してほしい。
日経社説:
われわれは小泉首相にはA級戦犯合祀のもとでの靖国参拝を控え、中国には反日民族主義教育を是正するよう求めてきた。実現しないのは残念なことだ。当面は指導者間の相互信頼を欠く現状下で、いかにしてこれ以上の関係悪化を防ぐかを双方の官民各界が考える必要がある。
結語を並べるだけで各紙の主張がよく理解できます。それだけの内容しか語っていないってことではないとは思いますが。(汗
5紙の社説を見てまいりましたが、どの紙も、今回の件を国家と国家の外交ゲームとしての側面から、冷静に彼の国の戦術の考察がなされていないのはどうなんでしょうか。
日本政府には、今回のドタキャン事件も、そもそもの靖国参拝問題も、感情論ではない冷静な分析をしていただき、その上で冷静な対抗策を打ち出していただきたいと強く願うのであります。
その意味でもう少し日本のメディアも興奮することなく冷徹な姿勢で報道していただきたいのでありますが、今回の社説を見る限り期待薄なのであります。ふう。
読者のみなさまのこの件に対する考察の一助となれば幸いです。
(木走まさみず)
<テキスト修正履歴>
2005/05.25 21:10 ワシントンポスト紙関連で一箇所修正いたしました。
<関連テキスト>
●靖国参拝問題〜大局的見地に立って考える
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050521
●靖国参拝問題〜大局的見地に立って考える(2)
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050521
●靖国参拝問題〜大局的見地に立って考える(4)
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050527