木走日記

場末の時事評論

あきれた毎日報道〜核問題はカレー談義に、経済連携はゾウ談義に

 今日はゴールデンウィークですし、たまには笑える雑談でもいたしましょう。



●インドで精力的に日程をこなした小泉首相

今日の朝日新聞から・・・

安保理常任理入りで相互支持を確認 日印首脳会談

 4カ国歴訪中の小泉首相は28日深夜(日本時間29日未明)、最初の訪問国であるインドに到着し、29日夕(日本時間同日夜)、シン首相と会談した。両首相は互いに国連安全保障理事会常任理事国入りを支持し合うことを確認。会談後、アジアの安定や環境など地球規模の問題に関する協力をうたった共同声明と行動計画を発表した。

 小泉首相は会談で「日印関係は潜在力にみあうレベルに発展していない。訪印を契機に現実のものにしたい」と述べ、シン首相は「インドはインフラ整備を必要としており、支援をお願いしたい」と語った。小泉首相日中関係にも言及し「大変悪いという意見があるが、強調したいのは、日中の経済関係が今ほど良好な時はないということだ」と述べた。

 行動計画は経済や安全保障、文化・学術をはじめ8分野の具体的な関係強化策をまとめた。首脳会談の毎年の開催や貿易額の飛躍的増加、インドでの日本語教育の充実などが盛り込まれている。

2005年04月30日01時16分 朝日新聞
http://www.asahi.com/politics/update/0429/007.html

 インド歴訪中の小泉首相ですが、たった2日間の滞在ですが精力的に動いたようでありますね。シン首相との会談の他、カラム大統領とも会談し、核問題めぐり意見交換したそうです。

核問題めぐり意見交換 首相、インド大統領と会談
 【ニューデリー29日共同】小泉純一郎首相は29日午後(日本時間同)、インドのカラム大統領とニューデリーの大統領官邸で会談した。

 大統領は「インドと日本は核廃絶という共通の目標を有している」とする一方、「現実にはインドの周辺に核兵器保有国が存在する。その中でインドは核兵器の先制不使用を明確に宣言している」と隣国パキスタンの核保有を念頭に、インドの立場に理解を求めた。

 これに対し首相は「日本は広島、長崎の経験を持つ唯一の被爆国だ。核軍縮に向けて真剣に取り組んでいることは理解してほしい」と述べた。

 首相は日本とインドの経済関係について「両国関係は潜在的可能性があるにもかかわらず、日中関係に比べ低いレベルだ。今回の訪問を機に潜在的可能性を現実のものにしていく努力をしたい」と表明した。

中国新聞
http://www.chugoku-np.co.jp/NewsPack/CN2005042901003330_Politics.html

 さらに、インド経済3団体が主催した昼食会で、首相は日印の経済連携の重要性を強く訴えたそうです。

日印、中国にらみ連携強化・資源開発など交流拡大
 【ニューデリー=藤田哲哉】小泉純一郎首相が日印の連携強化に乗り出した背景には今後、政治、経済両面でインドの重みが一段と増してくるとの認識がある。アジアで影響力を拡大している中国をにらみながらの連携で、国連改革などでの共同歩調に加え、経済面でも自由貿易協定(FTA)の研究や天然ガス資源の共同開発などを通じ、交流拡大に弾みをつけたい考えだ。

 「日本とインドとの間の貿易と投資は停滞しているとのイメージがあるが、実は増加傾向にある。日印関係は経済を含めて正しい方向に向かっている」――。29日昼。インド産業連盟、インド商工会議所連盟などインド経済3団体が主催した昼食会で、首相は日印の経済連携の重要性を強く訴えた。 (07:01)

日本経済新聞
http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20050430AT1E2900L29042005.html

 同じく日経によれば、中学校を視察しインドの日本語教育を参観したそうですよ。

首相、インドの日本語教育を参観・デリーメトロも視察
 インド訪問中の小泉純一郎首相は29日、デリー市内の私立中学校「R・K・プラム校」を視察し、日本語の授業を参観した。

 民族衣装で着飾った生徒たちから「おはようございます」と日本語であいさつされた後、「幸せなら手をたたこう」の合唱を披露された首相は「日本でもこんなに素晴らしい歓迎を受けることはない」。英語で「ウエルダン(よくやった)」と大喜びだった。

ニューデリー=藤田哲哉) (20:01)
日本経済新聞
http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20050429AT1E2900N29042005.html

 まあ、最大の目的であった日印共同声明と共同行動計画を発表できたわけでおおむね今回のインド訪問は日本政府としては合格点であったといえましょう。対中国関係ひとつ取り上げても南アジアの大国インドと有効な関係を拡大発展することは日本に取り極めて重要な外交戦略であるといえます。



●あきれた毎日報道〜核問題はインドカレー談義に、経済連携はインドゾウ談義に・・・

 ところで、今回のインド訪問ですが、シン首相とのトップ会談は、各紙細かく報道しているようであります。ただ、それ以外の細かい会談や視察ではかなりの手抜き記事が目に付いたわけであります。特にひどいのが毎日新聞・・・

 大統領との会談やインド経済3団体主催の昼食会での小泉首相の発言内容ですが・・・

小泉首相:カレーとゾウ、インドの歓心買おうと躍起

 小泉純一郎首相は29日、インドのカラム大統領と会談した際、「24〜25年前にインドで本場のカレーを食べて、いかにおいしいか印象づけられた」とインドの思い出を語った。大統領は「多分インド人の次にカレーが好きなのは日本人ではないか」と応じ、カレー談議に花を咲かせた。

 インド経済団体との昼食会では「アジアにはインドという日本の友がいる」と発言。極東国際軍事裁判東京裁判)で日本の無罪を主張したパール判事や、1949年に上野動物園にゾウを寄贈したネール首相の話まで持ち出し、日印関係強化に向けインド側の歓心を買おうと躍起だった。【ニューデリー坂口佳代】

毎日新聞 2005年4月29日 23時18分
http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/asia/news/20050430k0000m010105000c.html

 ・・・(汗

 あいたあ、この手抜き報道はちょっとひどくないですか?

 カラム大統領とは「24〜25年前にインドで本場のカレーを食べて、いかにおいしいか印象づけられた」って、カレー談議に花を咲かせたそうですが、インドの核問題をめぐっての意見交換はどこいったんですか?(爆笑)

 インド経済団体との昼食会ではゾウの話ですか?たしか名前はインディラで、ネール首相の娘さんの名前でしたよねえ。

1949/09/24   インド象インディラ来日
http://www.c20.jp/1949/09indir.html

 って、ちがうでしょう、自由貿易協定(FTA)の研究や天然ガス資源の共同開発など、今後の日印の経済連携の重要性を強く訴えたんじゃないのですか?

 この毎日報道の事実の端折り(はしょり)方は、メディアリテラシーとか難しい話を振り回す以前のレベルで、もう怒るのを通り過ごして嗤うしかないのであります。

 もちろん、木走は肝心の報道をしっかり別記事でした上で、上記の駄文記事をエピソード的に付けるならまだ、理解できます。

 しかし、悲しいことに、今回の毎日報道でインド大統領とインド経済団体との昼食会に関する報道は、毎日新聞としては上の記事だけなのですよ。(30日14:30現在)



●おまけの話

 毎日新聞だけしか読んでない読者は、確かに小泉首相がわざわざインドまで行っ「カレーとゾウ」の話しまくって、「インドの歓心買おうと躍起」になってるように思うでしょうねえ。

 ふうー。

 ん?

 なにやら、こっちの新聞でもインドの日本語教育を参観した首相が発言しているようです。

インド生徒が「おはようございます」、小泉首相感激

 インド訪問中の小泉首相は29日(日本時間同)、私立学校「R・K・プーラム校」(日本の中学、高校に相当)を視察し、日本語の授業に飛び入り参加した。

 11歳クラスの生徒たちは一斉に花びらをまいて歓迎し、日本語で「おはようございます」とあいさつ。首相は「日本人と同じ日本語だ」とびっくりした様子だった。(ニューデリー 円入哲也)

2005/4/29/22:07 読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20050429ia23.htm

首相は「日本人と同じ日本語だ」とびっくりしたそうです。(爆笑)

 小泉首相、あなたは長島茂雄さんですか?(苦笑

15.「初の海外キャンプで」
はじめて海外キャンプを張ったとき、
「こちらの子は英語がうまい。おお、走ってる車は外車ばかりじゃないか、さすがアメリカだ」
長島語録
http://www.interq.or.jp/sun/solaris/cho/cho1.htm

 ああ、日本のメディアのユーモアあふれるコメントの抜粋方法は、賞賛すべきものがありますですよねえ。

 毎日新聞の記事はひどいですが、この読売記事は完全に受け狙いですよねえ・・・

 まさか本気だったらそれこそ笑い話じゃないですけれど・・・(汗

 読者の皆様、いかがでしたでしょう? お楽しみいただいたでしょうか?

本日は哀しくも笑える雑談でございました。




(木走まさみず)

<関連テキスト>
当該エントリに関して補足説明をしております。ご参照ください。

●[メディア][雑談]手抜き批評とクレームいただいちゃいました。(苦笑
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050430/1114864177