木走日記

場末の時事評論

『辺野古に土砂 政権の暴挙認められぬ』(朝日社説)だと?〜根拠薄弱をひた隠すヤクザの因縁付けみたいな朝日新聞飛ばし社説

 4日付け朝日新聞社説が『辺野古に土砂 政権の暴挙認められぬ』とまたしてもの安倍政権批判を展開しています。

辺野古に土砂 政権の暴挙認められぬ
https://www.asahi.com/articles/DA3S13796522.html?ref=editorial_backnumber

 社説は冒頭、「沖縄の皆さんの心に寄り添う」とはこういうことかと皮肉りから始まります。

 安倍首相が繰り返し口にしてきた「沖縄の皆さんの心に寄り添う」とは、つまりはこういうことだったのか。

 沖縄県の米軍普天間飛行場の移設をめぐり、岩屋毅防衛相は名護市辺野古の沿岸部に基地を造るため、今月14日から土砂の投入を始めると述べた。

 「土砂が入れば、この豊かな海に計り知れない打撃を与える」とお怒りです。

 辺野古沖の大浦湾には262の絶滅危惧種を含む5800種以上の生物が確認されている。ひとたび土砂が入れば、この豊かな海に計り知れない打撃を与えることも忘れてはならない。

 ここで朝日社説は辺野古工事には「最低でも13年はかかる」費用も「2400億円ほどではとても足りず、10倍以上になる」との試算を取り上げ、批判展開いたします。

 普天間飛行場の危険性を除くには一日も早い返還が必要で、それが沖縄の負担軽減につながると説明する。数年内に実現するかのような言いぶりだが、県の見通しはまるで違う。

 埋め立ての本体工事に5年。防衛省自身の調査によって最近わかった、当初の想定をはるかに上回る軟弱な海底地盤の改良工事に5年。その後の施設整備などに3年――。最低でも13年はかかると見て、先月開かれた政府との集中協議で示した。

 費用も計画の2400億円ほどではとても足りず、10倍以上になると試算している。むろん国民の税金から支払われる。

 いくらなんでも工期13年以上で費用2兆4千億円以上はないでしょと思うのですが、社説は根拠も示さず、政府に反論があるならば「その根拠をデータをもって示」せ、「それが政府がとるべき態度だ」と逆切れの主張をします。

 こうした指摘が間違っているというのなら、その根拠をデータをもって示し、共通認識をもったうえで問題の解決を探る。それが政府がとるべき態度だ。

 社説は安倍政権には「既成事実を積み上げ、反対派の勢いをそごうという意図」があるのだ、これこそ「政治の堕落」だと主張して結ばれています。

 沖縄では来年2月24日に、埋め立ての賛否を問う県民投票が行われる。政府が工事を急ぐ背景には、その前に既成事実を積み上げ、反対派の勢いをそごうという意図が見え隠れする。政治の堕落というほかない。

 ・・・

 この社説の論の組み立てで肝心の部分、辺野古工事が「最低でも13年はかかる」費用も「2400億円ほどではとても足りず、10倍以上になる」との数値試算の論拠が裏付けられていません、「県の見通し」とあるだけです。

 実は、この部分は地元紙琉球新報が11月29日付けでスクープした記事内容をそのまま流用しているのです。

辺野古埋め立て工費2.5兆円 沖縄県試算、当初計画の10倍
2018年11月29日 10:40
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-841236.html

 記事より当該部分を抜粋。

 現状の護岸建設までの費用が当初予定の10倍となっていることを踏まえ、防衛省が資金計画書で示していた埋め立て工事全体の2400億円も10倍になると当てはめた。その上で、岩国飛行場拡張工事で生じた費用を踏まえ、軟弱地盤の改良工事費や県外からの追加の土砂調達費を加算した。

 工期についても、埋め立て工事に5年、軟弱地盤の改良工事に5年、埋め立て後の施設整備に3年の計13年を要すると指摘した。「一日も早い普天間の危険除去につながらない上に、2兆円以上も費用がかかる計画を続けるのか」(県幹部)と、辺野古移設以外の方策の検証を国に求めている。

 琉球新報記事では、しかしながら、記事の結びで、これらの数値は正確ではない、おおよその想定であり公式のものではない、と正直にここの数値の「不確かさ」を認めています。

 記事結語より。

 工事費用の県の試算は県の主張を補強するためのおおよその想定で、公式の調査ではない。

 朝日新聞社説が姑息なのはこの県による「見通し」が根拠薄弱な非公式のものである事実を伏せながら、引用している点です。

 さらにこの根拠薄弱なデータに政府が反論するならば「その根拠をデータをもって示」せと、逆切れするのです。

 こうした指摘が間違っているというのなら、その根拠をデータをもって示し、共通認識をもったうえで問題の解決を探る。それが政府がとるべき態度だ。

 根拠薄弱なことを隠しつつ、おおざっぱなデータを振り回し、逆に反論があるならば根拠を示せと、無理難題を押し付ける。

 社会の公器を自負する朝日新聞のその社説が、ヤクザの因縁付けのような裏付け取材のない不正確な数字が羅列され、社説全体の論拠として悪用されているのです。

 デジタル大辞泉によれば、裏付け取材に基づかず、記者などの憶測によって書かれた不正確な記事のことを、飛ばし、飛ばし記事といいます。

 飛ばし記事(読み)トバシキジ
裏付け取材に基づかず、記者などの憶測によって書かれた不正確な記事。飛ばし。
https://kotobank.jp/word/%E9%A3%9B%E3%81%B0%E3%81%97%E8%A8%98%E4%BA%8B-672660

 元記事の琉球新報は正直に試算の精度がおおまかであることを認めていました。

 工事費用の県の試算は県の主張を補強するためのおおよその想定で、公式の調査ではない。

 それを朝日新聞社説はこの非公式の精度の悪い試算を悪用します。

 試算の精度が悪いことを隠したまま、政府が反論するならば「その根拠をデータをもって示」せと因縁付けです。

 「その根拠をデータをもって示」さなければならないのは、県側であり、それを引用した朝日新聞側なのにです。

 まったく、ヤクザの因縁付けみたいな朝日新聞飛ばし社説なのであります。

 ふう。



(木走まさみず)