木走日記

場末の時事評論

作家先生って意外と情弱な件〜時代の流れに逆らい既得権益を擁護するドンキホーテのような「道化役」

 日経記事によれば今年雑誌販売が27年ぶりに1兆円を割り込む見通しとなったそうです。

雑誌販売27年ぶり1兆円割れ 11年、休廃刊相次ぐ
2011/12/27 12:00
http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819594E0E4E2E5E08DE0E5E3E0E0E2E3E3E2E2E2E2E2E2

 雑誌市場ですが、97年のピーク時には1兆5644億円を記録しましたが、その後インターネットの普及や不況の影響で今年まで14年連続で売上を落としています。

 一方書籍市場は前年並みの8200億円前後、雑誌・書籍合計では約4%減の1兆8050億円前後になる見通しですが、出版市場そのものの長期縮小傾向は続いている模様です。

 書籍よりも雑誌のほうが苦戦を強いられているようですが、その意味でとてもシンボリックだった記事が2週間前のこれ。

情報誌ぴあ、電子書籍で復刊 スマホなどに無料で
16日から配信
2011/12/13 21:04
http://www.nikkei.com/news/headline/related-article/tc/g=96958A9C93819696E3E1E299808DE3E1E3E0E0E2E3E38698E0E2E2E3;bm=96958A9C93819594E0E4E2E5E08DE0E5E3E0E0E

 チケット販売最大手のぴあは16日、7月に休刊した情報誌「ぴあ」をウェブサイト上で復刊することを公表しました。

 まず映画欄から再開し、東京・大阪・名古屋地域の上映スケジュールを配信、原則として毎週金曜日に更新し、パソコンやスマートフォンなどで無料で閲覧でき、映画配給会社などから作品の広告を集め、特別号を編集し紹介することで収益を得るビジネスモデルとするそうです。

 情報誌ぴあがスマホ対応の電子書籍化で復刊とは、なんとシンボリックな記事でしょう。

 情報誌などの紙の雑誌が売れなくなったのは、まさにネットやスマホの普及により、人々の情報収集の手段が激変したからです。

 映画館の情報やチケット購入など、わざわざ紙のピアを買わなくてもすべてスマホで済ますことができる時代になったわけです。
 
 映画に限らず情報収集するのに専門誌や情報誌に頼らずPCやスマホからネット検索して収集するほうが、即時性、利便性、に優れ、しかも情報収集には通信費以外費用が掛からないわけですから、ある種の雑誌が売れなくなるのも仕方のないことかも知れません。

 ひとつの市場を「蒸発」させてしまうほどの技術革新を「破壊的技術」と呼ぶことがあります。

破壊的技術

破壊的技術(はかいてきぎじゅつ、英: disruptive technology)とは、従来の価値基準のもとではむしろ性能を低下させるが、新しい価値基準の下では従来製品よりも優れた特長を持つ新技術のことである。また、破壊的技術がもたらす変化を破壊的イノベーションという。1995年に、クレイトン・M・クリステンセンがJoseph Bowerとの共著論文にて考案した[1]。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A0%B4%E5%A3%8A%E7%9A%84%E6%8A%80%E8%A1%93

 今、「電子書籍」化は出版業界にとり、まさに「破壊的技術」と申していいでしょう。

 かつてデジタルカメラの登場でカラーフィルム市場が「蒸発」(あっという間に市場そのものが消えてしまうという意味)し、街からカメラ屋さんが消えてしまいましたが、この場合「デジタルカメラ」はまさにフィルム市場にとり「破壊的技術」であり、
デジタルカメラがもたらした「破壊的イノベーション」は、一つの市場を「蒸発」させてしまったわけです。

 紙という媒体を中心に書店で売られてきた書籍・雑誌を扱う出版業界にとって、「電子書籍」化はまさに市場を激変させうる「破壊的技術」でありましょう。

 日本の出版業界の電子書籍化への対応はお世辞にもここまで積極的に推進してきたとはいえませんが、間違っても時代の流れに逆行して電子書籍化の流れに逆らうような振る舞いは避けなければなりません。

 「破壊的技術」がもたらす市場への「破壊的イノベーション」から業界を守るためには、「破壊的技術」に敵対することではなく、それを上手に取り込むことであります。

 最近の好例として音楽CD業界のネット配信サービスへの対応があります。

 PCやipodなどからネット配信で音楽をダウンロードするサービスの普及により、CDの売上は半減しましたが、音楽CD業界はなんとかネット配信サービスとの共存、つまりソフトランディングに成功しつつあります。

 それでも街のCD屋は大きく売上を落としましたし影響は小さくはないですが、音楽CD業界はなんとか「ネット配信」という技術革新に耐えているようです。

 出版業界においても「電子書籍化」、コンテンツのネット配信サービス化は、時代の流れであり、避けることはできません、「破壊的技術」がもたらす市場への「破壊的イノベーション」を緩和する唯一の道は、「破壊的技術」を拒むのではなくそれを上手に取り込んでいくことです。

 で、最近のネットでの話題はこの記事ですね。

「自炊」代行2社を提訴…人気作家ら7人
(2011年12月20日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/book/news/20111221-OYT8T00255.htm

 これはもう本当にバカらしい訴訟で、東野圭吾弘兼憲史浅田次郎大沢在昌林真理子永井豪武論尊の各先生方は、大手出版社にそそのかされたピエロ役なのであり、本件では著作権すら持てず裁判すらできない出版業界が影の原告なのは明らかです。

 代行業者は、客が自分でスキャンする行為を代わりに行っているだけであり、私的利用ならばコピーは適法であり何も問題はありません。

 それよりも電子書籍の数が少ないことのほうが一番の問題なのです。

 不正な海賊版の温床になることを恐れているとしたら、適正な価格で電子書籍の数を増やしていくことが一番の解決策になります。

 そもそもすべての本が電子書籍化されれば「自炊」する必要などなくなります。

 この訴訟のバカらしいところは、著名な作家を利用して実は大手出版社が自分達の既得権益を守ろうと影であがいているのが本質なのであり、時代の流れから完全に取り残されている点であり、また「電子化」=「海賊版」流布という、手垢のついた論法で音楽業界がおかした過ちを繰り返している点であります。

 出版業界において「電子書籍化」、コンテンツのネット配信サービス化は、時代の流れであり、避けることはできません、「破壊的技術」がもたらす市場への「破壊的イノベーション」は、コンテンツの著作権が侵害されることではまったくありません。

 「電子書籍」の普及で、一番影響をこうむるのは作家先生方ではなく、「紙」という旧媒体に依存しきっているその存在価値から問われる大手出版社なのであり、次に製造・印刷業、流通業・書店でしょう。

 電子書籍化への流れは止められないでしょう。

 再度述べますが、「破壊的技術」がもたらす市場への「破壊的イノベーション」を緩和する唯一の道は、「破壊的技術」を拒むのではなくそれを上手に取り込んでいくことです。

 その意味で7人の作家の先生は気の毒ですが時代の流れに逆らい既得権益を擁護するドンキホーテのような「道化役」にみえてしまいます。

 作家先生って意外と情弱なのでしょうか。



(木走まさみず)