木走日記

場末の時事評論

「世界最悪のファンキーな議会」ワースト5に日本入賞の巻(米FP誌)

 "Funk"という単語ですが、もともとの意味がふたつありまして、「臆病」という意味と「悪臭」という意味であります。

 で、これが"Funky"(ファンキー)と形容詞になると意味がみっつになりまして、「臆病な」という意味と「臭(くさ)い」という意味と、なぜか「かっこいい」という意味が加わります。

 英語でかっこいいといえば"Cool"でありますが、"Funky"になるとニュアンス的には「ちょっとくさいけどかっこいい」(苦笑)となりまして、変わっているけどいけてる場合に使用することが多いわけですね。

 "Funky"をどの意味で使用するかはネーティブは文脈で使い分けているわけですが、そうですね日本語で「香ばしい」が近いかも知れません、「香ばしい」お茶ならいい意味ですが、「香ばしい」議論なら胡散臭さ全開ってニュアンスになりますよね、"Funk"、"Funky"も「香ばしい」単語なのであります。

 なぜこんな前段の話をしているかと申しますと、今回は最近の米誌の日本の議会について書かれている興味深い記事を紹介しようと思っているのですが、その記事タイトルに"Funk"が使われているのです。

Parliamentary Funk
The United States isn't the only country whose legislature just doesn't work.
http://www.foreignpolicy.com/articles/2011/07/20/parliamentary_funk?page=0,0

 この米誌フォーリンポリシー7月20日付け記事でありますが、タイトルの"Parliamentary Funk"なのでありますが、直訳すれば「議会のファンク」となり意味がちょっと不明になります、ここは「ファンキーな議会」もしくは「香ばしい議会」あたりがよい気がします。

 記事自体もだいぶ「ファンキー」な乗りの内容になっており、サブタイトルからして"The United States isn't the only country whose legislature just doesn't work."、ファンキーな訳をさせていただければ、「オマイラ安心しろ、立法府(国会)がぜんぜん機能しないのは合衆国だけじゃないんだぜ」ってな感じなのです。

 記事の構成は、アメリカの国債が発行できなくなるデフォルト直前まで追い詰められた法案をなかなか決められないアメリカ議会の体たらくを嘆いた上で、いやいやでもね世界にはもっとファンキーな議会を持った哀れな国があるんだから心配ないよ、と世界最悪の議会を有するワースト5の国を順次紹介するというファンキーな内容なのであります。

 で、議会が役立たずの5つの国というのが、ベルギー、イラク、日本、アフガニスタン、台湾(記述順)なのであります。

 ワースト5にイラクアフガニスタンという自分たちが軍隊で旧政権を滅茶苦茶に壊したことに由来して議会が機能していない国を入れちゃうところがファンキーなヤンキーらしいといえばらしいのですが、イラクアフガニスタンは別にしてベルギーはオランダ語圏とフランス語圏の対立でもう1年以上も政権そのものがないツワモノ(?)であり、一方の台湾もプロレス国会との異名をとるお国柄で国会での乱闘騒ぎはすでに国際的に有名なわけであります。

 まあ4カ国とも議会がうまく機能していない点で納得なわけです。

 で、我が日本です。

 実に我が日本の国会に関しても実にファンキーな記述が並んでいますので、当該部分の原文を紹介。

JAPAN

If Japan's parliament has seemed slow in responding to the disaster at Fukushima Daiichi nuclear power plant, that's partly by design. Although the national parliament is meant in theory to serve as the country's highest lawmaking body, in reality it's subordinate to a branch of government largely invisible to the public: the elite civil service, made up of senior ministry bureaucrats who basically write policy before it's perfunctorily debated and rubber-stamped into law by parliament.

Conditioned in deference, the parliament has little redress apart from withdrawing its formal support of the government and forcing the selection of a new prime minister or a new round of elections. Unsurprisingly, Japan has had five prime ministers in the past five years, but little in the way of major legislation, despite the fact that a major debt crisis seems to be looming on the horizon, with gross government debt soaring to over 200 percent of GDP this year.

In the case of the meltdown of Fukushima's nuclear reactors this year, the toothlessness of Japan's parliament was starkly exposed, as lawmakers were unable to compel bureaucrats in the government or in the Tepco power utility to give truthful testimony about the extent of damage to the reactors and the threat of exposure to dangerous radioactivity.

 で、記事の乗りに合わせてファンキーに意訳しますとこんな感じ。

日本

 日本の議会が福島第一原発事故の対応が遅いと見えるかも知れないけれどね、それは実は計画の一部なのだ。だってこの国では国会は、国の最高立法府として理論上機能することになっているけど、実際は、国民には見えないけどエリート官庁が支配していて、国会なぞそれにべったり従属しているだけなんだ。議会によって法案がおざなりに討議され最後にちょこっとハンコを押すだけで、その前に、専門のエリート官庁のエリート官僚がその法案をしっかりと書いているんだもの。つまりね、日本の議会は、法案を修正することすらぜんぜんできないんだ、まあ例外はあるよ、新首相の選出するときとか総選挙を実施するのは議会が決めるからね。この国じゃ驚くことではぜんぜんないが過去5年間に5人の首相がかわっているんだ、累積債務危機が地平線で不気味に迫っているのにね、つまり財政赤字がGDP比200パーセント以上に上昇しているのに主要法案は通せていないってわけ。今回の福島の原子炉の炉心溶解のケースで、日本の議会の役立たずがあらたに明確に露出されたよね。東電や官僚が原子炉への損害の程度と危険な放射能への露出の脅威に関して、議員たちは彼らに正直な証言をさせることができなかったわけだ。

 日本の法律は立法府である国会ではなく優秀なるエリート官僚が作成していると、国会はちょこっと議論して法案にハンコを付くだけだと。
 で。5年に5人も首相がコロコロ変わっているから、GDP比200パーセント以上に膨らんでいる財政赤字に対してまったく有効な法律の立案は手付かずになっていると。
 
 うむ、残念ながら核心を突いていますね、このファンキーな記事は。

 日本の国会は「世界最悪のファンキーな議会」のひとつであると認めざるを得ません。



(木走まさみず)