木走日記

場末の時事評論

お台場デモと野村総研レポート〜マスメディアが完全に沈黙する事象

 8日付けデイリースポーツ記事から。

フジテレビ前に「ノーモア韓流」“デモ”

 俳優・高岡蒼甫(29)が、韓国ドラマを放送するフジテレビを批判するコメントを短文投稿サイト「ツイッター」に書き込み、所属事務所を退社したのを受け、フジテレビに抗議しようとネット上で呼びかけあって集まった約1000人が7日、本社がある東京・お台場でデモ行進を行った。

 お台場ではフジテレビが主催する夏の屋外イベント「お台場合衆国2011」を開催中。日曜の昼間とあり、多くの来場者でにぎわう会場は、無数の日本国旗に加え、拡声器の声と怒号で騒然となった。デモ行進の許可を得ていなかったため、当初はフジテレビ社屋近くの公園で集会を行い解散する予定だったが、「散歩」という形でデモを始めた。

 だが、フジテレビ社屋前を通過したあたりから参加者は興奮。「日本を返せ!」「ノーモア韓流」「ツイートしたぐらいで事務所は解雇するなー!」などと絶叫。日章旗を持った男性を先頭に、行進の列は約500メートルにも達した。警察官は見守るだけで手出しはせず、怒号渦巻く行進の恐怖で泣きだす子供もいた。

http://www.daily.co.jp/gossip/article/2011/08/08/0004342966.shtml

 うむ、例のネット上で盛り上がっているフジTV「韓流押し」問題で7日日曜日にお台場でデモ行進が行われたわけですが、案の定、マスメディアはこれを完全に無視、私の知る限りライブドアニュースやJ−CASTニュースなどのネットメディア以外の既存メディアで本件を取り上げたのはこのデイリースポーツ紙のみであります。

 デイリースポーツ紙といえば親会社が神戸新聞社であり、神戸ローカルのU局サンテレビジョンとともに熱烈に地元球団阪神タイガース報道を売りにしていますが、日テレ・読売、TBS・毎日、フジ・産経、TV朝日・朝日、TV東京・日経の、いわゆる5大マスメディアグループに現在は関わりが薄いので、報道できたのでしょう。
(TV東京・日経グループがTV大阪を開局するまではサンテレビは系列関係があったことは関西在住の読者はよくご存知のことでありましょう)

 マスメディアがネット上で盛り上がるフジテレビ批判騒動を一切取り上げないのはニュースバリューが無いからだという論をときどき見聞きしますが、くだらないなでしこジャパン選手の合コンに参加した人の囁きをTVや新聞で大きく報じているのと比較して、どちらにニュースバリューがあるのか、社会問題としての規模からも、マスメディアの報道バリュー(価値)の問題というよりも報道スタンス(姿勢)の問題と見るほうが納得できます。 

 この問題を当事者であるフジ・産経グループが無視するのは理解できますが、他のマスメディア、日テレ・読売グループもTV朝日・朝日グループもすべて無視するという実に気味の悪い沈黙を守っているのは、彼らがチキン(臆病)にもある種の圧力を恐れているためだからです。

 クロスオーナーシップの悪弊によりこの国では、新聞はTVを批判しないし、TVも新聞を決して批判しません。それだけではなく、全国紙とキー局ならび系列TV局・ラジオ局で構成されるマスメディアグループでは、ある種の圧力まで共有していますので、他グループの批判もご法度となり、ある種の情報は実に気味の悪い沈黙をすることになります。

 ネットで盛り上がるフジテレビ批判騒動に対して、この国の大新聞・TV等すべてのマスメディアが沈黙しているのが好例です。

 ・・・

 BLOGOSが特集を組んでいますが、ここ数日の猛暑で消費電力はうなぎ登りで、電力会社にとっては綱渡りの情勢が続いているようです。

猛烈な暑さが続く中、電力会社にとっては綱渡りの情勢が続く。
http://blogos.com/theme/power_supply_in_summer/

 さて家庭や職場でも政府の広報やマスメディアの節電の訴えに呼応して、エアコンの使用を抑えたり設定温度を高めにしてたりして節電をけなげに実行しております。

 エアコンの使用を抑えるといってもこの猛暑です、各地で熱中症で運ばれる人が続出する中で老人や乳幼児のいる家庭ではそもそも命の危険を冒してまで節電することは不可能です。

 実はここでも日本のマスメディアの報道の不作為、すなわちある事実に対するチキンな沈黙があります。

 ここに野村総合研究所が4月15日にプレスリリースした「家庭における節電対策の推進」と題したレポートがあります。

家庭における節電対策の推進
株式会社野村総合研究所 震災復興支援プロジェクトチーム
http://www.nri.co.jp/opinion/r_report/pdf/201104_fukkou6.pdf

 野村総研が「家庭における節電対策」をプレスリリースしたということは、時節柄、報道される価値は十分すぎるほどあるはずですが、このレポートは現在マスメディアから完全に沈黙されています、一部週刊誌以外無視されているのです。

 なぜか、それはレポートにある最初の表がマスメディアにとって衝撃的だったからです。

 表で一目瞭然ですが、テレビを切れば220Wの節約、エアコンを切れば130Wの節約、節電にはエアコンを切るよりテレビを切った方が1.69倍も効果的であるわけです。

 このレポートは全文をよく読めば夏場のピーク電力を抑えるためにはエアコンの節電を呼びかけるほうが効果的であると結論付けています、夏場の昼間の時間帯におけるTV使用率とエアコン使用率など現況などを考慮してです。

 しかし単純にTVを見ないと節電効果がエアコンより大きい事実を明らかにしていることから、TV局はこのレポートをいっさい報じれなくなってしまったのです。

 TV局が報じなければ系列のラジオ局も新聞もすべて沈黙することになります。

 私は以前のエントリーでお昼の時間などくだらない韓流や再放送を流すぐらいならTV中継などやめてしまえばいいと主張しました。

 この非常時に国民に「節電」を訴えるならば、マスメディアは範をたれるべきでしょう。

 まずTV局。

 関東圏だけで、NHK、NHK教育、日本テレビ、フジテレビ、TBS、テレビ朝日テレビ東京と7局がひしめき、朝から夜中の4時過ぎまで放送を垂れ流していますが、この非常時にこのような放送垂れ流しの必要性はあるのか、はなはだ疑問です。

 特に昼間の時間帯など過去番組の再放送とか放送価値があるとは思えない下らない番組が多すぎます。

 夜中の4時まで放送する必然性も理解できません。

 昼間時間の一定時間、と夜の12時以降の放送を中断しても国民生活には何も支障がないでしょう。

 放送時間を短縮すべきです、多くの家庭がその時間TVを視聴しなくなりものすごい節電効果があることでしょう。

 加えて曜日によって特定の局が終日放映しない「計画停電」でも行ったらよろしいのではないですか。

 どこか一局放送が中断していても国民生活には何ら支障はありません。

■マスメディアよ、まず節電すべきはあなた方自身じゃないのか!?
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20110326

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 ネット上のフジテレビ「韓流押し」批判騒動も、野村総研が発表した「家庭における節電対策」レポートもマスメディアはすべて無視・沈黙を守っています。

 報道する価値(ニュースバリュー)がないからでしょうか。

 いいえ、ニュースバリューがたとえあってもマスメディアに都合の悪い事実は報道しないのです。

 マスメディアがチキンなだけです。

 今ネットが発達してきて私たちはある種の事象にマスメディアがまったく沈黙する事実に気づき始めました。

 前々回のエントリーで図示しましたが、メディアの情報はいろいろな圧力や彼らの思惑により偏向したりときに報道がまったくされない事実を、ネットメディアが情報伝達してくれるようになりました。


■ネット上のフジテレビ批判をマスメディアがまったく報道できない理由
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20110803

 ある種の事象をマスメディア全体が気味悪くも沈黙するのは、彼らがそれを報道することで発生するであろう圧力や不利益を恐れているためです。

「マスメディアが報道しない事象はニュースバリューがないから」は必ずしも正しいわけではありません。

 そう決め付けるのは危険ですらあります。 

 情報が氾濫するこのネット時代に、私たちは情報の正誤を正しくジャッジしていく、まさに情報リテラシー能力が求められているのだと思います。

 マスメディアがチキンにより沈黙する「真実」がたしかにあるのです。

 完全に沈黙する事象があるのです。



(木走まさみず)