木走日記

場末の時事評論

首相が寿命1年で毎年カブトムシのように九月でいなくなる国家なんて日本以外にない〜首相公選制(任期4年)も含めた政治改革こそ急務ではないか

 24日付け朝日新聞電子版速報記事から。

円、一時1ドル=84円台、日経平均は9000円割る

2010年8月24日10時54分

 世界経済の先行き不透明感を背景に、24日の東京金融市場は円相場が一時、1ドル=84円台を再びつけ、日経平均株価は一時、1年3カ月ぶりに9000円の大台を割り込んだ。円高・株安の背景には、米欧が財政・金融政策で景気が「二番底」に陥るのを回避する姿勢を強めているのに対し、政府・日本銀行の対応が後手に回っているとみられていることがある。

http://www.asahi.com/business/update/0824/TKY201008240083.html

 うむ、主要通貨の中で円が独歩高の様相を示し、それにともない日本株が一人続落中であります。

 日本経済にとり極めて厳しい局面をむかえているわけですが、これは市場に対して政府不在の放置プレイが招いた人為的危機と言われても仕方ありますまい。

 23日にも行われるとされていた菅首相と白川日銀総裁の会談について情報が錯綜してます、週末に先送りの方向で調整に入ったと伝えられたほか、電話協議に切り替えられるとの報道もあって、円高阻止に対する政府・日銀の姿勢が「後退した」と一部で受け止められたわけです。

 仙谷官房長官の会見内容が伝えられ、菅・白川電話会談がわずか15分程度行われたことが判明しましたが、「為替含む経済金融情勢で意見交換」「為替介入の話は出ていない」「今後ともコミュニケーションを密に取ることが大事」などの内容にとどまっており、まったく具体性に欠ける内容だったことがこの株安の誘因となっているのであります。

 この局面で菅首相は何も策を講じようとしていません、本日も九月の民主党代表選に向けて一年生議員の囲い込みに忙しく党内権力闘争に明け暮れている有様です。

 円高放置、株安放置、いまだ骨格すら示されない景気対策、これで株が下がらないはずはないでしょう、現在の神経質な相場に対し日本の政治指導者がここまで無策であることはある意味で犯罪的であるとすら思えます。

 今回の円高で輸出企業の海外進出はますます促され、国内の産業空洞化に拍車を掛けることになるでしょう。

 国内景気に冷や水を浴びせることは必定であり遅れている景気対策と相俟って足元がふらふらしている日本経済に致命傷を与えかねません。

 ・・・

 臨機応変な短期的経済政策がまったくとれないだけではありません。

 考えてみればこの国で10年先を見据えた長期的な経済戦略、いや3年先を意識した中期的経済戦略ですら、21世紀に入ったここ10年、特に2006年以来のここ5年、政府から実効性のある経済方針が示されたことはありません。

 喩えてみれば日本経済は、延々と続く嵐の中で、羅針盤が壊れた帆船を無能な船長が右往左往して進路を見失っているようなものです。

 無能な船長は船をどちらに進むべきかその方向性すら見失っているのです。

 しかもその船長が無能であるとわかると次は俺だといわんばかり1年ばかりで船長を交代して新参者が船長になるのですが、これが先代に輪を掛けて無能なのですからどうにもこうにもです。

 ・・・

 ふう。

 考えてみれば管政権一人を責めても仕方がないのかも知れません。

 過去5年、9月に日本の政権は退陣しています、退陣年月日を並べればまるで墓標のようです。

2006年9月26日 小泉純一郎政権退陣
2007年9月26日 安倍晋三政権退陣
2008年9月24日 福田康夫政権退陣
2009年9月16日 麻生太郎政権退陣

 実に情けないことです、カブトムシじゃあるまいに秋を迎えると弱ってしまっていなくなっちゃうのが最近のこの国の政権なのであります。

 これで経済の舵取りをうまくやれるわけがないでしょう。

 日本経済の状況を民間企業で喩えればもうめちゃくちゃな財務状況でありとっくに倒産していてもおかしくないわけです、売り上げ減が続く中で巨大赤字が累積している企業が、人員削減しつつさらに減俸を繰り返しているにもかかわらず、リタイヤした人たちの企業年金の負担は毎年増えている八方ふさがりな財務状況です。

 短期の回復などあり得ません、よほどしっかりした指導者および執行部が現状を正しく分析して長期戦略を立て、長い時間を掛けて実現可能な策を講じて財務を改善していくしか方法はありません、それはいばらの道であり経営は困難を極めることでしょう、長期に渡る財政再建中にも経済状況の変化など企業環境をしっかり監視し、ときに臨機応変に対応することも求められます。

短期的には暗礁に乗り上げないようにしっかりと舵を取りながら、長期的には羅針盤が示す航路をはずさない高度な操舵術が必要なわけです。

 ところが日本では、素人のような指導者がしかも就任1年で毎年九月にころころ交代するわけです。

 サル山の陣取り合戦よろしく完全に内向きな権力闘争に汲々とし、悲惨な経済状況にはまったく無策、ただ傍観しなんら実効性のある策を施さない管政権なのであります。

 そしてまたサル山のボスが替わる九月がやってくるのです。

 ・・・

 事業仕分けもいいですが、日本の政治状況こそもっとも早急に改革すべき分野でありましょう。

 まず、衆議院と同様政党のなわばり争いに堕落している参議院を必要ならば廃止も含め抜本改革すべきです、そして4年間に3回も行われている無駄な選挙だらけの現行を速やかに与野党総意で改善すべきです。

 一国の首相が寿命1年で毎年カブトムシのように九月でいなくなる国家なんて日本以外にありません。

 首相公選制(任期4年)も検討すべきです。

 ときの政権に腰の据えた政策を実現させるためには、選挙の頻度を減らさなければなりません、加えて必要ならば首相の在職期間を諸外国のように任期制を導入することも検討して良いでしょう。

 次の政権が誰になろうとも、まず日本の政治制度の改革を目指すべきです。



(木走まさみず)