木走日記

場末の時事評論

自動車大国中国の胎動

●プロローグ:大学の研究室の後輩Sの転職

 正月休みの4日に、私の大学の研究室の後輩だった、今は大手自動車メーカーの開発部門に嘱しているSから電話がありました。

 聞けば中国の広州にある中国自動車メーカーに転職するとのこと、日本を去る前に挨拶に来たいという話でした。

 早速我が家に来てくれたSの話は実に興味深いものでした。

 今時中国企業ヘッドハンティングされる日本人技術者の話などごろごろあるわけで別にSの転職自体は驚きはしなかったのです。

 が、彼が勤めていた大手自動車メーカーは、日本でも名だたる優良企業であるし、職場でも彼の評価も上々でありそれなりの責任ある地位も確保していたようですから、なぜ将来も保証されていておそらく待遇面でも申し分なかっただろう立場を捨てて、今このタイミングで中国系企業に転職するのか、その動機には興味がありました。

 S曰く、破格の待遇が用意されていることも動機のひとつだが、それだけではないのだそうです。

 一言でいえば、一技術者として新たな挑戦をする場所としては、これから10年先まで睨むと、日本メーカーではなく中国メーカーのほうがいろいろな可能性を秘めているのだそうです。

 自動車産業と言えば日本が誇る輸出産業の花形であり、その技術はおそらく世界一といっても過言ではないハイレベルなテクノロジーを維持しているのであろうし、いくら発展目覚ましいといっても日本より技術レベルでは遙かに遅れているであろう中国自動車メーカーに転職するその動機が、「技術者として新たな挑戦をする場所として」「中国メーカーのほうがいろいろな可能性を秘めている」とは、素人の私には合点がいかない説明なのでした。

 「先輩、これから10年、世界の自動車市場で起こることを一人のエンジニアとして冷静に僕なりに分析した結果、人生を掛けて決心したことなんですよ。」

 Sは見知らぬ異国への転職に不安はないのかと尋ねる私に、笑顔で、なに、現地には日本人エンジニアをはじめ世界中のエンジニアがすでに元気に働いている、何も心配はしていない、と応えるのでした。

 玄関で彼を見送りながら、私の気持ちはとても複雑になりました。

 Sから聞いた「これから10年、世界の自動車市場で起こる」であろう予測は、私には驚愕する内容だったからでした。

 そしておそらく多くの日本人はこの予測を知りもしないだろうと思いました。

 今日は台頭する中国自動車メーカーについて、考察してまいりましょう。



●世界の自動車市場の現状を押さえる〜世界の2大自動車市場(米国1655万台、欧州1462万台)で躍進を続ける日本メーカー

 まずは世界の自動車市場の現状を最近の新聞紙面から押さえておきましょう。

 今日(18日)の日経新聞記事から・・・

GM、世界販売909万台に・世界一は死守

 【ニューヨーク=武類雅典】米ゼネラル・モーターズ(GM)は17日、2006年の世界販売台数(速報値)が前年比0.9%減の909万台だったと発表した。アジア・太平洋地域などの急成長で900万台を2年連続で超えたが、北米市場の低迷を補いきれなかった。トヨタ自動車の06年の世界販売は880万台(見込み)で、世界一の座は死守した。

 米国外の販売は約7%増の497万台で、世界販売台数全体の約55%を占めた。中国が32%以上伸びたアジア・太平洋地域が18%増、中南米・アフリカ・中東地域が17%増となり、過去最高の販売を記録した。「ビュイック」の中国での販売台数が初めて米国を超えるなど、新興市場の開拓が進んだ。欧州の販売台数も初めて200万台を超えた。


[1月18日/日本経済新聞 朝刊]
http://car.nikkei.co.jp/news/business/index2.cfm?i=2007011709178c0

 とりあえず米ゼネラル・モーターズ(GM)が、昨年の世界販売台数(速報値)世界一を、909万台で、急追するトヨタ自動車(世界販売は880万台(見込み))をなんとか押さえ死守したそうであります。

 ただ、大方の予想では今年にはトヨタ自動車に世界一の座を譲ることが確実視されています。

2006年の米新車販売、2.6%減の1655万台に―― ビックスリーの低迷続く
[1月17日/日経産業新聞]
http://car.nikkei.co.jp/news/business/index2.cfm?i=2007011608785c0

 上記記事によれば、「2006年の米国新車販売は前年比2.6%減の1655万6064台」となり、米国勢の不振と日本勢の好調の差が影響したそうです。

 「ゼネラル・モーターズ(GM)などビッグスリーの販売台数は05年比8.2%減の888万7880台。シェアは3.2ポイント減の53.7%と過去最低を記録」した、つまりアメリカでは新車の2台に1台が外国車であるという、前代未聞の市場状況が生成したのであります。
 この米国ビッグスリーの落日の主因は日本車の攻勢によるものであることは論を待ちませんが、かつてほど貿易摩擦として騒がれないのは、現地生産の比重を高めるなど日本企業側の努力によるところが大きいのでしょう。

 それはさておき、一方のヨーロッパ市場においても日本メーカーの攻勢はとどまるところを知らないようです。

06年欧州新車販売、日本車シェアが過去最高の13.5%に
http://car.nikkei.co.jp/news/business/index2.cfm?i=2007011701633c0
[1月17日/日経産業新聞]

 上記記事によれば、「欧州自動車工業会(ACEA)がまとめた2006年の欧州新車販売(主要18カ国、乗用車のみ)は前年比0.7%増の1462万4200台」だったそうですが、「トヨタ自動車などが好調で、日本メーカーのシェアは同0.4ポイント増の13.5%と過去最高に達した」のだそうです。

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 このように最近の記事の速報値からだけでも、世界の2大自動車市場(米国1655万台、欧州1462万台)で躍進を続ける日本メーカー、相反してシェア凋落が著しい米国メーカーという図式がはっきりと見て取れます。

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トヨタ賛歌一色となったアメリカ市民を憂う韓国メディア

 このような日本車の海外での好評振りはお隣韓国のメディアでも取り上げられています。
 昨日(17日)の朝鮮日報コラムから・・・

【コラム】トヨタびいきの米国市民

 記者はとうとう、用意していた質問をあきらめた。多くの人々に同じ質問をしてみたが、予想していたような「韓国式」の回答が返ってくることはなかった。結局はそれが愚問だったからだ。

 先週、トヨタの自動車工場がある米国ケンタッキー州ジョージタウンで記者は現地の住民を対象に取材した。先の質問とは、「日本車のトヨタが米国車のゼネラル・モーターズGM)・フォード・クライスラーを抜いて今年世界第1位になると予想されているが、そのことについてどう思うか」というものだった。もしこれが韓国だったら「有り得ない」、「韓国車を一台でも多く購入すべき」という愛国心に満ちた返事が返ってきたはずだ。

 しかし米国人は違った。ホテル職員のマイク・エッカートさんは「今日、わたしたちがこうして豊かに暮らすことができるのも、みなトヨタのおかげだ。GMが首位の座を奪われても、わたしたちは全く意に介さない」と答えた。また公立体育館で働く40代の女子職員は「トヨタのおかげで税収が増え、近く新しいスケートボード場もできることになった」とし、「わたしたちは本当にトヨタが好き」と語った。

 これは何もジョージタウンだけに限った話ではない。GM・フォード・クライスラーのいわゆる「ビッグ3」のおひざ元であるデトロイトの住民ですら、米国車を無視し、日本車に軍配を上げている。小売業に従事するジェイソン・パークスさんは「日本車のほうが品質やデザイン、アフターサービスの点ではるかに優れている」とし、「自分の婚約者の一家は代々フォードで働いてきたが、婚約者もわたしのホンダ車を気に入っている」と答えた。

 なぜこうした現象が生じるのだろうか。1960年代に最盛期を迎えた米国の自動車会社は、労働組合ストライキを恐れ、多額の年金と医療費を支給する労使合意に応じた。会社がうまくいっているうちは、問題にならなかった。だがトヨタ・ホンダ・日産といった日本企業が躍進したことで、状況は一変した。GMやフォードが、医療費や年金の負担が原因で不十分な投資しか行えなくなったことに対し、米国の消費者は冷ややかな目で見ている。

 今やトヨタ賛歌一色となったジョージタウンの例を見てみよう。1980年代中盤、米国企業の投資が低迷していた際、トヨタは人口1万人のこの田舎町にやって来た。トヨタは大規模なインセンティブ契約に応じ、50億ドル(約6025億円)を投資、工場や学校を建設し、住民たちの生活を一変させた。こうして町の人々は熱烈なトヨタ支持者となった。

 今アラバマ州ではジョージタウントヨタに提供した額の2倍に達するインセンティブを提示し、ベンツの工場を誘致しようとしている。誘致に成功すれば、ここの住民もまたGMの代わりにベンツを支持するようになるだろう。

 ケンタッキーやアラバマだけではない。米国全土でトヨタを支持する声はどんどん高まってきている。「消費者リポート」によると、米国市民の4分の1が新車購入時にはトヨタを買うと回答しており、現在トヨタに乗っている人が再度トヨタを選択する割合も78%に達している。一方GMやフォードを購入するという回答は、それぞれ15%、13%にとどまっている。ここまでくれば、米国の自動車産業は敗北を認めて白旗を上げなければならないと言えるだろう。

 かつて米国でも消費者の愛国心に訴え、経営が傾いていた自動車会社を支えたこともあった。だが今や、そんな風潮は過去のものとなった。消費者の品質に関する要求が高まるにつれ、製品の「国籍」など意味を持たなくなってきている。

 閉鎖性や愛国心の効能を最大限利用してきた韓国自動車業界の労組が、最近ストライキを開始した。

 今から10年後、韓国の自動車産業が、かつての米国のように頻繁なストライキや労使対立、市場開放によって経営危機に陥ったと仮定しよう。日本車や米国車の実績と、中国車・インド車の躍進を前に、それでもまだ今のように閉鎖性と愛国心に訴えることで、生き残ることは可能だろうか。

 米国の例は、それが不可能であることをはっきりと示している。

ニューヨーク=金起勲(キム・ギフン)特派員

朝鮮日報朝鮮日報JNS
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2007/01/17/20070117000074.html

 この記者も嘆かれているように、現在の日本メーカーにとり韓国の自動車産業は強敵というわけではありません。

 米国市場などでは日本車が韓国車に対し逆にシェアを離しているのが現状のようです。

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 今年にも世界の自動車産業史上初めてアメリカ以外のメーカー、日本のトヨタが生産世界一になるだろうと確実視されています。

 現在、世界の自動車市場における日本メーカーの躍進は、その高い生産性と技術、品質やデザイン、アフターサービス、あらゆる面で優位性を保っている事実に裏打ちされて、当面はその独走が続くと多くの識者が予測しているのも頷けるのです。

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 しかしここに潜在的には現在世界最大の開発市場であり、そして10年後には間違いなく世界最大の自動車販売市場になるだろう中国市場があります。

 そして中国自動車メーカーの不気味な胎動がすでに始まっていることを我々は忘れてはいけません。



●国内新車販売 中国が日本を抜く〜12日の読売新聞記事

 12日の読売新聞の地味な記事から。

国内新車販売 中国が日本を抜く

昨年720万台超、世界第2位に
 【北京=寺村暁人】中国自動車工業協会は11日、2006年の中国国内の新車販売台数が720万台を超えて初めて日本国内の販売台数を上回り、米国に次ぐ世界2位の自動車市場になったと発表した。

 06年の販売台数は、中国が前年比25・13%増の721万6000台で、日本の573万9506台を大きく上回った。さらに、中国の国内生産台数は、前年比27・32%増の727万9700台で、ドイツを抜いて、米国、日本に次ぐ世界3位となったとみられる。中国が自動車の消費地・生産拠点の両面で大きく成長したことを裏付けている。

(2007年1月12日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/atcars/news/20070112ve01.htm

 昨年一気に中国が前年比25・13%増の721万6000台で、日本の573万9506台を大きく上回り世界第二位の自動車市場になりました。

 前年比25・13%増とは驚異的な数字ですがこのペースが続けば、たしかに数年のうちに世界の2大自動車市場(米国1655万台、欧州1462万台)を抜き、このアジアに世界最大の自動車市場が誕生することでしょう。

 もはやそれは時間だけの問題であるのですが、この記事で見逃してはならないのは、実は後段に記されてる「さらに、中国の国内生産台数は、前年比27・32%増の727万9700台で、ドイツを抜いて、米国、日本に次ぐ世界3位となったとみられる」ことです。

 まさに中国は今、世界最大の自動車市場を国内に誕生させようとしており、なおかつ生産拠点としても虎視眈々と世界一を狙っているのです。

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●「三大、三小、二微」から群雄割拠時代へ〜中国政府の興味深い政策転換

 ここで中国の自動車産業についてその概要を押さえておきましょう。

 中国の庶民にとって、自動車は長年にわたって高嶺の花だったわけですが、初の国産自動車「解放」号が誕生したのは1956年であります。

 中国が改革・開放に踏み出したのは1978年末になります。

 その年の自動車生産台数はわずかに約15万台で、そのうち乗用車は約5000台にすぎなかったようです。

 乗用車としては、幹部が乗る紅旗号とベンツの形を真似たとされる上海号しかなかったし、商用車については、旧ソ連の援助によってつくられた長春第一汽車(自動車)と、第一汽車のコピー工場とされた湖北省東風汽車(旧・第二汽車)が4トントラックを生産していました。

 ここで興味深いのは78年当時は全体で年産15万台に対し、自動車メーカーは55社とされていたことです。

 中国は伝統的に省別のフルセット主義が取られており、各省が基幹産業を一通り所有することが、経済効率よりも優先された結果だと言われています。

 90年代に入り、特に、トウ小平の南巡講話のあった92年の頃から中国は劇的に変わっていきます。

 世界の自動車メーカーは改めて中国進出の模索を開始しますが、当時は、中国側は「三大、三小、二微」という枠組みを突きつけてきて市場を閉鎖的に管理していきます。

 90年当時の中国の自動車生産台数は約50万台、メーカー約120社とされていましたが、自動車の年間販売台数が初めて100万台を超えたのは1992年でした。


 この頃から中国サイドだけではまともな乗用車はつくれないとして、それぞれに外国企業を1社ずつ張り付ける合弁事業が推進されていきます。

 興味深いのは当時のリストを見ると、世界のトップ3(GM、フォード、トヨタ)、日本の5大メーカー(トヨタ、日産、ホンダ、三菱、マツダ)は合弁相手には入っていなかったのです。

 日系ではスズキが合弁、ダイハツ富士重工が技術支援で入っているにすぎませんでした。

 90年代後半になると、「三大、三小、二微」の一つであった広州汽車のパートナーであるプジョーが撤退を決め、その後釜にホンダが座り、99年春にはアコードを市場に投入していきます。

 そして、その頃から、「三大、三小、二微」の声は聞こえなくなっていきます。

 おそらく、中国側の判断としても、将来はビッグ3を意識するものの、当面は規制をかけるよりも、世界のメーカーを引き込み、競争させることのほうが有益との判断を固めたのでしょう。

 トヨタもようやく天津汽車との合弁が可能になり、2002年末にはヴィオスを市場に投入していきます。

 この頃から中国の自動車市場は大ブレイクし始めます。

 2001年の中国の自動車生産台数は約230万台、うち乗用車は約72万台まできていましたが、2002年は急増し約325万台、うち乗用車は約110万台、そして、昨年2006年には、遂に日本を抜いて国別では世界第二位の721万6000台という驚異的販売台数を記録するに至るのです。

 一方生産拠点としても驚異的成長を遂げ、昨年ドイツを抜きアメリカ・日本に次ぐ世界3位の対前年比27・32%増の727万9700台に至っているのであります。

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●世界で最も過酷な中国市場で生き残った中国メーカーの優秀な製品をあなどるな

 年間727万台を生産するに至った中国自動車メーカーでありますが、より重要なポイントは、年150万台以上の増産を成し遂げた対前年比27・32%増というその驚異的な生産能力の成長率にあります。

 そしてもうひとつのポイントは、世界最大市場に成長するであろう自国市場において将来価格面で圧倒的優位を保つであろうと予測されている中国自動車メーカーでありますが、私の後輩Sの転職先企業も含め、中国には大小含めて145もの自動車メーカーがあることであります。

 現在世界で最も成長が見込めかつ世界で最も多くのプレイヤーが激烈な市場競争を繰り広げているのが中国の自動車市場であります。

 日本ではこの事実が軽視されすぎだと憂いざるを得ないのですが、事実として世界で最も健全な競争原理が働いてる市場は(その競争が公正かどうかは別の問題として)中国市場なのであり、そこには世界中の技術が合弁のかたちであれ、頭脳流出のかたちであれ、集中的に集まってきているのです。

 Sの例を持ち出すまでもなく日本からの技術者流出も進行しています。

 中国メーカーの生産品は、現在低価格とはいえ品質の向上は時間の問題なのです。

 さらに中国政府の明快な方針で現在145もの自動車メーカーが生き残りを掛けて苛烈な競争を展開していることが中国の生産拠点としての成長および技術の驚異的革新に拍車を掛けていることも大きな点です。

 寡占状態が続いている産業が外部からの優秀な製品の流入に非常にもろいのは、長くビッグ3による寡占状態が続いているアメリ自動車産業の今日の衰退を見れば明らかです。

 アメリカ自動車業界を追い落とした日本でも大手自動車メーカーが9社しかなく、現在の中国の145もの自動車メーカーによる競争がいかに過当で異常な事態であろうことか、さらにその世界で最も過酷な中国市場で生き残った中国メーカーの優秀な製品が、世界市場にうって出た場合、その国際競争力は決してあなどれないことでしょう。

 遠くない将来、現在群雄割拠の100を越えるこのメーカー数は激しい淘汰の末、数社の国際競争力を身につけた優秀なメーカーに収斂されることでしょう。

 そのとき間違いなく中国メーカーは日本の最大のライバルとなることでしょう。

 現に今日の中国情報局ニュースの記事によれば、すでにこんな動きもあるようです。

 中国メーカーとの競争が激化するのは、中国国内市場ばかりではない。今週エジプトのカイロで開幕した「第14回カイロ国際モーターショー」には世界の自動社メーカー28社が出展したが、中国からは陸風風尚、双環、東南、昌河、長安など6社が8車種を展示した。低価格を重視する国々に対する輸出では中国企業が相当に有利と考えられる。

【社説】中国の台頭による自動車価格競争に備えよ より抜粋
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2007&d=0117&f=column_0117_007.shtml

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 近い将来、中国の自動車市場が世界最大規模になり、生産拠点としての中国自動車メーカーも日本を追い抜きアメリカに迫る生産能力を有することはほぼ間違いないようです。
 中国の産業界は、過去、主に低技術産業を主力とする繊維や一般家電製品などの分野で、中国企業が圧倒的な価格競争力により国外市場をも席巻するというパターンを繰り返してきました。

 今後10年のうちに先端技術を身につけた中国企業が世界市場に覇権をとなえる可能性が一番強いのが、現在日本が誇る自動車産業なのであります。



●エピローグ:中国広州よりSからのメール

 先日、中国広州よりSからのメールがありました。

 仕事にも慣れ現地関係者が親切に生活の面倒を見てくれるので、じつに快適な環境で仕事に没頭できることなどが書かれていました。

 その結びで追記されていたひとこと。

 「しかしここ広州の空気の悪さは最悪です。自動車やバスの排気や工場からの排気がほとんど規制されていないのが原因なのでしょうが、風のないひどい日には、町全体が排気でくすんでいて、目が痛いくらいです。はやく省エネ車をこの地に普及させねばと、あらためて自らの使命に燃えているところです。」

 ・・・

 ふう。



(木走まさみず)