木走日記

場末の時事評論

潘基文・元「世界大統領」に光あれ!!〜エコノミストに歴代最悪の事務総長と酷評された男が韓国外交に止めをさす


 今回は小ネタです。

 さて潘基文(パン・ギムン)元国連事務総長が凱旋帰国されました。

 潘氏と言えば、外交官出身で盧武鉉政権(2003〜08年)下で外相を、その後10年間は国連事務総長を務めた、韓国政界きっての外交・国際問題に精通している人物であります。

 国連事務総長就任時には「世界大統領」との称号が韓国国内では飛び交ったほどです。

 で、この元「世界大統領」氏、帰国時の機内で、慰安婦問題に関する日韓合意に基づく日本政府の10億円拠出についてソウルや釜山の日本公館前に設置された慰安婦像の撤去の条件なら「金を返すべきだ」と発言したのでございます。

(関連記事)

産経新聞
「10億円が像の撤去に関連するなら金を返すべき」 外交に精通しているはずの潘基文
http://www.sankei.com/world/news/170113/wor1701130041-n1.html

 次期大統領有力候補の中で最も穏健であるはずの、韓国政界きっての外交通元「世界大統領」潘基文氏をもって「日本に金を返せ」発言であります。

 これにて次期大統領候補の全員が日韓合意に反対、すなわち誰が次期大統領でも慰安婦合意見直しが決定されたというわけです。

(関連記事)

朝鮮日報
誰が次期大統領でも慰安婦合意見直し? 潘氏も再協議に含み
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2017/01/13/2017011302732.html

 しかしです、「世界大統領」潘基文氏をもって「日本に金を返せ」発言でありますが、外交・国際問題に精通しているはずの潘氏が、日本公館前に“抗議”として慰安婦像を置くことが、外国公館の安寧と尊厳を守るように定めたウィーン条約に違反していることを知らない、ということなのでしょうか?

 韓国政界きっての外交通元「世界大統領」をしてこの程度の認識しかないのか、何か釈然としないものがありますが、潘基文氏、その国連事務総長としての国際評価は最悪でした、英国の経済誌エコノミストをして「失敗した事務総長であり歴代最悪の事務総長の一人」と批判を受けたことを韓国国内でも報じられています。

(関連記事)

東亜日報
英誌エコノミスト潘基文事務総長を酷評
http://japanese.donga.com/Home/3/all/27/534618/1

 エコノミストが5月21日号で載せた潘氏に対する“採点”は、

 「失敗した事務総長であり、歴代最悪の事務総長の一人」

 「(国連内の)行政能力でも(国連外の)統治能力でも失敗した事務総長とみられている」

 「話が下手で手続きに執着し、懸案への素早い対応能力や業務の深さも不十分だった」

 まさに散々な評価であります。

 別にエコノミストだけではありません。

 英紙ガーディアンは2010年7月に「透明人間 潘基文国連事務総長の活動への動揺広がる」という論評を掲載。09年12月にデンマークコペンハーゲンで開かれた国連気候変動会議における合意形成の失敗などから「歴代事務総長の中で最低の部類に入る」と批判します。

 また12年にシリアで大虐殺が起きた際、米紙ニューヨーク・タイムズは、なんら特別な措置を取らなかったとして「潘基文は一体どこにいるのか」と題する記事を載せ、「事務総長も国連もシリア国内の大虐殺を止めることに関しては、まったく無力だった」と失望感を示しています。

 潘氏が事務総長に就任してまもなく問題となったのが、その露骨な「縁故主義」でありました。

 元国連大使の崔英鎮氏を駐コートジボワール特別代表に任命するなど有力ポストに韓国人を次々と起用、また、07年には女婿のインド人が国連イラク支援ミッション(UNAMI)の幹部に抜擢されたが、こうしたやり方に不満を持った国連職員組合が「親類縁者や友人を優先する人事政策批判文書」を採択する事態にまで発展します。

 潘氏就任後、国連の韓国人スタッフが25%も急増したのです。

 2009年6月、米国の外交専門誌「フォーリンポリシー」電子版は「どこにもいない男 潘基文はなぜ最も危険な韓国人か」というタイトルの記事の中で「オフィスの上にサムスン電子の薄型テレビを並べ、上級顧問に韓国人の仲間たちを選ぶなど、韓国経済の利益を図ったという点を除けば、彼の足跡はほとんど無視できるほどでしかない」と潘氏を批判します。

 また、記憶に新しいのが15年9月に中国・北京で開かれた抗日戦争勝利70年記念行事への出席です。

 日本政府は外交ルートなどを通じて事前に国連サイドへ懸念を伝えていましたが、安倍首相は潘氏の記念行事出席を受けて「事務総長は特定の過去に焦点を当てるのではなく、国際社会の融和と発展を推進する立場から未来志向の姿勢を加盟国に促すべきだ」「極めて残念だ」と批判しました。

 まったく、どこが外交通にして国際通なのか、ただの「縁故主義者」で中国べったりの日和見主義者であることは明らかであります。

 むしろこのような人物が、韓国政界きっての外交・国際問題に精通している人物と崇め立てられていて、帰国後すぐに有力な次期大統領候補になれてしまう事実の方が、戦慄を覚えてしまうのであります。

 ・・・

 国家として約束したことを反故にする、そのことの意味することを理解しているのでしょうか。

 そんな無責任なことをしたら、韓国の国際的信用は地の底を這いずるように落ちることでしょう。

 もちろん、韓国内にもパク・チョルヒ・ソウル大学国際大学院長のように、冷静に「慰安婦合意の再交渉主張」は「韓国の国際的信用落とす」と韓国国民に警鐘を鳴らす意見もあります。

(関連記事)

朝鮮日報
【寄稿】慰安婦合意の再交渉主張、韓国の国際的信用落とす
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2017/01/13/2017011300513.html

 記事より一部抜粋。

 韓国の市民団体は、日本の誠意のない謝罪に抗議する意味で釜山の日本総領事館前に少女像を設置したと言うが、在外公館の「安寧と威厳」を守るよう定めたウィーン条約に無視するこうした造形物の設置に国際社会は批判的だ。「世論が好意的なら国際条約も無視できる」という主張は、私たちの間でしか通用しない。政治家たちは、こうした感性に容易に便乗してしまう。万が一、日本と再交渉できることになったとしても、既存の合意よりも良い結果を得られなければ次の政権に重荷になるだろう。合意当時に生存していた46人の慰安婦被害者のうち、34人がすでに合意を受け入れたことも、再交渉論者たちには負担だ。

 うむ、「『世論が好意的なら国際条約も無視できる』という主張は、私たちの間でしか通用しない」とは、極めて冷静な正論なのでありますが、残念ながらパクチョルヒ教授のような冷静な意見は、韓国国内では極めて少数派のようです。

 ・・・

 ソウル大教授の指摘を待つまでもなく、在外公館の「安寧と威厳」を守るよう定めたウィーン条約に無視する、なおかつ公有地を無許可で占拠する、こうした造形物の設置を、国際社会は認めるはずはありません、

 それにもかかわらず、潘基文(パン・ギムン)元国連事務総長が凱旋帰国しその機中で「日本に金を返せ」発言、これにて韓国の次期大統領候補はすべて慰安婦合意の再交渉主張派が占めることになったわけです。

 元「世界大統領」からして韓国の国際的信用落とすことに躊躇がないのであります。

 これがかの国の民意なるものとすれば、何人もそれを止めることはできないでしょう。

 よろしいです。

 国をあげて外国との合意を反故してしまえばよろしい、そして国をあげてウイーン国際条約を無視すればよろしいです。

 そのほうが、本件で日本と韓国のどちらに非があるのか、国際的に評価していただくのにわかりやすくてよろしいです。

 読者のみなさん。

 そうは思いませんか。

 今回の潘基文氏の「日本に金返せ」発言は、いろいろな意味で整理がついてむしろよかったのでしょう。

 うむ、潘基文・元「世界大統領」に光あれ!!

 ふう。



(木走まさみず)