木走日記

場末の時事評論

ネットに侵食され続ける広告収入急減のマスメディアの実態〜斜陽産業マスメディアのプロダクツ(記事)劣化は止まらない?

 マスメディア報道の劣化極まれり。

古賀茂明氏の”被害妄想”に振り回されているTV朝日の報道ステーションのドタバタ劇を見ていると、このところ、そんな思いを強くしています。

 当ブログは、市民記者時代を含めれば15年以上マスメディアについて評論してまいりましたが、この一件だけでなく、昨年の朝日新聞慰安婦捏造報道の謝罪の件など、数々のメディア報道の質的な劣化が晒され、ここまで視聴者や読者のマスメディア報道への信頼が失墜してしまったのは、おそらく初めてのことだと認識しております。

 そこで本日は「マスメディア報道の劣化」について、少し角度を変えて分析・検証してみたいです。

 斜陽産業としての「マスメディア」の現状を数値でもって検証していきます。

 広告業界でマスメディアと言えば、四マス(マスコミ四媒体)と呼ばれる、新聞、雑誌、ラジオ、テレビを指すわけですが、新聞・雑誌の発行部数、ラジオの聴視率、テレビの視聴率、軒並み減少していることは、みなさんご承知のとおりです。

 日本の広告総費用は大体6兆円規模でありますが、四マスすなわちマスメディアが占める割合は6割、残り4割が「プロモーションメディア広告費」と呼ばれる、電車の仲刷りや新聞の折り込みチラシやDM(ダイレクトメール)などその他広告費となっておりました。

 広告代理店最大手の電通は毎年、前年の広告費の統計資料をこの時期に公表しますが、今年もホームページ上で昨年の広告費データが公表されました。

2014年 日本の広告費
http://www.dentsu.co.jp/knowledge/ad_cost/2014/

 大変興味深いレポートですが、「「2014年 日本の広告費」は6兆1,522億円、前年比102.9%」と報告されています。

「2014年 日本の広告費」は6兆1,522億円、前年比102.9%
— 総広告費は6年ぶりに6兆円超え
インターネット広告費は初の1兆円超え
21業種中14業種が前年を上回る

2014年(1 〜 12月)の日本の総広告費は6兆1,522億円、前年比102.9%で、消費税率引き上げの影響があったものの、通期では3年連続で前年実績を上回った。

 「インターネット広告費は初の1兆円超え」とは、実に象徴的であります、その意味するところはあとで検証いたします。

 さて過去の電通のレポートも利用して今世紀(2001〜2014年)の媒体別広告費の推移を検証しておきます。

 見やすいように図表を作成してみました。

■表1:媒体別広告費の推移(2001〜2014年 単位:億円)

媒体 01年 02年 03年 04年 05年 06年 07年 08年 09年 10年 11年 12年 13年 14年
新聞 12027 10707 10500 10559 10377 9986 9462 8276 6739 6396 5990 6242 6170 6057
雑誌 4180 4051 4035 3970 4842 4777 4585 4078 3034 2733 2542 2551 2499 2500
ラジオ 1998 1837 1807 1795 1778 1744 1671 1549 1370 1299 1247 1246 1243 1272
テレビ 20681 19351 19480 20436 20411 20161 19981 19092 17139 17321 17237 18770 19023 19564
インターネット 735 845 1183 1814 3777 4826 6003 6983 7069 7747 8062 8680 9381 10519
プロモーション 20488 19816 19417 19561 26563 27361 27886 26272 23162 22147 21127 21424 21446 21610

■図1:媒体別広告費の推移(2001〜2014年 単位:億円)

 ここ14年、総計として広告費は6兆円前後で推移していますが、4マスの広告費の減少とインターネットの広告費の伸びが顕著なのが見て取れます。

 媒体別に全広告費に占める割合(%)の推移をグラフ化してみましょう。

■図2:媒体別広告費構成率の推移(2001〜2014年 単位:%)

 4マスのシェアをインターネットが侵食していることがわかります。

 2001年と2014年の媒体別広告費構成率を円グラフで対比してみましょう。

■図3:媒体別広告費構成率の対比(2001と2014年)

 マスメディア以外の「プロモーションメディア広告費」は、34%−>35%とほとんど変化していないのに、4マスは新聞が20%−>10%、雑誌が7%−>4%、ラジオが3%−>2%、テレビが35%−>32%、と、すべてシェアを落としています、4マス総計では65%−>48%の減少です。

 対照的にインターネットは1%−>17%とシェアを急成長させています。

 既存マスメディアへの広告費をインターネットが侵食していることは明らかです。

 2001と2014年の媒体別広告費の増減と伸び率を押さえておきます。

■表2:媒体別広告費の増減と伸び率(2001と2014年)

媒体 01年 14年 増減 伸び率(%)
新聞 12027 6057 -5970 -49.6
雑誌 4180 2500 -1680 -40.2
ラジオ 1998 1272 -726 -36.3
テレビ 20681 19564 -1117 -5.4
インターネット 735 10519 9784 +1331.2
プロモーション 20488 21610 1122 +5.5

 マスメディアの中でも、新聞広告費の減少ペースが尋常ではないことがわかります。

 今世紀に入って、1兆2027億から6057億へと半減してしまっています。

 ・・・

 まとめます。

 もちろんマスメディアの収入源は広告だけではありませんが、主要な収入源である広告費をひとつの指標(インデックス)として分析してみましたが、斜陽産業としての「マスメディア」の現状を十分に検証できたと思います。

 四マス(マスコミ四媒体)と呼ばれる、新聞、雑誌、ラジオ、テレビでは、新聞・雑誌の発行部数、ラジオの聴視率、テレビの視聴率、軒並み減少していることは、みなさんご承知のとおりですが、その理由のひとつにインターネットの普及があることは、今検証した通り、否定しようがありません。

 インターネットがマスメディアに対抗しうる優良な媒体なのかといえば、議論が当然あるところでしょうが、インターネットの普及が産業としての既存マスメディアを広告収入減少に追い込んでいるのは間違いありません。

 この検証結果をもって短絡的に「インターネットVSマスメディア」的な論を持ち出すことは避けるべきでしょうが、当ブログとしてはこのマスメディアの広告収入激減の事実と、近年の「マスメディア報道の劣化」には、強い因果関係があると考えています。

 一般の産業に置き換えた場合わかりやすいと思います。

 優良なプロダクツ(製品)が出せないから産業として斜陽する、産業として斜陽したから体力がなくなりますますプロダクツ(製品)の精度が粗悪になる、プロダクツ(製品)の精度が悪いからユーザーニーズから離れ売り上げ減少につながってしまう、完全に悪循環です。

 マスメディアのプロダクツ(製品)は、放送なら各番組であり、紙媒体ならば各記事です。

 「マスメディア報道の劣化」が続ける時期と産業としてのマスメディアが斜陽続ける時期が一致しているのは偶然でしょうか。

 卵が先か鶏が先か、「報道の劣化」が先か「産業の斜陽」が先か、よくわかりませんが、4マス全体が媒体として危機的状況にあることは間違いないようです。

 特に新聞は、広告媒体としては救いようがありません、今世紀に入って広告収入が半減してます。

 このエントリーが読者の考察の一助になれば、幸いです。



(木走まさみず)