木走日記

場末の時事評論

国際常識をまったく無視した、常軌を逸したトンチンカンな朝日社説〜「国家安全保障会議(日本版NSC)ではどんな議論があったのか。詳細に明らかにすべき」

 25日付け読売新聞記事から。

敵だらけ韓国隊「ありがとう」…陸自小銃弾提供

 小野寺防衛相は24日、紛争が拡大している南スーダンで活動する陸上自衛隊を指揮する井川賢一1佐とテレビ電話で会談した。


 井川1佐は、陸自が23日に国連を通じて小銃弾1万発を韓国隊に提供した際、韓国隊の隊長から「周りは敵(の反政府勢力)だらけで弾薬が不足している」などと切迫した要請があったことを明らかにした。

 韓国国防省の報道官は24日の記者会見で、派遣部隊の予備弾薬が不足したわけではなく、あくまで緊急事態に備えた措置だと主張。日韓の主張の違いが浮き彫りになっている。

 井川1佐などによると、日本時間の22日未明、ジョングレイ州のボルで活動する韓国隊の隊長から、「ボルの活動拠点内には1万5000人の避難民がいる。敵については北から増援も確認。1万発の小銃弾を貸してほしい」と電話で要請があった。日本側が小銃弾を引き渡したところ、23日夜、韓国隊から「ボルの宿営地と避難民を守るために使う。本当にありがとうございました」と連絡があったという。

(2013年12月25日09時54分 読売新聞)

http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20131224-OYT1T01234.htm?from=main2

 うむ、この記事によれば、現地の韓国隊の隊長から現地の陸自責任者に対して直接切迫した要請があったことになります。

 韓国国防省が「派遣部隊の予備弾薬が不足したわけではなく、あくまで緊急事態に備えた措置だと主張」していますが、これらの発言は韓国国民のための建前(たてまえ)であり、事実は日本側発表にあることは、韓国メディアも日本メディアの報道の引用や複数の韓国外交関係者の発言で認めています。

 25日付け韓国・中央日報記事から。

韓国が要請した実弾1万発、安倍首相の野心の踏み台に?(1)
2013年12月25日09時11分
[ⓒ 中央日報/中央日報日本語版]

(前略)

しかし翌日の24日午前、韓国国防部は全く違う発言をした。キム・ミンソク報道官は「(ハンビッ部隊の駐屯地である)ボル地域は現在、軍事的に安定しており交戦もない」として「(日本の自衛隊から実弾1万発を支援されたのは) 『補充(予備)用』を確保するために臨時に借りたものであり(実弾は)不足していない」と話した。ほかの軍関係者も「借りた実弾は韓国軍が空輸してきたらすぐに(自衛隊に)返す」とも話した。

外交部の趙泰永(チョ・テヨン)報道官は「ハンビッ部隊が自主的防衛のために国連に支援を要請し、国連側が日本に支援を要請して弾薬を受けとったもので、その以上でも以下でもない」として「弾薬を支援されたことと日本の集団的自衛権・軍備増強とは何の関係もない」と話した。

共同通信は「韓国では、日本の自衛隊の活動領域拡大に批判的な声が多い」として「韓国軍が必要な実弾を準備せずに自衛隊から提供されたことについて批判が出てくることを避けるための発言」と指摘した。実際、複数の外交関係者はこの日「当時、現場(南スーダン)では事案が緊迫していると判断したことは事実」と伝えた。

(後略)

http://japanese.joins.com/article/821/179821.html?servcode=A00§code=A10

 韓国隊の活動拠点内には1万5000人もの避難民が避難しており、事態は相当逼迫(ひっぱく)していたのでしょう。

 今回の自衛隊から実弾1万発を韓国隊に支援したのは、他の国に韓国と同型の実弾を持つ部隊が日本以外になかった事実も含め、緊急の状況であり、国際常識に照らして当然の対応と評価します。

 逆に要請を断っていれば、日本は国連平和維持活動(PKO)に何のために軍隊(自衛隊)を派遣しているのかと、国際的批判にさらされていたことでしょう

 今回の日本政府の迅速な対応は、4日に新しくスタートした国家安全保障会議(NSC)の「4大臣会合」が見事に機能したところが大きいでしょう。

 会議の結論は「事案の緊急性・人道性がきわめて高いため、直ちに支援する」ということになり、午後2時(現地時間午前8時)、南スーダンの首都ジュバの自衛隊部隊から実弾1万発を積んだヘリコプターがハンビッ部隊に向けて離陸したのは、韓国の公式要請からわずか15時間後の措置だったのであります。

 ・・・

 さて、朝日新聞が25日付け社説にて本件を取り上げています。

(社説)弾薬の提供 「例外」の検証が必要だ
2013年12月25日05時00分
http://digital.asahi.com/articles/DA2S10897204.html?ref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA2S10897204

 社説は国家安全保障会議(日本版NSC)ではどんな議論があったのか。詳細に明らかにすべきだ」と強く主張しています。

 どういう経緯で国連から話があったのか。韓国側は切迫した状況で要請したわけではないと説明しているが、実態はどうなのか。譲渡の方針を決めた国家安全保障会議(日本版NSC)ではどんな議論があったのか。詳細に明らかにすべきだ。

 日韓で説明が食い違うようなら、冷え込んだ関係がさらにこじれかねない。提供された弾薬の取り扱いについても、いずれ明らかにすべきだろう。

 そもそも、安倍首相や防衛相ら少人数の会合であるNSCの議論を伏せたままでは、国民の幅広い信頼は得られない。

 「積極的平和主義」の名のもとに、法整備もないままNSCの決定で既成事実を積み重ね、自衛隊の紛争への関与を強めることは避けるべきだ。

 この社説では、1万5000人の避難民の存在を意図的なのでしょうか完全に無視して今回の決定を批判的に論じているわけですが、それにしても国家安全保障会議の議論の詳細を速やかに明らかにしろとの主張には驚かされます。
 世界のどこの国で安全保障会議の内容の詳細を即時公開している国があるというのでしょうか。
 長い時間経過の後国民に公開するのならまだしも、国家機密も当然含まれる安全保障会議の内容の詳細を即時公開するなんて、そんな馬鹿な国があるわけがありません。
 中国などは安全保障会議の内容はもちろん、いつ開催されたかも秘匿しています。

 これは国際常識をまったく無視した、常軌を逸した主張であります。
 まったくもってトンチンカンです。



(木走まさみず)