木走日記

場末の時事評論

「大気汚染スモッグを礼讃」偏向報道の極みを見せつけている中国メディア〜では日本は嗤えるのか、朝日新聞あるかぎりそれはできない

 メディアだけでなく一般市民まで共産党批判がタブーなのは中国では常識ですが、それにしても最近の中国メディア、特に政府系官制メディアの偏向報道ぶりは客観報道から遥か彼方を突き抜けていて、中国ネット民ですら呆れ果てている模様です。

 5日付けロシアの声(日本語版)記事から。

中国南京市、濃いスモッグで学校が休校
5.12.2013, 14:21

中国江蘇省の南京市政府は、町の大気汚染レベルが上昇したため、小中学校を休校扱いにした。5日、中国マスコミが報じた。
南京市政府は4日、空中を舞う固体粒子のレベルが上昇したことを受け、警戒警報を発動するとともに、産業の大気汚染のコントロールを厳格化することを明らかにしていた。
山東省の青島市でも学校での屋外活動が禁じられたほか、枯葉やゴミの焼却も禁止され、役人らは社用車の利用を制限されている。
南京、青島市の市民らはソーシャルネット「ヴェンボー」で情報を交換し合っているが、「空全体がぼんやりとした黄色で覆われ、空中には息が詰まりそうな匂いが漂っている」など、その光景は「黙示録」的。

http://japanese.ruvr.ru/2013_12_05/125463744/

 悪化の一途をたどっている中国の大気汚染ですが、ついに小中学校を休校扱いするほど深刻化した模様です。

 記事の結びの「空全体がぼんやりとした黄色で覆われ、空中には息が詰まりそうな匂いが漂っている」など、その光景は「黙示録」的、との中国市民のネット上のコメントが事態の重篤さを的確に表現している感じで印象的です。

 この問題の背景には、経済発展を優先し環境問題対策を放置し自国民の健康被害に事実上策を全く講じてこなかった共産党中央政府の怠慢があるのですが、当然ながら中国では深刻化する大気汚染スモッグに関して、政府批判に繋がる報道は皆無であり御法度(ごはっと)・タブーなのであります。

 それどころか、政府系メディアはこの自国民の健康を害しているスモッグまで、中国に取り有益と報じ始めてました。

 10日付けライブドアニュース記事から。

中国紙 スモッグで軍事防衛有利

スモッグは悪いことばかりではない、敵方のミサイル照準を狂わせ軍事防衛に有利に働く―中国紙
毎日中国経済 2013年12月10日08時44分

中国紙・環球時報は9日、「スモッグがミサイルの照準を狂わせる、軍事防衛には有利に」と題した記事を掲載した。

中国の大部分の地域にスモッグが発生し、大きな注目を集めている。スモッグは人体や外出に支障をきたすだけでなく、作戦行動にも影響を及ぼす。偵察効果を大きく損ねるだけでなく、ミサイルの照準を狂わせる役割を果たす。
操縦者が目標を確認してから照準を定め、ロックオンして攻撃するパターンでは、スモッグのせいで目標が見えないため照準が定まらず、ミサイルも発射できない。巡航ミサイル作戦もスモッグの影響を受けやすい。
大空を飛行するパイロットにとってスモッグは大敵だが、戦場では味方を守る軍事行動に有利に働く。スモッグは防御する側にとっては良い作用があるのだ。コソボ紛争ではユーゴスラビアは廃棄タイヤを燃焼するなどの方法でわざわざ人工スモッグを作り出し、NATOからの空爆を逃れている。
(編集翻訳 小豆沢紀子)

http://news.livedoor.com/article/detail/8332133/

 うむ、共産党機関紙「人民日報」系の中国紙・環球時報が「スモッグがミサイルの照準を狂わせる、軍事防衛には有利に」と題した記事を掲載したそうです。

 大衆紙の釣り記事ではなく、権威ある政府系のメディアによる真面目な報道であるところが痛すぎます。

 また、10日付けサーチナ記事によれば、中国の国営TV・中央電視台も有毒濃霧が中国に5つの益をもたらしたと報じています。

【中国BBS】有毒濃霧がもたらした5つの益…国営テレビが主張
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2013&d=1210&f=national_1210_004.shtml

 有毒濃霧がもたらした5つの益の内訳です。

1.中国人の団結が促された
2.濃霧を前にすべての中国人が平等になった
3.環境意識が高まった
4.濃霧を題材にしたジョークがはやるなど中国人をよりユーモラスにした
5.気象や化学に対する知識が深まった

 本気で言ってるのか疑いたくなる自虐的内容ですが、これが権威ある国営メディアの報道なのだからあきれてしまいます。

 偏向報道の極み、メディアの使命である客観「報道」を完全に放棄しある意味で創作「芸術」の域に達している感があります。

 さすがに中国ネット民も大気汚染スモッグを礼讃するこれらの政府系メディアの報道にはあきれ果てているようです。

 記事より中国ネット上の感想コメントを抜粋。

  「節操はないのか! なんて厚い面の皮なんだ!」

  「この論評を発表した奴らはみんな地獄へ落ちろ!」

  「中央電視台を潰せ!」(“共産党を倒せ”とは言えないため、このような表現になった模様)

  「国営テレビは大便ですら良い香りに変えてしまうだろう」

 自国民の健康や生活に深刻な影響を与えている大気汚染スモッグですら、自分たちの無策に市民の批判が向くのを防ぐためでしょうか、中国にとって有益であると「真面目」に報道する中国政府系メディアなのであります。

 ・・・

 さて我々日本人として有害スモッグを国益と詭弁する中国メディアの偏向報道を嗤えるのでしょうか?

 例えば日本のクオリティペーパー代表を「自認」する朝日新聞には、特定秘密保護法に賛成する記事や論説は一切掲載されません。

 先週などは、月曜日(2日)から日曜日(8日)まで一週間連続で秘密保護法案反対の論を社説に掲げ続けているのです。

【7日付け】秘密保護法成立 憲法を骨抜きにする愚挙
http://www.asahi.com/articles/TKY201312060563.html?ref=editorial_backnumber

【6日付け】特定秘密保護法案 民主主義に禍根を残すな
http://www.asahi.com/articles/TKY201312050466.html?ref=editorial_backnumber

【5日付け】秘密保護法案 採決強行は許されない
http://www.asahi.com/articles/TKY201312040653.html?ref=editorial_backnumber

【4日付け】秘密保護法案 国会が崩す三権分立
http://www.asahi.com/articles/TKY201312030521.html?ref=editorial_backnumber

【3日付け】秘密保護法案 石破発言で本質あらわ
http://www.asahi.com/articles/TKY201312020575.html?ref=editorial_backnumber

【2日付け】秘密保護法案 裁きを免れる「秘密」
http://www.asahi.com/articles/TKY201312010259.html?ref=editorial_backnumber

 それどころか保護法に反対の内容であれば時事性もなく報道価値もまったくない記事が紙面を埋め尽くしている状態です。

 10日付け朝日新聞記事から。

鳩山元首相、龍馬へ手紙 秘密法への懸念記す
2013年12月10日10時52分

 【竹山栄太郎】県立坂本龍馬記念館(高知市)で来館者が龍馬に宛てて手紙を書く「拝啓龍馬殿」のコーナーに、鳩山由紀夫元首相が特定秘密保護法が成立した後の日本を懸念する手紙を寄せた。手紙は、法案が国会で審議中だった4日付。龍馬に「法案が国会を通ることになれば、日本国の意思決定は益々(ますます)国民の目に届かなくなることは必定です」と語りかけている。

 鳩山氏は11月26日、講演で高知を訪れた際、記念館に立ち寄り、「手紙」を後日郵送すると約束して用紙を持ち帰ったという。手紙はA4判の用紙2枚にわたって書かれ、「龍馬殿、今一度日本を洗濯する気概を有する若者達を天界から養成して戴き度(た)く存じます」と締められている。

 学芸員とともに館内を案内した森健志郎館長(72)が「鳩山さんは宇宙人って言われてますよね」と水を向けると、鳩山氏は「龍馬も宇宙人でしょ」と笑って応じたという。

 記念館によると、「拝啓龍馬殿」のコーナーは1991年の開館時からはじまり、これまで寄せられた手紙は2万通にのぼるという。台湾の李登輝元総統や、高知出身の女優広末涼子さんも直筆の手紙を寄せている。 

http://www.asahi.com/articles/OSK201312090091.html

 もう国会議員でもなく政界に影響力も皆無である鳩山由紀夫元首相が、一週間前に坂本龍馬記念館あてに「法案が国会を通ることになれば、日本国の意思決定は益々(ますます)国民の目に届かなくなることは必定です」との「手紙」を郵送したことを、写真付きで報じているのです。

 驚くべき偏向性です、そして時事性のなさです。

 こんな駄文をわざわざ写真付きで報じるならばもっと他に報道価値があるニュースがあるでしょう。

 朝日新聞読者を馬鹿にしているとしか思えません

 法案反対に驚くべき偏向性を示す朝日新聞の報道姿勢を見る限り、このような新聞が日本を代表するメディアと言われている限り、我々日本人は、大気汚染スモッグを礼讃する中国メディアのことを嗤うことはできないでしょう。

 ふう。



(木走まさみず)