木走日記

場末の時事評論

「寸鉄人を刺す」のもいいが、朝日はとっとと浦安市に謝罪すべきじゃないのか

 千葉県浦安市朝日新聞に「厳重に抗議し、速やかな謝罪を求める」のだそうです。

 なにやら激しくお怒りのようです。



●成人式:浦安市朝日新聞のコラム記事に抗議書

 毎日新聞速報から・・・

成人式:浦安市朝日新聞のコラム記事に抗議書

 千葉県浦安市は13日、同市の成人式に関する朝日新聞のコラム記事に対する抗議書を12日付で郵送したと発表した。個性を出した式に対して中傷する記事として「厳重に抗議し、速やかな謝罪を求める」としている。

 抗議書によると、記事は10日夕刊1面「素粒子」に掲載された東京ディズニーランド(TDL)で9日に行われた同市の成人式に関するもの。「浦安の新成人。遊園地のネズミ踊りに甘ったれた顔して喜んでるようじゃ、この先思いやられる」という内容だった。

 市長と市教委教育長名で、「成人式はTDLの協力を得て市長や議長のあいさつなど粛々と進められた。記事は式典前後に行われたショータイム(計5分)のみを捉えたもので、正確で公正な記事とはいえない」などと抗議、(1)新成人に対する謝罪と謝罪文(2)記事の目的やねらい(3)記事掲載に至った経緯の掲載や説明を要求している。

 同市の成人式は02年からTDLで開催されており、今年で5回目。朝日新聞10日付朝刊では、写真付で成人式の記事が掲載されている。【神足俊輔】

 朝日新聞東京本社広報部のコメント 「素粒子」は筆者が政治、社会現象を批評するコラムです。当該の記事は成人式についての一つの見方を示したものです。浦安市長からの抗議書には、改めてご返事します。

毎日新聞 2006年1月13日 12時09分 (最終更新時間 1月13日 12時45分)
http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20060113k0000e040072000c.html

 おお、「素粒子」と言えば、朝刊の「天声人語」ともに朝日新聞論説委員室が誇る名物コラムではないですか。

 「浦安の新成人。遊園地のネズミ踊りに甘ったれた顔して喜んでるようじゃ、この先思いやられる」

 いやしかし、東京ディズニーランドミッキーマウスショーを「遊園地のネズミ踊りとは、素粒子担当の論説委員である河谷史夫氏も、はでにぶっ放してくれましたねえ(苦笑)

 参加した新成人諸君も、まさか天下の朝日コラムで「甘ったれた顔して喜んでるようじゃ、この先思いやられる」と怒られちゃうとは思っても見なかったでしょうね。

 ふう。

 浦安市側は「(1)新成人に対する謝罪と謝罪文(2)記事の目的やねらい(3)記事掲載に至った経緯の掲載や説明」を要求しているそうですが、朝日側ですが、「「素粒子」は筆者が政治、社会現象を批評するコラムです。当該の記事は成人式についての一つの見方を示したものです。浦安市長からの抗議書には、改めてご返事します。」とは、例によって謝罪でもなければ反論でもないなんとも的を得ないコメントなのであります。

 つまり、コラムとは担当の「筆者が政治、社会現象を批評する」もので、この「浦安の新成人。遊園地のネズミ踊りに甘ったれた顔して喜んでるようじゃ、この先思いやられる」のも「成人式についての一つの見方を示したもの」と言いたいわけですね。

 ・・・

 ふーん。

 しかしなあ、たかだか(失礼)コラムの一行の記述なんですし、たしかに当事者にしてみればひどい言われようの書き方なのは否めないのですから、朝日はとっとと謝罪してしまえばいいのに、なんであいまいなコメントしかしないのか理解できません。



●ニュースとその主人公を「寸鉄人を刺す」の意気込みで切ってみせる「素粒子」担当の河谷史夫

 朝日新聞の会社案内のサイトで調べてみれば、「比べて欲しい社説やコラム」ページで「素粒子」に関して次のような説明がなされています。

(前略)

素粒子〉 夕刊一面の、これも売り物コラムです。ニュースとその主人公を「寸鉄人を刺す」の意気込みで切ってみせます。14行と短いだけに、筆者の河谷史夫は早朝から自らを奮い立たせ、パソコンの画面に集中しています。

(後略)

朝日新聞 会社案内 論説委員室 より抜粋
http://www.asahi.com/shimbun/honsya/j/edit.html

 そうか「ニュースとその主人公を「寸鉄人を刺す」の意気込みで切ってみせます」ために、「筆者の河谷史夫は早朝から自らを奮い立たせ、パソコンの画面に集中しています」なのか。

 ・・・

 やれやれです。



●朝日は謝罪しないのならば責任あるメディアとして抗議に反論せよ!!

 一言よろしいでしょうか。

 河谷史夫氏の個人の意気込みは良しであります。「ニュースとその主人公を「寸鉄人を刺す」の意気込みで切ってみせます」とは何とも物騒な描写ですが寸鉄人を刺す」ジャーナリスト魂も有りでしょう。

 しかし、「批判」と「誹謗・中傷」は全く別次元であることはここではっきりさせておきたいと思います。

「浦安の新成人。遊園地のネズミ踊りに甘ったれた顔して喜んでるようじゃ、この先思いやられる」

 「浦安」と場所も特定しているのに「成人式についての一つの見方を示したもの」とはお笑いモノの言い草であり、全国紙の一面コラムでこき下ろされた浦安市とその新成人諸君にしてみればこれは誹謗・中傷以外のなにものでもないのであります。

 ここで重要なことは市側の主張、「成人式はTDLの協力を得て市長や議長のあいさつなど粛々と進められた。記事は式典前後に行われたショータイム(計5分)のみを捉えたもので、正確で公正な記事とはいえない」にあるとおり、式全体を筆者の河谷史夫氏が把握して書いたのか、はなはだ疑わしい点です。

 「早朝から自らを奮い立たせ、パソコンの画面に集中し」すぎていて、うわべだけの著者の脳内イメージのみを「寸鉄人を刺す」勢いで安直に記述したのではないのですか?

 もしこのような記述が、これは一般的な「批判」であり、「誹謗・中傷」には当たらないと朝日が考えているならば、すみやかに、たしかに「浦安の新成人」達が「遊園地のネズミ踊りに甘ったれた顔して喜んで」いた事実を示し、メディアとして反論しなければなりません。式全体でたかだか5分のミッキーショウの比重がそんなに重いとは思えませんが、筆者を持って「この先思いやられる」と判断した根拠を明確に示すべきです。

 ・・・

 当ブログで予言いたしましょう。

 朝日はこの件で絶対反論はしないでしょう。うやむやに穏便に事をすませるべくはかっていくでしょう。

 なぜなら、例えばNHK番組報道問題でも、NHKの提示した公開質問書に、朝日は今の今までひとつとして具体的な回答をしていないのですから、朝日にしてみれば今回の件などは「街でちんぴらに因縁を付けられた」程度の認識を持つのがオチだと思うからです。

 朝日新聞東京本社広報部のコメント 「素粒子」は筆者が政治、社会現象を批評するコラムです。当該の記事は成人式についての一つの見方を示したものです。浦安市長からの抗議書には、改めてご返事します。

 反論しないならとっとと謝りゃいいのに、朝日のプライドがそうさせるのかよくわかりませんが、このピントをはずしたコメントは何なんでしょう。

 たとえ「筆者が政治、社会現象を批評するコラム」だとしても、メディアとしての言論責任は朝日新聞にあるのに変わりはないわけで、ちょっと言い過ぎだと指摘を受けたなら素直に謝罪すればいいのに、「寸鉄人を刺す」ジャーナリズム精神が逆に災いしてかたくなに謝罪を拒む社風につながっているのでしょうか?

 たかがコラムの一行の問題で騒がれる朝日新聞も気の毒な気がしますが、たかがコラムの一行の問題で謝罪も反論もしないで時間を伸ばしてしまう朝日の体質が騒動に火に油をそそぐことになってしまうことを、朝日は強く自覚すべきであります。

 「寸鉄人を刺す」のもいいですが、朝日はとっとと浦安市に謝罪すべきじゃないでしょうか。



(木走まさみず)

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