木走日記

場末の時事評論

ネットの掟(おきて)を知らない毎日新聞の「おわび記事」のおそまつ

 産経電子版速報記事から。

【元厚生次官ら連続殺傷】毎日報道「ネットに犯行示唆」は誤報

 元厚生事務次官の吉原健二さん(76)の妻、靖子さん(72)が刺されて重傷を負った事件で、毎日新聞は19日、事件の約6時間前にインターネット上に犯行を示唆する書き込みがあったと報じた19日付朝刊の報道が誤りだったとして、同社のウェブサイト「毎日jp」におわびを掲載した。19日付夕刊でおわびと経緯を掲載する。

 19日付記事では、18日正午ごろ、ネットの「フリー百科事典・ウィキペディア」の「社会保険庁長官」のページの中で、吉原さんの名前の前に「×」がつけられ、その下に「暗殺された人物」というただし書きがあったと報道。

 だが、実際の書き込みは事件から2時間ほど経過した後だったとみられることが、後になって判明した。

 毎日新聞社長室広報担当によると、取材を担当した記者が同サイトに掲載されていた、日本標準時より8時間遅い「協定世界時」による編集時刻を、日本時間と誤認したことが原因。

書き込みの内容は、参考情報として、捜査当局にも伝えていたという。

 記事は東京、大阪で発行された最終版にそれぞれ掲載されたほか、一時「毎日jp」にも掲載されたが、間もなく削除した。

 ネット上では、ウィキペディアに問題の書き込みをしたとする人物が名乗り出て、「書き込みは事件後」と弁明するなどしたことから、誤報の可能性を指摘する声が噴出し、大きな騒ぎとなっていた。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/081119/crm0811191229031-n1.htm

 そうか、毎日記者はUTC「協定世界時」とJST「日本標準時」の区別すらついていなかったのですね。犯行報道後の書き込みを犯行前の書き込みと勘違いしたまま誤報道してしまったのか。

 笑止。

 プロメディアとしては、誤報のレベル低すぎなんであります。

 「記事は東京、大阪で発行された最終版にそれぞれ掲載されたほか、一時「毎日jp」にも掲載された」と、全国紙紙面だけでなくネット上でも掲載されたようですが、そのように大きく報道するならば記事内容のしっかりとした検証は当然でしょうに、毎日の報道管理体制はどうなっているのかなあ。

 あとですね、「一時「毎日jp」にも掲載されたが、間もなく削除」ってありますが、これね、ネットでは一番ダメダメな対応ですから(苦笑

 黙って削除していたものの、わずか半日で2チャン含め、ネットで本件が大騒動になっていっこうにしずまらず、しかたなく「おわび」掲載ですか。

おわび:「ネットに犯行示唆?」の記事について

 元厚生事務次官の吉原健二さんの妻靖子さんが宅配便を装った男に胸などを刺されて重傷を負った事件について19日未明、「ネットに犯行示唆?」などの見出しで、ネット版の百科事典「ウィキペディア」に犯行を予告するような書き込みがあったと報じましたが、書き込みの時刻は事件前ではなく、事件の報道後でした。おわびして訂正します。

毎日新聞 2008年11月19日 11時35分(最終更新 11月19日 11時36分)
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20081119k0000e040034000c.html

 わあ、なんだなんだこのお詫びの文面は、「書き込みの時刻は事件前ではなく、事件の報道後でした。おわびして訂正します。」って、誠意が無さ過ぎです。

 おそまつすぎます。

 これじゃ読み方によっては「犯行予告」ではなかったが「犯行報告」であったみたいな捉え方もできちゃいますでしょう。

 それに、この「お詫び記事」とっても検索しづらいんですけど、トップからも関連記事からも全然リンクできてないし、まるでなるべく気付かれないように放置しているようにも見えるんですが(苦笑

 ・・・

 毎日新聞さん、対応ダメダメなんですが。

 全国紙面にまで掲載しネットでも掲載し、その後誤報がばれると、おわび・訂正もせずネット上だまって記事を削除、ますます騒動が広がって、まともなリンクも張らずにそっと「お詫び記事」掲載、おまけにその内容と来たら、経過詳細報告も付けず誠意のまったく感じられない短い代物・・・

 ふう。

 これではネット上で「火に油」そそいでるようなもんですよ。

 ・・・

 ネット上で誤報してしまい、炎上して後で謝罪する場合、ステップがとても重要です。

 ・元ネタは晒したまま、まずお詫び及び訂正記事を掲載する。

 ・その謝罪テキストにはできうるかぎり、なぜ誤報してしまったのか、ことの経緯を示し、何がいけなかったのか明らかにし、全面的に謝罪すべきは素直に心より謝罪する。

 ・最後に謝罪行為を誰にするのか謝罪相手先を明記する。(特定の個人なのか、読者なのか)

 最低限こういうステップを踏まなければネット上では誰も納得しませんよ。

 ・・・

 新聞やTVなどのマスメディアは、かつて独占メディアとして一方的に聴衆(オーディエンス)に記事を流してきました。

 独占的に聴衆(オーディエンス)の上に立ち、下々に高貴な記事を分け与えていた時代の感覚が、今も抜けていないようです。

 双方向がインタラクティブに情報発信するインターネットという媒体の特徴を、彼らはまだまったく理解していないようです。

 ネットでは情報発信はあなた方の独占物ではもはやないのです。

 あなた方は一参加者に過ぎない。

 一参加者ならネットの掟(おきて)を守らなければいけません。

 それは徹底的なソースのリンク付けと事実の明示化です。

 謝罪行為をするときもまったく同様です。



(木走まさみず)



<関連テキスト>
■良い謝罪文作成は人を成長させる仮説〜朝日新聞の返事を読んでの一考察
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20060119

■残念!「永田謝罪会見」は不合格です〜「謝罪文評論家」が各紙速報から読み解く永田謝罪会見のミス
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20060228/1141116742