木走日記

場末の時事評論

今回の「10万円一律給付」、政府の「君子豹変」「朝令暮改」の政策変換を評価する

安倍首相は16日夜、新型コロナウイルス感染症対策本部で「外出自粛をはじめ、様々な行動が制約されることとなる全国すべての国民を対象に、一律1人あたり10万円の給付を行う方向」だと語りました。

政府・与党は16日、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、国民1人あたり10万円を給付する方針を決め、所得制限は設けず、5月中の給付開始を目指すとのことです。

毎日新聞は社説で「迷走の末の遅すぎた決断」だと批判します。

毎日新聞社説】「1人10万円」支給へ 迷走の末の遅すぎた決断
https://mainichi.jp/articles/20200417/ddm/005/070/074000c

毎日社説は冒頭から「迷走も甚だしい」と政府批判です。

 政府は、収入が大きく減った世帯に限って30万円を支給することを7日に決めたばかりだ。そのための予算案を提出する前に、いったん決めたことを覆し、新たな対策を盛り込むのは異例の対応だ。迷走も甚だしい。

毎日社説は結びでも「国会への提出は遅れる。迷走のツケは大きい。」と政府批判を繰り返しています。

 政府は今回、所得制限を設けない方向だ。スピードを重視した対応だろう。ただ、最初から決断していれば、支給までの期間を短縮できたはずだ。

 政府は、10万円案を盛り込むために補正予算案を組み替える方針だ。これにより、国会への提出は遅れる。迷走のツケは大きい。

また日経新聞も社説で「ドタバタ劇を演じている場合ではない」だろうと政府批判です。

日経新聞社説】ドタバタ劇を演じている場合ではない
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58145000W0A410C2SHF000/

日経社説は冒頭、「政府・与党の動きがドタバタになっているのではないか。そう懸念せざるを得ない場面が目立ってきた」と警鐘を鳴らします。

新型コロナウイルスの感染が拡大し続けるなか、政府・与党の動きがドタバタになっているのではないか。そう懸念せざるを得ない場面が目立ってきた。国の担い手への信頼が薄れると、最善の策まで国民が受け入れず、効果が発揮できなくなるかもしれない。

日経社説は「首相官邸と省庁の意思疎通の悪さや、国と都道府県との行き違いが指摘されてきた」と指摘、「政府・与党が右往左往している」と批判、「ドタバタ劇を演じている場合ではない」と結ばれています。

コロナ対策をめぐり、これまでも首相官邸と省庁の意思疎通の悪さや、国と都道府県との行き違いが指摘されてきた。前例なき危機のときに、すべてを完璧に進めるのは容易ではないが、政府・与党が右往左往している印象になっているのは残念だ。

ドタバタ劇を演じている場合ではない。いまこそ政治の真価を示すときだ。

たしかに「迷走の末の遅すぎた決断」(毎日新聞)であり、「政府・与党が右往左往している印象になっている」(日経新聞)との批判はそのとおりでありましょう。

だがしかし、遅きに失した感があることは否めませんが、この危機対応において、「君子豹変」「朝令暮改」、政策を変更することにためらう必要はありません。

日々目まぐるしく変化する状況に合わせて、政治指導者は時点時点で最善と思われる政策を柔軟に選択していくことは必要なことだと思われます。

さて、問題はスピード感です。

09年、全国民に一律で配った定額給付金は、行政側が受け取る人の住所や口座の事前確認に手間取り、給付までに約3か月かかりました。

その手続きをそのまま踏襲してしまえば、実際の給付は7月末から8月となってしまいます、話になりません。

そこで政府は、受け取りにあたっては市区町村に申請する形(自己申告制)を取る方式に、制度変更をいたします。

自己申告制にすれば、その都度、確認すれば済むため、「5月中には給付できる」(政府関係者)といいます。

このスピード感は重要です。

もうひとつ自己申告制のメリットは、一律給付は高額所得者も受け取ることができるわけですが、受け取りにあたっては市区町村に申請する形を取るため、申請しなければ辞退も可能なわけです。

金持ちは辞退すればよろしいのです。

政策が改善されるのならば、「君子豹変」「朝令暮改」大歓迎であります。
(しかしこんなこと繰り返していて安倍政権は持つのでしょうか?)



(木走まさみず)