「桜を見る会」問題で朝日新聞のアツき報道姿勢を検証~事実に角度をつけた報道は事象を相対化できない
ここに慰安婦捏造報道を朝日新聞が認めたときの第三者委員会の報告書が公開されています。
2014年12月22日
報告書
朝日新聞社第三者委員会
http://www.asahi.com/shimbun/3rd/2014122201.pdf
その92ページに岡本行夫委員の個別意見が朝日新聞の報道体質を見事に表現しています。
まず朝日新聞は「レールが敷かれていない時には、いかなる指摘を受けても自己正当化を続ける」「保守性」を有していると指摘します。
(1)岡本委員
我々の今回の検証作業に対して、朝日新聞社はまことに誠実に対応した。新しい方向へレールが敷かれた時の朝日の実行力と効率には並々ならぬものがある。しかしレールが敷かれていない時には、いかなる指摘を受けても自己正当化を続ける。その保守性にも並々ならぬものがある。
「吉田清治証言を使い続けた責任は重い」しかしより重いのは「「慰安所 軍関与示す資料」と題して6本の見出しをつけたセンセーショナルなトップ記事」だと指摘します。
吉田清治証言を使い続けた責任は重い。しかし、同様に国際的に大きなインパクトを与えたのは、1992年1月11日の「慰安所 軍関与示す資料」と題して6本の見出しをつけたセンセーショナルなトップ記事だ。数日後の日韓首脳会談にぶつけたこの報道は、結果としてその後の韓国側の対日非難を一挙に誘うことになった。(同記事の問題点については本報告書をお読みいただきたい)。
「何人もの朝日社員から「角度をつける」という言葉を聞いた」とし、「朝日新聞としての方向性をつけて、初めて見出しがつく」との発言に驚きます。
当委員会のヒアリングを含め、何人もの朝日社員から「角度をつける」という言葉を聞いた。「事実を伝えるだけでは報道にならない、朝日新聞としての方向性をつけて、初めて見出しがつく」と。事実だけでは記事にならないという認識に驚いた。
「出来事には朝日新聞の方向性に沿うように「角度」がつけられて報道され」、「方向性に合わせるためにはつまみ食いも行われ」、「なんの問題もない事案でも、あたかも大問題であるように書かれ」たりするのだと、朝日の報道姿勢を一刀両断します。
だから、出来事には朝日新聞の方向性に沿うように「角度」がつけられて報道される。慰安婦問題だけではない。原発、防衛・日米安保、集団的自衛権、秘密保護、増税、等々。
方向性に合わせるためにはつまみ食いも行われる。(例えば、福島第一原発吉田調書の報道のように)。なんの問題もない事案でも、あたかも大問題であるように書かれたりもする。
朝日新聞のこの「事実に角度をつける報道」は、残念ながら全く改まっていません。
今回は朝日のアツき報道姿勢を検証しましょう。
朝日が本気で「角度」を付けた報道に取りかかるとその紙面構成は大きく偏向したものになります。
12月に入ってからの朝日新聞紙面は「桜を見る会」批判記事に埋め尽くされているかのごとくです。
電子版で確認できる範囲で朝日新聞記事を列挙します。
桜を見る会と揺れ動いた首相 番記者が見た誤算と焦り
2019年12月1日18時35分
https://www.asahi.com/articles/ASMCR0D8QMCQUTFK01S.html「桜を見る会」首相の関与と説明焦点に 野党追及強める
2019年12月1日19時02分
https://www.asahi.com/articles/ASMD14T4QMD1UTFK005.html政権象徴する公私混同と文書廃棄 疑念膨らむ桜を見る会
2019年12月1日23時35分
https://www.asahi.com/articles/ASMCX5WTTMCXUTFK01P.html桜を見る会の招待者名簿データ 菅氏「復元は不可能」
2019年12月2日12時45分
https://www.asahi.com/articles/ASMD23TQSMD2UTFK004.html桜を見る会名簿廃棄、首相「野党の資料要求とは無関係」
2019年12月2日14時24分
https://www.asahi.com/articles/ASMD24K9NMD2UTFK00B.html「データ復元不可」のシンクライアント方式 桜を見る会
2019年12月2日15時28分
https://www.asahi.com/articles/ASMD23V2GMD2UTFK005.html?iref=comtop_list_pol_n07夕食会の明細、首相「『営業の秘密』と報告受けた」
2019年12月2日19時34分
https://www.asahi.com/articles/ASMD254FQMD2UTFK00Q.html?iref=comtop_list_pol_n05首相、元会長の招待回答せず「個人的な関係は一切ない」
2019年12月2日20時17分
https://www.asahi.com/articles/ASMD24VLHMD2UTFK00F.html?iref=comtop_list_pol_n04菅氏「データ廃棄の知識なかった」 桜を見る会
2019年12月3日00時26分
https://www.asahi.com/articles/ASMD25QV2MD2UTFK012.html?iref=comtop_list_pol_n02国文書、ジャパンライフ巡り「特異性」記載か 野党追及
2019年12月3日07時30分
https://www.asahi.com/articles/ASMD2546YMD2UTFK00L.html
本数だけではないのです、有料記事も多いのですが多くの記事のボリュームもすごいのです。
そして3日付けで社説が掲載されます。
(社説)桜を見る会 これで責任は果たせぬ
2019年12月3日05時00分
https://www.asahi.com/articles/DA3S14279912.html?iref=editorial_backnumber
社説は冒頭から安倍首相の「説明責任を軽んじる行為」を批判します。
安倍首相はなぜ、一問一答形式の委員会質疑に応じないのか。「桜を見る会」をめぐる一連の疑問について、一方通行の答弁で済む本会議への出席にしか応じないということ自体、説明責任を軽んじる行為と言わざるを得ない。
野党の要求する予算委員会の開催に応じないのは「答弁の矛盾やごまかしを突かれるのが嫌だ」からではないかと勘繰ります。
首相がきのう参院本会議で答弁にたった。野党は参院規則に基づいて予算委員会の開催を要求している。委員の3分の1以上の求めがあれば、委員長は委員会を開かねばならないと定められているにもかかわらず、与党が応じないのはルール無視もはなはだしい。答弁の矛盾やごまかしを突かれるのが嫌だと見られても仕方あるまい。
「相変わらずの説明の小出しは、不誠実きわまる」と菅官房長官の対応も痛罵します。
招待者名簿の廃棄をめぐる首相の説明は、野党議員の資料請求とは全く無関係という、政府の従来の立場をなぞるだけだった。一方、電子データの復元はシステム上、不可能と明言した。菅官房長官は先週まで「復元はできない」と言いながら、その根拠は示していなかった。相変わらずの説明の小出しは、不誠実きわまる。
ジャパンライフの元会長は首相の推薦枠じゃないのかと疑い、「個人情報だとして「回答を控える」の一点張り」は「人ごとのような反応」だと断じます。
多くの消費者被害を出したジャパンライフの元会長が、桜の会の招待状を宣伝に使い、首相の推薦枠だった可能性も指摘されている問題については、招待者も推薦元も個人情報だとして「回答を控える」の一点張り。一般論として「会が企業や個人の違法、不当な活動に利用されることは容認できない」と語ったものの、首相との関係を信じて契約した被害者の証言も明らかになるなか、人ごとのような反応ではないか。
後援会の懇親会の会計処理についても、「政治資金規正法や公職選挙法違反の可能性まで指摘されているというのに、本気で疑念を払拭(ふっしょく)するつもりが」ないのではないかと批判します。
毎年、会の前夜に開いていた後援会の懇親会の会計処理についても、納得のいく新たな説明はなかった。ホテル側と相談した際、費用などの明細書は示されなかったというが、にわかには信じがたい。ホテル側が「営業の秘密」を理由に資料提供に応じないとも語った。政治資金規正法や公職選挙法違反の可能性まで指摘されているというのに、本気で疑念を払拭(ふっしょく)するつもりがあるのだろうか。
会期を延長しない与党に対して「首相の保身を優先した幕引きなど、決して許されない」とダメ出しです。
今国会は残り1週間。与党は会期の延長はせず、首相の説明もきのうの参院本会議で区切りとしたい考えだという。首相の保身を優先した幕引きなど、決して許されない。
社説は「まず、何よりも、さまざまな疑問について、首相が真摯(しんし)に説明を尽くすことが出発点にならなければいけない」と結ばれています。
首相は桜を見る会の運用について「私自身の責任において全般的な見直しを行う」と繰り返し、招待者名簿の保存期間の見直しにも言及した。しかし、政治の公平・公正に関わる重大な問題である。小手先の対応では、信頼回復はおぼつかない。まず、何よりも、さまざまな疑問について、首相が真摯(しんし)に説明を尽くすことが出発点にならなければいけない。
確認いただいたように、この朝日社説は冒頭から結びまで、徹頭徹尾「桜を見る会」がらみで安倍政権を批判しています。
5年前の報告書で、朝日新聞はレールが敷かれていない時には、いかなる指摘を受けても自己正当化を続ける保守性を有していると指摘されていました。
確かに朝日新聞が「事実に角度をつけた報道」を始めると、御覧のようにそこには恐ろしいほどの自己の報道・主張すなわち「角度」の絶対化が起きるわけです、多くの記事が「ある角度」を指し示すのです。
朝日新聞が従軍慰安婦捏造報道を繰り返していた時もまさにそうでした。
朝日が「角度をつけた報道」に陶酔すると、視野狭窄あるいは袋小路に陥っている自分の記事に気づかない、物事には相対化して、見る・つかむ・考察することも必要であるのに異論や反論が入り込む余地を失っていくのです。
報道を相対化するというのは、その報道姿勢を信奉している自分を外部から客観視してみるということです。
例えば、安倍政権には内外の課題が山積しています。
これに比して日本の国会は、米中新冷戦とわが国の立ち位置など国家のあり方をめぐる大所高所の議論はおろか、激しさを増す香港情勢、韓国との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)や北朝鮮の核・ミサイル問題、拉致問題の解決、国民投票法改正案といった課題についてまともに議論せず、決議一つ可決していません。
今国会で議論すべき課題は本当に「桜を見る会」問題最優先でよろしいのか?
「事実に角度をつけた朝日新聞報道」には、事象を相対化して分析することはありません。
もし「角度」が間違っていたらどうするのでしょう?
ちょっと恐ろしい報道姿勢だと感じます。
今回は朝日のアツき報道姿勢を検証いたしました。
(木走まさみず)