木走日記

場末の時事評論

本件の真の被害者は一着50万円のスーツ代まで電気料金として負担させられている関電利用者

関西電力の会長や社長らが出席し10月2日2度目の臨時会見が開かれました。

役員ら20人が福井県高浜町森山栄治元助役から金品を受け取っていた問題を明らかにしました。

期間は2011年から2018年、受け取った金品は合わせて約3億2000万円分と多額でした。

会見で「なぜすぐに返却しなかった?」との質問に、関電側は森山栄治元助役から激しい恫喝を受けていたと答えています。

会見の資料より。

「お前なんかいつでも飛ばせるし、何なら首も飛ばすぞ」などといった発言があった。また、社内では過去の伝聞情報として、森山氏からの圧力に耐えかねて、対応者の中には、うつ病になった人、辞表を出した人、すぐに左遷された人などがいる、などの話が伝えられることがあった

自身やその家族の身体に危険を及ぼすことを示唆する恫喝として、「お前の家にダンプを突っ込ませる」などといった発言があった。また、社内では過去の伝聞として、対応者が森山氏から「お前にも娘があるだろう。娘がかわいくないのか?」とすごまれた、別の対応者は森山氏のあまりに激しい恫喝の影響もあって身体を悪くして半身不随となった、その対応者は身の危険もあることから経緯を書いた遺書を作って貸金庫に預けていた、などの話が伝えられることがあった

これらの発言がもし事実だと証明されれば、明らかに元助役による脅迫罪が成立し、関電側は犯罪行為の被害者と成り得ます。

しかし元助役は既に死亡しており、まさに『死人に口なし』、死人は無実の罪を着せられても釈明することができないわけで、関電側が元助役の行為を一方的に悪い印象操作をして、自分たちの行為がやむを得なかったものとの印象を世論に与えようとしているとの疑惑ももたげてしまいます。

そもそも本件は、金品を提供していた、高浜町の森山元助役は3億円以上もの資金を地元の建設会社「吉田開発」から得ていたことが金沢国税局の税務調査で明らかになったことが発端です。

吉田開発は関電の原発関連工事が業務の多く受け、この五年間で実に売上を6倍に伸ばします。二〇一三年八月期の売上高は三億五千万円だったのが、一八年八月期には二十一億円を上回ります。

(関連記事)

原発関連工事で売上高6倍 関電から受注 建設会社
https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201909/CK2019092802000238.html

吉田開発の脱税、森山氏に対する利益供与だけであれば、国税の査察も入り既に解決だったのですが、吉田開発から森山氏に利益供与された金が、関西電力の八木会長をはじめとする原子力事業本部、地域共生本部などの会社幹部に還流されていたことが、今回の関西電力の大スキャンダルに発展したわけです。

関電が発注し続けた原発関連工事で急成長した自元企業、その企業から森山氏を経由して関電幹部に3億を超える金品が還流していたわけです。

本件で関電側の発表では、受け取ったのは現金や商品券、アメリカドルなどに加えて、様々な物品に及んでいました。金品は森山元助役との面談や会食の場で渡されていて、菓子の土産物の袋に見えないように入れられることが多かったと言います。また、幹部ら20人のうち1億円以上を受け取っていたのは原子力事業本部長代理の鈴木聡常務と、豊松秀己元副社長で、現金や商品券を始め、金貨やスーツなどを受け取っていました。受け取った総額3億2000万円相当のうち約2億8000万円分は返却し、6人の処分を行ったということです。

菓子折りに金品をしのばせるなど旧態依然のやり方なのですが、一部報道でも指摘受けていますが、スーツ仕立て代が二着で100万円とあるのですが、一着50万のスーツって普通のビジネスマンでは有り得ないでしょう。

本件で一番問題なのは、関電幹部たち、元助役、吉田開発、これら登場人物にだれも金銭的負担が及んでないことです。

普通の企業なら一円でも原価を抑えようとします、そうしなければ利益を得ることができないからです。

今回も吉田開発にほぼ言いなり金額で下請け工事を連続発注して原価が高まってしまったのですが、関西電力は痛くも痒くもないのです。

関西電力の役員に提供されていたカネの原資が、ほかならぬ、私たち国民(関電利用者)が負担している電気料金にすべて上乗せされているからです。

日本の電気料金が世界で一番高いと言われているのは、経産省が主導してきた一地域一電力会社という地域独占の殿様商売がもたらしていることは自明です。

まず地域独占ライバルがいないからこそ成り立つ東電初め電力会社の価格設定の仕組み「総括原価方式」の民間では有り得ない出鱈目さです。

発電などのコストに一定の割合の利益を上乗せして価格設定できる「総括原価方式」は、独占企業でなければ有り得ない「夢のシステム」なのであり、この方式のおかげで電力会社は「コストがかかればかかるほど利益が大きくなる」という大変不健全なインセンティブを経営方針に内在することになっております。

関電がらみで具体的例示をしますと、例えば民間で神戸製鋼所02年稼動の神鋼神戸発電所(定格出力140万kw)が2000億円の建設費だったのに対し、同じ石炭燃料火力発電である04年稼動の舞鶴発電所(同180万kw)は5700億円です、出力1万kw当たりの建設費は31.7億と14.3億と実に2.2倍も電力会社のほうが割高になっているのです。

「総括原価方式」があるから、コストがかかっても返って利益が出るからコスト意識がゼロなわけで、これらがすべて高い電気料金に反映されているわけです。

そして今回のような不自然な資金の還流が起こる主要な要因になっていると考えます。

本件の真の被害者は一着50万円のスーツ代まで電気料金として負担させられている関電利用者であります。



(木走まさみず)