日本政府が米に証拠提示要求、「イラン関与」同調せず〜これは安倍政権の有する素晴らしい外交力の成果だ
タンカー攻撃事件での日本政府の同盟国米国への対応に注目したいのです。
日本政府がホルムズ海峡付近で起きたタンカー攻撃を巡り、イランが関与したとする米国の説明に同調せず、裏付けとなる証拠を示すよう米側に強く求めていることが分かりました。
米側の主張は説得力に欠いているとの受け止めが背景にあります。
関係者によると、日本政府はポンペオ米国務長官が「イランに責任がある」と断じた米国時間の十三日以降、複数の外交ルートを通じて「裏付けとなる根拠を示してもらわないと、日本として断定できない」と伝達しています。日本や国際社会が納得できる証拠を提示するよう強く求めた模様です。
河野太郎外相も十四日の日米外相電話会談で、ポンペオ氏に「イラン関与」を裏付ける証拠の開示を促したとみられています。
(関連記事)
タンカー攻撃 米に証拠提示要求 日本「イラン関与」同調せず
https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201906/CK2019061602000149.html
この日本政府の動きは、同じ米国の同盟国であるイギリス政府がアメリカの主張に即応して「イランの責任はほぼ確実」(英外相)と米国の主張に即時に追随したのとは、対照的な動きにうつりました。
(関連記事)
タンカー攻撃、イランの責任は「ほぼ確実」 英外相
2019年6月15日 11:44
https://www.afpbb.com/articles/-/3230131
日本政府のこの動きを、ロシアのスプートニク通信は「日本は米国の報告を「説得力」に欠いていると考慮せず」("Japan Doesn't Consider US Accusations Against Iran 'Convincing'")と報道しています。
Oil Tanker Attack: Japan Doesn't Consider US Accusations Against Iran 'Convincing' – Reports ©
https://sputniknews.com/middleeast/201906151075890677-oil-tanker-attack-japan-us-accusations-iran-unconvincing/?fbclid=IwAR1cxbwtNkM8u7eXC6MU3OR6DlbmwPxUNekN9U1OziA_rdo-RPqZjvNluB8&utm_source=https://www.facebook.com/&utm_medium=short_url&utm_content=mE6F&utm_campaign=URL_shortening
記事より抜粋。
The Japanese government considers the US allegations about Iran’s involvement in the attack on tankers in the Gulf of Oman unconvincing and has asked Washington to provide additional evidence to corroborate the claims, Kyodo news agency reported, citing several government sources.
日本政府は、オマーン湾でのタンカー攻撃へのイランの関与についての米国の主張は説得力がないと考えており、ワシントンにこの主張を裏付ける追加の証拠を提供するよう求めたと、共同通信は報じた。
イランを安倍首相が訪問中に起きた今回の日本所有のタンカーへの攻撃は、日本政府にとって極めて重大な外交事案に浮上しています、イランの責任だとする米国に真相を強く求めるのは当然のことであります。
日本政府が決定的な証拠を米国に求めるのは、過去の米国の有名な偽旗(ぎき)作戦("false flag operation")を考慮しているものと思われます。
偽旗(ぎき)作戦はあたかも敵によって実施されているように見せかける秘密作戦であります。
敵になりすまして行動し、あるいは敵がこんな危険な行動をしているとの偽情報を振りまき、結果の責任を相手側になすりつける行為であります。名称は自国以外の国旗、つまり偽の国旗を掲げてあざむくという軍の構想に由来します。
1964年8月2日トンキン湾でアメリカの駆逐艦『マドックス』が,さらに同月4日に『マドックス』と僚艦『C.ターナー・ジョイ』が北ベトナム魚雷艇の攻撃を受けた事件。アメリカ議会では,大統領に無制限ともいうべき戦争遂行権限を付与したトンキン湾決議が可決され,アメリカ軍機による北ベトナム報復爆撃が行われました。
これを契機として,アメリカのベトナム戦争への介入は急速に拡大し,翌 65年2月から始る北爆,3月からのアメリカ地上軍の南ベトナム投入に向って引き金を引く転機となりました。
しかしのちにペンタゴン秘密文書により,攻撃されたアメリカの駆逐艦は南ベトナム軍の北ベトナム攻撃に随伴していた事実,ならびに決議文と攻撃目標のリスト自体,事件の2ヵ月前にホワイトハウスで作成されていた事実が明らかにされます,米政府によって筋書きが書かれた「偽旗(ぎき)作戦」だったのです、ジョンソン大統領の政策が激しく批判されます。
「偽旗(ぎき)作戦」とは言えませんが、米国が2003年のイラク攻撃を正当化する根拠とした大量破壊兵器(WMD)に関する情報がすべて結果として虚偽の情報であったこともありました。
このときは同盟国日本も"show the flag"(旗色を示せ)とばかり、偽情報を元にした米国のイラク侵攻を支持しているわけです。
もちろん日本にとって米国は安全保障上の唯一の同盟国であります、そもそも今回のイラン訪問も同盟国アメリカと日本に取り伝統的な友好国であるイランをなんとか仲裁することを目的としていました。
しかし今も触れましたが米国はときに「偽旗作戦」("false flag operation")をしてまで戦争を始めてしまった「前科」があります。
米国側にもイラン側にも決定的な状況証拠が現段階ではないのですから、ここは日本政府は米国の主張と距離を置いて、中立的に振舞うのは正しいと考えます。
この対米国に対して毅然とした外交姿勢を示すことが出来ているのも、歴代首相の中でも突出している外交力を有する安倍外交の素晴らしい成果であると考えます。
野党や一部メディアからときに、"親米ポチ外交"と揶揄されてきた安倍外交ですが、これのどこが”ポチ”なのでしょう。
同盟国としてしっかりふるまいながら、しかし米国に対しても言うべきことは言い、米に追随できない場合ははっきりその意思を示す、素晴らしい外交力ではありませんか。
(木走まさみず)