木走日記

場末の時事評論

小物感ただよう塚田一郎副大臣の弁明が納得いかない件〜政権打倒には到底至らない小物案件ですけどね

塚田一郎国土交通相参院新潟選挙区)は5日午前、下関北九州道路の建設計画を巡って安倍晋三首相と麻生太郎副総理兼財務相に「忖度(そんたく)した」などと利益誘導とも取れる発言をした責任を取り、石井啓一国交相に辞表を提出しました。

(関連記事)

塚田副国交相が辞表提出 「国政停滞、責任取るべきと判断」
https://mainichi.jp/articles/20190405/k00/00m/010/103000c

塚田氏は辞表提出後、国交省で記者団に「事実と異なる私の発言が行政の信頼を損ね、国政の停滞を招いたことから、責任を取るべきだと判断した」と説明し、改めて陳謝しました。

発言内容のお粗末さやその後の謝罪弁明のへなちょこぶりに、申し訳ありませんが全体的になんともいえない小物感がぷんぷんただよう政治家塚田一郎氏なのでありました。
塚田氏といえば、地元新潟市立寄居中学校の1学年下に、北朝鮮による拉致被害者横田めぐみさんがいて、政治家になる前からボランティアで救う会の活動に参加していたエピソードをお持ちの方なのでした。

さて事実上の更迭なのでしょうが塚田氏の辞任にあたり、私は国会でも繰り返していた塚田氏の「事実と異なる私の発言が行政の信頼を損ねた」という間の抜けた弁明にまったく納得がいっていません。

塚田氏の発言全文を洗い出しましょう。

発言冒頭。

麻生太郎衆院議員にお仕えして、はや20年近く。最初の総裁選は大変でした。その時代から、麻生太郎命、一筋でやってきた。筋金入りの麻生派です。

これは事実でしょうね。

続いて。

実は公務で(福岡県に)来ました。福岡空港の民営化の開設式です。私は新潟の自民県連会長もやっているので、50人の同士の応援要請があったが、かわいい弟分の大家敏志参院議員(麻生派)の要請があり、おやじ(麻生氏)の顔が浮かんで足を運びました。麻生派は渡世の義理だけで動いている。ほとんどやせ我慢の団体です。私は夏に参院選があるが、自分の票を削って北九州に参りました。

「かわいい弟分」だの「おやじ」だの「渡世の義理」だのだいぶ任侠用語連発してますが、ここもまあ事実でしょう。

問題はここからです。

国交副大臣なのでちょっとだけ仕事の話を。大家さんが私が逆らえない吉田博美・自民参院幹事長と一緒に「地元の要望がある」と副大臣室に来た。下関北九州道路(の要請)です。これにはいきさつがありまして、11年前に凍結されています。何でか分かります? 「コンクリートから人へ」の流れで、とんでもない内閣があったでしょ(※事実上凍結した2008年当時は自公政権)。総理は悪夢のようだと言ったがその通りです。

大家氏が吉田自民参院幹事長を連れて副大臣室に「地元の要望がある」と陳情に来たわけです。

この会合ですね、吉田幹事長側もこの日の陳情を認めていますのでおそらく事実なのですね、興味深いことですが。

で、続いて、例の「忖度」発言です。

何とかしないといけないと。下関と北九州ですよ。よく考えてください。下関は誰の地盤ですか? 安倍晋三総理です。麻生副総理の地元でもある北九州への道路事業が止まっている。吉田先生が私の顔をみて、「塚田、分かっているな」と。「これは総理の地元と副総理の地元の事業なんだよ」と。「俺が何で来たか分かるか」と。私は物わかりがいい。すぐ忖度(そんたく)します。「分かりました」と。

そりゃ総理とか副総理はそんなこと言えません。私は忖度しました。この事業を再スタートするには、いったん国で調査を引き取らせてもらいます、と。今回の新年度の予算で国直轄の調査計画に引き上げました。

別に知事に頼まれたからではありません。大家敏志が言ってきた、そして私が忖度したということですので。

いろいろ計画があります。トンネルが良いという人がいるが、橋がいいのではないかということで、おそらく橋を架ける形で調査を進めて、できるだけ早く、みなさまのもとに橋が通っていけるように頑張りたい。

塚田一郎・国交副大臣の主な発言内容 より
https://www.msn.com/ja-jp/news/national/%E5%A1%9A%E7%94%B0%E4%B8%80%E9%83%8E%E3%83%BB%E5%9B%BD%E4%BA%A4%E5%89%AF%E5%A4%A7%E8%87%A3%E3%81%AE%E4%B8%BB%E3%81%AA%E7%99%BA%E8%A8%80%E5%86%85%E5%AE%B9/ar-BBVBGE6#page=2

ここでこの一連の発言に対する塚田さんの弁明コメントを報道より再確認しましょう。

 塚田一郎・国土交通副大臣自民党参院議員)が2日、福岡県政記者クラブに文書で送ったコメントの要旨は次の通り。

 1日に行われた自民推薦候補の応援演説で、「総理とか副総理が言えないので、私が忖度(そんたく)した」「これは総理と副総理の地元の事業だよと言われた」「私は物わかりがいい。すぐ忖度する。分かりましたと応じた」と発言しましたが、一連の発言は事実と異なるため撤回し、謝罪申し上げます。

 下関北九州道路については今般、国において事業の必要性などを鑑み、直轄調査を実施することとしたところです。

国交副大臣、「安倍首相と麻生氏を忖度」発言を謝罪
https://www.asahi.com/articles/ASM42551MM42TIPE012.html

本件は双方認めている事実を整理すると、自民党吉田幹事長が塚田一郎国土交通副大臣に下関北九州道路の要請をした、そして国土交通副大臣の尽力により、下関北九州道路調査は今回の新年度の予算で国直轄の調査計画に引き上げられたということです。

自民党吉田参院幹事長といえば竹下派会長代行でありました。

前回の自民党総裁選で、複数の党幹部の証言によると、政界引退後も存在感を示す青木幹雄参院議員会長が、吉田博美参院幹事長に対し「石破氏でいけ」と参院議員21人全員をまとめるように指示。吉田氏は派内に首相に近い議員が多いことから抵抗したが、最終的に受け入れましたことは記憶に新しいのです。

(関連記事)

自民党総裁選】参院竹下派は石破元幹事長を支持 議員50人前後固める 衆院議員の大半は安倍首相支持
2018.7.28 06:57
https://www.sankei.com/politics/news/180728/plt1807280005-n1.html

さて塚田氏が自民党吉田博美参院幹事長から要望を受けたのは昨年12月20日であり、野党が4日行なった下関北九州道路に関する国土交通省への合同ヒアリングで、同省の説明によると池田豊人道路局長と担当課長が同席した模様であるとされています。

発言内容のお粗末さやその後の謝罪弁明のへなちょこぶりに、申し訳ありませんが全体的になんともいえない小物感がぷんぷんただよう政治家塚田一郎氏なのでありました。

さて塚田氏の「事実と異なる私の発言が行政の信頼を損ねた」という間の抜けた弁明ですが、どうもどうやら「事実と異なる」部分と「事実を脚色した」部分と「事実な」部分がまぜまぜになっているような感じなのですね。

ただですね、野党諸君にご注進申し上げておきますが、この案件、所詮吉田参院幹事長止まりの小物案件であります。

深堀りしたところで、安倍政権打倒には到底至りませんのであしからずであります。

ふう。



(木走まさみず)