木走日記

場末の時事評論

この局面で日本の責任を追及する朝日新聞の異常な社説


 今回は主要紙の社説をメディアリテラシー的にプチ分析してみましょう。

 さて31日の主要5紙の社説は前日の韓国の異常な徴用工裁判を取り上げています、全紙そろい踏みであります。

【朝日社説】徴用工裁判 蓄積を無にせぬ対応を
https://www.asahi.com/articles/DA3S13747548.html?ref=editorial_backnumber
【読売社説】判決 日韓協定に反する賠償命令だ
https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20181030-OYT1T50161.html
【毎日社説】韓国最高裁の徴用工判決 条約の一方的な解釈変更
https://mainichi.jp/articles/20181031/ddm/005/070/128000c
【産経社説】「徴用工」賠償命令 抗議だけでは済まされぬ
https://www.sankei.com/column/news/181031/clm1810310002-n1.html
【日経社説】日韓関係の根幹を揺るがす元徴用工判決
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO37149270Q8A031C1EA1000/

 さて社説のような小論では結語のインパクトは重要です。

 落語で言えば落ちのようなものであります。

 そして社説ではしばしば「誰々は何々すべきである」と、言い切り方の結論を持ってきます。

 では、結語を並べて分析してみましょう。

 まずは【読売社説】の結び。

 韓国の文在寅大統領は、「未来志向の日韓関係構築」を目指すのであれば、事態の収拾に全力を尽くさねばならない。

 主語は「韓国の大統領」、すべきは「事態の収拾に全力を尽くさねばならない」と結ばれています。

 次は【毎日社説】の結び。

 日本も感情的な対立を招かないよう自制が必要だ。しかし、主体的に問題解決を図るべきは韓国政府だということを自覚してほしい。

 日本にも自制を求めつつ、結びは「韓国政府」が「主体的に問題解決を図るべき」と自覚しろとまとめられています。

 次は【産経社説】の結び。

 国同士の約束を破り国際的信用を失うのは韓国である。韓国への投資なども冷え込もう。政府間の交渉も信頼して行えない。

 もちろん主語は「韓国」、「韓国」は「国同士の約束を破り国際的信用を失う」、「韓国」「への投資なども冷え込もう」、「韓国」との「政府間の交渉も信頼して行えない」というわけです。

 次は【日経社説】の結び。

 日韓は北朝鮮の核問題など協力すべき懸案が山積する。文在寅政権は冷静に対応してもらいたい。

 主語は「文在寅政権」で、「冷静に対応してもらいたい」とまとめられています。

 今分析したとおり、日本の主要紙社説の結びでは、「冷静に対応してもらいたい」(日経)「主体的に問題解決を図るべき」(毎日)「事態の収拾に全力を尽くさねばならない」(読売)の要求先はすべて韓国政府にむけられています。

 産経社説の結びにいたっては、要求すらしていません、「国同士の約束を破り国際的信用を失う」、「投資なども冷え込もう」、「政府間の交渉も信頼して行えない」と、韓国政府批判と最後の最後は「交渉も信頼して行えない」と韓国拒絶表現で結ばれています。

 日本メディアの社説が韓国政府を痛烈に批判するのも当然です。

 53年前に日本政府は国家対国家として韓国政府に巨額なお金を援助し、それをもって「請求権問題の完全かつ最終的な解決」をしています。

 請求権問題で、徴用工に個別対応する責任は韓国政府にこそあります。

 今回のは国際条約違反の有り得ない判決なのです。

(参考エントリー)

2018-10-30 韓国最高裁が『日韓基本条約』協定違反の異常で非常識な判決〜日本政府は韓国政府に強く抗議すると共にあらゆる対抗手段を検討すべき
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20181030/1540880015

 さてです。

 最後に朝日新聞の社説の結びを分析しましょう。

 負の歴史に由来する試練をどう乗り切り、未来志向の流れをつくりだすか。政治の力量が問われている。

 「政治の力量が問われている」と結ばれていますが、あれあれ主語がありません。(主語を消す、これはブンヤの意図的なテクニックです)

 この場合、結びの手前の文が鍵を握ってきます。

 日本政府は小泉純一郎政権のとき、元徴用工らに「耐え難い苦しみと悲しみを与えた」と認め、その後も引き継がれた。

 政府が協定をめぐる見解を維持するのは当然としても、多くの人々に暴力的な動員や過酷な労働を強いた史実を認めることに及び腰であってはならない。

 なんのことはない「日本政府」でした。

 朝日社説は結びで「日本政府」に「多くの人々に暴力的な動員や過酷な労働を強いた史実を認めることに及び腰であってはならない」と要求し、最後に「日本政府」の「力量が問われている」と、本件は日本政府側の問題であると暗示して結ばれているのです。

 ・・・

 今回は主要紙の社説をメディアリテラシー的にプチ分析してまいりました。

 ご参考になりましたでしょうか。

 社説のような小論では結語のインパクトは重要です。

 落語で言えば落ちのようなものであります。

 そこにはその新聞社が訴えたい主張がしばしば凝縮しているものです。

 日本の全国紙の中で唯一「韓国政府」ではなく「日本政府」の責任を追及して論を結んでいる朝日新聞社説なのでありました。

 この局面で韓国より日本への注文を出す、まさに異常な新聞と申せましょう。

 ふう。



(木走まさみず)