木走日記

場末の時事評論

長距離ミサイル導入に「ガラパゴス」対応の野党とメディア〜安全保障環境が激変していることに気づいていないのか

 自衛隊の長距離巡航ミサイル導入が発表されました。

 そうしましたならば、一部メディアと野党が例によって「ガラパゴス」反応であります。

 少しトレースしておきます。

 野党やメディアの「ガラパゴス」ぶりをみてください。

 まず、地方ブロック紙社説ですが、「専守防衛に反しないか」と非現実的な批判ばかりです。

東京新聞社説】長距離ミサイル 専守防衛に反しないか
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017121302000150.html
北海道新聞社説】巡航ミサイル 専守防衛を逸脱せぬか
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/150851?rct=c_editorial

 全国紙社説も同様、毎日社説も「専守防衛の境界がかすむ」と疑問を呈しています。

毎日新聞社説】自衛隊巡航ミサイル導入 専守防衛の境界がかすむ
https://mainichi.jp/articles/20171212/ddm/005/070/127000c

 朝日社説にいたっては疑問文ではなく「専守防衛の枠を超える」と言い切ります。

朝日新聞社説】巡航ミサイル 専守防衛の枠を超える
http://www.asahi.com/articles/DA3S13270558.html?ref=editorial_backnumber

 共産党機関紙「赤旗」など、「巡航ミサイルなど敵基地攻撃能力の保有憲法に反することは明白」とすら、述べています。

巡航ミサイル導入
敵基地攻撃能力の保有やめよ
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-12-10/2017121002_01_1.html

 野党もいっせいに反対しています。

 「ごまかしのようなやり方で防衛政策を進めるのは国益に反する。政府は『自衛隊は敵基地攻撃能力を持たない』と繰り返し答弁してきた。どう整合性をつけるのか」(立憲民主党長妻昭代表代行)

 「予算編成の過程で突然出てくるのは、違和感を禁じ得ない。国民の不信を招く」(希望の党玉木雄一郎代表)

 「わが国の防衛は専守防衛に資する装備に限定されなければならない」(民進党増子輝彦幹事長)

 「専守防衛の立場を超えている」(共産党穀田恵二国対委員長

防衛省巡航ミサイル導入方針に野党反発
http://www.news24.jp/articles/2017/12/06/04379764.html
野党、巡航ミサイル導入方針に反発 識者「ナンセンス。ほかに方法あるのか」
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/171208/soc1712080008-n1.html

 このメディアや野党の「ガラパゴス」反応にこれも例によって韓国メディアが同調します、ハンギョレ新聞から。

日本、射程距離900キロ巡航ミサイル導入を公式発表…専守防衛違反が議論に
http://japan.hani.co.kr/arti/international/29209.html

 ・・・

 やれやれです。

 改めて読者の皆さんと冷静に議論したいです。

(関連記事)

防衛相 長距離巡航ミサイル導入を発表 「専守防衛に反せず」
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20171208/k10011251061000.html
小野寺防衛相、初の長距離巡航ミサイル導入を発表
https://www.cnn.co.jp/world/35111695.html

 上記NHK記事によれば、具体的には、F35Aに搭載する、射程500キロでノルウェー製の「JSM」と、いずれもF15などに搭載する予定の射程900キロでアメリカ製の「LRASM」と「JASSM」で、このうち「JSM」は2021年度中に導入する方針です。

 射程900キロとなれば、日本海から北朝鮮を十分に狙える距離であります。

 このニュースは海外でも大きく取り上げられています。

 その取り上げられ方は概ね冷静でして、上記CNN記事でも、米科学者連盟(FAS)の上級研究員アダム・マウント氏は、北朝鮮による核・ミサイル開発の進展によって、日本政府や韓国政府はスタンドオフミサイルの導入を避けられなくなったとの見方を示しています。

 スタンドオフミサイルというのは、スタンドオフ攻撃が可能なミサイルということで、アウトレンジ攻撃つまり敵の迎撃可能範囲外からの攻撃が可能な長距離を巡航できるミサイルのことです。

 純粋に軍事技術的な視点に立てば、今まで東アジア諸国で長距離巡航ミサイルを保持していない国は日本だけなのであり、米国はもちろん中国ロシア北朝鮮のみならず韓国台湾、いずれも保持していたわけです。

 日本は今までは「専守防衛」の立場から長い距離のミサイルは保有してこなかったわけですが、アダム・マウント氏の冷静な指摘のとおり、日本を取り巻く安全保障環境は、北朝鮮による核・ミサイル開発の進展によって、激変してしまいました。

 スタンドオフミサイルの導入はもはや避けられなくなったのです。

 ここで戦後日本(自衛隊)の基本的な軍事戦略である「専守防衛」との兼ね合いなのですが、防衛相は長距離巡航ミサイル導入を発表時、わざわざ「専守防衛に反せず」と前置きしております。

 専守防衛とは、防衛上の必要があっても相手国に先制攻撃を行わず、侵攻してきた敵を自国の領域において軍事力(防衛力)を以って撃退する方針のことを意味します。

 しかし敵がスタンドオフ攻撃を仕掛けた場合には、このままでは日本は有効な反撃手段がないわけです、現在手持ちのミサイルの射程では反撃が敵に届かないからです。

 手段無しのやられっぱなしの現状からスタンドオフミサイルの導入を図れば、反撃手段が確保できます。

 日本がスタンドオフ攻撃に対しやはりスタンドオフで反撃可能になれば、その事実自体が中国や北朝鮮による日本への軍事攻撃への抑止力と成り得ます。

(参考サイト)

専守防衛
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%82%E5%AE%88%E9%98%B2%E8%A1%9B

 さて話は少し脱線しますが、当ブログとして2年前、日本の技術で核兵器開発できる能力があるか検証したエントリーがございます。

2015-08-12「日本には実験なしで核兵器開発できる能力がある」(中国メディア)は本当か?
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20150812

 この検証記事で「プルトニウム抜きの核爆弾を300発ほど保有」するという奇抜なアイディアを開陳させていただきました。

 いずれにしても日本の有する技術力をもってすれば、核爆弾を持つという国民の総意・意思が固まれば、それは早期に実現可能であろうと思われます。

 さてエントリーして思いついたのですが、安全保障上のカードとして、また現憲法に抵触しない範囲で何か可能なことはないのかという意味でこんなのはいかがでしょうか。

 製造技術を確立してプルトニウム抜きの核爆弾を300発ほど保有する。

 そしてイプシロンを改良して弾道ミサイルも同数量産しておく。

 プルトニウムが入っていませんから、爆発もしないし兵器ではないことになります。

 で、日本を怒らしたら、いつでも瞬時にプルトニウムを挿入できるぞ、という脅しになります。

 「日本がその気になれば核ミサイルはすぐに保有できる」、この事実だけでも安全保障上の有効なカードとなると思います。

 このエントリーはネット上で少し話題をいただき、今でも参照していただいているようですが、さて今回の長距離巡航ミサイルも、ノルウェーアメリカから購入するよりも本来は日本で自主開発すべきだと思います。

 技術的経済的な能力は日本に十分ありますし、このレベルの兵器を海外依存することは安全保障上のリスクが伴うのは下記記事で北村淳氏も指摘しているところです。

米国から買うより日本で造るべき長距離巡航ミサイル
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20171214-00051834-jbpressz-int&p=1

 まあしかし自主開発のハードルは高いでしょう、現状ではミサイルは海外依存するしかありません。

 なぜならば本件で本来されなければならない建設的・技術的議論が、この日本ではできる雰囲気ではまったくないからです。

 上述したメディアや野党の「ガラパゴス」対応を見ればおわかりでしょう。

 「専守防衛」「専守防衛を守れ」と怒鳴っているだけです。

 核弾頭によるスタンドオフ攻撃にさらされれば、従来の「専守防衛」つまり敵に攻撃されるまでまつ戦術はまったく通用しないことに理解が及ばないのでしょうか。

 彼らはこの国の安全保障環境が激変していることに気づいていないのでしょうか。

 現実に目をつぶっているとしか思えません。



(木走まさみず)