木走日記

場末の時事評論

東芝の事件でメディアが「粉飾決算」とは決して報道しない理由〜これは「ヤクザ」と「お店」と「ショバ代」の関係である


 東芝の公式サイトによれば、現在テレビ・ラジオで東芝が毎週提供している番組はご覧の9本。

日本テレビ 『スッキリ』(月〜金曜 8:00-10:25)
・TBS 『日曜劇場・ナポレオンの村』(日曜 21:00-21:54)
・フジテレビ 『サザエさん』(日曜 18:30-19:00)
テレビ東京 『出没!アド街ック天国』(土曜 21:00-21:54)
テレビ東京 『未来シティ研究所』(月曜 22:54-23:00)
・BS日テレ 『小さな村の物語』(土曜 21:00-21:54(再放送 日曜 10:00-10:54))
・BS朝日 『奇跡の地球紀行』(土曜 18:54-20:54)
・BS朝日 『カーグラフィックTV』(水曜 23:00-23:29)
・東京FM 『グリーンアースラジオ』(土曜 18:30-18:55)

http://www.ad-toshiba.jp/sponsorships/index_j.htm

 テレビ業界創成期よりの上得意・大スポンサーである東芝の提供番組と言えば、3つの特徴があります。

 ・長寿番組が多い(最たるものが『日曜劇場』59年(昭和31年〜)、『サザエさん』46年(昭和44年〜)
 ・週末(土日)のゴールデンタイムに集中させる(上記9本中6番組が土日ゴールデン)
 ・結果、各テレビ局の看板番組は東芝提供の番組が多くなる(『サザエさん』、『日曜劇場』、『出没!アド街ック天国』など)

 以前は『サザエさん』はじめ多くの東芝一社提供番組がありましたが、『東芝日曜劇場』が『日曜劇場』になったのは2002年ですが、現在では東芝冠番組(一社提供)はほとんどありません。

 それでもテレビ局にしてみれば東芝は、途中で提供を降りたりしない(従って安定している)、安くはないゴールデンタイムの番組提供料金を惜しみなく払ってくれる、番組を長期的に支えてくれる超優良スポンサーなのであります。

 そんな優良広告主の東芝に総額1500億を超えるデタラメな「粉飾決算」が内部リークで発覚したのであります。

 さあマスメディアは大変です。

 テレビ・ラジオは、慎重に言葉を選び、東芝で「不適切な会計処理」が発覚と「粉飾決算」という悪しき言葉を避けます、そして案の定、本件では必要以上の掘り下げた報道をしようとはしません。

 「起訴が確定していないからまだ『粉飾決算』とは報道しない」とでたらめな言い分で勝手に「報道規制」しているようですが、腹で茶がわいてしまうとはこのことです。

 思いだしてください、9年前、たった54億円の虚偽記載による粉飾決算事件で、ライブドア上場廃止堀江貴文前社長は逮捕に追い込まれたわけです。

 あのとき、テレビ・ラジオは容赦なくライブドア粉飾決算」と連日報道しました、特にライブドアと敵対関係にあったフジサンケイグループの露骨な過熱報道はすごかったのです。

 ズバリ断言しますが、これが東芝ではなくただの中小企業ならマスメディアは最初から『粉飾決算』と報じています。

 ライブドアは2004年9月期連結決算で、経常利益を粉飾した有価証券報告書を提出したほか、関連会社が買収する出版社の価値を過大に評価した虚偽の業績などを発表したとして、証券取引法違反の罪に問われました。

 そしてライブドアは上場取り消しに追い込まれました。

 有価証券報告書を「粉飾」したという事実では、「東芝」も全く同罪です、いや1500億超という規模と5年以上の長期に渡っている点では、「粉飾」の規模は東芝のほうがはるかに大きいと言えましょう。

 だがしかしこの国のマスメディアは「不適切な会計処理」などとごまかして報道しているわけです。

 ・・・

 これではヤクザと的屋(てきや)の「シノギ」と「ショバ代」そのものじゃないですか。

 夏祭りなどの縁日の的屋(てきや)達は場所取りをするにあたって、上部組織つまりその場所の「胴元」(どうもと)筋(ほとんどヤクザ組織が多かった)に「ショバ代」を払います。

 的屋の「場所代」がひっくり返って「所場代」「ショバ代」という俗語が生まれたわけですが、これが繁華街などのスナックやクラブにおいて、その土地を仕切るヤクザ組織に「ショバ代」を毎月支払う悪習となっていくわけです。

 この毎月巻き上げる「ショバ代」はヤクザ組織の重要な収入手段(「しのぎ」)となります。

 店側にしてみれば、毎月ヤクザに「ショバ代」を払うことで、万が一やっかいなトラブルが発生した時にヤクザに面倒を見てもみ消してもらう、つまり一種の保険のようなものなのであります。

 マスメディアが「ヤクザ」、東芝など広告主を「お店」、広告料を「ショバ代」と置き換えてみれば、実にわかりやすいのです。

 ふう。



(木走まさみず)